骸骨令嬢の恋×濃〇物語~奪って見せます、王太子っ!~

三木猫

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第一章 はつこい

第十一話 その再会、望んでませんっ!?

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パーティから戻って来て数日。
私は試練の書を一から読み直していた。
なんだかんだでね?毎年少しずつ七夕祭りとかでクリアして来たので、実は試練の書、一冊分位はクリアしてるんです。
…あと四冊分。以前はそれで諦めてましたよ。生涯でクリアし切れたら万々歳ー、みたいなね。
「でも、そうも言ってられないのですよっ。アレク様を公爵家に貰い受ける為には全てを完遂しなければならないのですっ!」
「おー」
「頑張って下さい。お嬢様っ」
リアンとマリンの応援もあり、私はペンと紙を持ち、まずは簡単にクリア出来そうな所をピックアップしていく。
「にしても…すっげぇ量だよなぁ、お嬢様の試練の書」
「?、そうなの?」
「今までに何度か他の公爵様の試練の書を拝見する事があったのですが、こんな太さでこんな冊数あるの見た事ありませんでした」
「あー…そう言われてみると、シトリンだって私の五分の一くらいだもんね」
「それでも多い方なんだぜ?」
「えーっ?そうなの?」
二人がコクコクと頷いている。って事は、どう考えてもあの神様のせいやんけ。次会った時は殴ろう。うん。
脳内で神様ボコり計画を組み立てつつも試練の書のページを捲ると、見た事のない文字が目に留まった。
「…?、試練444【紫の月を単独撃破】…?ねぇ、リアン」
「なんです?お嬢様」
「【紫の月】ってなぁに?」
「あのさぁ、お嬢様。博識のお嬢様が知らない事、おれが知る訳ないだろー?」
「私は全然博識じゃないって。マリンは知ってる?」
「い、いえ。私も始めて聞きました」
二人共知らないらしい。これは、調べる必要があるかもしれない。試練の他に詳細も書いてあるから、後で辞書と照らし合わせて調べてみよう。
でも今は、取りあえずピックアップした内容をクリアする為に出掛けよう。
「リアン、マリン。出掛けるよ~。場所は精霊の森前の川ね」
「りょ~かい。でも川なんて行って何するんだ?」
「勿論、試練のクリアを目指すのよ。今回は釣りですっ!全部で7種類の魚を釣り上げる必要があるんだよね。明日アレク様がいらっしゃるって言ってたし。美味しい魚料理を振る舞う為にも沢山釣って来なきゃっ!」
ドヤッと胸を張って宣言して部屋を飛び出す。
小さい時は体力が本当になくて、少し歩くだけで息切れ、風に負けて飛ばされる等々あったけど、牛を食べ続けたおかげか今はかなり体力がついて、ちょっとやそっとじゃ飛ばされなくなったし疲れなくなった。
「…ほんっと令嬢っぽくねーんだから、うちのお嬢様は」
「日除け対策もしっかり用意して行きましょうね」
リアンとマリンも私の後をしっかり付いて来てくれる。
外に出て馬舎へ行って、馬を借りてリアンの後ろに乗せて貰って川を目指す。
……ワンピースだけどスカートで跨って乗るのは、ヤバいかな…?
………ばれなきゃいっか。
背後からマリンの突き刺すような視線を感じるけどきっと気の所為だろう。うん。
川に辿り着いて。
いつもは浅瀬から川向こうの精霊の森に行くんだけど、今日の目的は釣りなので。
もう少し水位が深い所へ移動する。
岩がごろごろとした良い感じの釣りポイントを発見したので、早速現魔法を用いて釣竿を作る。
「さー!やるぞーっ!」
「お嬢様。餌は何使うんだ?」
「え?そこらでミミズ掘ろうよ。虫でも良いし。転がっている石退かしたらその位いるでしょ。あらよっと」
石を軽く動かし土を持った石で掘ると何の虫か解らないけど幼虫が顔を出した。お、これ使ったろ。
「きゃーっ!お嬢様っ、駄目ですっ!それだけは止めて下さいっ!」
「あっ、餌がっ」
マリンが石で折角掘った穴を埋めてしまった。
「マリンって虫駄目なんだっけ?」
「…おれが言うのもなんだけど、普通の女は嫌じゃねーの?虫」
「んー…虫は大事よ?勿論害虫もいるけど益虫ってのもいる訳だし?」
