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二人の飴
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タタン、タタン。タタン、タタン。
雨が降っていて、二人がいる車を叩くように打ち付ける。
漆黒の夜、10月の寒い日のことだ。
仕事終わりの車の中で、東と南はキスをしていた。
二人の舌の上には、一粒のバタースカッチキャンディ。
目を閉じて、れろれろと味わっている。
東が南の舌に飴を押し込んで、舌で南を味わうが、南はそっと飴を押し返し、東の唇をかむ。
これの繰り返しだ。
4回ほどこれを繰り返してから、南は飴を口に含み、東のYシャツのボタンをプチ、プチと外し始めた。
そして、東のシャツをはだけさせ、東の背中の傷口に手を突っ込んだ。
がぱ、と開いた傷口の、鯛の口の中の歯のように並んだ小さな触手たちが、喜びながら南の手を撫でる。
「いっ……!」
東が痛みに目を見開くが、南が唇を唇でふさぐ。
東は震えながら、飴を舐めていた。
ぞわぞわ。ぞわぞわ。
東の触手が伸び、南の手を手首まで味わっている。
黒い魔力を含んだ体液が滴る。
(冥府公務員たちは、役職に就く際の盟約に飲む、魔力を含んだ毒のせいで血液が黒くなるのだ)
「ん……う……」
東は妙な気分になってきて、南の服の裾を握った。
「……痛い?」
「ううん、おいしい。触手越しに手の味がする。今日はどんなハンドクリームを使ったの?」
「ゆずの香りのハンドクリームよ」
南の問いかけでようやく唇を離した二人は、水筒の中のコーヒーをカップに分け、飲んだ。
「飴が甘かったからちょうどいいね」
「そうね。これからラーメンでも食べに行かない?東」
「いいね。ついでに千葉駅まで出かけない?おいしいクッキーが食べたいんだ」
「いいわね。おいしいお茶も買いましょう?たまにはコーヒー以外も飲みたいわ」
南は東の背中を撫でる。触手たちが組み合わさって、傷口は閉じた。
二人は後部座席から前の席に乗り換え、車を走らせる。
海沿いの道を走れば、現世への道があるのだ。
「古いボカロ曲でも聞こうよ。僕、“サイハテ”を聞きたい」
「私は“椿の花”を聞きたい。ネットはつながる?」
「今朝、追加で通信容量を買ったよ」
「そう。じゃあ、動画の再生をお願い」
ピッ……。車のbluetoothが東のスマートフォンを認識し、スピーカーから「サイハテ」の軽快な音楽が流れ始める。
真っ暗闇の雨の日もドライブ日和に早変わりだ。
「そういや東って作曲してたよね?」
「そう。僕の曲のせいで自殺した。聞くと死にたくなる音声なんて作るもんじゃないね」
「他の曲は?」
「僕はKORGのガジェットの信者でね、電子音ばっかり作ってたよ」
「今度聞かせて?」
「まだネットにあるかなあ……」
東は車を運転しながら、赤信号のところで煙草に火をつけた。
「南もどう?」
「きょうはいいわ、ありがとう」
東は黒い紙巻の青い葉の煙草に火をつけ、車を走らせる。
雨が降っていて、二人がいる車を叩くように打ち付ける。
漆黒の夜、10月の寒い日のことだ。
仕事終わりの車の中で、東と南はキスをしていた。
二人の舌の上には、一粒のバタースカッチキャンディ。
目を閉じて、れろれろと味わっている。
東が南の舌に飴を押し込んで、舌で南を味わうが、南はそっと飴を押し返し、東の唇をかむ。
これの繰り返しだ。
4回ほどこれを繰り返してから、南は飴を口に含み、東のYシャツのボタンをプチ、プチと外し始めた。
そして、東のシャツをはだけさせ、東の背中の傷口に手を突っ込んだ。
がぱ、と開いた傷口の、鯛の口の中の歯のように並んだ小さな触手たちが、喜びながら南の手を撫でる。
「いっ……!」
東が痛みに目を見開くが、南が唇を唇でふさぐ。
東は震えながら、飴を舐めていた。
ぞわぞわ。ぞわぞわ。
東の触手が伸び、南の手を手首まで味わっている。
黒い魔力を含んだ体液が滴る。
(冥府公務員たちは、役職に就く際の盟約に飲む、魔力を含んだ毒のせいで血液が黒くなるのだ)
「ん……う……」
東は妙な気分になってきて、南の服の裾を握った。
「……痛い?」
「ううん、おいしい。触手越しに手の味がする。今日はどんなハンドクリームを使ったの?」
「ゆずの香りのハンドクリームよ」
南の問いかけでようやく唇を離した二人は、水筒の中のコーヒーをカップに分け、飲んだ。
「飴が甘かったからちょうどいいね」
「そうね。これからラーメンでも食べに行かない?東」
「いいね。ついでに千葉駅まで出かけない?おいしいクッキーが食べたいんだ」
「いいわね。おいしいお茶も買いましょう?たまにはコーヒー以外も飲みたいわ」
南は東の背中を撫でる。触手たちが組み合わさって、傷口は閉じた。
二人は後部座席から前の席に乗り換え、車を走らせる。
海沿いの道を走れば、現世への道があるのだ。
「古いボカロ曲でも聞こうよ。僕、“サイハテ”を聞きたい」
「私は“椿の花”を聞きたい。ネットはつながる?」
「今朝、追加で通信容量を買ったよ」
「そう。じゃあ、動画の再生をお願い」
ピッ……。車のbluetoothが東のスマートフォンを認識し、スピーカーから「サイハテ」の軽快な音楽が流れ始める。
真っ暗闇の雨の日もドライブ日和に早変わりだ。
「そういや東って作曲してたよね?」
「そう。僕の曲のせいで自殺した。聞くと死にたくなる音声なんて作るもんじゃないね」
「他の曲は?」
「僕はKORGのガジェットの信者でね、電子音ばっかり作ってたよ」
「今度聞かせて?」
「まだネットにあるかなあ……」
東は車を運転しながら、赤信号のところで煙草に火をつけた。
「南もどう?」
「きょうはいいわ、ありがとう」
東は黒い紙巻の青い葉の煙草に火をつけ、車を走らせる。
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