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変わらへん
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「おーい、おっさん」
一人のおっさんが声をかける。
「なんや」
もう一人のおっさんが答える。
「おっさん、なにしとん?」
「見て分かるやろ。ゴミ拾っとんねん」
「おう、そうか。俺もや」
「見たら分かるわ。お前はほんまにアホやな。俺もお前もゴミ拾いやないか。あとな、お前もおっさんや」
「そうやな、あはは。なんせ、久しぶりに会うもんやから。おい、おっさん、最近はなにしてたんや?」
「お前はどうしようもないアホやな。なにもクソもあるかい。俺らは万年ゴミ拾いやないか」
「せやな。俺らはゴミを拾ってなんぼやもんな。あーあ、なんか景気のいい話でもないんか」
「んなもんあるかい。景気も毛もあらへんわ。ところでお前、今日はどないや?」
「今日か? ぼちぼちやで。怪我もしてへんし、……これがほんまの毛がない」
「くだらんこというなや。見たとこ、あんまり拾てへんみたいやけど」
「せやねん。今日は調子が悪いねん」
「ゴミ拾うのに、調子もクソもあるかい。お前そんなんで飯食えるんか?」
「ああ、それは大丈夫や。こんなときのために、ちゃんとゴミを貯めてんねん」
「アホかお前は。ゴミなんか貯めんと、お金貯めんかい。換金に行ってへんのか」
「いや、行ってる。行ってるけど、換金してへん」
「なんでや」
「ほら、昔は現金より、現物や言うて、黄金を買う人がおったやろ?」
「それで?」
「だから俺も金よりゴミを貯めとんねん。財テク言うやっちゃ」
「アホ! ゴミと黄金を一緒にすな! お前知ってるか? 今はこのゴミがキロ五百円で売れるけど、来年からはキロ八十円になるらしいで」
「ええっ! ほんまかいな。そんなんなったら、飯が食えんやないか。しゃあない、奥の手や」
「なんや?」
「ゴミもっと貯めたる」
「アホ、俺らゴミ拾いには死活問題やぞ? まあ、しゃあないけどな。俺らの先祖は飲み物の入ってた空き缶っちゅうのを拾ってたらしいからな」
「ああ、知ってる。空き缶やろ? 昔、博物館で見たわ。どや? 博識やろ?」
「お前、そんなガキみたいなことでよう自慢ができるな。まあ、アホでも博識いう言葉を知っとるのはえらいもんや。しかし、えらい惨めなもんやな。俺らのご先祖さまがホームレスやからって」
「おい! ホームレスちゃうぞ? サバイバル派や」
「一緒やないかい。まあ、似たようなもんやな。いまの人間は、みんなある意味ホームレスや。ほんまにアホばっかりや。お前みたいなアホやったらまだ救いはあったかも知れんが、昔から人間はろくでもない。このゴミかてそうや。もう、宇宙はゴミだらけ。科学だけ先に進んで、俺ら人間は置き去りや」
おっさん二人は宇宙を漂いながら、ゴミを拾っている。
そのとき、太陽が遠くから顔を出した。
二人は無言で、光を眺めている。
一人が言った。
「ああ、やっぱり何回見ても、地球はキレイやな」
地球。
どこまでも青く、深く、輝いている。
その横で、ボロボロの月が小さくゴミの中に埋もれている。
二人は黙ってそれを見ている。
地球はもう、人間が暮らせないほど汚れていた。
集めたゴミが、太陽の光を反射してきらきらとまぶしいほど光る。
「さあ、もう一仕事や」
一人のおっさんが声をかける。
「なんや」
もう一人のおっさんが答える。
「おっさん、なにしとん?」
「見て分かるやろ。ゴミ拾っとんねん」
「おう、そうか。俺もや」
「見たら分かるわ。お前はほんまにアホやな。俺もお前もゴミ拾いやないか。あとな、お前もおっさんや」
「そうやな、あはは。なんせ、久しぶりに会うもんやから。おい、おっさん、最近はなにしてたんや?」
「お前はどうしようもないアホやな。なにもクソもあるかい。俺らは万年ゴミ拾いやないか」
「せやな。俺らはゴミを拾ってなんぼやもんな。あーあ、なんか景気のいい話でもないんか」
「んなもんあるかい。景気も毛もあらへんわ。ところでお前、今日はどないや?」
「今日か? ぼちぼちやで。怪我もしてへんし、……これがほんまの毛がない」
「くだらんこというなや。見たとこ、あんまり拾てへんみたいやけど」
「せやねん。今日は調子が悪いねん」
「ゴミ拾うのに、調子もクソもあるかい。お前そんなんで飯食えるんか?」
「ああ、それは大丈夫や。こんなときのために、ちゃんとゴミを貯めてんねん」
「アホかお前は。ゴミなんか貯めんと、お金貯めんかい。換金に行ってへんのか」
「いや、行ってる。行ってるけど、換金してへん」
「なんでや」
「ほら、昔は現金より、現物や言うて、黄金を買う人がおったやろ?」
「それで?」
「だから俺も金よりゴミを貯めとんねん。財テク言うやっちゃ」
「アホ! ゴミと黄金を一緒にすな! お前知ってるか? 今はこのゴミがキロ五百円で売れるけど、来年からはキロ八十円になるらしいで」
「ええっ! ほんまかいな。そんなんなったら、飯が食えんやないか。しゃあない、奥の手や」
「なんや?」
「ゴミもっと貯めたる」
「アホ、俺らゴミ拾いには死活問題やぞ? まあ、しゃあないけどな。俺らの先祖は飲み物の入ってた空き缶っちゅうのを拾ってたらしいからな」
「ああ、知ってる。空き缶やろ? 昔、博物館で見たわ。どや? 博識やろ?」
「お前、そんなガキみたいなことでよう自慢ができるな。まあ、アホでも博識いう言葉を知っとるのはえらいもんや。しかし、えらい惨めなもんやな。俺らのご先祖さまがホームレスやからって」
「おい! ホームレスちゃうぞ? サバイバル派や」
「一緒やないかい。まあ、似たようなもんやな。いまの人間は、みんなある意味ホームレスや。ほんまにアホばっかりや。お前みたいなアホやったらまだ救いはあったかも知れんが、昔から人間はろくでもない。このゴミかてそうや。もう、宇宙はゴミだらけ。科学だけ先に進んで、俺ら人間は置き去りや」
おっさん二人は宇宙を漂いながら、ゴミを拾っている。
そのとき、太陽が遠くから顔を出した。
二人は無言で、光を眺めている。
一人が言った。
「ああ、やっぱり何回見ても、地球はキレイやな」
地球。
どこまでも青く、深く、輝いている。
その横で、ボロボロの月が小さくゴミの中に埋もれている。
二人は黙ってそれを見ている。
地球はもう、人間が暮らせないほど汚れていた。
集めたゴミが、太陽の光を反射してきらきらとまぶしいほど光る。
「さあ、もう一仕事や」
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