「それとこれと話は別なんだろ」
「リアンも苦手?」
「いや、そこまで苦手じゃねーけど。まぁ、それで釣った魚を食いたいって考えるとちょっと嫌だな」
むー…いつも朝食に出てくる魚とかはこうやって釣ってるだろうに…?
あーそっか。網か。なら虫使わないもんね。…どちらにせよ内臓とるんだから虫は残らないとは思うんだけど…マリンが卒倒しそうだし。
「仕方ない。疑似餌を作るか」
これも現魔法で前世で良く釣りをする時に使っていた疑似餌を作りだす。これも虫型、魚型とか色々あるんだけど…今回は魚型にしとこうかな。
疑似餌を糸にくくりつけて、せーいっ!
で、じっくりと待つ。
「…お嬢様。おれもやりてーな」
「え?やる?いいよ。ちょっと待ってね。今釣竿を」
作るね?と言おうとしたけれど、リアンは大丈夫と言ってそこらに落ちていた枝を拾い、その先にポケットから取り出した糸を括りつけて、私が複数作った疑似餌の一つを先に付けて並んで糸を川に垂らす。
マリンもこうなってしまえば私達が動かない事を知っているので、平らな場所にパラソルと敷物を敷いて、おやつの準備をしてくれたり、私の頭に大きな麦わら帽子を被せてくれたりと動いてくれた。
「やー…穏やかな時間だねー…」
「まー、そーだなー…」
「健康に日焼けしたくても、この体だと日焼けと言うか焼死体になりそうで怖いなー」
「お嬢様の発言の方が怖いわー」
リアンとマリンは公爵邸内にいる時は私と同じスクリー○顔になるけれど、外に出ると本来の顔に戻る。だから日に焼けたとしてもきっと問題なく私だけが焼死体になる、と。
「所でお嬢様?」
「んー?」
「おれ、パーティの日の事、謝りたくて」
「えー?謝るようなことあった?」
「お嬢様。その私も」
「マリンまで?えー?謝られるようなこと、あったかなー?」
二人がしょんぼりしてるから、そんな事あったかな?と必死に脳内を巡るけど、アレク様と出会えたからむしろ良い事しかなかったと思うんだけど…?
「…行きたくないって言った意味深く考えなかった」
「お嬢様は私達領民にとって、神様のような人だから。…何処に行っても同じ反応だと思って…」
「でも、まさか、あんな反応が、待ってるなんて思ってなかったんだ」
二人が増々しょんぼりして私は更に焦る。そんな事をここ数日ずっと気にしてたのっ!?
「ちょっとちょっと二人共っ。言ったでしょう?私あんなの慣れっこだって。二人は何も悪い事なんてしてないし言ってもいないのよっ?王族の誘いを断ってはいけないとマリンは当然の事を言った。ギリギリまで一緒に行ってやるってリアンも優しい事を言ってくれた。私は優しさしか貰ってないわ」
「お嬢様…」
「おれはお嬢様がたまに心配になるよ。優し過ぎて…」
「いやいやいやっ!二人共美化し過ぎっ!どこの世界に優しい令嬢が陛下と王子を取り合うのよ」
少し茶化しつつ言ったつもりが二人は「確かに」と神妙に頷いてしまった。それはそれで複雑なんですけど…。
「それに私からしたらリアンやマリンに限らずこの領で暮らす皆の方が心配になるよ。優し過ぎて。もう少しクレームの一つや二つ、あっても良い様なもんなのに」
「それこそ有り得ねーよ。なぁ、マリン」
「そうね、リアン。私達お嬢様の産まれたこの領に産まれる事が出来て本当に幸せなんです。この領ほど安全な領は見た事ないですもの。仕事はある、温かい家がある、空腹にならない、皆が優しい、もっともっとありますよ。そんな領本当はあり得ないんです」
マリンの力説にリアンも同意する。
「そっか。皆が幸せだと感じてるなら良かったよ。私も一層頑張らなきゃっ!だけど、今はアレク様を手に入れる為に頑張るんですっ!」
くいっくいっ、と釣り竿の先が引っ張られる感じがした。
すぐに私は竿を引き上げた。
ザパァンッ!
「おおおーっ!?」
水飛沫と一緒に30センチはありそうな魚が釣れたっ!
勢いよく釣り上げたから、魚は後ろへ飛び岩の上に落とされた。

「いでっ!?しかも、あっちぃっ!!なんだっ!?鉄板の上かっ!?」

……ん?
誰の声?
私が隣のリアンに視線を向けると、自分じゃないと首を振る。逆隣に立っていたマリンに視線を向けると彼女もまた首を振った。
え?じゃあ、誰?

