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結婚生活 最終日 ~美しき秋バラ~
火遊びの代償は大きくてよ? 2026.5修正
「そんなわけあるか―――――!」
全身全霊をかけて、テーブルをひっくり返しました。
皆様、ご存じかしら?
私、実はとっても力持ちなんですよ。
「す、すごい力だね、ルイディア……!」
剣舞に武術、基礎体力はしっかり備わっております。
侯爵家の跡継ぎとして、当然のことですわ。
「あぁ。旦那様のせいで、お気に入りのティーセットが粉々ですわ」
「ご、ごめんよ」
何事かと部屋からメイドがやって来て、変わり果てたバルコニーに呆然としています。
お菓子を持ってきたマルス子爵夫人もいます。
「旦那様、茶番はもう結構です」
「ちゃ、茶番って?」
「即刻、荷物をまとめて屋敷から、いえ、この領地から出て行ってください」
わかっていない様子の旦那様。
椅子に座ったまま、ぽかんと私を見上げていた。なんて腑抜けた顔でしょう。
「乳母ですって? 冗談ではございません」
「ど、どうしてさ!」
「夫の浮気相手に抱かれる我が子を想像すると、終わったはずの悪阻が、また復活しそうです」
「そんなぁ」
「我が家の長男として?」
「だ、だめかな?」
私は大きくため息をひとつ。
「なぜ、我が侯爵家と血の繋がらない子を、侯爵家の跡継ぎにできるのでしょうか? 旦那様、まさか、ご自分が婿養子であることをお忘れですか?」
ぱくぱくと口を動かす様は、池の鯉のようです。
「それに、私と旦那様との離縁を悲しむ人間は、この屋敷にはおりませんわ」
騒ぎを聞き付けた執事、メイド、料理長、家中の人間が集まっています。
そして、皆が「うんうん」とうなずくのだから、旦那様の顔は真っ赤。
あらまあ、鯉からタコにでもなったかしら。
「ぼ、僕とルイディアの愛の結晶がいるじゃないか! 生まれてくる子供に、父親がいないのは可哀想じゃないか」
私のお腹を指差して、切り札とばかりに叫んだ。
「あらいやだ。父親なら、ちゃんといますわ」
「は?」
「旦那様、あなたが私を最後に抱かれたのはいつですか?」
旦那様がリリス嬢に夢中になってから、この半年ほど。
時々、求められることはありましたが、まぁ、その――最後まではしていません。
そんなことも忘れて、私の懐妊を心から喜んでいたけれど、まあ、そこは少しだけ、心が痛むかしら。
「頭の中がお花畑な旦那様、分かりやすくお伝えします」
「お、お花畑」
視界の端に、メイドのマリエが肩を震わせているのが見えました。
こらこら、笑うんじゃありませんよ。まったく、困った素直な子ですね。
「お腹の子の父親は、辺境伯のご次男です。ええ、私の幼馴染みの彼ですね。私たちは、幼い頃から将来を約束していたのです」
「ええ!」
「それなのに、当時の侯爵であるお祖父様が『友人の息子と孫娘を結婚させる』と言い張り、私たちは引き裂かれたのです」
遠目に、マルス子爵夫人が目頭を押さえているのが見えました。あなたは私の良き理解者よ。
「お祖父様は他界したし、旦那様が去ってくれたなら、彼を父親としてお迎えできますわ! ようやく、彼と結ばれるなんて、こんなに嬉しいことはありません」
「なっ! ぼ、僕のルイディアが不貞を……!」
「嫌だわ、旦那様。前に『純愛は罪ではない』と、私におっしゃいましたよね」
「う!」
「ですから、私は旦那様の浮気は、何度も見逃してきたではありませんか」
「そ、それは!」
「純愛は、あなた1人のものではなくてよ」
ガックリと肩を落とす旦那様。顔面蒼白とはこのことですね。
「私のことは、早くお忘れになって。リリス嬢とご一緒にお幸せにお暮らしくださいませ」
「僕は、どこに行けばいいの?」
「ご実家である、伯爵家にお帰りになったら? ああ、でもご実家には、立派なご長男がいるので、旦那様の居場所があるかはわかりませんね」
「そんな、僕はルイディアを愛しているのに」
ええ、そうでしょうね。
旦那様らしい愛は、確かに感じていましたから。
「その愛情はすべて、リリス嬢とご子息に注いでくださいませ」
ごめんなさいね、旦那様。
私は私なりに、あなたを愛していたのですが……。
ごめんなさいね、旦那様。
私、実は――悪女なんです。
〈あとがき〉
2026/5見直し&修正をしています。
ルイディアとマートルの結婚生活はまだまだ続きます♡
お気に入り登録や♡をいただけると嬉しいです!
