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第三章 きょうこい
第三十話 俺が知ったもの
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真っ暗な闇の中。
ただただ漂っている。まるで暗闇の夢を見ているようだ。
腹に受けた衝撃や口の中の鉄の生臭さもない。
…死んだのか?
自分に問いかけるも当然俺が答えを持っているはずもなく何も返って来ない。
もしも、死んだのだとしたら…悔しい。志半ばで死ぬほど悔しい事はない。
(…ふぅん。自分の事だけなんだね)
また声が聞こえた。
いつもの声。それが今回は俺も死んでいる所為か悍ましさを感じる事はなかった。
だからその声に聞き返した。
「どう言う意味だ…?」
聞き返したものの答えは返って来ない。それどころか、
(何も知らない、無知なる者)
また意味の解らない言葉が飛んできた。この俺が無知、だとっ。
(自分の命だけが尊いと勘違いしている愚かな者)
言いたい事ばかり言いやがってっ。
「お前は一体誰だっ!こんな姑息な手を使ってないで正々堂々と俺に向かって来いっ!」
叫んだ。しかし俺の言葉に返って来たのは、
(そんな価値はない)
一言俺を蔑んだ言葉のみだった。
そんな価値はない、だと…?
外郭を統べる俺に価値が無い?
(全ては夢へ帰す。無知なる者は抗えず)
そう言って、声はもう聞こえる事はなかった。
こんな暗闇でしかも言いたい放題言われて、とにかくただただ悔しい。
大体何で俺は死んだはずなのにこんな意識がはっきりしているんだ。
そこまで思考が及んでから気付いた。
もしかして俺はまだ死んでいないのではないか、と。
体に、まぶたに力を込めて、開くと視界一杯に明かりが差し込んできた。
咄嗟に目を閉じて、明かりに慣れる様にゆっくりと目を馴染ませながら開く。
「やっと起きましたね。起こす手間が省けて何よりです」
「……トカイか」
体を起こし、トカイの声がする方を見て俺は驚きで動きを止めた。
何故、俺は執務室の中にいる?
窓から外を見ると見慣れた景色。だが、何故見慣れた景色がある?
見慣れた景色は破壊された筈だ。ウバに。
俺もだ。俺も外で背中から刺された筈だ。なのに怪我一つない。今あるのは机に突っ伏してついた腕の痕くらいだ。
「トカイ…。お前は無事だったのか?」
現状を少しでも把握しようと訊ねたのだが、トカイは眉間に皺を寄せ表情だけで【何言ってんだコイツ】と返して来た。
なんだ…?俺がおかしいのか?
「寝惚けてないで仕事して下さい。今日は会いに行かれるのでしょう?」
誰に…と言いかけて思い出す。リゼの事か。
ふとあの声を思い出す。
【そんな事、今してていいの?】
【…ふぅん。自分の事だけなんだね】
そうだ。あの時、俺はウバとの戦いにばかり気を取られていた。
すっかり意識の外へ飛ばしてしまっていた。
リゼの存在を…。
あの時の爆風、倒壊して行く建物の中で。いくらリゼが中央の人間と言えど生きてなどいられなかったはず。
俺は何故リゼを助けに行かなかった?思い出しもしなかった?
【何も知らない、無知なる者】
またあの声の言葉が脳裏を過る。
あれはどう言う意味だったんだ?
自分だけが戦っている気になって、その裏では最愛の女を殺したって意味なのだろうか?
むっつりと黙り込み考え込んでいると、どっさりと目の前に書類が置かれた。
「考え込んでもいいのですが、手は動かして下さい。ほら、待ってる奴らもいるんですから」
「チッ」
舌打ちをしてペンを持つ。言われた通りガリガリと書類にサインをしながらふと気付く。
「…おい。これ、この前承認しただろ。なんでもう一度提出させてんだ」
「え?それは失礼を」
俺はトカイに書類を渡すが、トカイは受け取った書類をもう一度読み首を傾げた。
「おかしいですね。これは今日提出された書類ですよ。ほら、ここにも日付が書いてあるでしょう?」
書類を戻されても、日付が書いてあるからこそ前の書類の証拠だろうと突っ返そうと思ったのだが、俺はある事に気付きその手をとどめた。
卓上の暦が俺の知っている日付よりも前になっている。
「おい、トカイ。今日は何日だ?」
「は?…若。いつまで寝惚けているんですか。そこに暦があるでしょう」
「……これは、間違いない、んだよな?」
「ないですね。私が毎朝責任もって変えてますので」
…待て。俺は一体どう受け止めたらいいんだ、この状況を。
「若。良いから仕事して下さい。待ってる奴ら、入れますよ」
トカイがドアを開けると、書類を持って決裁待ちの奴らがドッと執務室に入ってくる。
「若っ!決裁書類の確認お願いしますっ!」
「若。セイガンから使者が来ました」
何処かで聞いた言葉だ。
……あんまりこんな非現実的な事を考えたくはないのだが…もしかして、俺は時を逆行したのか?もしくは未来の夢を見ていた?