「ぎゃあああああっ!!焼けるっ!!焼けるぅぅっ!!水っ、水をくれぇっ!!」

声は一体何処から聞こえるの?
耳を澄ませると…背後から声がする。

「っつーか、口も痛ぇーしっ!何だ、これっ!?」

……もしかして、アレ?
と無言で指さしてリアンに問いかけると、多分と頷かれる。
……釣り糸をコソコソと辿って、ソッとその先を覗くと、鯉がビチビチしていた。
で、止む事のない文句も鯉から聞こえていた。

「夢の中に痛覚あるってどーゆーことだよっ!!カコの呪いかっ!?葬式で笑ったの怒ったのかっ!?」

嫌な予感がする。
聞き覚えのある、馴染み過ぎた声。
これは…無視案件だっ!!
ズカズカと側に行って、その魚を鷲掴み持ちあげて、引っ掛かった釣り針をそのままに、そぉいっ!!と川に投げる。
「ぎゃああああああっ!!」
叫び声が聞こえるけど、気にしない。
私は何も見なかった。聞こえなかった。うん。
「……よしっ。さっ、気を取り直して魚を釣ろうっ」
新しい竿を作ろう、うん。
疑似餌を付けて、川に垂らす。すると今度は待たずにくいっくいっと竿が引っ張られ、思いっきり竿を引き上げるとっ。
「てめぇっ!投げ捨てやがったなっ!?」
また釣れた。
今度は後ろに飛ばない様に糸を直ぐに掴んだのが悪かった。
魚と互いの姿を確認し、

「「キモぉーーっ!?」」

同時に叫んだ。

「ムンクの叫びじゃねぇかあああああっ!!」
「人面魚に言われたくないわよ、ボケぇぇぇぇぇっ!!」

向き合い叫び合う。
だが実際キモイから仕方ない。鯉の頭の模様が人面に見えるから人面魚と言われるのは知ってる。
けど、鯉の頭が人の顔になっていたら誰だってキモイと思うでしょうよっ!
「もう一回捨ててやるぅぅぅぅっ!!」
「てめっ!!この俺様が必死こいて針外してもう一度食い付いてやったってのにっ!!」
「あー、うるさいうるさいっ!!このサルっ!!」
「あ?お前、今なんて…?」
「そぉいっ!!」
「ぎゃあああっ!!」
釣り上げた人面魚を再度川に投げる。
「リアン、マリン。今日は日が悪いわ。帰りましょう」
今すぐにっ!
そうっ、今日は日が悪いのよっ!
急ぎ帰り支度するのよっ!!
「お嬢様。さっき釣り上げたのってもしかして伝説の魚、ですか?」
「人の顔がある魚はとっても貴重なもので、神が宿っていると言われて」
「あれは神じゃないっ!断言するわっ!!神、じゃっ、ないっ!!」
むしろ悪魔の部類だわっ!!
はよ帰るのですよっ!!
「ちょっと待てって、お嬢様。せめて釣り竿は回収しないと。お嬢様の現魔法で出してんだから放置は危険だ」
リアンが私の捨てた竿を回収した、途端。
「てめぇっ!!そんななりしてっけど、さてはカコだなっ!?」
糸を咥えて態と釣り上げられた人面魚がこっちを睨みつけた。
じとー…。返事もせずただただ睨みつける。
「やっぱりカコだなっ!?その怒り方、昔っから変わらねぇっ!!」
「悪かったわね。変わらなくて。アンタはサルじゃなくて魚に転生したのね?サルの癖に」
「は?転生?何言ってんだ?俺は死んだ覚えねーぞ?」
「は?」
あー…埒があかない上に鬱陶しいしうるさい。…仕方ない。
「ちょっと、勝(まさる)。仕方ないからアンタを連れて帰ってあげるから、今すぐ私に七種類の魚を献上しなさい」
「……お前、俺が今魚になってるって解った上で同族を売れと」
「さっさとしなさいよ」
「うぐぐ…くっそぉぉぉっ!!」
人面魚が川へと戻る。
私は大きめなバケツを作りだし、中に水を入れて準備を済ませ、竿を持ち釣り糸を垂らした。
すると数分置きに魚がヒットし、七種類全ての魚を釣りあげることに成功した。
最後に人面魚を釣り上げて、違うバケツを用意して雑に放り込むと、色々用意してくれたマリンには悪いけれど、屋敷に帰る事にした。

