おうちに帰してください!~私は異世界からの帰宅を目指す~

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第2章

第6話 盗賊――シュンside

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 私……どうなったんだっけ……
 ぼんやりとした頭の中で、ゆっくりと目を開ける――

「ん……んんっ⁉」

 え⁉ 何⁉
 意識が覚醒した私は、口に猿轡を噛まされていた。
 外そうとしたところで、腕を後ろ手に柱だと思われる物に縛り付けられている事に気付いた。
 周りを見てみると、どうやら山小屋の様な場所だ。

 どういう状況⁉

「お? 嬢ちゃん、目が覚めたのか?」

 月光が逆光になって顔がよく見えないけど、男の人が立っている。

「んっ!」

 ジワジワとお腹の痛みが響いてきた。
 思い出した。
 私、いきなり押さえられて、気絶させられたんだ。

「んんん! んむっ!」

 文句を言ってやろうとするが、口は塞がれていて、言葉を喋れない。

「何言ってんのかわかんねェよ。とりあえず、お頭が来るまで大人しくしてな」

 男は私の髪を掴んで、睨んだ。

「にしても……嬢ちゃん、よく見ると中々可愛い顔してんな。こりゃ拾いもんだったな」

 男は目を細めて、ケヒヒッと愉快そうに笑い、乱暴に私の髪を離して、入り口へと歩いていった。

 髪痛ったい! もう!
 にしても、あれがおばさんの言ってた盗賊って事だよね。

 私がこんな所に連れてこられてるって事は……

 シルは⁉ 彼はどうなったの⁉
 ――いや、こういう時こそ冷静にならないと。

 シルはきっと無事。
 短い時間だけど、シルに稽古してもらって、戦い方を見てきたんだから。

 あの人は強い。

 この世界の人族がどれくらいの強さなのかは分からないけど――それでも強いのは分かる。

 ならば、私がしないといけないのは、ここから逃げる事。
 無理なら、どうにかして、シルにこの場所を伝えないといけない……

 でもどうしたら――

「キュッ」

 服の中からモゾモゾと動く気配がする。
 スーちゃんが胸元から顔を出した。

『スーちゃん! 無事だったんだ!』

 私は小声でスーちゃんに話しかける。
 スーちゃんは私の顔にスリスリと頬を擦り当ててきた。

 縛られてる手の縄は……
 私は縄を見る。
 ギチッと縄が音を立てて手首に食い込む。痛い。
 かなりしっかりと結ばれている。
 それに――

 ダメだ。
 スーちゃんに切ってもらうには太すぎる。

『スーちゃん。お願い。どうにかして、シルをここまで連れてきて』

「キュッ!」

 スーちゃんはビシッと敬礼を取り、スルスルとすきま風が入り込んでいる割れた窓から、外に出た。
 敬礼なんてどっから覚えてきたんだろ。

「――し――。――うだ――むすめ――らえて――」

 外からさっきの男の声がする。
 どうやら、誰かと話してるみたいだけど、さっき言っていたお頭だろうか。
 そうなるとまずい……

 バンッと音を立てて、扉が激しく開く。

「ほぉ。コイツはえらく可愛らしいお嬢ちゃんじゃないか」

 入ってきたのは、逆光でもわかるほど、鮮やかな紅い髪を魅惑的に揺らし、艶やかな肢体をした艶やかな女性だった。
 そして、巨乳だ。

「ふーん。本当に黒髪だね。珍しい……」

 女性の目が妖しく光っている様に見える。

「コイツは中々面白いね……よし! このお嬢ちゃんは売らないよ。アタイの物にする」

 女性は妖しく微笑みそんなことを言った。

「んー!んむー!」「お頭。ソイツァ、他のやつが納得しないかもしれやせんぜ?」

 私が叫ぶのと男の声が重なった。

「うるさいねぇ。そんなもん黙らせりゃいいんだよ。ソイツもアンタの仕事だろ?」

 女性が男の方を向き、そう言うと。

「そりャァ、そう言われッちまうと弱ェンですがね」

 男は苦笑しつつ頭をゴリゴリと掻いた。

「さて――それじゃあ、アタイがアンタを可愛がってやるよ」

 女性は私にゆっくりと向き直りながら、そう言った。
 え? 可愛がるって――ちょ! 近づかないでよ!

 逃げようにも縛られてて動けない。
 せめてもの抵抗に、女性を睨み付ける。

「そんなに反抗的な顔をするんじゃないよ。そそられるじゃないか。」

 女性は、唇をペロリと舐める。
 ただそれだけで、淫靡な雰囲気を漂わせていた。

 女性が目の前まで来ている。
 やだやだやだ!
 ファーストキスもまだなのに!

 女性の手が私の顎に触れる――

「アグッ!」

 一瞬の風切り音と肉を貫く生々しい音。
 それに男が放った痛みを堪える声が、女性の後ろから聞こえてきた。

 私が視線を女性の背後に動かしたのと、女性が振り向くのは同時だった。

「その子を放してもらいましょうか」

「んんー!」

 弓を構えたシルの姿があった。
 頭の上に、スーちゃんが乗っていて、ちょっと滑稽な所が残念――


 ▼△▼△▼△▼△▼△


 少し時間を戻して、一匹のリスに視点を移す。
 リスは主人の命令を受けて、山小屋を出た。

 普段であれば、木の実や果実を探す為の鼻を使い頼るべき人物の臭いを探す。
 地面と木を使い分けて、林の中を進む。

 ガサッという音に耳をピンと立てるリス。
 出てきた影は――

 迷犬だった。
 主人の危機だというのに、こんな時に。

 迷犬から逃げようと近場の木に登ろうとしたが、進路に回り込まれてしまった。

「キュゥ……」

 リスは怯えた表情を浮かべ、困ったように辺りを見回す。
 だが、逃げ道がない。
 ジリジリとにじり寄る迷犬。
 迷犬の牙がリスに襲いかかる――その時だった。

「キャン!」

 目前に迫った牙が閉じられ、痛みの代わりに苦痛の声をあげた。
 見ると迷犬は、探し人の手によって絶命していた。

「……スーかい? シュンは⁉ 彼女はどこだ⁉」

 ◆◇◆◇

 緑髪の青年を連れて、山小屋へ急ぐ。
 山小屋の扉は開いていた。
 そこに映るのは、赤い髪の女性が、主人へと近づいていく所だ。

「キュ! キュ!」

 早く助けろと促す様に青年の頭をペチペチと叩くリス。
 当然と応える様に青年は弓を引き絞り、矢を放った。

「疾ッ!」

 矢は、入口に近い位置にいた男の腕を貫いた。

「その子を放してもらいましょうか」

 物語の英雄みたいに登場する青年。
 その頭の上で、誇らしげに胸を張るリスの姿があった。
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