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第三章 きょうこい
第三十三話 俺の手に入れたもの。
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目を覚まして、また執務室にいる事に盛大な溜息をついた。
前回はトカイを巻き込んでみたが、状況は変わらなかった。
流石にそろそろ抵抗して動き回るのにも疲れてきた…。
……もういっそ最初に戻って、仕事をしてリゼに会いに行ってみるか?
一度頭の中をリセットしたい。このまま同じ事を繰り返されて、その度に死んでいたらおかしくなる。
俺は執務室の机へと向かって書類の処理をしていく。
数分後トカイが現れたが、必要事項だけ会話して俺は執務室を出た。
外に出て、暫く歩いているとリゼが手を振って現れる。
リゼの事について知った事が多くなった俺は以前のようにリゼを受け入れる事は出来なくなっていた。
だがリゼに惚れている自分がいるのも事実で。
(それって、本当に惚れているって言うの…?)
頭の中に声が響いた。
無視をしようと思ったが、言葉の意味を考えて動きを止めた。
(相手の事を知っている気になっているだけ)
どう言う意味だ?
(本質的な事何も解ってない。…一生このままかもしれないね)
本質的な事?
何を言いたいのかさっぱり分からず聞き返すも声はもうしなかった。
あの声は、いつも思うが言い逃げだらけで腹が立ちっぱなしだっ!
うぐぐ…。
脳内にしか聞こえない声に怒鳴る訳にもいかず、なんとか腹立ちを飲みこむ。
「ヴィア?大丈夫?」
…そうだった。リゼが隣にいたんだった。
「何か悩みでもあるの?私で良かったら話して?頼りになるかは解らないけど」
心配そうに俺の顔を見上げるリゼに、俺は何でもないと首を振り笑って。
「いや。リゼと結婚したいなって思ってただけだ」
「えっ!?」
サラッと伝えただけでもリゼは顔を真っ赤にして驚いた。
その後、嬉しそうに「私も」とリゼは呟いた。
そう言えば、一番最初の時もリゼにこうして求婚したな…。
そうだ。そして俺はこう言ったんだ。
「リゼの両親に認めて貰う為に俺も頑張るからな」
と。今思えば無謀なセリフだった。何故なら俺を認めると言う事は中央を俺に引き渡すと言うのと同意語となるからだ。
今度は言わずにいるか?とそう思ったけれど…。
俺はあえて同じセリフをリゼに言った。するとリゼは瞳を瞬かせて、その瞳に決意を宿らせて大きく頷いた。
「うん。だよね。私も、頑張るねっ。ヴィアとの為にっ」
あの時聞いた同じセリフを俺に向かって返したのだ。
リゼも、頑張る…?
その言葉がどこか引っかかる。
リゼは俺の為に何を頑張ってくれていたのだろうか、と。
本質的な事は何も解っていない…。
もしかして、あの声はその事を言っていたのだろうか?
「ヴィアっ!今日は何処に行く?」
嬉しそうなリゼが俺の腕に抱き付き笑う。
リゼは何か他にも隠している事がある…?
だとしたらそれを知りたい。
俺はいつもの様にリゼとデートをして、リゼを思う存分抱いて堪能したあと、別れた後中央へ戻るであろうリゼを追った。
リゼは月明かりだけが照らす街中を歩き、シードルが管理している地下水路を抜けて中央へと戻って行く。
突然現れた俺に驚くシードルの口止めをして、お忍び用ローブを借りて羽織ると急ぎリゼの後を追う。
リゼに教わった移動手段を駆使して、どうにかリゼの後を追う事に成功した。
恐らく中央の中心部に辿り着いたんだろう。
リゼにばれないように後を追っていると、リゼは中央へ向かえば向かう程背が伸ばされ動作が洗練されていく。
「姫さまー」
「姫たまー」
リゼの周りに幼いガキ等が集まる。
そんなガキ等にリゼは淑やかに微笑み、
「皆、良い子にしていましたか…?」
まるで別人のように話しかける。
そっと膝を折り、ガキの汚れた顔を白いハンカチで拭いてまた穏やかに笑う。