家に戻り次第、魚はバケツごとシェフに渡して。
ついでに人面魚も渡そうとしたら全力で阻止されたので、仕方なく人面魚を持ったまま私は自室へ戻った。
リアンとマリンには人面魚が入れるような池を作る依頼を職人に頼む様に言って席を外して貰い、私はバケツを一番日の当たる所へと置いた。
「お前…嫌がらせが過ぎる」
「連れ帰っただけでも有難いと思いなさいよ。私聞き逃してないわよ?私が死んだ時笑ったんですって?アンタ」
椅子を窓際に持って来て、ドカッと座り頬杖をつく。
「いや、笑うだろ。牛糞に突っ込んで死んだんだぞ?」
「そうかもしれないけど、泣きなさいよ。幼馴染でしょうがっ」
「泣いたに決まってんだろっ!牛糞に突っ込んで死んだとか言われて腹抱えて笑いながら病院に行ったらお前の顔に白い布がかかってて。しかも発見が遅かったとかでお前腐ってたし…」
あれま。ホントに泣いてくれたらしい。
「……私だって本当はそんな死に方したくなかったんだけどね。まぁ、ちょっと聞きなさいよ。私の可哀想な話をさ」
私は人面魚に向かって、転生するまでのくだりを話した。
傍から見るとすっげーシュールな図だけどね。
全部話し終わると、人面魚の癖に懐かしい幼馴染の勝の顔を顰めさせた。
「なんだよ、それ…。んな理不尽な死に方あるかよっ!」
「全くだよねー。でもまー、今こうやって転生して楽しく生きてるからトントンって感じかなー」
「馬鹿言うなっ!お前が死んでから俺がどんだけ泣いたと思ってんだっ!」
「……サル…」
「全部冗談だと、お前がやった悪ふざけだって思ったのに、お前はドンだけ待っても帰ってこねーしっ!」
「……サル…。ごめんね。…全く信じられないわ、その台詞」
「はぁんっ!?」
「正直、アンタとは腐れ縁の幼馴染で。それ以上でもそれ以下でもない訳よ。アンタだってそうだったでしょ?」
「そっ…れは、まぁ、そうだけどよ…」
ごもごも口籠るんじゃないわよ。鬱陶しい。
「そもそも、そこまで言うなら私がいなくなった時点で探しに来なさいよねっ!墜落した瞬間だったら生きてたかもしれないのにっ!!」
「仕方ねーだろっ!お前が行方不明になった時俺は海外に行ってたんだよっ!」
「へぇー」
「昔から思ってたけど、お前もう少し俺に興味持てよっ!これでも俺モテてたんだぞっ!もっとこう、好意、的な何かはないのかよっ!」
「ないわね」
「あっさり過ぎる…」
魚ってダメージ受けると腹だして浮かぶのかー、知らんかったわー。
「って言うかさ。私の状況は大体説明したじゃない?私よりアンタはどうなのよ。私が死んだ後アンタはどうしたの?むしろアンタ死んだの?」
「死んでねーわ。まだ、な」
「まだ?死ぬ予定?じゃあ、何?転生してる訳じゃないの?」
「転生した覚えはねーなぁ。なんつーかこう、夢見てる気分だわ。何か、現実感はまるでないな」
「へぇー。意識だけこっちに来た、みたいな?」
「そもそも俺今七十九だぞ?」
「へ?七十九って何が?」
「歳」
「うっそぉー?アンタそんな年になってもまだそーゆー口調で話してる訳?成長したら?」
「馬鹿言うなっ。実際はこんな早く口回らねーってのっ!今は夢だからこうなってるだけだろ」
「はー、成程ねー」
現実感ないんだろうなー、多分。
それに意識だけこっちって言うなら、いずれあっちに引き戻される可能性のが高いだろうし。
「……鯉こくって美味しいんだっけ?」
「お前、俺様を食べる気か?」
「どうせなら、さっさとここから去った方が良いかと思って」
