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初恋トルネード
エピローグ2-2
しおりを挟む「お、おめでとう! えっと……大介と付き合うってことだよね!?」
「……う、うん……」
「よ、良かったじゃないか!」
「……うん」
赤らんだ顔のまま、ようやく純が上を向いてくれた。背中から感じる素喜君の熱い視線に体が震えそうになる。
親友の肩をバシバシ叩いて誤魔化した。
「応援する!」
「……ありがとう。まさか、あいつから来てくれるなんて思わなかったから……」
「お似合いだと思うよ。純なら大介のこと、しっかり見てやれるし」
「……うん。支えになってやりたい」
自分の熱い頬を擦った純は、はにかんだ。ようやくいつもの純に戻りつつある。パシッと頬を叩いた彼は、僕の胸を小突いた。
「ごめんな。こんな事、鈴子には言えないし。でも何て言うか、一人で抱えるには身が捩れそうで。なんとかあいつを駅まで見送ったまでは良かったんだけど……」
照れたように頭を掻いた純は、赤い顔のまま笑っている。
「何かさ……好き過ぎて、思い出すとパニックになっちゃってさ」
「……分かるよ。僕も素喜君と居ると、時々ラブパワーで周りが見えなくなるし」
可愛い素喜君の姿に、周りを気にせず抱き締めたくなってしまう。きっと純も、駅で別れた後に追い掛けたくなったりしたのだろう。
そうしないため思い出すと、今度はどうして良いか分からなくなってしまったのだろう。オロオロしながら僕の所へ来たようだ。
純が恋愛でパニックになるなんて、想像もできなかったけれど。
きっとそれだけ、大介を好きになっているのだと思うと、ちょっと可愛い親友だった。
「ありがとう! お前の顔見たらちょっと落ち着いた! 冷静にならないとって思えば思うほど、思い出しちゃってさ。瑠璃が心配するくらい、おかしかったみたいで」
「僕で良ければいつでも聞くよ」
パシッと手を打ち合った。立ち上がっている純を見上げる。
「お邪魔様!」
「……も、もう帰るの? ゆっくりしていきなよ!」
「止めとくよ。二人の時間を邪魔しちゃ悪いからさ。あいつが帰った頃に、電話したいし」
「でで、でも……!」
「またな! ありがとう、友よ!」
爽やかな笑顔を取り戻した純は、颯爽と靴を履いて出ていってしまった。呆然と見送った僕は、背中から静かに抱き付いてきた素喜君に冷や汗を流してしまう。
膝立ちになっているのか、肩に彼の顔が埋まっている。
「……俺……だって……!」
ギュッとしがみ付いた素喜君は、僕の肩にキスをしている。伸び上がるようにしながら、頬にもキスを仕掛けてきた。
「……も、素喜君!! 気をしっかり!! お兄さんと約束しただろう!?」
引き離そうとした僕より早く、首にしがみ付かれてしまった。さすが大介に鍛えられてきた素喜君だ、反射神経が並外れている。彼が本気で僕を押し倒せば、簡単に転がってしまうだろう。
たらたら流れていく冷や汗が、首筋を流れ落ちていった。緊張した僕にしがみ付いたまま、埋めた顔をスリスリさせてくる。その仕草に、目眩がしそうなほど胸がキュンッとなる。
「……兄ちゃんだけずるい」
拗ねた言葉に、またしても素喜君ラブの効果音が頭の中に鳴り響く。なんとか落ち着かせようとぎこちない手で頭を撫でてあげた。
「ず、ずるいとか……ずるくないとかじゃなくてね! 約束は約束だし……」
「……修治さん……」
甘えるように呼ばれてしまう。
鼓動が強く跳ねてしまう。
「…………負けたくねぇ……!」
ギュウッとしがみ付かれた僕は、心臓が口から飛び出しそうなほど心拍数を上げてしまった。
「せめて……!」
ぐいっと引かれた体が転がってしまう。僕のお腹に跨った素喜君は、ダンッと両手を突いてくる。じりじり、じりじり、赤い顔が近付いてくる。
「も……もとき……!?」
ぶちゅっと、唇を強く押し付けられている。ふがもご、動いている。
すぐに離れた素喜君は、潤んだ瞳で僕を見つめた。まるで泣き出してしまいそうなほど、目元が赤い。
目元よりもっと赤い唇を震わせた彼は、伏し目がちになりながら囁いた。
「お……大人のキスって……どうやるの……?」
キュッと唇を引き結んだ彼に、僕の喉がヒクッと引きつった。
「……あれ……修治さん? 修治さん!?」
呼吸が止まった僕に、素喜君の顔が青ざめるいる。ゆさゆさ、ゆさゆさ、一生懸命揺さぶっている。
止まった呼吸を何とか再開させた僕は、ホッとしたように笑っている素喜君を見上げてぎこちなく笑った。
ああ、僕は。
いったい何時まで我慢できるのでしょう?
無意識に僕のストライクゾーンをビシバシ決める可愛い恋人は、そうっと近付いてキスしてくれた。
甘くて、幸せなキスに、僕の体はとろけ落ちた。
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