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第1章 転移~小鬼族対戦編
第12話 対小鬼族戦② 老戦士は思案する
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老戦士は心を鎮めながら考えを巡らせる。
其処には何時もの飄々とした好好爺の姿はなく、一人の戦士の姿があった。
長耳族は長命な種族である。
言い伝えによれば、1000年を超える時を生きた者もいたそうだ。
その中でも彼は、長い時を生きた人物と言えるだろう。
族長ソルトロッソ。
齢450年を超えるその人物は、老いによる衰えを感じさせない太く逞しい腕を組み、顎に生えた無精髭を撫でた。
この戦いはどこかおかしい。
ソルトロッソは間近に迫る小鬼族の侵攻を前に思考を加速していく。
事の起こりは、レシット山脈にて目撃された小鬼族の報告だった。
それは、大して重要性の高いものではなく、些事ともいえるものであった。
しかし、それは些事ではなかったのだ。
現に今、小鬼族は1000を超える軍勢にて、この森へと侵攻してきている。
本来であれば、些事足り得た小鬼族。
それは何故か。
レシット山脈だ。
あの山脈に棲む魔物は小鬼族に対処出来るものではないからだ。
その為、目撃された小鬼族もはじめは群れに馴染めなかったはぐれ者だと思われた。
だが、その目撃情報は日に日に増すばかりであった。
不審に思ったソルトロッソは、監視を強めると同時に周辺集落との連絡の強化、非常事態での逃走経路の確保、住人の避難準備、戦闘部隊の戦闘準備を進めてきた。
万全とは言い難いものがあるが、それでも最善足り得る準備は出来たと思っていた。
先の報告を聞くまでは。
小鬼族がメグニアの実で罠に掛けた。
有り得ないと思った。
ソルトロッソの知る小鬼族という種族は矮小で醜悪。
話など通じず、奪い殺す事しか考えていない種族である、と。
何かがある。
不安要素でしかないが、その何かが解らない事には、不測の事態が起こる。
考える。
長く生きた知識を収束させて考える。
「チッ! 情報がたりねぇ。こんな事なら戦以外の事もジジイから学んどくんだったな」
叡智の種族と称される長耳族に於いて、ソルトロッソは特異な存在と謂えるだろう。
彼は武人であった。
彼は種族の特性ともされる、知識があまり得意ではなく、こと戦闘に於いての能力が高かった。
国に仕えた事もあるが、当然武官としてである。
族長となってからは、政治的なものに関わりも出来たが、やはり得意ではなく、セフィに一任。
というよりも押し付けている。
「斥候からの情報とシルからの情報を待つしかねぇな」
シルフェルス。
ソルトロッソが彼を遊撃部隊としたのは、高い戦闘力と機動力がある為だ。
彼ならば、或いは、敵の懐まで進み、不可解な要素に関する情報を掴めるかもと考えたのだ。
「それにアイツも動いてるだろうからな」
当然、別ルートでの保険もかけている。
そちらに関しては、心配はしていない。
自分とは違い、要領の良いアイツであれば、命を落とすことは無いだろうと思っている。
しかし、情報が集まるまでの時間、ただ待っている事は出来ないだろう。
「族長! 小鬼族の先行部隊が森へと侵攻しました! 数は200!」
そらみろ。
そうソルトロッソは心中で溜め息を吐く。
「おし! てめぇら! 長耳族の誇りにかけても森の中での戦いで遅れを取るわけにはいかねぇ! 各部隊、油断せずに確実に敵の戦力を削れ! 無理する必要はないからな! 事前に指示を出してある通り、避難の完了と援軍が来るまでは時間を稼げ!」
指示を出すと、各部隊が森の中へと散開していく。
ソルトロッソはその背中を見送り、誰一人死なない事を願った。
それが無理な事だとは解っていても、自分の半分も生きていない同胞を死なせたくはなかったのだ。
其処には何時もの飄々とした好好爺の姿はなく、一人の戦士の姿があった。
長耳族は長命な種族である。
言い伝えによれば、1000年を超える時を生きた者もいたそうだ。
その中でも彼は、長い時を生きた人物と言えるだろう。
族長ソルトロッソ。
齢450年を超えるその人物は、老いによる衰えを感じさせない太く逞しい腕を組み、顎に生えた無精髭を撫でた。
この戦いはどこかおかしい。
ソルトロッソは間近に迫る小鬼族の侵攻を前に思考を加速していく。
事の起こりは、レシット山脈にて目撃された小鬼族の報告だった。
それは、大して重要性の高いものではなく、些事ともいえるものであった。
しかし、それは些事ではなかったのだ。
現に今、小鬼族は1000を超える軍勢にて、この森へと侵攻してきている。
本来であれば、些事足り得た小鬼族。
それは何故か。
レシット山脈だ。
あの山脈に棲む魔物は小鬼族に対処出来るものではないからだ。
その為、目撃された小鬼族もはじめは群れに馴染めなかったはぐれ者だと思われた。
だが、その目撃情報は日に日に増すばかりであった。
不審に思ったソルトロッソは、監視を強めると同時に周辺集落との連絡の強化、非常事態での逃走経路の確保、住人の避難準備、戦闘部隊の戦闘準備を進めてきた。
万全とは言い難いものがあるが、それでも最善足り得る準備は出来たと思っていた。
先の報告を聞くまでは。
小鬼族がメグニアの実で罠に掛けた。
有り得ないと思った。
ソルトロッソの知る小鬼族という種族は矮小で醜悪。
話など通じず、奪い殺す事しか考えていない種族である、と。
何かがある。
不安要素でしかないが、その何かが解らない事には、不測の事態が起こる。
考える。
長く生きた知識を収束させて考える。
「チッ! 情報がたりねぇ。こんな事なら戦以外の事もジジイから学んどくんだったな」
叡智の種族と称される長耳族に於いて、ソルトロッソは特異な存在と謂えるだろう。
彼は武人であった。
彼は種族の特性ともされる、知識があまり得意ではなく、こと戦闘に於いての能力が高かった。
国に仕えた事もあるが、当然武官としてである。
族長となってからは、政治的なものに関わりも出来たが、やはり得意ではなく、セフィに一任。
というよりも押し付けている。
「斥候からの情報とシルからの情報を待つしかねぇな」
シルフェルス。
ソルトロッソが彼を遊撃部隊としたのは、高い戦闘力と機動力がある為だ。
彼ならば、或いは、敵の懐まで進み、不可解な要素に関する情報を掴めるかもと考えたのだ。
「それにアイツも動いてるだろうからな」
当然、別ルートでの保険もかけている。
そちらに関しては、心配はしていない。
自分とは違い、要領の良いアイツであれば、命を落とすことは無いだろうと思っている。
しかし、情報が集まるまでの時間、ただ待っている事は出来ないだろう。
「族長! 小鬼族の先行部隊が森へと侵攻しました! 数は200!」
そらみろ。
そうソルトロッソは心中で溜め息を吐く。
「おし! てめぇら! 長耳族の誇りにかけても森の中での戦いで遅れを取るわけにはいかねぇ! 各部隊、油断せずに確実に敵の戦力を削れ! 無理する必要はないからな! 事前に指示を出してある通り、避難の完了と援軍が来るまでは時間を稼げ!」
指示を出すと、各部隊が森の中へと散開していく。
ソルトロッソはその背中を見送り、誰一人死なない事を願った。
それが無理な事だとは解っていても、自分の半分も生きていない同胞を死なせたくはなかったのだ。
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