ゆるいイケメン。

はしもと

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ゆるいイケメン。

ゆるい帰り道。

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花火大会なんて、友達と行ったのは初めてだった。

とくにスターマインとかいうやつがすごかった。
柄にもなく気持ちが高まってしまって心の中では「たまやー!」と叫んでいた俺である。


さて、帰り道。
もちろん飛鳥と花ちゃんはこの場にいない。

黒澤さんはどこかそわそわしている様子だ。

「あのふたり、大丈夫かしら」

「飛鳥ならきっと花ちゃんを大事にできると思うよ」

「そうね」

という黒澤さんと俺の会話を聞いていたマカロンちゃんは、なぜか難しい顔をしていた。

不思議に思いながら歩いていると、一番最初に家に着いたのは黒澤さんである。

「明音ちゃんのことよろしくね」

と黒澤さんに頼まれたので、しっかり送り届けなければいけない。

「あの‥‥」

普段あまり話しかけてこないマカロンちゃんが話しかけてきた‥
といっても、この場にはふたりだけ。
さすがに無言が気まずかっただけなのでは?とも思うが。

「月岡さんって、橋本くんのことが好きなんじゃないの?」

衝撃的な一言である。
マカロンちゃんは俺に比べて、花ちゃんともチャラ男くんとも接する機会が少なかったはずなのに。

なるほど、先程の難しそうな顔の理由はこれか。

どうしてそれを!?という俺の驚愕した表情を見て少し慌てたマカロンちゃん。

「な!なんとなく!なんとなくそう思っただけなの!」

なんとなくでもそう思えたのがすごいって言ってんだよ俺は!!

「どうしてわかるの?!」

「いや、だからね、なんとなく!好きそうだなって」

どうやらマカロンちゃんは、昔から人の表情の変化に敏感なんだそうな。

ということは、俺の表情の変化とかも見てるんだろうか。
マカロンちゃんから見て、俺ってどんなふうなんだろうか。

「俺って、表情見て誰のことが好きそう?」

その言葉にキョトンとするマカロンちゃん。

たしかに変なことを聞いた自覚はあるけどそこまで変だっただろうか。

「え」

「え」

「え」

「え、なに」

「渡辺くんって、律ちゃんの彼氏さんじゃないの?」

「え」

どうなってるのこの子。
なんで花ちゃんの好きな人とかわかるくらい敏感な子が、
どうしたらこんな勘違いが起こるの!

「ちがうの?」

「あ、うん、なんかごめん、ちがう」

なぜか謝る俺。

それを聞いて、ほっとした顔を見せるマカロンちゃん。

どうやらマカロンちゃん、
俺と黒澤さんが付き合っていて、花ちゃんはチャラ男くんが好きで、チャラ男くんは黒澤さんのことが好き、そして飛鳥がなんとなく花ちゃんを気にかけてると思っていたらしい。

だとしたらけっこうすごい相関図である。違うと聞いてほっとするのもわかる。

だが、俺と黒澤さんが付き合ってる意外は全部当たってるのですごい。

「だとしたら、渡辺くんは片桐くんを見てるときの表情が良いと思う」

「‥‥飛鳥?」

「うん、すごく優しい顔で見てるから」

「そうかな」

「うん、男の子同士だし、片桐くんは月岡さんのこと好きみたいだし、大変だろうけど私は応援するよ!」

驚愕である。
いや、俺、今飛鳥に恋してる設定になってます?まじで?

「‥ふふっ、ははははっ」

俺、爆笑である。

「俺と飛鳥のはね、恋じゃなくて、友情だよ」

マカロンちゃんってなんでも素直に受け入れてしまうタイプなんだろうか。
なんか悪い男に騙されないか心配である。

「私あんまり親友ってできたことないから、友情と恋の違いがわからないのかも‥」

「香坂さんは黒澤さんのこと好きでしょ?俺と飛鳥はそれと同じ感じだよ」

そっか、それじゃ私と黒澤さんもちゃんと友達なんだねと呟くマカロンちゃんの顔はすごく嬉しそうだった。

「香坂さん、おもしろいね」

おもしろいって褒め言葉なのか、それともちょっとからかわれているのか、と考えはじめたマカロンちゃんの顔はやっぱりおもしろい。

おもしろくて、可愛い。

マカロンちゃんの自宅前に着いて、じゃあね、と手を振るとき、
ほんとはもうちょっと喋っていたかったなと思う俺がいた。

ドアノブに手をかけたマカロンちゃんがふいに振り向く。

「あ、わたし渡辺くんがあんなに笑ってるところ、さっきはじめて見た」

「俺も、あんなに笑ったことない」

思い出すと今も頬が緩んで笑いが込み上げてくるのがわかる。

「私、渡辺くんが笑ってるところまた見たい!だからまたお話ししようね!」

それだけ言い残して扉の向こうへ消えていったマカロンちゃん。
そのときの表情がなんだか悪戯っ子みたいに見えて、やっぱり可愛いと思った。


なんというか、妹感があるというか、なんというか‥‥

俺の心臓は知らない音を奏でていた。



俺も無事に自宅へ帰り、スマホを見ると飛鳥からメッセージが届いていた。

「今は月岡の気持ちも考えて返事は貰わなかった」

飛鳥は優しい。
そうゆうところが好きだ。

「月岡には橋本に告白してみればどうかと提案した」

俺にもし好きなひとができたとき、そして好きな人に好きな人がいたとき、

俺は自分の好きな人の背中を押してあげることができるだろうか。


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みんなの感想(1件)

左門正利
2020.09.30 左門正利

面白そうですね。

続きを楽しみにしています。

解除

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