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番外編
4.山本家の父
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ぎゅうぎゅうだ。
そんなぎゅうぎゅう感が温かい家。
「すみません、俺までお呼ばれしちゃって」
「大介の彼氏さんなんだから、遠慮は要らないわ」
僕・榎本修治と、親友の立川純は、山本素喜君のお家に招待されている。夕飯を一緒に食べましょう、とお誘いを受けたからだ。
大介は帰郷していないので、合計七人での夕食になる。兄弟が多い山本家では、普段からぎゅうぎゅうだ。それが僕と純で高密度化している。
「美春は純兄ちゃんのお膝が良い~!」
「うん、おいで、美春ちゃん」
大介が大好きな美春は、僕よりも純に懐いている。ちょっと寂しいぞ、と思っていると、三男・好一がにこにこしながらご飯をよそってくれた。
頭を撫でてやるとくすぐったそうに笑ってくれる。山本家の男達の中で、一番素直なのが好一だ。
「さあさ。食べましょう!」
パフッと手を叩いた温和なお母さんの一言で、僕達は一斉に食べ始めた。久しぶりの賑やかな食事に笑いが絶えない。お母さんのお手伝いをする長女・美雪は、テキパキと醤油やドレッシングを取ってくれる。
隣の素喜君はにこにこと笑いながら、兄弟達を見つめていて。
僕もご飯を口に運びながら、温かい家だな~としみじみ思った。
そしてずっと、気になっていたことを聞いてみた。
「山本家のお父さんって、どんな方だったんですか?」
少しだけ美春を気にしながら聞けば、彼女は純にエビフライを食べさせてもらっているところだった。純もチラリと顔を上げ、興味深そうに山本家母を見つめている。
母・美子始め、山本家はしみじみ呟いた。
「大介よ」
「兄ちゃん」
「大介お兄ちゃんだね」
「大介兄ちゃん!」
「おっきい兄ちゃん!」
と。
「……はい?」
僕も純も首を傾げた。
「兄ちゃんそっくりだったんだ。写真あるよ、見る?」
素喜君が立ち上がり、大きなアルバムを持ってきてくれる。そこには、大介と若い母・美子が仲睦まじく映っている。
ただ、身長はお父さんの方が少しだけ低いようだった。純と同じくらいか。顔立ちは今の大介にそっくりで。お母さんも今より痩せている。
「へ~、あいつ、もろお父さんですね」
「そうなのよね~。ぜんっぜんタイプじゃなかったんだけどね~」
お母さんはほうっと溜息をついている。クスクス笑った美雪が腰をつついている。
「お母さん、イケメンよりお笑いの人が好きだったんだって」
「そうなのよ。ちょっとこう、崩れてる感じの人が好みだったんだけどね~」
思い出を語るお母さん。ちょっと遠い目をしながら教えてくれた。
山本家のお父さん山本守は、今の大介同様、女の子にもてていた。でもなかなかこれだ、と思える人に出会えなかったらしい。
告白はたくさんされても、皆、同じに見えた。アルバイト先でも、まるで動物園の檻に入れられた動物達のように、女の子に囲まれていた。
彼女は欲しい。
でも、疲れていた。
そんな時、美子は疲れていた守にお茶のペットボトルを一本買ってあげたらしい。あまりにもくたびれていたから。
『君も僕と付き合いたいの?』
そう聞かれた美子は。
『私、イケメンってタイプじゃないから。あなたはタイプじゃないから安心して。例えるならそうね、パグ犬みたいな人がすっごく好き!』
と答えた。
そしてカラカラ笑って立ち去った。
守は衝撃を受けたらしい。
その後も、美子は守に対して全く普通で。お友達として接した。
守の顔を平気でペシッと叩くし、一緒にご飯に行こうと誘われてもサラリと交わした。
美子はその頃、追い掛けているお笑い芸人さんが居て、そちらに夢中だったから。
今までどんな女の子でも、誘えば必ずついてきた守にとって、美子の存在はとても眩しく映ったらしい。
「あの人ったらしつこいのよ~。行かないって言ってるのに、映画のチケットとってきて。しかもセンスないの! 恋愛物よ? 私が見たいのはお笑いなのにね~」