「やめろ。何か知らんけど、痛覚があるんだよ」
「……竜田揚げにする?」
「調理法の問題じゃねぇっ!」
「あー、うるさいうるさい」
「昔からお前それ言うけどなっ!言っとくがうるさくさせてるのお前だからなっ!!」
よし。面倒になってきたから、サルの相手はもうやめようっ。
「…お前、俺を無視する気満々だな…?もういい。何言ってもお前には無駄だって知ってるしな…。で?お前は何してるんだ?さっき言ってた試練の書、とか言う奴か?」
「そう」
「読み方と良い、お前ほんっと牛に縁があるよな」
「んー?どゆことー?」
「あ?お前気付いてねーの?お前の今の名前」
「フローライト?宝石の名前じゃん?」
「そっちじゃなくてリヴィローズの方。まんまリブロースだろ」
「!?」
「試練の書なんて、試練の読み方が【エー】でランクがつけられるんだろ?A5ランクとか肉のランク付けで定番じゃん。【祝福】はお中元、【奉納】はお歳暮。贈答品として牛肉は便利だよな~。精霊も牛なんだっけか?牛尽くしじゃんよ」
「!?!?!?」
「お前、気付かなかったのか?」
「…………いや、気付いてたよ。うん気付いてた。理解したくなかっただけで、気付いてたともさ…」
気付きたくなかったけど、転生した時点で怪しいとは思って…うぅぅ…。牛の糞で死んで、また牛とか考えたくないじゃんよ。前世で牛を育ててたから尚更さー。
「ま、まぁまぁ。お、覚えやすくていいじゃんよ。それより、その試練の書ってのは何が書いてあるんだ?」
「んー?まぁ、言葉通り試練が載ってるのよ。簡単な試練から滅茶苦茶難しい試練まで」
「へぇー。簡単な奴だと例えば?」
「簡単な奴で言うと、小指に指輪をはめるとか、髪をブラシで整えるとかだったよ」
「試練でも何でもねぇな。で?難しいので言えば?」
「林檎の収穫をする、とかかな」
「?、林檎の木見つけりゃいいんじゃねぇの?」
「この国に林檎がないんだよ~。他の大陸に行かないといけないわ」
「する事は簡単でもその過程がしんどいって奴か」
「それー」
「林檎の苗を輸送して貰うとか?」
「考えたんだけどねー。この世界の海ってまだ何があるのか解らないと言うか、基本が船旅でしょ?難しいんじゃないかな?って。苗が死んじゃう可能性もあるし」
「林檎自体の輸入はあるのか?」
「うん。林檎そのものは見たよ」
「成程なー。お前がいるこの公爵領に港はないのかよ」
「港、ねー。一応私達がいる領は地図で言う所の真ん中だからなー。一番の中心地に王都があって、その直ぐ隣。港は辺境伯達の管理下にあるんだよね」
「ってなるとまずはそこの交渉からか。それも面倒だな」
「うん。それに他の大陸でクリア出来そうなのってその一つだけじゃないし、結構あるんだよ。そう考えると私が直に出向いた方が早いんだよね」
「あー、確かになー」
…勝だと何気にする事なく普通に話せるのは楽で良いなぁ。
暫く勝と話していたら、何故か焦った父様とシトリンが現れて勝に跪いていた。
こんなのに跪く必要ないのにとシトリンに言うと、人面魚は伝説の魚で知恵の神とも呼ばれてる存在だと騒いでいた。
……サルが?
思いっきり怪訝な顔をしていたら、父様もシトリンも何かを察したのかバケツを持って庭に走ってしまった。
………鯉こくを作ろうとしたのバレたか…。
その後突貫工事が行われ、その日の内に我が家の庭に人面魚専用の池が作られた。結構立派な池をサルの為に作ったのかと思うととっても微妙だったけれど、まぁいっかと私は明日来るアレク様の為に調理場へ行く事に決めた。