…どちらにせよ、俺が最後に見た光景の日より前に戻っているのは確かなようだ。
あの声は俺を【無知なる者】【愚かな者】と言った。要するに何にも知らない馬鹿がと侮られたのだ。
この【俺】に【馬鹿】だと…そんなの許せる訳あるかっ!
俺の何が無知だっ!何を知らないと言うっ!?
ガタンッと椅子を倒しながらも立ち上がる。
驚いている奴らもいるが気にしてられるか。
外へと足を向ける。
「あ、ちょっとっ、若、どこへっ?」
「気になる事がある。調べに行ってくる。今日の書類は机に積んで置け。帰って来次第片づける」
「あ、ちょおーっ」
トカイの言葉を無視して執務室を飛び出し、外へと出た。
俺が知らない事。
今知るべき事。
考えたが、今俺にとって一番気になって、俺が知らない事と言えば…中央都市ディリンカの事だろう。
今のディリンカがどう言う状況なのか。報告は貰ってはいるが、きっとそれだけでは解らない事もあるはず。
それにリゼもウバも中央の人間だ。中央に行けば何か解るかもしれん。
ならば行くしかないだろう。
砂漠越えなぞしたことはないが、部下を秘密裏に侵入させている隠し地下水路がある。そこを辿って行けば…。
地下水路を目指して走る。
そうして地下水路の入り口である貯水池に着いた。
いつ水不足になるか解らないナンエゴ大陸はこうして水を貯めるようにしている。
ザバザバと音を立てて流れて行く水を横目に今は水が止められている横穴へと躊躇いなく侵入する。
そこからはまるで迷路のように入り組んでいるが水路なんてそう言うものだろう。
脳内に地図は完璧に入っているから問題ない。
のんびりしている暇はない。駆け足で水路を進み水が流れていない所を選びながら目的地を目指す。
祝福の力を使い追い風を作りガンガンと進んで行く。
休まずにこのスピードで進めば、恐らく今日のリゼと会った時間までにはギリギリ中央の領地に入り込めるだろう。
暫く走り出口に到着する。
梯子を登り通路の蓋代わりにされている鉄の板をゴンゴンと手の甲で叩くと直ぐにそこは開いた。
「若っ!?」
驚いたように目を丸めた男は俺の部下でもあるシードルだった。俺の部下の中では最年少でサラマンダー(火蜥蜴)の祝福を持つ者でもある。サラマンダーは火竜と言われる事もあり忍び込むには最適な人物だったのだ。
「急に来て悪かったな」
「い、いえっ!それよりもどうかなされたのですかっ?」
突然現れた上司に焦っているのか鉄の板を持って右往左往している。
昔俺が拾って来た時と変わらない様子に笑ってしまうが、取りあえず落ち着かせた。
穴から出たのをシードルは確認してから鉄の板を置き、俺の次の言葉を待ち待機している。
「調べたい事が出来てな。シードル、ちょっとディリンカの中心部に行きたいんだが、何か手はあるか?」
「ありますよっ。最近懇意にしてくださる女性がいるんです。そろそろ来る頃なので頼んでみますねっ!」
胸を張って任せろと言うが、今何か聞き捨てならない事を言わなかったか?
そろそろ来る頃、だと?