「姫さま。今日もえっと…あいしてるに会いに行ってきたの?」
「ちがうよー。あいしてるひと、に、会いに行ったんだよね?」
「あ、そっか。あいしてるひと、だった」
「いとおしいひと、なんだよね?」
「いと、おしい…?」
ガキ共の言葉に俺は隠れていながらも笑ってしまった。
リゼは俺に会いに来ていた。愛している、愛おしい俺に。
喜びで頬が歪みそうになり慌てて手で隠して、リゼの様子をみてみると。
リゼは幸せそうに微笑み、頷いた。
「うん。会って来たよ。私の愛している人に。例え…この愛が叶う事が、ないとしても…」
「姫さま?」
俯いたリゼの顔を覗き込むガキ共に、心配させまいとリゼは笑みを浮かべた。
「…ううん。違う。そうじゃない。あの人も頑張るって言ってくれた。私も頑張るって決めたんだっ!認めて貰おうってっ!」
突然に声を張り上げたリゼにガキ共は一瞬驚きながらも「頑張ろー!おー!」と拳を突き上げた。
それに勇気を得たのかリゼも大きく頷いて拳を突き上げて「おー!」と叫んだ。
そのままリゼはガキ共と別れて大きな建物…神殿の中へと入って行った。
流石に敵地の中心部へ単身乗り込むことは出来ず、俺はシードルの所へ引き返す。
そしてその日から毎日、俺はリゼがいるであろう神殿周辺へと通った。
リゼは毎日神殿の外に出て来ては、外郭都市との休戦状況をなくそう、和平交渉をすべきだと住民の説得を始めた。
「外郭に住む人はもう悪い人達ではないんです。あの人達が悪人だった時代は終わりました。今は絶対に解り合える時代になっているはずですっ!」
最初は何をしているのか、理解出来なかった。けれど。
「中央都市が今こうして暮らしていけるのは、外郭都市が様々なものを他大陸と交渉し仕入れてくれているからです。私達は引きこもり、外郭を恨み、外郭から奪い取るだけ。先住民である事が、そんなに偉いものなのでしょうかっ?」
こうしてリゼが、中央の…竜の姫であるリゼが外郭を認めている。
その事実が俺を奮い立たせた。
惚れた女がここまでしているんだ。
俺だけがここで手を拱いている場合じゃない。
急ぎ外郭都市に戻り、俺は中央都市との交渉の準備を進めた。
部下達に言うと訝しむだろう。これは俺個人で進めるべきだ。
そして、交渉の準備が整った時。俺は自分から中央へ赴きリゼに会う事を決めた。
とは言え流石に堂々と正面から行けば追い返される事は解っている。
地下水路を経由して、俺は神殿の側へと向かった。リゼを観察する為に通い続けた所為かもうすっかり慣れた道だ。
神殿の玄関通路にある柱の影に隠れてリゼが現れるのを待っていると、二つの足音が聞こえた。
「リゼっ!いい加減にしなさいっ!」
「嫌よっ!絶対に絶対に諦めたりしないんだからっ!」
「リゼっ!!」
早足で進むリゼにあっという間に追い付くウバ。
ウバはリゼの腕を掴み自分の胸へと引き寄せた。
「本当に貴女は手のかかる人だ」
「ちょっ、離してっ!私はヴィアが好きなのっ!愛しているのっ!」
「……私は貴女を幼い時から知っている。貴女がびっくりするほど頑固者だって事もね。そして貴女も知っている筈だ。私が欲しいものを得る為には手段を選ばないと言う事を」
「んっ!?」
ウバの唇がリゼの唇を奪った。
息をするのも許さないとでも言うように、強引な口づけにリゼは必死に抵抗をする。
……ここで出て行くのはまずい。それは理解していた。
けれど、…惚れた女が目の前で手を出されている。それを眺めているだけなんて出来るはずもない。
落ちていた石ころを持ち、ウバに目掛けて投げつけていた。
気付き避けたウバはリゼから距離を取らざるを得なくなり、その隙を突いてリゼに駆け寄り腕の中に収めた。
その時にフードは落ちたけれど、気にするほどの事じゃない。
「ヴィ、ア…?」
「よぉ、リゼ。堂々と浮気してたな?」
からかうように言ったはずなのに、リゼは何故か嬉しそうに頬をほころばせ俺に抱き付いた。
