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人質
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しかし物事とは、一度悪い方向に考えると、とにかく悪い方に進んでいってしまうものだ。
コンコンコンコン、と慌てたようなドアノック。
「先生!先生!まだいますね!?」
ベン村長の声、それも必死な声色だ。
俺とシャルはもう一度玄関へ向かう。
「どうされましたか、ベン村長」
ドアを開ければ、ベン村長の奥さんもいる。
どうやら、かなりヤバそうな案件かもしれないが、努めて落ち着きを払いつつ応じる。
こういう時、慌てても慌てなくてもロクなことにならんからな。
「今家に戻ったら、これが……」
ベン村長は震える手で、その一枚の紙切れを見せた。
『娘の身柄は預かった。アルフレッド・ギャレットの身柄との交換を要求する。西の森にて待つ。刻限は日没前だ。 シグルド』
紙切れには、そう書かれている。
この『娘』と言うのは、言うまでもなくクリスさんのことだ。
「……そこまでして、何がなんでも俺を手に入れたいのか」
なんて奴らだ。
もし本当にサダルスウドにアルフレッド・ギャレットがいなかったら、クリスさんをどうするつもりだったのか。嫌な想像は出来るが、それはすぐに振り払う。
「先生……私は、どうすれば」
ベン村長は、恐らく悩んでいる。
俺とクリスさんを天秤にかければ、間違いなくクリスさんに傾けるだろう。
だが、俺を人身御供にするのも躊躇っているのだ。
この人は、村長としても家長としても父親としても、本当に良い人なんだ。
「お兄様……」
シャルが俺の左袖を掴む。
行かないでほしいのだろう。
当然だ、俺だって行きたくない。
だが、行かなければクリスさんが危ない。
俺は思考を回す。
こうなったのは、何故だ?
足跡を辿られてしまったのは間違いないだろう。
例えもし、俺がその冒険者パーティ――恐らく非合法な闇ギルドの連中だろう――を相手に大立ち回りを演じて撃退したとしても、『サダルスウドにアルフレッド・ギャレットがいる』と言う事実は確定してしまう。
そうなってしまえば、その後で俺とシャルが村から去ったとしても、同じことは起きるだろう。そして交渉に応じれずに――誰かが犠牲になる。
そんなことは絶対にダメだ。
……いや、闇ギルドの連中は依頼の元に今回の事を起こしたに過ぎない。
闇ギルドの連中に依頼をしたのは間違いなく、ガルシア・ギャレットだろう。
結論は出た。
「……ベン村長。俺を差し出してください」
「嫌です!!」
袖どころか、シャルは思い切り俺の腕を引っ張る。痛いぞ。
「お兄様は連れて行かせません!」
「まぁ待て、シャル」
ぽん、と落ち着けるようにシャルの頭に手を乗せる。
「俺が姿を見せないと、クリスさんが危ないんだ。それは分かるな?」
「分かってます!でもっ、お兄様がいなくなったら……!」
「勘違いするなよ、シャル」
「ど、どういうことですか?」
「つまりだな、クリスさんを解放させるために、俺は一旦奴らに捕まる。で、適当なところで隙を見て逃げる。ほらな、完璧だろ?」
「お兄様、そんな……」
俺はシャルをそっと抱き寄せた。
「ふぁにゃっ……?」
「大丈夫だ。ちょっとの間留守にするだけだ。必ず帰ってくる。義妹なら、お兄ちゃんの言うことはちゃんと信じるものだぞ」
ニコリと微笑んで、シャルを離して、ベン村長に向き直る。
「ベン村長。しばしの間、シャルをお願いします」
「アルフ先生……、……分かりました。必ずここへ帰ってきてください。男の約束ですよ」
「えぇ、男にだって二言くらいはありますが、三言目はありませんよ」
もちろん嘘は言っていない。
俺は必ずここに帰ってくる。
例え……瓦礫と屍の山を踏み台にしようともな。
コンコンコンコン、と慌てたようなドアノック。
「先生!先生!まだいますね!?」
ベン村長の声、それも必死な声色だ。
俺とシャルはもう一度玄関へ向かう。
「どうされましたか、ベン村長」
ドアを開ければ、ベン村長の奥さんもいる。
どうやら、かなりヤバそうな案件かもしれないが、努めて落ち着きを払いつつ応じる。
こういう時、慌てても慌てなくてもロクなことにならんからな。
「今家に戻ったら、これが……」
ベン村長は震える手で、その一枚の紙切れを見せた。
『娘の身柄は預かった。アルフレッド・ギャレットの身柄との交換を要求する。西の森にて待つ。刻限は日没前だ。 シグルド』
紙切れには、そう書かれている。
この『娘』と言うのは、言うまでもなくクリスさんのことだ。
「……そこまでして、何がなんでも俺を手に入れたいのか」
なんて奴らだ。
もし本当にサダルスウドにアルフレッド・ギャレットがいなかったら、クリスさんをどうするつもりだったのか。嫌な想像は出来るが、それはすぐに振り払う。
「先生……私は、どうすれば」
ベン村長は、恐らく悩んでいる。
俺とクリスさんを天秤にかければ、間違いなくクリスさんに傾けるだろう。
だが、俺を人身御供にするのも躊躇っているのだ。
この人は、村長としても家長としても父親としても、本当に良い人なんだ。
「お兄様……」
シャルが俺の左袖を掴む。
行かないでほしいのだろう。
当然だ、俺だって行きたくない。
だが、行かなければクリスさんが危ない。
俺は思考を回す。
こうなったのは、何故だ?
足跡を辿られてしまったのは間違いないだろう。
例えもし、俺がその冒険者パーティ――恐らく非合法な闇ギルドの連中だろう――を相手に大立ち回りを演じて撃退したとしても、『サダルスウドにアルフレッド・ギャレットがいる』と言う事実は確定してしまう。
そうなってしまえば、その後で俺とシャルが村から去ったとしても、同じことは起きるだろう。そして交渉に応じれずに――誰かが犠牲になる。
そんなことは絶対にダメだ。
……いや、闇ギルドの連中は依頼の元に今回の事を起こしたに過ぎない。
闇ギルドの連中に依頼をしたのは間違いなく、ガルシア・ギャレットだろう。
結論は出た。
「……ベン村長。俺を差し出してください」
「嫌です!!」
袖どころか、シャルは思い切り俺の腕を引っ張る。痛いぞ。
「お兄様は連れて行かせません!」
「まぁ待て、シャル」
ぽん、と落ち着けるようにシャルの頭に手を乗せる。
「俺が姿を見せないと、クリスさんが危ないんだ。それは分かるな?」
「分かってます!でもっ、お兄様がいなくなったら……!」
「勘違いするなよ、シャル」
「ど、どういうことですか?」
「つまりだな、クリスさんを解放させるために、俺は一旦奴らに捕まる。で、適当なところで隙を見て逃げる。ほらな、完璧だろ?」
「お兄様、そんな……」
俺はシャルをそっと抱き寄せた。
「ふぁにゃっ……?」
「大丈夫だ。ちょっとの間留守にするだけだ。必ず帰ってくる。義妹なら、お兄ちゃんの言うことはちゃんと信じるものだぞ」
ニコリと微笑んで、シャルを離して、ベン村長に向き直る。
「ベン村長。しばしの間、シャルをお願いします」
「アルフ先生……、……分かりました。必ずここへ帰ってきてください。男の約束ですよ」
「えぇ、男にだって二言くらいはありますが、三言目はありませんよ」
もちろん嘘は言っていない。
俺は必ずここに帰ってくる。
例え……瓦礫と屍の山を踏み台にしようともな。
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