【完結】可愛い義妹のためならば 〜超絶シスコン兄貴の異世界無双〜

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)

文字の大きさ
69 / 76

人質

しおりを挟む
 しかし物事とは、一度悪い方向に考えると、とにかく悪い方に進んでいってしまうものだ。

 コンコンコンコン、と慌てたようなドアノック。

「先生!先生!まだいますね!?」

 ベン村長の声、それも必死な声色だ。

 俺とシャルはもう一度玄関へ向かう。

「どうされましたか、ベン村長」

 ドアを開ければ、ベン村長の奥さんもいる。
 どうやら、かなりヤバそうな案件かもしれないが、努めて落ち着きを払いつつ応じる。
 こういう時、慌てても慌てなくてもロクなことにならんからな。

「今家に戻ったら、これが……」

 ベン村長は震える手で、その一枚の紙切れを見せた。

『娘の身柄は預かった。アルフレッド・ギャレットの身柄との交換を要求する。西の森にて待つ。刻限は日没前だ。 シグルド』

 紙切れには、そう書かれている。
 この『娘』と言うのは、言うまでもなくクリスさんのことだ。

「……そこまでして、何がなんでも俺を手に入れたいのか」

 なんて奴らだ。
 もし本当にサダルスウドにアルフレッド・ギャレットがいなかったら、クリスさんをどうするつもりだったのか。嫌な想像は出来るが、それはすぐに振り払う。

「先生……私は、どうすれば」

 ベン村長は、恐らく悩んでいる。
 俺とクリスさんを天秤にかければ、間違いなくクリスさんに傾けるだろう。
 だが、俺を人身御供にするのも躊躇っているのだ。
 この人は、村長としても家長としても父親としても、本当に良い人なんだ。

「お兄様……」

 シャルが俺の左袖を掴む。
 行かないでほしいのだろう。
 当然だ、俺だって行きたくない。
 だが、行かなければクリスさんが危ない。

 俺は思考を回す。
 こうなったのは、何故だ?
 足跡を辿られてしまったのは間違いないだろう。

 例えもし、俺がその冒険者パーティ――恐らく非合法な闇ギルドの連中だろう――を相手に大立ち回りを演じて撃退したとしても、『サダルスウドにアルフレッド・ギャレットがいる』と言う事実は確定してしまう。

 そうなってしまえば、その後で俺とシャルが村から去ったとしても、同じことは起きるだろう。そして交渉に応じれずに――誰かが犠牲になる。

 そんなことは絶対にダメだ。

 ……いや、闇ギルドの連中は依頼の元に今回の事を起こしたに過ぎない。
 闇ギルドの連中に依頼をしたのは間違いなく、ガルシア・ギャレットだろう。

 結論は出た。

「……ベン村長。俺を差し出してください」

「嫌です!!」

 袖どころか、シャルは思い切り俺の腕を引っ張る。痛いぞ。

「お兄様は連れて行かせません!」

「まぁ待て、シャル」

 ぽん、と落ち着けるようにシャルの頭に手を乗せる。

「俺が姿を見せないと、クリスさんが危ないんだ。それは分かるな?」

「分かってます!でもっ、お兄様がいなくなったら……!」

「勘違いするなよ、シャル」

「ど、どういうことですか?」

「つまりだな、クリスさんを解放させるために、俺は一旦奴らに捕まる。で、適当なところで隙を見て逃げる。ほらな、完璧だろ?」

「お兄様、そんな……」

 俺はシャルをそっと抱き寄せた。

「ふぁにゃっ……?」

「大丈夫だ。ちょっとの間留守にするだけだ。必ず帰ってくる。義妹なら、お兄ちゃんの言うことはちゃんと信じるものだぞ」

 ニコリと微笑んで、シャルを離して、ベン村長に向き直る。

「ベン村長。しばしの間、シャルをお願いします」

「アルフ先生……、……分かりました。必ずここへ帰ってきてください。男の約束ですよ」

「えぇ、男にだって二言くらいはありますが、三言目はありませんよ」

 もちろん嘘は言っていない。
 俺は必ずここに帰ってくる。

 例え……瓦礫と屍の山を踏み台にしようともな。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

安全第一異世界生活

ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん) 新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!

処理中です...