「ヴィアっ、ヴィアっ!!」
「ちょっと待ってろな…ん」
一先ずは上書き。リゼの唇に噛み付くようにキスをして舌を押し込んで口内を味わう。
良い感じにとろけた顔を見て満足した俺は、リゼの唇を解放してその額にキスをした。
「貴方は…何故ここにいる」
真っ向から俺を睨みつけるウバをこちらも真っ向から睨み返す。
「決まっているだろ。俺が欲している全ての物を手に入れる為だ」
「ヴィア…」
「リゼ。お前は俺の女だな?」
「うん」
リゼが躊躇なく頷く。その躊躇いのなさがウバの眉間に皺を寄せた。
「なら、これから俺がする事も許せよ?」
笑いながら言って、口の中に即効性の睡眠薬を含み、
「え?」
驚くリゼの唇を再度塞ぐ。口の中の薬を強引にリゼに嚥下させた。
「…ヴィ、ア…?」
閉じる瞼に抵抗させないように、その瞼にキスをする。
直ぐに眠りに落ちたリゼを抱き上げて、俺はウバを見て口角を上げた。
「さぁ、交渉と行こうじゃないか」
「交渉だと?」
「そうだ。お前達の大事な姫は今俺が飲ませた薬によって眠っている。この薬は解毒薬を飲ませないと死ぬまで眠り続けると言う毒薬だ」
「なっ!?貴様っ!!」
…本当はただの睡眠薬だ。しかもそんなに強い薬じゃない。恐らく一時間もすれば目を覚ますだろう。
「解毒薬が欲しければ、今すぐにこの書類にサインをしろ」
ポンッと丸めた書類をウバに向かって放った。
警戒しつつそれを受け取ったウバは書類を見て目を見開いた。
「中央を外郭に、吸収だとっ!?」
ぐしゃっと書類が握られた。
「こんなものっ、私の一存でサイン出来る訳がないっ!」
「なら、姫はお前が殺す事になるな」
「くっ…」
「せめて少しぐらい時間を寄越せっ!!」
「……三十分だ。これで偉いさんと話しをつけろ」
ウバは神殿の中に走って行った。
それを見送り俺は抱いていたリゼの額にキスをする。
日影に座るか…。
まだ朝とは言えどナンエゴは太陽光が厳しいからな。
近くにある建物の屋根の下に入り座りこむ。胡坐をかいた足の上にリゼを横に抱き、そっと髪を寄せて頬にキスをする。
「相変わらず、気持ちよさそうに寝てるな、お前…」
リゼの寝顔、好きなんだよな…。
敵地のど真ん中。
だと言うのにリゼを抱いているからか、緊張感があまりない。
そよそよと感じる柔らかな風をあびつつ、俺はウバが来るのを待った。
そうして三十分になる、少し前にウバは現れた。
ポンと投げられた書類を広げるとそこにはしっかりとサインが書かれている。…リゼの名前とハンコ…?
「どう言う事だ?」
リゼは姫に過ぎない筈だ。両親…王達がいるはずだ。
「今、実質上中央を統治しているのはリゼだ。リゼが人質に取られた今リゼの名前で代筆するしかない。ハンコは間違いなく中央を統べる者のみが引き継ぐ印だ」
「成程」
「さぁ、リゼを返して貰おう」
立ち上がる前にリゼにキスをして解毒薬を飲ませるふりをする。自分の体で覆いかぶさるようにしてこっそりと彼女の胸の谷間に四つ折りにした小さな紙を挟んだ。
そのままリゼを抱き上げて立ち上がりウバに渡した。
「…解毒薬は飲ませた。目を覚ますには少し時間がかかる」
それだけ伝えて俺は一気に駆け抜けた。
追っ手を仕掛けられたら流石にヤバいからだ。
建物の隙間をぬうように複雑な逃走をしつつ俺は一気に外郭まで逃げた。
その際に暫くは危険だろうとシードルも連れ帰った。
シードルと共に外郭都市に逃げ返り、帰宅する。
帰って直ぐにトカイにサイン入りの書類を金庫に入れる様に指示を出しどうにか一息ついた。
あとはリゼが目を覚まし俺の書いたメモに気付いてさえくれれば完璧だ。
欲しいモノが今全て手に入る寸前だと言う事実に気分が高揚する。
死神が出てくる気配もない。
リゼがいてくれるだけでこんなにも全てが上手く行くなんて。
「…帰って来てからずっとニヤニヤと。気持ち悪いですね。そもそもあの書類は一体なんなんですか?」