そう、お母さんは笑っている。僕も純も、噴き出すのを必死に堪えた。お父さんはきっと、自分を意識して欲しくて恋愛物の映画にしたのに。
チケットを買ってこられたため、しぶしぶデートに行ったらしい。退屈な恋愛映画で、美子は熟睡してしまった。終わった頃、肩を揺さぶられて起きた美子は、間近に迫ってきた守の顔に驚いてひっぱたいたと言う。
いきなりキスされそうになった美子は怒り、映画館を駆け出した。慌てた守も追い掛けてきて。
しつこいと叫んだ美子は、守を振り切るのに必死で、目の前を歩いていた不良に気付かなかった。金髪に染めていた不良にぶつかった美子は、すぐに絡まれてしまった。
ぶつかったことを謝っても、骨が折れたと騒いで慰謝料を出せとせびられた。どうしたら良いのだろうと思っていた美子の肩を引いたのは、守だった。
「あの時は素直に感心したわ~。この人、結構良い人だって、思ったものよ」
そう、語ったお母さん。
前に進み出た守は、自分よりも年下の不良達に頭を下げた。
けれど、ニヤニヤ笑った不良達は、謝る守の顔を殴りつけた。一歩よろめいた守は、これでぶつかった事とあいこですね、と言って、美子を連れて帰ろうとしたけれど。
調子づいた不良達は、なおも掴みかかろうとした。お金を巻き上げようとしている事は、美子にも分かっていたから。警察をと思っている間に、不良の一人が吹っ飛んでいく。
あれ、と見た時には、二人目が倒れていて。
三人目が腰を抜かして座り込んだところで、守はパンパンッと手を叩いて埃を払っていた。
『あんま調子こくなよ? この人に手ぇ出してみろ、んなもんじゃすまねぇからな』
静かだったけれど、迫力はあった。不良達は呆然とし、美子もまたポカーンと見つめてしまった。
一発だけ殴られたのは、美子がぶつかったことに対する謝罪のためだったと理解した。本来なら、この人は殴られるような人ではなかった。
そのことに気付き、切れていた守の唇を見て申し訳ない気持ちでいっぱいになった。ハンカチを取り出すと、唇に当ててあげた。
素直にごめんなさいと言った美子に、守は笑ってくれた。
『やっと見てくれた。嬉しいな』
そう言って、ちょっと腫れた唇で笑った顔が、可愛く思えた。
そんなぎゅうぎゅう感が温かい家。
「すみません、俺までお呼ばれしちゃって」
「大介の彼氏さんなんだから、遠慮は要らないわ」
僕・榎本修治と、親友の立川純は、山本素喜君のお家に招待されている。夕飯を一緒に食べましょう、とお誘いを受けたからだ。
大介は帰郷していないので、合計七人での夕食になる。兄弟が多い山本家では、普段からぎゅうぎゅうだ。それが僕と純で高密度化している。
「美春は純兄ちゃんのお膝が良い~!」
「うん、おいで、美春ちゃん」
大介が大好きな美春は、僕よりも純に懐いている。ちょっと寂しいぞ、と思っていると、三男・好一がにこにこしながらご飯をよそってくれた。
頭を撫でてやるとくすぐったそうに笑ってくれる。山本家の男達の中で、一番素直なのが好一だ。
「さあさ。食べましょう!」
パフッと手を叩いた温和なお母さんの一言で、僕達は一斉に食べ始めた。久しぶりの賑やかな食事に笑いが絶えない。お母さんのお手伝いをする長女・美雪は、テキパキと醤油やドレッシングを取ってくれる。
隣の素喜君はにこにこと笑いながら、兄弟達を見つめていて。
僕もご飯を口に運びながら、温かい家だな~としみじみ思った。
そしてずっと、気になっていたことを聞いてみた。
「山本家のお父さんって、どんな方だったんですか?」
少しだけ美春を気にしながら聞けば、彼女は純にエビフライを食べさせてもらっているところだった。純もチラリと顔を上げ、興味深そうに山本家母を見つめている。
母・美子始め、山本家はしみじみ呟いた。
「大介よ」
「兄ちゃん」
「大介お兄ちゃんだね」
「大介兄ちゃん!」
「おっきい兄ちゃん!」
と。
「……はい?」
僕も純も首を傾げた。
「兄ちゃんそっくりだったんだ。写真あるよ、見る?」
素喜君が立ち上がり、大きなアルバムを持ってきてくれる。そこには、大介と若い母・美子が仲睦まじく映っている。