「…シードル。お前この家の存在を教えている女がいるのか」
「へっ!?」
「お前の口ぶりだと何度もここを訪ねてくる、と言っているように聞こえるんだが?」
「あっ、しまったっ!」
慌てて口を塞いでももう遅い。
「こんの小僧は…。俺は言った筈だな?極力この場所の存在を教えるな、と」
小さい額に拳を当ててぐりぐりと押す。
「うわあんっ!ごめんなさいっ!若ぁーっ!」
「っとに。反省しろよ?これはお前の命を守る為に言ってるんだからな?お前はまだ十を越したばかりのガキだって自覚しろ」
コクコクと涙目で頷くシードルに苦笑しつつ手を離した。
「さて、それじゃあシードルの懇意にしている女とやらに連れて行って貰う為準備をするか。俺の服はあるな?」
「は、はいっ!」
俺のこの赤髪は目立つ。忍び込むには髪色を隠す必要がある。あと顔も。外郭都市の首領である俺の顔を中央の人間が知らない訳がない。
だから髪は青に染め、顔は仮面をつけるようにしている。服もローブに変えて…正直歩き辛いが仕方ないだろう。
武器もばれると面倒だから、短剣を背中に隠し持つ。
着替えが終わったと同時にドアがノックされた。
「はーいっ」
シードルが駆け寄りドアを開けた。そこにいた女に俺は動きを止めた。
そうだ…。何故、この可能性を考えなかったんだ…。
「いらっしゃい、リゼお姉ちゃんっ」
「お邪魔するね、セイロンくん」
そこにはニッコリと微笑むリゼの姿があった。因みにセイロンとはシードルの偽名だ。
「これ。少ないけどお菓子なの。良かったら食べて」
「わーいっ!ありがとうっ!リゼお姉ちゃんの買ってくれるお菓子は何でも美味しいから大好きっ!」
そう言って抱き付くシードルにもやっとするが、ここで怒鳴るのは大人げなさ過ぎるし、何より今の俺の存在がバレる訳にはいかないとグッと堪える。
「そ、それでね?実は、抜け道を、今日も、使わせて貰ってもいいかな…?」
「勿論いいよっ、って言いたい所なんだけど、ごめん。今日は僕のお願い聞いて欲しいんだ」
「お願い?」
首を傾げるリゼにシードルは大きく頷くと俺の方に駆け寄って来て俺の手を引いた。
「昔僕を助けてくれた恩人なんだ。訳あって顔を出せないんだけど…中央都市の中心に行きたいんだって。連れてってあげること、出来ないかな?」
「それは…」
「出来ない?駄目?」
上目使いでお願いするシードルのあざとさに少し育て方を間違えた感を否めない。
そしてリゼもまたそんなお願いを断れるような女じゃない。
「いいよっ。セイロンくんにはいつも無理を聞いて貰ってるからっ。今日は私が聞いてあげるねっ!」
「ありがとうっ!じゃあお願いしますっ!」
俺の代わりに頭を下げるシードルの横に立つとリゼはこっちよと行って歩きだした。
シードルの背をポンッと叩き、後でまた来る事を伝えるとリゼの後を追った。
シードルの家を出て、久しぶりに中央都市の中を歩いているが…ビックリするほど以前来た時と変わっていない。
外郭都市など一日一日で姿を変えて行くと言うのに…。
「さて。中心と言っても本当の中心部は山の上で、しかも王族が住まう場所だから行けないの。その一歩手前の周辺でも構わないかしら?」
声を出したら俺だとバレるだろうと静かに頷くことで返事を返す。
「解ったわ。それじゃあ行きましょう」
手を差し出され、俺はその手を握る。するとふわりと体が浮いた。
そのまま宙へと舞い上がり、俺はリゼに手を引かれるまま空を泳ぎ、あっという間に中央都市の中心に辿り着いてしまった。
ふわりと市場の裏手に降り立ち、リゼは俺の手を離した。
「ここで大丈夫かしら」
言われてまたコクリと頷き返事する。
「良かった。今回はこうやって飛んで来たけれど普通はあそこの水鏡の駅から飛ぶのが普通なの。使い方を教えるわ。付いて来て」
みずかがみのえき?