「…まぁ、少し待て。リゼを明日ここに連れて来る。その時に全て種明かしをする」
「全く。若はいつも詰めが甘い。重々気を付けて下さいね」
詰めが甘いってどう言う事だ。
問い質したくもあるが、今は上機嫌だからそれも良しとする。
それから俺はトカイが持って来た書類を片付けて今日の仕事を終わらせ、晩飯をちょっと豪勢にさせて部下達に振る舞い寝酒代わりのワインを持って寝室へと向かった。
窓の外の月明かりを見ながらのワイン。
しかももう少しで俺の欲した物全てが手に入る。何度もその事を実感して笑みが浮かぶ。
…確かにこれは少し気持ち悪いかもしれない。
少し頭を冷やすか。
ワイングラスをテーブルに置き、俺は寝室の窓を開けてひらりと外に出た。
窓の外には階下の窓の屋根がある。そこを足場にトントンッとリズムよく下へと降りる。
地上に着地して、そのまま今日は何となく広大なものを見たくて砂漠へと足を向けた。
都市を抜け、砂漠へと続く洞窟トンネルを出ると夜の砂漠へと辿り着く。
夜の砂漠は寒い。薄着で来る場所ではないが、俺はキマイラの祝福持ちな所為か寒さにも暑さにも強い。
ぼんやりと星空を一面砂の海の中で見上げる。
そんな夜空を眺めていると、突然星とは違う明かりが何個も上空に現れた。
それが自分の横に落ちて来た事により、その明かりが何かに気付く。
これは…火矢だ。
何故こんな矢がここに…。
砂に刺さった為火は消えたが…一体何がっ。
空を見上げ一体何が起こっているのか確認を急ぐ。
すると闇夜に紛れ、誰かが空を舞っている事に気付いた。
目を凝らし、その姿が誰か気付いた瞬間に俺は叫んでいた。
「リゼっ!!」
俺の声に気付いたリゼはこっちを見て、急降下してきた。
「ヴィアっ!ヴィアっ!!」
降りて来たリゼを抱き止める。
「どうしたっ、何があったっ!?」
リゼは泣いていた。
何かが起きたのは間違いない。けれどそれを話せるだけの冷静さはないようだ。
一旦、連れ帰ろう。
リゼの背に腕を回したその時。
「ッ!?」
リゼの体が大きく跳ねた。
まるで痛みに耐える様な…まさかっ!?
ぐっと胸に抱き寄せ、リゼの背中を覗き込む。そこには罪紋(ざいもん)が焼きつけられていた。
「リゼ、お前、これっ…」
罪紋は犯罪を犯した者に焼き印される中央都市の刑罰だ。
中央都市は教会が中心の都市なだけあり、戒律に厳しい印象がある。外郭ではその程度厳重注意でいいだろうと言う事ですら焼き印を押され中央を追放される。外郭はそんな人間も良く受け入れて来た。
そんな罪紋がリゼの背中にある。
となると、導き出される答えはただ一つ。
リゼは追放されたのだ。もう、竜の姫ではなくなったと言う事。
なんてことだ…。
リゼが追放されたとなれば…。
―――中央都市が手に入らないっ!
…トカイの言った通り、俺は詰めが甘かったようだ。
俺の手から力が失せる。
もう一度、作戦の練り直しだ。
やっと手に入ると思っていた俺の望みがまた一からに。
「裏切者めっ!そこの外郭の薄汚い男と共に死ねぇっ!!」
「ヴィアっ!!」
気付くのが遅かった。
リゼが逸早く動いて。
俺を押し倒しその体全てで俺を守った。
無数の矢がリゼの背に刺さる。
深く突き刺さった矢はリゼから力を失わせ、血を吐き出させた。
「……リゼ…?」
俺の上に覆いかぶさりそのまま動かないリゼの顔を覗く。
目は開いていたものの…輝きは無く。
「…死んだ、のか…?リゼ…」
体がぴくりとも動かない。
今まで何度も何度も同じ時間を繰り返してきた中で。
俺が死ぬ事があってもリゼが死ぬ事はなかった…。
頭が上手く働かない。
「…やったか。これで中央と外郭の一体化はなくなった。外郭と一つになるなぞ、悍ましい…。さて、早く帰って新たな姫をたてねば」
あぁ、そうだ。
リゼが、竜の姫がいなくなったんだ。
今、中央には頭がいない。
リゼを利用出来なくなった今、俺が欲している物を手に入れる為には…今、動くしかないっ!
