【完結】可愛い義妹のためならば 〜超絶シスコン兄貴の異世界無双〜

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)

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夜逃げから始まる旅立ち

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 火計のおかげで、邸宅内はあちこちでパニックだ。
 俺の自室があった場所は濛々と火が燃え盛っている。
 あの様子なら、俺の生存は絶望的だろう。俺はここにいるけどね。
 いや、間違いでもないな。

 何せ、『アルフレッド・ギャレットは今夜で死ぬ』
 そう言うシナリオを書いたのは、他ならぬ"俺"だ。

 今ここにいる俺は、ギャレット家の嫡子でも何でもない、貴族の邸宅に火を放った、ただの放火魔だ。

 そんな罪を犯した後ろめたさを「ざまぁ・もう遅い」と言う嘲笑と共に吐き捨てる。
 生憎、俺は平気で犯罪を犯したり、その罪を他人に押し付けて犯罪者に仕立て上げようとするほど、悪人に成り下がるつもりは無いんでな。

 シャルロットの自室……いや、ブタ箱の窓の前に立つと、俺は剣を抜いてその窓ガラスを叩き割った。

「待たせたな、シャルロット」

 顔を覆うマントを少しズラして、目を見せてやる。

「お兄様ぁ……!」

 俺の顔を見て、シャルロットは泣きそうな顔で喜んだ。
 よし、ちゃんと逃げずに待ってくれていたな、いい子だ。
 だが、その前に一つ。

「最後にもう一度だけ確認する。……俺と一緒に来るか?」

 手紙でのやり取りでしか意思疎通が図れてなかったからな。
 ちゃんと本人の確認を取りたかったんだ。

「はい……わたしを、連れて行ってください」

 すごくいい顔で頷いてくれたよ、訊くまでも無かったな。

「よし、それじゃぁ……ギャレット家バイバイだ」

 俺はシャルロットを窓の外へ連れ出すと、逃げる前にシャルロットのブタ箱に火球を放り込んだ。
 これで『シャルロット・ヘプバーンも死んだ』。つまりはそう言うことだ。

 さて、誰かに見つかる前にさっさとトンズラだ、俺はシャルロットの手を取って、邸宅周りの林の中を駆けていく。



 ある程度の距離をシャルロットと共に走り、振り返って見れば、もうギャレット家の邸宅は遠く、まだ炎が見える。
 あれだけ燃えてしまえば、再建には何週間もかかるだろう。
 もし父上が「アルフレッドがシャルロットを連れて逃げ出した」と判断したとしても、すぐに追手を差し出しては来るまい。
 陽動と、追手の封じ込めと言う二重の効果を持つ火計は無事に成功。

 そして『ギャレット家バイバイ作戦』も完遂だ。

「家が……」

 シャルロットも、ゴミクズ同然の扱いを受けていたとは言え、ここが自分の家だと言う愛着はあったらしい。

「ギャレット家とも、これでお別れだ」

 俺は淡々とそう告げて、ひとつ大事なことをシャルロットに告げる。

「『たった今、アルフレッド・ギャレットと、シャルロット・ヘプバーンは死んだ』……そう言うことにする」

 そこで、と続ける。

「俺の名前はアルフ。お前はどうする?」

「え?」

 唐突に改名した俺に、『シャルロットだった少女』は目を丸くする。

「アルフレッドはもう死んだ。だから俺は、これからは「アルフ」と名乗ることにした」

「あっ……」

 彼女も俺の言わんとすることを理解してくれたようだ。

「な、なら、わたしは……今日からわたしは、「シャル」です」

 俺はアルフ。彼女はシャル。

「うむ。それじゃぁ行くか、シャル」

「はい、お兄様」

 俺とシャルの二人旅は、ここから始まる。
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