詩「白い夏」

有原野分

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白い夏

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雨の晴れ間に風が吹く
その折々の音がある
目に見えない空と
目に飛び込んできた
小鳥

ある日わたしは
雨をカッターナイフで切り取って
手の平で揺らしながら
こぼさないように
そっと水槽に入れた

虫眼鏡で観察する
じっくりと
生きているみたいに
なるほど
どうやら「雨というものは
一粒一粒の悲劇から成り立っている
静寂の物語だったのだ

だからきっと
無性に雨に打たれたくなる
懐かしいような悲しいような時期が
人生には必要なのだ

ほら
雨が上がった
水のように澄んだ
鳥が飛んでいる
わたしはまた会いたかった
あなたに
声が遠ざかっていく
言葉を伝える暇もなく

白い夏
光が差し込んでくる
雨のように
それは雲と雲の隙間
わたしの心
約3cm
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