リゼの体を横に寄せて、俺は急ぎ帰り寝ているトカイや部下達を叩き起こし、全軍率いて中央へと奇襲をかけた。
その戦いは外郭の圧倒的な勝利で幕を閉じた。
こうして俺はナンエゴ大陸のトップの座を収めたのだ。
前回はトカイを巻き込んでみたが、状況は変わらなかった。
流石にそろそろ抵抗して動き回るのにも疲れてきた…。
……もういっそ最初に戻って、仕事をしてリゼに会いに行ってみるか?
一度頭の中をリセットしたい。このまま同じ事を繰り返されて、その度に死んでいたらおかしくなる。
俺は執務室の机へと向かって書類の処理をしていく。
数分後トカイが現れたが、必要事項だけ会話して俺は執務室を出た。
外に出て、暫く歩いているとリゼが手を振って現れる。
リゼの事について知った事が多くなった俺は以前のようにリゼを受け入れる事は出来なくなっていた。
だがリゼに惚れている自分がいるのも事実で。
(それって、本当に惚れているって言うの…?)
頭の中に声が響いた。
無視をしようと思ったが、言葉の意味を考えて動きを止めた。
(相手の事を知っている気になっているだけ)
どう言う意味だ?
(本質的な事何も解ってない。…一生このままかもしれないね)
本質的な事?
何を言いたいのかさっぱり分からず聞き返すも声はもうしなかった。
あの声は、いつも思うが言い逃げだらけで腹が立ちっぱなしだっ!
うぐぐ…。
脳内にしか聞こえない声に怒鳴る訳にもいかず、なんとか腹立ちを飲みこむ。
「ヴィア?大丈夫?」
…そうだった。リゼが隣にいたんだった。
「何か悩みでもあるの?私で良かったら話して?頼りになるかは解らないけど」
心配そうに俺の顔を見上げるリゼに、俺は何でもないと首を振り笑って。
「いや。リゼと結婚したいなって思ってただけだ」
「えっ!?」
サラッと伝えただけでもリゼは顔を真っ赤にして驚いた。
その後、嬉しそうに「私も」とリゼは呟いた。
そう言えば、一番最初の時もリゼにこうして求婚したな…。
そうだ。そして俺はこう言ったんだ。
「リゼの両親に認めて貰う為に俺も頑張るからな」
と。今思えば無謀なセリフだった。何故なら俺を認めると言う事は中央を俺に引き渡すと言うのと同意語となるからだ。
今度は言わずにいるか?とそう思ったけれど…。
俺はあえて同じセリフをリゼに言った。するとリゼは瞳を瞬かせて、その瞳に決意を宿らせて大きく頷いた。
「うん。だよね。私も、頑張るねっ。ヴィアとの為にっ」
あの時聞いた同じセリフを俺に向かって返したのだ。
リゼも、頑張る…?
その言葉がどこか引っかかる。
リゼは俺の為に何を頑張ってくれていたのだろうか、と。
本質的な事は何も解っていない…。
もしかして、あの声はその事を言っていたのだろうか?
「ヴィアっ!今日は何処に行く?」
嬉しそうなリゼが俺の腕に抱き付き笑う。
リゼは何か他にも隠している事がある…?
だとしたらそれを知りたい。
俺はいつもの様にリゼとデートをして、リゼを思う存分抱いて堪能したあと、別れた後中央へ戻るであろうリゼを追った。
リゼは月明かりだけが照らす街中を歩き、シードルが管理している地下水路を抜けて中央へと戻って行く。
突然現れた俺に驚くシードルの口止めをして、お忍び用ローブを借りて羽織ると急ぎリゼの後を追う。
リゼに教わった移動手段を駆使して、どうにかリゼの後を追う事に成功した。
恐らく中央の中心部に辿り着いたんだろう。
リゼにばれないように後を追っていると、リゼは中央へ向かえば向かう程背が伸ばされ動作が洗練されていく。
「姫さまー」
「姫たまー」
リゼの周りに幼いガキ等が集まる。
そんなガキ等にリゼは淑やかに微笑み、
「皆、良い子にしていましたか…?」
まるで別人のように話しかける。
そっと膝を折り、ガキの汚れた顔を白いハンカチで拭いてまた穏やかに笑う。
「姫さま。今日もえっと…あいしてるに会いに行ってきたの?」
「ちがうよー。あいしてるひと、に、会いに行ったんだよね?」
「あ、そっか。あいしてるひと、だった」
