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これではまるで飼い殺しだ
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いい天気である。
ぽかぽか陽気に涼しい風。
敷地の木陰で横になったら夕方まで熟睡出来そうなくらい、快適な環境だ。
だが悲しいかな、俺は午後からも執務があるのだ。
のんびり昼寝なんぞしてたら、その分だけ仕事が積む。
くそぅ、なんで異世界転生しても社畜にならねばならんのだ。
こう言うのは勇者になったり魔王になったり冒険者になったり悪役令嬢になったりして、無双したりハーレムしたりざまぁしたりもう遅いしたりするもんだろ!?
どうなってんだよ責任者出せやゴルァ!
いかん、昼時が近付いてきたせいか、だんだん腹が立って来たぞ。
昼食の時間にはちと早いが、用意してもらえるなら食べるとしよう。
そう思って俺は敷地から屋敷に戻ろうとした時、"ソレ"が聞こえた。
くすくす、と嘲笑う声。
誰かの無様を指差して物笑いの種にするような、下衆の類い――前世の頃から俺が一番嫌いな声だ。
腹の底が沸々と煮えるのを自覚しつつ、俺はその部屋へ踏み込んだ。
最初に見えたのは、その嘲笑い声を囁いているメイドが数人。
その、奥。
身形も整えられていない、薄汚れた黒髪の少女。
アルフレッドとしての記憶が教えてくれる。
彼女は俺の義妹こと、シャルロット。
そのシャルロットの目下にあるのは、サラダなのかスープなのかよく分からない、どう見ても残飯。しかもスプーンのひとつも用意されず、容器もまるでペットのエサの容れ物のようなお粗末なものだ。
これが、人間の食事だろうか。
激情が沸点に達するその寸前に蓋をして、俺はシャルロットの元へ歩み寄った。
その様子を見たメイドの一人が俺を呼び止めようとするが、そんな耳障りな声は無視。
「シャルロット」
出来るだけ穏やかな声で、彼女の名を呼ぶ。
ビクリ、と肩を震わせてシャルロットは俯けていた顔を上げる。
――海のように深く澄んで……いない、死人の瞳だ。
「……なん、ですか」
喉を絞るような、嗄れた声。
酷く怯えながら、嵐が通り過ぎるのを待つ、まさにいじめられっ子の様相そのものだ。
よく見れば顔色も悪いし、身体は痩せこけている。
義父母から冷遇されているだけではない、まさか日々の衣食住すらまともに与えられていないとは思わなかった。
激情がさらに加熱され、しているはずの蓋がガタガタと揺れるが、それを必死に押さえつける。
「いい天気だな」
何を話せば分からない、だが何でもいいから話しかけるべきだった。
「……そうですね」
よし、反応してくれた。ワンチャンあるよ。
「お前の肌って真っ白だなぁ。ちゃんと日光浴してるか?」
「……してません」
「そりゃよくないぞ。紫外線を浴びないと、体内でビタミンDが作られないからな」
「び、びたみん、でぃー?」
おっと、ここはハイファンタジーな異世界だった。
前世の知識なんて言っても分からないだろうし、適当に言い繕っとくか。
「健康のために必要なエネルギーってことさ。何なら、これから俺と一緒に散歩でもするか」
「あ、あの……」
さて……そろそろだな。
「あぁ、まだ昼飯の最中だったか……なぁシャルロット、"ソレ"本当に美味いか?」
俺は、シャルロットの食事らしきソレを見やる。
「……おいしい、です」
あぁ、無理して嘘ついてるんだな、分かるよ。
「そうなのか?なら、俺も一口もらおうかなー」
わざと、メイド達にも聞こえるような声量で。
「アルフレッド様っ、おやめください!」
ほら、来た。
飛んで火に入る夏の虫はてめぇだよ。
ぽかぽか陽気に涼しい風。
敷地の木陰で横になったら夕方まで熟睡出来そうなくらい、快適な環境だ。
だが悲しいかな、俺は午後からも執務があるのだ。
のんびり昼寝なんぞしてたら、その分だけ仕事が積む。
くそぅ、なんで異世界転生しても社畜にならねばならんのだ。
こう言うのは勇者になったり魔王になったり冒険者になったり悪役令嬢になったりして、無双したりハーレムしたりざまぁしたりもう遅いしたりするもんだろ!?
どうなってんだよ責任者出せやゴルァ!
いかん、昼時が近付いてきたせいか、だんだん腹が立って来たぞ。
昼食の時間にはちと早いが、用意してもらえるなら食べるとしよう。
そう思って俺は敷地から屋敷に戻ろうとした時、"ソレ"が聞こえた。
くすくす、と嘲笑う声。
誰かの無様を指差して物笑いの種にするような、下衆の類い――前世の頃から俺が一番嫌いな声だ。
腹の底が沸々と煮えるのを自覚しつつ、俺はその部屋へ踏み込んだ。
最初に見えたのは、その嘲笑い声を囁いているメイドが数人。
その、奥。
身形も整えられていない、薄汚れた黒髪の少女。
アルフレッドとしての記憶が教えてくれる。
彼女は俺の義妹こと、シャルロット。
そのシャルロットの目下にあるのは、サラダなのかスープなのかよく分からない、どう見ても残飯。しかもスプーンのひとつも用意されず、容器もまるでペットのエサの容れ物のようなお粗末なものだ。
これが、人間の食事だろうか。
激情が沸点に達するその寸前に蓋をして、俺はシャルロットの元へ歩み寄った。
その様子を見たメイドの一人が俺を呼び止めようとするが、そんな耳障りな声は無視。
「シャルロット」
出来るだけ穏やかな声で、彼女の名を呼ぶ。
ビクリ、と肩を震わせてシャルロットは俯けていた顔を上げる。
――海のように深く澄んで……いない、死人の瞳だ。
「……なん、ですか」
喉を絞るような、嗄れた声。
酷く怯えながら、嵐が通り過ぎるのを待つ、まさにいじめられっ子の様相そのものだ。
よく見れば顔色も悪いし、身体は痩せこけている。
義父母から冷遇されているだけではない、まさか日々の衣食住すらまともに与えられていないとは思わなかった。
激情がさらに加熱され、しているはずの蓋がガタガタと揺れるが、それを必死に押さえつける。
「いい天気だな」
何を話せば分からない、だが何でもいいから話しかけるべきだった。
「……そうですね」
よし、反応してくれた。ワンチャンあるよ。
「お前の肌って真っ白だなぁ。ちゃんと日光浴してるか?」
「……してません」
「そりゃよくないぞ。紫外線を浴びないと、体内でビタミンDが作られないからな」
「び、びたみん、でぃー?」
おっと、ここはハイファンタジーな異世界だった。
前世の知識なんて言っても分からないだろうし、適当に言い繕っとくか。
「健康のために必要なエネルギーってことさ。何なら、これから俺と一緒に散歩でもするか」
「あ、あの……」
さて……そろそろだな。
「あぁ、まだ昼飯の最中だったか……なぁシャルロット、"ソレ"本当に美味いか?」
俺は、シャルロットの食事らしきソレを見やる。
「……おいしい、です」
あぁ、無理して嘘ついてるんだな、分かるよ。
「そうなのか?なら、俺も一口もらおうかなー」
わざと、メイド達にも聞こえるような声量で。
「アルフレッド様っ、おやめください!」
ほら、来た。
飛んで火に入る夏の虫はてめぇだよ。
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