良く解らないが移動手段なのだろう。
それを教えて貰えるのはありがたい。俺はリゼの半歩後ろを付いて行く。
するとオーマの国で見た図書館のような建物が立っており、そこに人が吸い込まれるように入っては出て来ている。
真っ直ぐそこへ向かったリゼを追い建物の中に入ると、道が五方向へ別れていてそれぞれそのゲートとなる場所に人が立っていた。
「まずはあそこの切符販売所に行くの」
リゼが指さした場所は受付カウンターのような場所だ。そこへ進み立っている女に話かけた。
「15番地区への水鏡切符を一枚下さい」
「はい。かしこまりました。片道760テキですがよろしいですか?」
「はーい」
リゼが懐から財布を出そうとしているのを見て焦ってポケットから金を出して慌てて受付女に出した。
「え?私が出したのに」
冗談じゃない。女に金を出させるなんて、しかも俺の為の運賃だぞっ、出させてたまるかっ!
ぶんぶんと頭を横に振る。
「そーう?」
「はいこちら切符です」
「はーい」
俺の代わりに小さな紙を受け取ったリゼはそのままゲートの上の方にある掲示板を眺めた。
「えーっと、今日は3番ゲートかな?1番は故障中、と」
そう言って進むリゼを俺は慌てて止めた。
「え?なんで止めるの?帰り方解らないでしょ?」
声を出さずに会話するのは本当に不便だな。
けど声を出す訳には行かないし。だが、何も調べもしない内に帰ったら意味がない。
どうやってそれを伝えようか悩んでいると、リゼも何か俺の様子で悟ったようだ。
「あ、そっかっ。用事あるって言ってたもんねっ。それもやらずに帰ったって意味ないかっ」
そう。その通り。俺が頷くとリゼは笑った。
「じゃあ、この切符渡しておくね。上に掲示板があるでしょう?あれに自分が行きたい場所の番地区が表示されている番号のゲートに行って、そこに立っている人にその切符を渡すの。するとゲートが開いて奥に進めるから。進んだら中に水の張られた円状の床があるからその上に乗るの。すると行きたい番地の駅に着くよ。解った?」
そんな便利な物があるのか、と驚くよりも調査をさせているのにこんな事も知らなかった自分に呆れた。
確かにこれでは無知だと言われても仕方ないかも知れない。
はぁと溜息をつくと、突然外ががやがやと騒ぎだした。
一体何だと俺達が振り向くと、入口に何故かウバの姿があった。
「ヤバッ!?」
ヤバ?
隣を見るとリゼがあわあわと慌てだした。
そう言えば前もリゼはウバと言い争いをしていた。
「わ、私急用が出来ちゃったっ。ごめんっ、ここまででもいいかなっ?」
それは全然構わないので頷いたのだが。
俺が頷いたのを確認してリゼは駆け抜けて行ってしまった。
ざわめきが続き、人も増えて来た。このままだと俺も若干危険か?
とりあえずこの場を離れようと建物を出て街を歩いて見る事にする。
どこにどんな情報が転がっているか解らないから、聞き耳を立てつつ歩いていると。
「おい、見たか?明日の祭典で着る姫様の衣装」
「あぁ、見た。ウバ様が作った特製の衣装だろう?」
「やっぱり姫はウバ様と結ばれるのかねぇ?」
「そりゃそうだろ。幼い頃から一緒にお育ちになられたんだ」
あのウバは結構な立場の人間だったのか?
姫様…中央の…竜の姫?
上位権力者であるウバが直々に会いに…取り戻しに来た女がリゼ…?
だとするなら、リゼは…竜の姫、なのか?
あぁ、…俺はなんて無知だったんだ。
そして、何と幸運な男だろう。
俺がリゼを手に入れたのならば…この大陸の全てが俺の手中に収まるではないか。
惚れた女を手にしたら全てが手に入る。
こうなってくるとリゼと離れたのは失敗だった。
いや、そもそもこっちに来てリゼの存在を知れたのは正解だったが俺の選んだ女に間違いはなかったし作戦もそのまま結構すべきだった。
今度はリゼの返事を待たずに子を作ろう。
リゼに子が出来さえすれば、姫に子が出来てしまえばきっと中央の連中は襲っては来ないはず。
そうだ。きっとあのウバが攻めて来た時。あの時リゼはウバと決別していたがもしかしたらウバはリゼを中央に連れ去っていた可能性が高い。
今度は上手くやる。
リゼを俺の屋敷に連れ込んで抱き潰すまで愛でてやろう。
(……愚かな者。…そう、上手く行く訳ないのに)
声がしたが、気分が高ぶっている俺はいつも感じていた悍ましさを感じなかった。
だから気付かなかった。
俺の背後に刃が迫っていた事に。
暗転した、次の瞬間。
俺はまた、俺の執務室にいた―――。
ただただ漂っている。まるで暗闇の夢を見ているようだ。
腹に受けた衝撃や口の中の鉄の生臭さもない。
…死んだのか?