「いとおしいひと、なんだよね?」
「いと、おしい…?」
ガキ共の言葉に俺は隠れていながらも笑ってしまった。
リゼは俺に会いに来ていた。愛している、愛おしい俺に。
喜びで頬が歪みそうになり慌てて手で隠して、リゼの様子をみてみると。
リゼは幸せそうに微笑み、頷いた。
「うん。会って来たよ。私の愛している人に。例え…この愛が叶う事が、ないとしても…」
「姫さま?」
俯いたリゼの顔を覗き込むガキ共に、心配させまいとリゼは笑みを浮かべた。
「…ううん。違う。そうじゃない。あの人も頑張るって言ってくれた。私も頑張るって決めたんだっ!認めて貰おうってっ!」
突然に声を張り上げたリゼにガキ共は一瞬驚きながらも「頑張ろー!おー!」と拳を突き上げた。
それに勇気を得たのかリゼも大きく頷いて拳を突き上げて「おー!」と叫んだ。
そのままリゼはガキ共と別れて大きな建物…神殿の中へと入って行った。
流石に敵地の中心部へ単身乗り込むことは出来ず、俺はシードルの所へ引き返す。
そしてその日から毎日、俺はリゼがいるであろう神殿周辺へと通った。
リゼは毎日神殿の外に出て来ては、外郭都市との休戦状況をなくそう、和平交渉をすべきだと住民の説得を始めた。
「外郭に住む人はもう悪い人達ではないんです。あの人達が悪人だった時代は終わりました。今は絶対に解り合える時代になっているはずですっ!」
最初は何をしているのか、理解出来なかった。けれど。
「中央都市が今こうして暮らしていけるのは、外郭都市が様々なものを他大陸と交渉し仕入れてくれているからです。私達は引きこもり、外郭を恨み、外郭から奪い取るだけ。先住民である事が、そんなに偉いものなのでしょうかっ?」
こうしてリゼが、中央の…竜の姫であるリゼが外郭を認めている。
その事実が俺を奮い立たせた。
惚れた女がここまでしているんだ。
俺だけがここで手を拱いている場合じゃない。
急ぎ外郭都市に戻り、俺は中央都市との交渉の準備を進めた。
部下達に言うと訝しむだろう。これは俺個人で進めるべきだ。
そして、交渉の準備が整った時。俺は自分から中央へ赴きリゼに会う事を決めた。
とは言え流石に堂々と正面から行けば追い返される事は解っている。
地下水路を経由して、俺は神殿の側へと向かった。リゼを観察する為に通い続けた所為かもうすっかり慣れた道だ。
神殿の玄関通路にある柱の影に隠れてリゼが現れるのを待っていると、二つの足音が聞こえた。
「リゼっ!いい加減にしなさいっ!」
「嫌よっ!絶対に絶対に諦めたりしないんだからっ!」
「リゼっ!!」
早足で進むリゼにあっという間に追い付くウバ。
ウバはリゼの腕を掴み自分の胸へと引き寄せた。
「本当に貴女は手のかかる人だ」
「ちょっ、離してっ!私はヴィアが好きなのっ!愛しているのっ!」
「……私は貴女を幼い時から知っている。貴女がびっくりするほど頑固者だって事もね。そして貴女も知っている筈だ。私が欲しいものを得る為には手段を選ばないと言う事を」
「んっ!?」
ウバの唇がリゼの唇を奪った。
息をするのも許さないとでも言うように、強引な口づけにリゼは必死に抵抗をする。
……ここで出て行くのはまずい。それは理解していた。
けれど、…惚れた女が目の前で手を出されている。それを眺めているだけなんて出来るはずもない。
落ちていた石ころを持ち、ウバに目掛けて投げつけていた。
気付き避けたウバはリゼから距離を取らざるを得なくなり、その隙を突いてリゼに駆け寄り腕の中に収めた。
その時にフードは落ちたけれど、気にするほどの事じゃない。
「ヴィ、ア…?」
「よぉ、リゼ。堂々と浮気してたな?」
からかうように言ったはずなのに、リゼは何故か嬉しそうに頬をほころばせ俺に抱き付いた。
「ヴィアっ、ヴィアっ!!」
「ちょっと待ってろな…ん」
一先ずは上書き。リゼの唇に噛み付くようにキスをして舌を押し込んで口内を味わう。
良い感じにとろけた顔を見て満足した俺は、リゼの唇を解放してその額にキスをした。