ただ、身長はお父さんの方が少しだけ低いようだった。純と同じくらいか。顔立ちは今の大介にそっくりで。お母さんも今より痩せている。
「へ~、あいつ、もろお父さんですね」
「そうなのよね~。ぜんっぜんタイプじゃなかったんだけどね~」
お母さんはほうっと溜息をついている。クスクス笑った美雪が腰をつついている。
「お母さん、イケメンよりお笑いの人が好きだったんだって」
「そうなのよ。ちょっとこう、崩れてる感じの人が好みだったんだけどね~」
思い出を語るお母さん。ちょっと遠い目をしながら教えてくれた。
山本家のお父さん山本守は、今の大介同様、女の子にもてていた。でもなかなかこれだ、と思える人に出会えなかったらしい。
告白はたくさんされても、皆、同じに見えた。アルバイト先でも、まるで動物園の檻に入れられた動物達のように、女の子に囲まれていた。
彼女は欲しい。
でも、疲れていた。
そんな時、美子は疲れていた守にお茶のペットボトルを一本買ってあげたらしい。あまりにもくたびれていたから。
『君も僕と付き合いたいの?』
そう聞かれた美子は。
『私、イケメンってタイプじゃないから。あなたはタイプじゃないから安心して。例えるならそうね、パグ犬みたいな人がすっごく好き!』
と答えた。
そしてカラカラ笑って立ち去った。
守は衝撃を受けたらしい。
その後も、美子は守に対して全く普通で。お友達として接した。
守の顔を平気でペシッと叩くし、一緒にご飯に行こうと誘われてもサラリと交わした。
美子はその頃、追い掛けているお笑い芸人さんが居て、そちらに夢中だったから。
今までどんな女の子でも、誘えば必ずついてきた守にとって、美子の存在はとても眩しく映ったらしい。
「あの人ったらしつこいのよ~。行かないって言ってるのに、映画のチケットとってきて。しかもセンスないの! 恋愛物よ? 私が見たいのはお笑いなのにね~」
そう、お母さんは笑っている。僕も純も、噴き出すのを必死に堪えた。お父さんはきっと、自分を意識して欲しくて恋愛物の映画にしたのに。
チケットを買ってこられたため、しぶしぶデートに行ったらしい。退屈な恋愛映画で、美子は熟睡してしまった。終わった頃、肩を揺さぶられて起きた美子は、間近に迫ってきた守の顔に驚いてひっぱたいたと言う。
いきなりキスされそうになった美子は怒り、映画館を駆け出した。慌てた守も追い掛けてきて。
しつこいと叫んだ美子は、守を振り切るのに必死で、目の前を歩いていた不良に気付かなかった。金髪に染めていた不良にぶつかった美子は、すぐに絡まれてしまった。
ぶつかったことを謝っても、骨が折れたと騒いで慰謝料を出せとせびられた。どうしたら良いのだろうと思っていた美子の肩を引いたのは、守だった。
「あの時は素直に感心したわ~。この人、結構良い人だって、思ったものよ」
そう、語ったお母さん。
前に進み出た守は、自分よりも年下の不良達に頭を下げた。
けれど、ニヤニヤ笑った不良達は、謝る守の顔を殴りつけた。一歩よろめいた守は、これでぶつかった事とあいこですね、と言って、美子を連れて帰ろうとしたけれど。
調子づいた不良達は、なおも掴みかかろうとした。お金を巻き上げようとしている事は、美子にも分かっていたから。警察をと思っている間に、不良の一人が吹っ飛んでいく。
あれ、と見た時には、二人目が倒れていて。
三人目が腰を抜かして座り込んだところで、守はパンパンッと手を叩いて埃を払っていた。
『あんま調子こくなよ? この人に手ぇ出してみろ、んなもんじゃすまねぇからな』
静かだったけれど、迫力はあった。不良達は呆然とし、美子もまたポカーンと見つめてしまった。
一発だけ殴られたのは、美子がぶつかったことに対する謝罪のためだったと理解した。本来なら、この人は殴られるような人ではなかった。
そのことに気付き、切れていた守の唇を見て申し訳ない気持ちでいっぱいになった。ハンカチを取り出すと、唇に当ててあげた。
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