翌日。
サルにおはようの返事をして部屋に戻って準備を整えて、アレク様到着まで試練の書を読んで待機していると。
コンコンとドアがノックされた。
どうぞーと返事を返すと、ドアが開かれそこにいたのは、
「お邪魔するよ、フローラ」
アレク様で。驚きのあまり椅子から転げた。
慌てて立ち上がり、スカートの埃を払って、駆け寄るとアレク様も片手を上げてお付きの人を下がらせて私の側まで来てくれた。
「お、お迎えしたかったのにっ」
「ははっ。俺は素のフローラが見たかったから。お出迎えは今度な」
そう言って手を広げてくれたから、私は遠慮も何もなく抱き付く。え?はしたない?気にすんな。
「所で真剣な顔で何を見てたんだ?」
「え?試練の書ですよ?」
「……は?」
「ん?」
あれ?どう言う反応、これ。
「ごめん。ちょっと見ても良い?」
別にアレク様に隠すような事一つもないから全然いいんだけどさ?
アレク様は私の肩を抱きながら机の側まで来ると、試練の書の一つを手に取り、パラパラと中を見る。
アレク様の表情が段々青くなっていくんだけど、なんで?
「アレク様?どうかしましたか?」
「もしかして、この五冊、全部試練の書?」
「はい」
「う、嘘だろう?俺と大差ないじゃないか」
「?、じゃあアレク様もこの太さの五冊あるんですか?」
「俺は六冊だ。兄さん達だって父上ですら四冊が最高数だ」
え?王族で、四冊?貴族が私よりも少ないってのはリアンとマリンが言っていたから知ってるけど、え?王族でも私以下なの?
……神様、ちょっと面貸せや…。
「待て、待ってくれ。フローラ」
「アレク様?」
「何故、こんな量があるって教えなかった?こんなに量があって父上との勝負に勝てる訳がない。いや、それよりも最初から知っていたら勝負なんてさせなかったっ」
お、落ち着き給えよっ、アレク様っ!
私まで動揺してしまって言葉がおかしくなってしまったじゃないか。
ガクガク揺さぶると、頭が転がり落ちそうで怖いから、勘弁して欲しいわ。
「待って。アレク様、落ち着いて。私、勝負に勝つつもり満々なのですが」
「だが、この量は一生かけたって」
「ふふふっ、安心なさってっ。何せ私もう一冊分はクリアしていますのっ!」
どやっ!!
アレク様の前で腰に手を当てて威張って見せる。
「そうは言っても…」
「それに、血縁のアレク様にこんな事を言うのはなんですが、私あのヘタレ王子とアホ王子に負ける気はしませんわっ」
更に威張って言うとアレク様はキョトンとした後、笑った。うんうん。これがアレク様よね。笑ってくれるのが嬉しいの。
「昨日も6つ程クリアしましたし。アレク様が協力してくれれば、今日も何個かクリア出来ますわ」
「俺が?何をしたらいいんだ?」
「まずはですね~」
私はアレク様の手を握って鏡台の前に連れて行く。棚からブラシを取り出してアレク様を鏡台の前の椅子に座らせる。
「フローラ?」
「試練1892に【好いた男性の髪を梳く】ってのがあるんですよ。アレク様、髪紐とりますね~」
「………随分、簡単な試練だな…」
「いやいや、これ結構難しい人には難しいですよ?幸い私はアレク様がいらっしゃいますけど、例えば同じ試練がヘタレ王子…もとい、オニキス王子にあればまず好きな人を探す所から始めなければいけませんし」
「……確かに」
三つ編みを解いて、黒くて綺麗な髪を梳いて行く。
……一つだけ言わせて頂く。

