冥府公務員と死の官能

よくうつ

文字の大きさ
14 / 15
過去ログ

「慰める」

しおりを挟む
※南視点です。

冥府に来てから、東ショウコさんはいつも泣いていた。
朝にあつあつのコーヒーを淹れ、それを手に窓辺に座り、陽が落ちて真っ暗になってから、冷たいコーヒーを飲み始めるのだ。
白いワンピースを着て、窓から射す月明かりが彼女を引き立てる。
しかし、その泣き声はとても、とても、悲しい声だった。
寮の隣部屋に北と住んでいた私は、毎晩すすり泣く声を壁越しに聞いていた。


そんなある日の夕方、私は東さんと二回目のキスを交わすことにした。


「ねえ、ショウコさん。一緒にオセロで遊ばない?」

当時、北とのペアルックで長い髪を三つ編みにしていた私。
髪と首筋に、惚れ薬をたっぷり含んだコロンをふりかけて、東の隣に座った。
そして、三つ編みを解く。

涙で潤んだ瞳が美しい。泣き腫らせて赤い目元は、まるで初めて男を誘った少女のようだった。
黒曜石のような、狂気で不透明だがときどき窓の光を受けて輝く瞳。

「毎日泣いてばかりで、疲れるね。」

両手でそっと東さんの頬を包み、瞳をじっと見る。自分でもうっとりしている自覚があった。
――大福のような白い肌、黒曜石のように美しい瞳、粉砂糖のような甘い香り。
この仕事を初めて何十年も経つが、こんなに強くそそられる存在に出会うとは。
まるで、喉の渇きが強い時に眺める果実のような存在だった。

彼女の額にキスをして、抱きしめて背を撫でる。
床にコップが落ち、ミルクとコーヒーは床板の上で乱暴に混ざり合った。

「……え、うそでしょ、南さ………」

ハッカの味がするキス。混ざり合う唾液。
どうやらキスははじめてではないようだ。
東の冷たい指が、私の髪を手で漉き、匂いを確かめている。
死んだあの日とはまた違う、甘い匂いがした。

「これ……なに……」
「ショウコさんが、朝にはよく眠れるように、おまじない」

ボーっと上気した様子で、東は少し笑った。
そのまま狭いベッドになだれ込むと、私は率先して、簡単な愛撫を楽しむことにした。

今回は、優しく頬にキスをし、見つめあいながら、そして微笑みじゃれあいながらこの日は終わった。

 ★

翌朝。北が東さんの部屋にやってきた。

「あ、脱がなかったんだ。もったいない。南はね、心のオアシスって感じの愛情の注ぎ方をするんだよ?すごく安心したでしょ。……まあいいや。今朝はいいパンケーキが焼けたから一緒に食べない?」

北の持つトレイの上では、はちみつとメイプルのソースをたっぷりかけたパンケーキが湯気を上げている。

「いるいる!いつもありがとうね、北さん。」
私は喜んでパンケーキを取り分けて、紅茶をカップに注いでいた。

「あの、私もたべていいですか?」と東さんが言い終わる前に、
北はパンケーキを東に差し出した。

「どうぞどうぞ。俺のハニーはかわいかったでしょ。」
そういいながら、ホイップスプレーで東さんのパンケーキーにスマイルマークを描く北。

「今度は俺にも味見させてね」

東さんの耳元で北がささやくのを見て、私はクスクス笑った。

「ありがとうございます、えっと……北さん。」
「簡単な名前なんだから覚えてよ東さん……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

さくらと遥香(ショートストーリー)

youmery
恋愛
「さくらと遥香」46時間TV編で両想いになり、周りには内緒で付き合い始めたさくちゃんとかっきー。 その後のメインストーリーとはあまり関係してこない、単発で読めるショートストーリー集です。 ※さくちゃん目線です。 ※さくちゃんとかっきーは周りに内緒で付き合っています。メンバーにも事務所にも秘密にしています。 ※メインストーリーの長編「さくらと遥香」を未読でも楽しめますが、46時間TV編だけでも読んでからお読みいただくことをおすすめします。 ※ショートストーリーはpixivでもほぼ同内容で公開中です。

小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話

穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...