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全てを失った少女

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 私はつい先程まで親友の南と遊んでいた。

 最近学校の近くに美味しいと有名なケーキ屋さんが出来た。なんて話を南から聞いてしまったから、甘いものに目がない私たちは早速放課後そのケーキ屋さんに寄った。

お店の看板メニューはチョコレートケーキ。高校生の私たちからしたらちょっとお高めだったけれど、やはり値段が張るだけあって絶品だ。見た目はシンプルなチョコレートケーキなのに、クリームは甘すぎず上品な味わいで、シロップがよく染み込んだスポンジと相性が最高だった。

それで帰り道、南とまた来ようねなんて話をしていたのに、それなのに私は今、横断歩道の真ん中でぶっ倒れている。頭からはどろどろと血が流れ出ていて、意識が朦朧とする。朦朧とした中にも痛みだけはきちんとあって、そんなぐちゃぐちゃな感覚に吐きそうだった。

なんでこんな事になったんだっけ。

だって私はついさっきまで南と美味しいケーキを食べて、中身なんてなんにも無かったけど色んな話をしてすごく幸せだったのに。

⋯⋯ああ、そうだ。
南と別れた後、大きな交差点で信号待ちをしていた私を目掛けてトラックが突っ込んできて、私は何も出来ずに吹っ飛ばされたんだった。

私、死んじゃうのかもしれない。

そんな悪い予感が頭の中で巡る。こんな事だったらもっと、人生楽しんでおけば良かった。もし、今日死ぬなんて事がわかっていたとしたら⋯⋯ああ、昨日買おうとして結局やめたスニーカー買えばよかったな。一日しか履く事が出来なかったとしても、今日一日は幸せな気持ちでいられたのに。

お父さんとお母さんにももう会えないのかな。
悲しんでほしくないな。

「ごめんね⋯⋯」

薄れゆく意識の中で、後悔だけが頭の中に残っていた。













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