めっちゃ楽しいっ!!

やー、幸せだわー。楽しいわー。
「アレク様。何パターンか髪を結ってみても宜しいですか?」
「あ、あぁ。別に構わないが、試練はもうクリアしてるのに、続けるのか?」
「はいっ!」
「男の髪なんて触れて楽しいのか?」
「涎が出そうな程楽しいっ!!幸せっ!!」
「そ、そうか…」
まずはポニーテール。結い上げた姿も似合うと思うの。
実際上の方に結い上げたアレク様は涙が出そうな程カッコ良かった。
この麗しさを後世に残したい。残して家宝にしたいっ!
絵の具っ!?画家を呼ぶっ!?
いや、呼ぶ時間が惜しいっ。私が書くべきだっ!!
「アレク様っ!ここで少々、ほんの少々でよろしいのでお待ちくださいねっ!」
「あ、あぁ。どうした?」
「ちょっとっ、画材を取ってきますからーっ!」
画材は庭師がたまに絵を描いているから、恐らく庭師が管理しているはず。
よしっ、ショートカットだっ!
窓を開けて、飛び降りるっ!シュタっと着地っ!
池の横を横切る瞬間、サルに呼び止められた。
「何よっ!今は一秒を争うのよっ!」
「って言ってる時のお前は大抵どうでも良い事で急いでるんだよ。何してんだよ」
「アレク様の美しい姿を絵に描くのよっ!その為の画材をっ!」
「…は?お前馬鹿か?現魔法使ってカメラ作れば良くね?」
「………それ早く言えよ、サルっ!!」
流石に帰りは玄関から入り、ダッシュで自室へ戻る。
途中何度かドリフトかましたかもしれないが、そこはそれ。絨毯についた摩擦後は優秀な使用人の皆が直してくれるだろう。
中に駆け込むと、アレク様はまた笑ってくれたので、私は直ぐに現魔法を発動させてカメラを作った。
写真が直ぐに欲しいのでポラロイドカメラにした。
「アレク様、アレク様っ、こっち見てっ」
「うん?」
振り返った瞬間をパシャリッ。
光に驚いたようだったけれど、アレク様は目を閉じることなく、振り返ったその姿は見返り美人っ!
「ふおおおおお……やばいぃぃぃ…カッコいいぃぃぃ…」
現像され出て来た写真を見て私は崩れ落ちた。
「これは…絵か?」
私が頭上に掲げて拝む様に見ていた写真を背後から覗いたアレク様は驚いたように言った。
「精密な絵、ですね。原理はどうだっけ?日の光の反射がどうの…?詳しくは忘れちゃいました。それはそれとして、アレク様っ!」
「お、おう?」
「何パターンか撮りたいので、次の髪型にしましょうっ!」
ぐいぐいと彼の背中を押して椅子に座らせて、次の髪型を作っては写真を撮って。…え?何、この幸せな時間。
何枚か写真に撮ったけれど、やっぱりいつもの三つ編みが私は堪らなく好きみたいです。
…なので三つ編み姿の写真もバッチリ撮らせて頂きました。
後で額を発注しよう。なかったら作らせる。写真立ても。あー…コルクボードでもいいなぁ…。悩む…。
「……なぁ、フローラ」
「はい、なんですかっ?アレク様っ」
「その【かめら】って物を使えば、その絵が出てくるんだろう?」
「はい、そうですよ~」
「なら、その、俺にも一枚、くれないか?」
「勿論っ、良いですよっ!どの写真が良いですかっ!?私の一押しはこのツインテールにして照れてるアレク様なんですけど」
「いや、俺のじゃなくて。…俺はフローラの絵が欲しい」
「えっ!?私っ!?」
まさかの言葉にびっくりして思考停止してしまった。
いやだってさ。こんな骸骨女の写真、欲しいか?
動きも止まってしまったんだろう。固まった私を見てアレク様は苦笑しながら、私の手からカメラを取って、レンズを私の方へと向けた。
そうなってしまえば流石に我に返る。
「待って待ってっ!アレク様正気に戻ってっ!」
「ん?これってこのガラス塞いでも大丈夫なのか?」
「良くはない。指紋つくし駄目だけどもっ!それ以上に私は今この姿を残されるのが嫌っ!」
「?、何でだ?」
「何でも何もないっ!こんなムンク顔残されて堪るかぁぁ…」
ぐっしゃりと崩れ落ちそうになるのをぐっと堪えてアレク様の持っているカメラのレンズを手で隠す。
「俺のは撮ったじゃないか」
「うっ、それはそうですけど」
「しかも許可をとらずに撮ったよなぁ?」
「うぅぅ…そうですけど、そうですけどぉっ…。誰だって好きな男性の前では可愛い自分を見て欲しいって思うじゃないですかぁあーっ!」
スンスン泣いて縋る。
そんな私を見てアレク様は嬉しそうに笑い、そっと私の手を外して頭を撫でてくれた。
あ、理解してくれたかも、と油断した隙に、パシャリ。
「ッ!?」
「お、出て来た」
一枚撮られてしまった。しかもアレク様は満足そうにその写真を見て素早くポケットに仕舞ってしまった。
「な、なんて鮮やかな手付きぃ…酷いぃー…でも好きぃー…」
今度こそ私は崩れ落ちた。ダンジョンに置かれた骸骨とでも言えばいいさ。うぅぅ…。
「なぁ、フローラ」
「はい、なんですかぁ、アレク様ぁ…すんすん」
「これ、二人一緒に、とかは出来ないのか?」
二人一緒に…?
「出来ますよっ!」
キリッと立ち上がる。
一緒に写る?何それ、それは欲しい。
やりましょうっ。
自撮りする感じで、アレク様と顔をくっつけて、はいパシャッとね!
2人用だからもう一枚、パシャッとね。
出て来た写真の一枚をアレク様に渡して、もう一枚は私の机の上に。あぅぅー…アレク様の満面の笑みっ、尊いっ!横の骸骨はこの際ポイよっ。
「…うん。可愛いな。後でこれを飾れる額を俺も作らせよう」
ちょっ、アレク様が可愛いんやがっ!?
私夢にまで見た萌え死にが出来るかもしれない…。
なんだかんだで幸せな時間を過ごし、アレク様は時間になり帰られた。
私は早速木材を用意して貰って、のこぎり片手に写真立て作成に勤しんでいたのだが、ふとそう言えば解らない言葉があったなと思い出し、写真立てを作り終えてから書斎へと向かった。
「えーっと、確か【紫の月】だっけ?何で調べたら良いんだろう?試練の書には単独撃破って書いてたから、悪いモノ、モンスターとかそこらの括りかな~?とは思うんだけど」
悪しきモノとして記録に残されている本棚を一通り読んではみたものの、それらしき記述が載っているものを見つける事は出来なかった。
これは、私の認識が間違っているのかな?
……人に聞いた方が早いのかもしれない。
「お嬢様。お食事のお時間ですよ」
「はーい」
マリンが丁度良く呼びに来たので、食事の時にでも父様に聞いてみようと私は開いていた本を閉じた。

