詩「詩人の幸せ」

有原野分

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詩人の幸せ

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例えば君が徹夜で考えた
眠たい詩の中にある
一定のリズムが世界を分かち作り上げていて
部屋の外を飛んでいる名も知らない虫
 も
空に浮かんでいる鼠色の雲
 も
となりでうたた寝をし始めた子供
 も
電話の向こうで楽しそうに話す父親
 も

 一定の不規則な安定が波になり影になり祈りになり

 放射状に広がっていく形が言葉であり思想であり
 命であり


手繰り寄せた手のひらの未来に
ほんの少しの色鉛筆と画用紙を握らせて
閉め切った和室の微かな月明かりが
固まりかけていた家族の絡まりを
少しだけ溶かした気がする
(晩ご飯の滲んだカレーの匂いが
 目の前の月に吸い込まれていくでしょう
 )

もしかしたら 起きている という 状態 
こそが 何かの 間違えで だから 僕たちは
眠たくて
堪らない
その
瞬間
瞬間

幸せ 、を
見つける。
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