自分に問いかけるも当然俺が答えを持っているはずもなく何も返って来ない。
もしも、死んだのだとしたら…悔しい。志半ばで死ぬほど悔しい事はない。
(…ふぅん。自分の事だけなんだね)
また声が聞こえた。
いつもの声。それが今回は俺も死んでいる所為か悍ましさを感じる事はなかった。
だからその声に聞き返した。
「どう言う意味だ…?」
聞き返したものの答えは返って来ない。それどころか、
(何も知らない、無知なる者)
また意味の解らない言葉が飛んできた。この俺が無知、だとっ。
(自分の命だけが尊いと勘違いしている愚かな者)
言いたい事ばかり言いやがってっ。
「お前は一体誰だっ!こんな姑息な手を使ってないで正々堂々と俺に向かって来いっ!」
叫んだ。しかし俺の言葉に返って来たのは、
(そんな価値はない)
一言俺を蔑んだ言葉のみだった。
そんな価値はない、だと…?
外郭を統べる俺に価値が無い?
(全ては夢へ帰す。無知なる者は抗えず)
そう言って、声はもう聞こえる事はなかった。
こんな暗闇でしかも言いたい放題言われて、とにかくただただ悔しい。
大体何で俺は死んだはずなのにこんな意識がはっきりしているんだ。
そこまで思考が及んでから気付いた。
もしかして俺はまだ死んでいないのではないか、と。
体に、まぶたに力を込めて、開くと視界一杯に明かりが差し込んできた。
咄嗟に目を閉じて、明かりに慣れる様にゆっくりと目を馴染ませながら開く。
「やっと起きましたね。起こす手間が省けて何よりです」
「……トカイか」
体を起こし、トカイの声がする方を見て俺は驚きで動きを止めた。
何故、俺は執務室の中にいる?
窓から外を見ると見慣れた景色。だが、何故見慣れた景色がある?
見慣れた景色は破壊された筈だ。ウバに。
俺もだ。俺も外で背中から刺された筈だ。なのに怪我一つない。今あるのは机に突っ伏してついた腕の痕くらいだ。
「トカイ…。お前は無事だったのか?」
現状を少しでも把握しようと訊ねたのだが、トカイは眉間に皺を寄せ表情だけで【何言ってんだコイツ】と返して来た。
なんだ…?俺がおかしいのか?
「寝惚けてないで仕事して下さい。今日は会いに行かれるのでしょう?」
誰に…と言いかけて思い出す。リゼの事か。
ふとあの声を思い出す。
【そんな事、今してていいの?】
【…ふぅん。自分の事だけなんだね】
そうだ。あの時、俺はウバとの戦いにばかり気を取られていた。
すっかり意識の外へ飛ばしてしまっていた。
リゼの存在を…。
あの時の爆風、倒壊して行く建物の中で。いくらリゼが中央の人間と言えど生きてなどいられなかったはず。
俺は何故リゼを助けに行かなかった?思い出しもしなかった?
【何も知らない、無知なる者】
またあの声の言葉が脳裏を過る。
あれはどう言う意味だったんだ?
自分だけが戦っている気になって、その裏では最愛の女を殺したって意味なのだろうか?
むっつりと黙り込み考え込んでいると、どっさりと目の前に書類が置かれた。
「考え込んでもいいのですが、手は動かして下さい。ほら、待ってる奴らもいるんですから」
「チッ」
舌打ちをしてペンを持つ。言われた通りガリガリと書類にサインをしながらふと気付く。
「…おい。これ、この前承認しただろ。なんでもう一度提出させてんだ」
「え?それは失礼を」
俺はトカイに書類を渡すが、トカイは受け取った書類をもう一度読み首を傾げた。
「おかしいですね。これは今日提出された書類ですよ。ほら、ここにも日付が書いてあるでしょう?」
書類を戻されても、日付が書いてあるからこそ前の書類の証拠だろうと突っ返そうと思ったのだが、俺はある事に気付きその手をとどめた。
卓上の暦が俺の知っている日付よりも前になっている。
「おい、トカイ。今日は何日だ?」
「は?…若。いつまで寝惚けているんですか。そこに暦があるでしょう」
「……これは、間違いない、んだよな?」
「ないですね。私が毎朝責任もって変えてますので」
…待て。俺は一体どう受け止めたらいいんだ、この状況を。
「若。良いから仕事して下さい。待ってる奴ら、入れますよ」
トカイがドアを開けると、書類を持って決裁待ちの奴らがドッと執務室に入ってくる。
「若っ!決裁書類の確認お願いしますっ!」
「若。セイガンから使者が来ました」
何処かで聞いた言葉だ。
……あんまりこんな非現実的な事を考えたくはないのだが…もしかして、俺は時を逆行したのか?もしくは未来の夢を見ていた?