「貴方は…何故ここにいる」
真っ向から俺を睨みつけるウバをこちらも真っ向から睨み返す。
「決まっているだろ。俺が欲している全ての物を手に入れる為だ」
「ヴィア…」
「リゼ。お前は俺の女だな?」
「うん」
リゼが躊躇なく頷く。その躊躇いのなさがウバの眉間に皺を寄せた。
「なら、これから俺がする事も許せよ?」
笑いながら言って、口の中に即効性の睡眠薬を含み、
「え?」
驚くリゼの唇を再度塞ぐ。口の中の薬を強引にリゼに嚥下させた。
「…ヴィ、ア…?」
閉じる瞼に抵抗させないように、その瞼にキスをする。
直ぐに眠りに落ちたリゼを抱き上げて、俺はウバを見て口角を上げた。
「さぁ、交渉と行こうじゃないか」
「交渉だと?」
「そうだ。お前達の大事な姫は今俺が飲ませた薬によって眠っている。この薬は解毒薬を飲ませないと死ぬまで眠り続けると言う毒薬だ」
「なっ!?貴様っ!!」
…本当はただの睡眠薬だ。しかもそんなに強い薬じゃない。恐らく一時間もすれば目を覚ますだろう。
「解毒薬が欲しければ、今すぐにこの書類にサインをしろ」
ポンッと丸めた書類をウバに向かって放った。
警戒しつつそれを受け取ったウバは書類を見て目を見開いた。
「中央を外郭に、吸収だとっ!?」
ぐしゃっと書類が握られた。
「こんなものっ、私の一存でサイン出来る訳がないっ!」
「なら、姫はお前が殺す事になるな」
「くっ…」
「せめて少しぐらい時間を寄越せっ!!」
「……三十分だ。これで偉いさんと話しをつけろ」
ウバは神殿の中に走って行った。
それを見送り俺は抱いていたリゼの額にキスをする。
日影に座るか…。
まだ朝とは言えどナンエゴは太陽光が厳しいからな。
近くにある建物の屋根の下に入り座りこむ。胡坐をかいた足の上にリゼを横に抱き、そっと髪を寄せて頬にキスをする。
「相変わらず、気持ちよさそうに寝てるな、お前…」
リゼの寝顔、好きなんだよな…。
敵地のど真ん中。
だと言うのにリゼを抱いているからか、緊張感があまりない。
そよそよと感じる柔らかな風をあびつつ、俺はウバが来るのを待った。
そうして三十分になる、少し前にウバは現れた。
ポンと投げられた書類を広げるとそこにはしっかりとサインが書かれている。…リゼの名前とハンコ…?
「どう言う事だ?」
リゼは姫に過ぎない筈だ。両親…王達がいるはずだ。
「今、実質上中央を統治しているのはリゼだ。リゼが人質に取られた今リゼの名前で代筆するしかない。ハンコは間違いなく中央を統べる者のみが引き継ぐ印だ」
「成程」
「さぁ、リゼを返して貰おう」
立ち上がる前にリゼにキスをして解毒薬を飲ませるふりをする。自分の体で覆いかぶさるようにしてこっそりと彼女の胸の谷間に四つ折りにした小さな紙を挟んだ。
そのままリゼを抱き上げて立ち上がりウバに渡した。
「…解毒薬は飲ませた。目を覚ますには少し時間がかかる」
それだけ伝えて俺は一気に駆け抜けた。
追っ手を仕掛けられたら流石にヤバいからだ。
建物の隙間をぬうように複雑な逃走をしつつ俺は一気に外郭まで逃げた。
その際に暫くは危険だろうとシードルも連れ帰った。
シードルと共に外郭都市に逃げ返り、帰宅する。
帰って直ぐにトカイにサイン入りの書類を金庫に入れる様に指示を出しどうにか一息ついた。
あとはリゼが目を覚まし俺の書いたメモに気付いてさえくれれば完璧だ。
欲しいモノが今全て手に入る寸前だと言う事実に気分が高揚する。
死神が出てくる気配もない。
リゼがいてくれるだけでこんなにも全てが上手く行くなんて。
「…帰って来てからずっとニヤニヤと。気持ち悪いですね。そもそもあの書類は一体なんなんですか?」
「…まぁ、少し待て。リゼを明日ここに連れて来る。その時に全て種明かしをする」
「全く。若はいつも詰めが甘い。重々気を付けて下さいね」
詰めが甘いってどう言う事だ。
問い質したくもあるが、今は上機嫌だからそれも良しとする。
