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第7話 〈身近な幸せと遠い未来〉
はじめてのわがままを許して
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愛香はお手洗いから戻ると、私のスマホを指差した。
「ねえ、コウキに連絡してみなよ」
「え、今から?」
「思い立ったら即行動、勢いは大事にしないと」
「う、うん」
手のひらで感じるスマホの冷たさが、決意を鈍らせようとする。
「今日はPVの撮影って言ってたから、コウキとアラタは一緒にいるはずだよ」
「アラタのスケジュール知っているの?」
愛香はお皿に残っていたピザを頬張ると、ごく自然なことのように答えた。
「大体は教えてくれるよ?お互いGPSも入れているしね」
あっけらかんと言って笑う愛香。
「GPS?」
「アラタは私がどこにいるのか把握したいみたい。最初は抵抗があったけど、すぐ慣れたよ」
「え、え?」
私が驚いていると、愛香は自分のスマホを操作し、画面を私に向けた。
「ほら、これ。今のアラタの位置」
愛香のスマホの地図には、赤いピンが二つ立っていた。一つはアラタ、もう一つは愛香自身を示すものだ。愛香が地図を拡大した。
「あれ?なんか、近くない?」
「もしかして、コウキも近くにいるのかな?」
「そうだね。美咲。チャンスだよ」
「う、うん!」
私はスマホを握りしめる。
『会いたい』
たったひと言の短いメッセージを送信した。
「送っちゃった」
「グッジョブ、美咲」
愛香が親指を立てて笑った。
「あ!もう既読になった」
その数秒後、スマホがチカッと光った。
「来た!」
画面に表示されたコウキからの返信は――。
『仕事中だからまた連絡する』
素っ気ない返事に私は頬を膨らませ、返信を打ち込んだ。今日だけは、わがままを貫く。
『今すぐ、会いたい』
送信ボタンをタップした途端、すぐに返信が来た。
『夜なら会える』
『待てない』
愛香は目を見開き、笑いを堪えるようにドリンクを飲んでいた。
さらに数秒後、コウキから届いたメッセージには、観念したような、だけど少し甘い響きがあった。
『今どこにいる?』
みなとみらいのレストランにいることを伝えると、既読になるも返信は無い。そして、食後のデザートが運ばれてきたのと、新たなメッセージが届くのが同時だった。
「あ!」
「コウキはなんだって?」
「この後、空き時間があるから、少しだけど今すぐ会えるって」
コウキはいつも、私の気持ちを受け止めて、それ以上の愛情で返してくれる。私が不安に思っていたこと、もやもやしていたことなんて、全部、この一言で吹き飛んでしまった。
「よかったね」
「愛香は?アラタと会えるんじゃない?」
「こっちは気にしないで、早く行きなよ。お会計もしておくから」
愛香は席を立ち、私の背中を押した。
「ありがとう!」
テラス席から青空の下へ駆け出した。
海からの心地よい風も、私の背中を押すように吹く。晴れの空はどこまでも高く、気持ちを映しているかのように、どこまでも青かった。
「ねえ、コウキに連絡してみなよ」
「え、今から?」
「思い立ったら即行動、勢いは大事にしないと」
「う、うん」
手のひらで感じるスマホの冷たさが、決意を鈍らせようとする。
「今日はPVの撮影って言ってたから、コウキとアラタは一緒にいるはずだよ」
「アラタのスケジュール知っているの?」
愛香はお皿に残っていたピザを頬張ると、ごく自然なことのように答えた。
「大体は教えてくれるよ?お互いGPSも入れているしね」
あっけらかんと言って笑う愛香。
「GPS?」
「アラタは私がどこにいるのか把握したいみたい。最初は抵抗があったけど、すぐ慣れたよ」
「え、え?」
私が驚いていると、愛香は自分のスマホを操作し、画面を私に向けた。
「ほら、これ。今のアラタの位置」
愛香のスマホの地図には、赤いピンが二つ立っていた。一つはアラタ、もう一つは愛香自身を示すものだ。愛香が地図を拡大した。
「あれ?なんか、近くない?」
「もしかして、コウキも近くにいるのかな?」
「そうだね。美咲。チャンスだよ」
「う、うん!」
私はスマホを握りしめる。
『会いたい』
たったひと言の短いメッセージを送信した。
「送っちゃった」
「グッジョブ、美咲」
愛香が親指を立てて笑った。
「あ!もう既読になった」
その数秒後、スマホがチカッと光った。
「来た!」
画面に表示されたコウキからの返信は――。
『仕事中だからまた連絡する』
素っ気ない返事に私は頬を膨らませ、返信を打ち込んだ。今日だけは、わがままを貫く。
『今すぐ、会いたい』
送信ボタンをタップした途端、すぐに返信が来た。
『夜なら会える』
『待てない』
愛香は目を見開き、笑いを堪えるようにドリンクを飲んでいた。
さらに数秒後、コウキから届いたメッセージには、観念したような、だけど少し甘い響きがあった。
『今どこにいる?』
みなとみらいのレストランにいることを伝えると、既読になるも返信は無い。そして、食後のデザートが運ばれてきたのと、新たなメッセージが届くのが同時だった。
「あ!」
「コウキはなんだって?」
「この後、空き時間があるから、少しだけど今すぐ会えるって」
コウキはいつも、私の気持ちを受け止めて、それ以上の愛情で返してくれる。私が不安に思っていたこと、もやもやしていたことなんて、全部、この一言で吹き飛んでしまった。
「よかったね」
「愛香は?アラタと会えるんじゃない?」
「こっちは気にしないで、早く行きなよ。お会計もしておくから」
愛香は席を立ち、私の背中を押した。
「ありがとう!」
テラス席から青空の下へ駆け出した。
海からの心地よい風も、私の背中を押すように吹く。晴れの空はどこまでも高く、気持ちを映しているかのように、どこまでも青かった。
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