…どちらにせよ、俺が最後に見た光景の日より前に戻っているのは確かなようだ。
あの声は俺を【無知なる者】【愚かな者】と言った。要するに何にも知らない馬鹿がと侮られたのだ。
この【俺】に【馬鹿】だと…そんなの許せる訳あるかっ!
俺の何が無知だっ!何を知らないと言うっ!?
ガタンッと椅子を倒しながらも立ち上がる。
驚いている奴らもいるが気にしてられるか。
外へと足を向ける。
「あ、ちょっとっ、若、どこへっ?」
「気になる事がある。調べに行ってくる。今日の書類は机に積んで置け。帰って来次第片づける」
「あ、ちょおーっ」
トカイの言葉を無視して執務室を飛び出し、外へと出た。
俺が知らない事。
今知るべき事。
考えたが、今俺にとって一番気になって、俺が知らない事と言えば…中央都市ディリンカの事だろう。
今のディリンカがどう言う状況なのか。報告は貰ってはいるが、きっとそれだけでは解らない事もあるはず。
それにリゼもウバも中央の人間だ。中央に行けば何か解るかもしれん。
ならば行くしかないだろう。
砂漠越えなぞしたことはないが、部下を秘密裏に侵入させている隠し地下水路がある。そこを辿って行けば…。
地下水路を目指して走る。
そうして地下水路の入り口である貯水池に着いた。
いつ水不足になるか解らないナンエゴ大陸はこうして水を貯めるようにしている。
ザバザバと音を立てて流れて行く水を横目に今は水が止められている横穴へと躊躇いなく侵入する。
そこからはまるで迷路のように入り組んでいるが水路なんてそう言うものだろう。
脳内に地図は完璧に入っているから問題ない。
のんびりしている暇はない。駆け足で水路を進み水が流れていない所を選びながら目的地を目指す。
祝福の力を使い追い風を作りガンガンと進んで行く。
休まずにこのスピードで進めば、恐らく今日のリゼと会った時間までにはギリギリ中央の領地に入り込めるだろう。
暫く走り出口に到着する。
梯子を登り通路の蓋代わりにされている鉄の板をゴンゴンと手の甲で叩くと直ぐにそこは開いた。
「若っ!?」
驚いたように目を丸めた男は俺の部下でもあるシードルだった。俺の部下の中では最年少でサラマンダー(火蜥蜴)の祝福を持つ者でもある。サラマンダーは火竜と言われる事もあり忍び込むには最適な人物だったのだ。
「急に来て悪かったな」
「い、いえっ!それよりもどうかなされたのですかっ?」
突然現れた上司に焦っているのか鉄の板を持って右往左往している。
昔俺が拾って来た時と変わらない様子に笑ってしまうが、取りあえず落ち着かせた。
穴から出たのをシードルは確認してから鉄の板を置き、俺の次の言葉を待ち待機している。
「調べたい事が出来てな。シードル、ちょっとディリンカの中心部に行きたいんだが、何か手はあるか?」
「ありますよっ。最近懇意にしてくださる女性がいるんです。そろそろ来る頃なので頼んでみますねっ!」
胸を張って任せろと言うが、今何か聞き捨てならない事を言わなかったか?
そろそろ来る頃、だと?