ダイニングへ着くと、そこにはまだ父様しかおらず、これはチャンスだと私はいそいそと席について、父様に訊ねた。
「父様。ちょっと教えて下さい」
「?、父様に解る事なら何でも教えるよ」
父様はにこにこと笑顔で答えてくれた事に安心しつつ、私は早速気になっていた事を聞いた。
「父様。【紫の月】と言うのをご存じですか?」
問うた瞬間父様から笑顔が消えた。
今までに見た事のない真剣な表情になり、私は聞いてはいけない事を聞いたのかと内心バクバクだ。
「……フローラ。それを一体何処で?」
「聞いたか、ですか?試練の書にそう書いてあったのです。【紫の月】を単独撃破せよと」
「ば、馬鹿なっ!!」
「わっ!?」
突然に机を叩くようにして立ち上がった父様の表情はもっと厳しいものに。
「あれ、を…フローラ独りで撃破だと?そんな事、させられる訳がないだろうっ!!」
父様がいつもの父様じゃない。
どうしたらいいのか解らずオロオロしていると、騒ぎを聞きつけた母様とシトリン、それからリアンとマリンが飛び込んで来た。
「どうしたの?二人共っ」
「姉様っ!どうしたのっ!?父様に何か言われたのっ!?父様は僕が説教しておくから元気出してっ!」
…うん。シトリン。父様に言われのない説教を繰り広げるのは止めたげて。
「取りあえず落ち着いて。一体何があったの?」
母様の言葉に落ち着きを取り戻した父様が椅子に腰を落とした。
「…カナリー。落ち着いて聞いてくれ。フローラの試練の書に【紫の月】の記述があったらしい」
「ええっ!?なんてことなのっ!?」
え?ちょっと待って?母様までこの反応なのっ!?
もしかして本当にヤバい代物なのかも…。
私はゴクリと唾を飲み、二人の次の言葉を待った。
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