応援よろしくお願いします
全身全霊をかけて、テーブルをひっくり返しました。
皆様、ご存じかしら?
私、実はとっても力持ちなんですよ。
「す、すごい力だね、ルイディア……!」
剣舞に武術、基礎体力はしっかり備わっております。
侯爵家の跡継ぎとして、当然のことですわ。
「あぁ。旦那様のせいで、お気に入りのティーセットが粉々ですわ」
「ご、ごめんよ」
何事かと部屋からメイドがやって来て、変わり果てたバルコニーに呆然としています。
お菓子を持ってきたマルス子爵夫人もいます。
「旦那様、茶番はもう結構です」
「ちゃ、茶番って?」
「即刻、荷物をまとめて屋敷から、いえ、この領地から出て行ってください」
わかっていない様子の旦那様。
椅子に座ったまま、ぽかんと私を見上げていた。なんて腑抜けた顔でしょう。
「乳母ですって? 冗談ではございません」
「ど、どうしてさ!」
「夫の浮気相手に抱かれる我が子を想像すると、終わったはずの悪阻が、また復活しそうです」
「そんなぁ」
「我が家の長男として?」
「だ、だめかな?」
私は大きくため息をひとつ。
「なぜ、我が侯爵家と血の繋がらない子を、侯爵家の跡継ぎにできるのでしょうか? 旦那様、まさか、ご自分が婿養子であることをお忘れですか?」
ぱくぱくと口を動かす様は、池の鯉のようです。
「それに、私と旦那様との離縁を悲しむ人間は、この屋敷にはおりませんわ」
騒ぎを聞き付けた執事、メイド、料理長、家中の人間が集まっています。
そして、皆が「うんうん」とうなずくのだから、旦那様の顔は真っ赤。
あらまあ、鯉からタコにでもなったかしら。
「ぼ、僕とルイディアの愛の結晶がいるじゃないか! 生まれてくる子供に、父親がいないのは可哀想じゃないか」
私のお腹を指差して、切り札とばかりに叫んだ。
「あらいやだ。父親なら、ちゃんといますわ」
「は?」
「旦那様、あなたが私を最後に抱かれたのはいつですか?」
旦那様がリリス嬢に夢中になってから、この半年ほど。
時々、求められることはありましたが、まぁ、その――最後まではしていません。
そんなことも忘れて、私の懐妊を心から喜んでいたけれど、まあ、そこは少しだけ、心が痛むかしら。
「頭の中がお花畑な旦那様、分かりやすくお伝えします」
「お、お花畑」
視界の端に、メイドのマリエが肩を震わせているのが見えました。
こらこら、笑うんじゃありませんよ。まったく、困った素直な子ですね。
「お腹の子の父親は、辺境伯のご次男です。ええ、私の幼馴染みの彼ですね。私たちは、幼い頃から将来を約束していたのです」
「ええ!」
「それなのに、当時の侯爵であるお祖父様が『友人の息子と孫娘を結婚させる』と言い張り、私たちは引き裂かれたのです」
遠目に、マルス子爵夫人が目頭を押さえているのが見えました。あなたは私の良き理解者よ。
「お祖父様は他界したし、旦那様が去ってくれたなら、彼を父親としてお迎えできますわ! ようやく、彼と結ばれるなんて、こんなに嬉しいことはありません」
「なっ! ぼ、僕のルイディアが不貞を……!」
「嫌だわ、旦那様。前に『純愛は罪ではない』と、私におっしゃいましたよね」
「う!」
「ですから、私は旦那様の浮気は、何度も見逃してきたではありませんか」
「そ、それは!」
「純愛は、あなた1人のものではなくてよ」
ガックリと肩を落とす旦那様。顔面蒼白とはこのことですね。
「私のことは、早くお忘れになって。リリス嬢とご一緒にお幸せにお暮らしくださいませ」
「僕は、どこに行けばいいの?」
「ご実家である、伯爵家にお帰りになったら? ああ、でもご実家には、立派なご長男がいるので、旦那様の居場所があるかはわかりませんね」
「そんな、僕はルイディアを愛しているのに」
ええ、そうでしょうね。
旦那様らしい愛は、確かに感じていましたから。
「その愛情はすべて、リリス嬢とご子息に注いでくださいませ」
ごめんなさいね、旦那様。
私は私なりに、あなたを愛していたのですが……。
ごめんなさいね、旦那様。
私、実は――悪女なんです。
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