「…シードル。お前この家の存在を教えている女がいるのか」
「へっ!?」
「お前の口ぶりだと何度もここを訪ねてくる、と言っているように聞こえるんだが?」
「あっ、しまったっ!」
慌てて口を塞いでももう遅い。
「こんの小僧は…。俺は言った筈だな?極力この場所の存在を教えるな、と」
小さい額に拳を当ててぐりぐりと押す。
「うわあんっ!ごめんなさいっ!若ぁーっ!」
「っとに。反省しろよ?これはお前の命を守る為に言ってるんだからな?お前はまだ十を越したばかりのガキだって自覚しろ」
コクコクと涙目で頷くシードルに苦笑しつつ手を離した。
「さて、それじゃあシードルの懇意にしている女とやらに連れて行って貰う為準備をするか。俺の服はあるな?」
「は、はいっ!」
俺のこの赤髪は目立つ。忍び込むには髪色を隠す必要がある。あと顔も。外郭都市の首領である俺の顔を中央の人間が知らない訳がない。
だから髪は青に染め、顔は仮面をつけるようにしている。服もローブに変えて…正直歩き辛いが仕方ないだろう。
武器もばれると面倒だから、短剣を背中に隠し持つ。
着替えが終わったと同時にドアがノックされた。
「はーいっ」
シードルが駆け寄りドアを開けた。そこにいた女に俺は動きを止めた。
そうだ…。何故、この可能性を考えなかったんだ…。
「いらっしゃい、リゼお姉ちゃんっ」
「お邪魔するね、セイロンくん」
そこにはニッコリと微笑むリゼの姿があった。因みにセイロンとはシードルの偽名だ。
「これ。少ないけどお菓子なの。良かったら食べて」
「わーいっ!ありがとうっ!リゼお姉ちゃんの買ってくれるお菓子は何でも美味しいから大好きっ!」
そう言って抱き付くシードルにもやっとするが、ここで怒鳴るのは大人げなさ過ぎるし、何より今の俺の存在がバレる訳にはいかないとグッと堪える。
「そ、それでね?実は、抜け道を、今日も、使わせて貰ってもいいかな…?」
「勿論いいよっ、って言いたい所なんだけど、ごめん。今日は僕のお願い聞いて欲しいんだ」
「お願い?」
首を傾げるリゼにシードルは大きく頷くと俺の方に駆け寄って来て俺の手を引いた。
「昔僕を助けてくれた恩人なんだ。訳あって顔を出せないんだけど…中央都市の中心に行きたいんだって。連れてってあげること、出来ないかな?」
「それは…」
「出来ない?駄目?」
上目使いでお願いするシードルのあざとさに少し育て方を間違えた感を否めない。
そしてリゼもまたそんなお願いを断れるような女じゃない。
「いいよっ。セイロンくんにはいつも無理を聞いて貰ってるからっ。今日は私が聞いてあげるねっ!」
「ありがとうっ!じゃあお願いしますっ!」
俺の代わりに頭を下げるシードルの横に立つとリゼはこっちよと行って歩きだした。
シードルの背をポンッと叩き、後でまた来る事を伝えるとリゼの後を追った。
シードルの家を出て、久しぶりに中央都市の中を歩いているが…ビックリするほど以前来た時と変わっていない。
外郭都市など一日一日で姿を変えて行くと言うのに…。
「さて。中心と言っても本当の中心部は山の上で、しかも王族が住まう場所だから行けないの。その一歩手前の周辺でも構わないかしら?」
声を出したら俺だとバレるだろうと静かに頷くことで返事を返す。
「解ったわ。それじゃあ行きましょう」
手を差し出され、俺はその手を握る。するとふわりと体が浮いた。
そのまま宙へと舞い上がり、俺はリゼに手を引かれるまま空を泳ぎ、あっという間に中央都市の中心に辿り着いてしまった。
ふわりと市場の裏手に降り立ち、リゼは俺の手を離した。
「ここで大丈夫かしら」
言われてまたコクリと頷き返事する。
「良かった。今回はこうやって飛んで来たけれど普通はあそこの水鏡の駅から飛ぶのが普通なの。使い方を教えるわ。付いて来て」
みずかがみのえき?
良く解らないが移動手段なのだろう。
それを教えて貰えるのはありがたい。俺はリゼの半歩後ろを付いて行く。
するとオーマの国で見た図書館のような建物が立っており、そこに人が吸い込まれるように入っては出て来ている。
真っ直ぐそこへ向かったリゼを追い建物の中に入ると、道が五方向へ別れていてそれぞれそのゲートとなる場所に人が立っていた。
「まずはあそこの切符販売所に行くの」
リゼが指さした場所は受付カウンターのような場所だ。そこへ進み立っている女に話かけた。
「15番地区への水鏡切符を一枚下さい」
「はい。かしこまりました。片道760テキですがよろしいですか?」
「はーい」
リゼが懐から財布を出そうとしているのを見て焦ってポケットから金を出して慌てて受付女に出した。
「え?私が出したのに」
冗談じゃない。女に金を出させるなんて、しかも俺の為の運賃だぞっ、出させてたまるかっ!