それから俺はトカイが持って来た書類を片付けて今日の仕事を終わらせ、晩飯をちょっと豪勢にさせて部下達に振る舞い寝酒代わりのワインを持って寝室へと向かった。
窓の外の月明かりを見ながらのワイン。
しかももう少しで俺の欲した物全てが手に入る。何度もその事を実感して笑みが浮かぶ。
…確かにこれは少し気持ち悪いかもしれない。
少し頭を冷やすか。
ワイングラスをテーブルに置き、俺は寝室の窓を開けてひらりと外に出た。
窓の外には階下の窓の屋根がある。そこを足場にトントンッとリズムよく下へと降りる。
地上に着地して、そのまま今日は何となく広大なものを見たくて砂漠へと足を向けた。
都市を抜け、砂漠へと続く洞窟トンネルを出ると夜の砂漠へと辿り着く。
夜の砂漠は寒い。薄着で来る場所ではないが、俺はキマイラの祝福持ちな所為か寒さにも暑さにも強い。
ぼんやりと星空を一面砂の海の中で見上げる。
そんな夜空を眺めていると、突然星とは違う明かりが何個も上空に現れた。
それが自分の横に落ちて来た事により、その明かりが何かに気付く。
これは…火矢だ。
何故こんな矢がここに…。
砂に刺さった為火は消えたが…一体何がっ。
空を見上げ一体何が起こっているのか確認を急ぐ。
すると闇夜に紛れ、誰かが空を舞っている事に気付いた。
目を凝らし、その姿が誰か気付いた瞬間に俺は叫んでいた。
「リゼっ!!」
俺の声に気付いたリゼはこっちを見て、急降下してきた。
「ヴィアっ!ヴィアっ!!」
降りて来たリゼを抱き止める。
「どうしたっ、何があったっ!?」
リゼは泣いていた。
何かが起きたのは間違いない。けれどそれを話せるだけの冷静さはないようだ。
一旦、連れ帰ろう。
リゼの背に腕を回したその時。
「ッ!?」
リゼの体が大きく跳ねた。
まるで痛みに耐える様な…まさかっ!?
ぐっと胸に抱き寄せ、リゼの背中を覗き込む。そこには罪紋(ざいもん)が焼きつけられていた。
「リゼ、お前、これっ…」
罪紋は犯罪を犯した者に焼き印される中央都市の刑罰だ。
中央都市は教会が中心の都市なだけあり、戒律に厳しい印象がある。外郭ではその程度厳重注意でいいだろうと言う事ですら焼き印を押され中央を追放される。外郭はそんな人間も良く受け入れて来た。
そんな罪紋がリゼの背中にある。
となると、導き出される答えはただ一つ。
リゼは追放されたのだ。もう、竜の姫ではなくなったと言う事。
なんてことだ…。
リゼが追放されたとなれば…。
―――中央都市が手に入らないっ!
…トカイの言った通り、俺は詰めが甘かったようだ。
俺の手から力が失せる。
もう一度、作戦の練り直しだ。
やっと手に入ると思っていた俺の望みがまた一からに。
「裏切者めっ!そこの外郭の薄汚い男と共に死ねぇっ!!」
「ヴィアっ!!」
気付くのが遅かった。
リゼが逸早く動いて。
俺を押し倒しその体全てで俺を守った。
無数の矢がリゼの背に刺さる。
深く突き刺さった矢はリゼから力を失わせ、血を吐き出させた。
「……リゼ…?」
俺の上に覆いかぶさりそのまま動かないリゼの顔を覗く。
目は開いていたものの…輝きは無く。
「…死んだ、のか…?リゼ…」
体がぴくりとも動かない。
今まで何度も何度も同じ時間を繰り返してきた中で。
俺が死ぬ事があってもリゼが死ぬ事はなかった…。
頭が上手く働かない。
「…やったか。これで中央と外郭の一体化はなくなった。外郭と一つになるなぞ、悍ましい…。さて、早く帰って新たな姫をたてねば」
あぁ、そうだ。
リゼが、竜の姫がいなくなったんだ。
今、中央には頭がいない。
リゼを利用出来なくなった今、俺が欲している物を手に入れる為には…今、動くしかないっ!
リゼの体を横に寄せて、俺は急ぎ帰り寝ているトカイや部下達を叩き起こし、全軍率いて中央へと奇襲をかけた。
その戦いは外郭の圧倒的な勝利で幕を閉じた。
こうして俺はナンエゴ大陸のトップの座を収めたのだ。
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