ぶんぶんと頭を横に振る。
「そーう?」
「はいこちら切符です」
「はーい」
俺の代わりに小さな紙を受け取ったリゼはそのままゲートの上の方にある掲示板を眺めた。
「えーっと、今日は3番ゲートかな?1番は故障中、と」
そう言って進むリゼを俺は慌てて止めた。
「え?なんで止めるの?帰り方解らないでしょ?」
声を出さずに会話するのは本当に不便だな。
けど声を出す訳には行かないし。だが、何も調べもしない内に帰ったら意味がない。
どうやってそれを伝えようか悩んでいると、リゼも何か俺の様子で悟ったようだ。
「あ、そっかっ。用事あるって言ってたもんねっ。それもやらずに帰ったって意味ないかっ」
そう。その通り。俺が頷くとリゼは笑った。
「じゃあ、この切符渡しておくね。上に掲示板があるでしょう?あれに自分が行きたい場所の番地区が表示されている番号のゲートに行って、そこに立っている人にその切符を渡すの。するとゲートが開いて奥に進めるから。進んだら中に水の張られた円状の床があるからその上に乗るの。すると行きたい番地の駅に着くよ。解った?」
そんな便利な物があるのか、と驚くよりも調査をさせているのにこんな事も知らなかった自分に呆れた。
確かにこれでは無知だと言われても仕方ないかも知れない。
はぁと溜息をつくと、突然外ががやがやと騒ぎだした。
一体何だと俺達が振り向くと、入口に何故かウバの姿があった。
「ヤバッ!?」
ヤバ?
隣を見るとリゼがあわあわと慌てだした。
そう言えば前もリゼはウバと言い争いをしていた。
「わ、私急用が出来ちゃったっ。ごめんっ、ここまででもいいかなっ?」
それは全然構わないので頷いたのだが。
俺が頷いたのを確認してリゼは駆け抜けて行ってしまった。
ざわめきが続き、人も増えて来た。このままだと俺も若干危険か?
とりあえずこの場を離れようと建物を出て街を歩いて見る事にする。
どこにどんな情報が転がっているか解らないから、聞き耳を立てつつ歩いていると。
「おい、見たか?明日の祭典で着る姫様の衣装」
「あぁ、見た。ウバ様が作った特製の衣装だろう?」
「やっぱり姫はウバ様と結ばれるのかねぇ?」
「そりゃそうだろ。幼い頃から一緒にお育ちになられたんだ」
あのウバは結構な立場の人間だったのか?
姫様…中央の…竜の姫?
上位権力者であるウバが直々に会いに…取り戻しに来た女がリゼ…?
だとするなら、リゼは…竜の姫、なのか?
あぁ、…俺はなんて無知だったんだ。
そして、何と幸運な男だろう。
俺がリゼを手に入れたのならば…この大陸の全てが俺の手中に収まるではないか。
惚れた女を手にしたら全てが手に入る。
こうなってくるとリゼと離れたのは失敗だった。
いや、そもそもこっちに来てリゼの存在を知れたのは正解だったが俺の選んだ女に間違いはなかったし作戦もそのまま結構すべきだった。
今度はリゼの返事を待たずに子を作ろう。
リゼに子が出来さえすれば、姫に子が出来てしまえばきっと中央の連中は襲っては来ないはず。
そうだ。きっとあのウバが攻めて来た時。あの時リゼはウバと決別していたがもしかしたらウバはリゼを中央に連れ去っていた可能性が高い。
今度は上手くやる。
リゼを俺の屋敷に連れ込んで抱き潰すまで愛でてやろう。
(……愚かな者。…そう、上手く行く訳ないのに)
声がしたが、気分が高ぶっている俺はいつも感じていた悍ましさを感じなかった。
だから気付かなかった。
俺の背後に刃が迫っていた事に。
暗転した、次の瞬間。
俺はまた、俺の執務室にいた―――。
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