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鉄拳制裁その2
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シャルと共に廊下を駆けながらも、追手を封じ込めるように火球をばら撒いていく。
火球が着弾、炸裂した場所は漏れなく炎上だ。
「お、お兄様っ、いくらなんでも燃やし過ぎでは……!?」
「あぁ、その通りだシャル。俺は徹底的に燃やすつもりだからな」
以前に邸を燃やした時は、俺とシャルがトンズラ出来ればいい程度には加減をしていたからな。
だが、今回そのつもりはない。
もう二度とふざけたことをさせないように、ガルシアの息の根もろともこの邸を完全に焼き払う。
例え何人が死ぬことになろうとも構わない。
地獄行きなんざ死んでからで十分だ。
「シャル、脱出する前にちょっとだけ寄り道するぞ」
「寄り道、ですか?」
「そうだ、必要なことだからな」
そう言いつつ、俺達の足は外ではなく、ある方向に向けられる。
時折向かってくる衛兵は、俺が魔法で動きを鈍らせ、そこをシャルが殺さない程度ではあるが、手や足を攻撃して無力化させる。
魔法だけでは対処しきれない場合は、やむを得ないが俺自身も奪い取ったサーベルで斬らせてもらう。
許せとは言わないよ、あの世で思い切り恨んでくれ。
邸宅がにわかに騒がしくなり、あちらこちらで炎が燃え盛っているのを見たガルシアは、寝室のベッドの上で悪態をついた。
「アルフレッドめ!どこまで私に楯突くつもりだ!」
ともかく、持てるだけの私財を抱え込んで身の着のままで避難しようとするガルシアだが、
不意に寝室のドアが蹴破られた。
「こんばんは、ガルシア殿。こんな夜更けにどこへ逃げようと言うのですか?」
燃える廊下を背景に、血塗られたサーベルを片手にしたアルフレッドと、シャルロットが現れた。
廊下の炎が寝室にまで広がる中、呑気に世間話でもするように、俺はゆっくりとガルシアに一歩踏み出す。
「よくもまぁ闇ギルドの連中を使ってまで、俺をこんなところまで帰してくれたな?」
「き……貴様、親に刃を向けるつもりか!育てやった恩も忘れ、殺すというのか!」
「恩を忘れたつもりはない。ただ親離れをしただけだ。その親離れを、あんたが拒んだだけだ。阿漕なことをしてまでな」
「何が親離れだ、何が阿漕なことだ!お前は私の言うことを黙って聞いていれば、それでよかったのだ!」
「俺の人生は俺が決める。あんたの人生の一部じゃない」
「なのに、そんな『なんの価値もない小娘』などにかまけおってからに……」
なんの価値もない小娘だと?
それはシャルに向けての言葉か?
怒りと殺意が跳ね上がり、俺はサーベルを構え直そうとして、
「無価値なんかじゃありません!!」
空気を切り裂くような鋭い、シャルの声。
「あなたにとっては、わたしはなんの価値もない小娘でしょう。でも、お兄様や村の皆さんはわたしのことを必要としてくれました!」
ぎゅっと、俺の服を掴む。
あなたなんかにお兄様を奪わせはしない、と訴えるように。
「わたしは、『わたしが居ていい場所』に帰ります!お兄様と一緒に!」
「そうだ、シャル。よく言った」
ポン、とシャルの頭に手を添える。
「俺の人生は俺が決めるように、シャルの人生はシャルが決めるんだ」
「黙れ!お前もシャルロットも、何故私の言うことを聞かんのだ!?大人しく私に従っていれば、幸福を与えてやることも出……」
なおも喚くガルシアを黙らせるように、俺はサーベルを手放し、シャルの手をそっと離すと、
ガルシアの頬を思い切りぶん殴った。
「がっ、なっ、な……!?」
「望まずに与えられる幸福が、幸せに繋がるとは限らないんだよ」
続いて数歩引いた俺は、天井に向けて火球を放った。
炸裂、焼け崩れた天井が燃える瓦礫となって、俺とガルシアの間を立ち塞ぐ。
「今生の別れだ、『父上』」
それだけ言い残してから、俺はシャルを連れて再び燃える廊下の中を駆け出す。
もうこの邸も保たないだろう。
俺の背後で、ガルシアが項垂れるのが後ろ目で見えた。
……何ていうか、俺も甘いよなぁ。
ガルシア・ギャレットの息の根を止める、なんて意気込んでいた割には、シャルの強い意志を聞いたせいか、土壇場になって情けをかけてしまった。
最後にガルシアを「父上」と無意識に言ったのも、俺自身"父親"と言う概念にそれほど悪感情を抱いていないからか。
……そうだ、"アルフレッド"としての昔の記憶にいたガルシアも、人情家で良き父親だった。
けれど、愛人がシャルロットを出産したことによってどこか狂い始めて……
その結末が、これか。
だが、後悔はしないし、謝りもしない。
これが俺の望んだ……いや、妥協した結果なのだと。
俺は自分の実家を二度も焼いた。
多くの人間も殺したし、死なせた。
こりゃ、地獄行きだけじゃ済まないかもなぁ……
けれど、もはや振り向くまい。
俺は、義妹に幸せな未来を約束すると決めたのだから。
火球が着弾、炸裂した場所は漏れなく炎上だ。
「お、お兄様っ、いくらなんでも燃やし過ぎでは……!?」
「あぁ、その通りだシャル。俺は徹底的に燃やすつもりだからな」
以前に邸を燃やした時は、俺とシャルがトンズラ出来ればいい程度には加減をしていたからな。
だが、今回そのつもりはない。
もう二度とふざけたことをさせないように、ガルシアの息の根もろともこの邸を完全に焼き払う。
例え何人が死ぬことになろうとも構わない。
地獄行きなんざ死んでからで十分だ。
「シャル、脱出する前にちょっとだけ寄り道するぞ」
「寄り道、ですか?」
「そうだ、必要なことだからな」
そう言いつつ、俺達の足は外ではなく、ある方向に向けられる。
時折向かってくる衛兵は、俺が魔法で動きを鈍らせ、そこをシャルが殺さない程度ではあるが、手や足を攻撃して無力化させる。
魔法だけでは対処しきれない場合は、やむを得ないが俺自身も奪い取ったサーベルで斬らせてもらう。
許せとは言わないよ、あの世で思い切り恨んでくれ。
邸宅がにわかに騒がしくなり、あちらこちらで炎が燃え盛っているのを見たガルシアは、寝室のベッドの上で悪態をついた。
「アルフレッドめ!どこまで私に楯突くつもりだ!」
ともかく、持てるだけの私財を抱え込んで身の着のままで避難しようとするガルシアだが、
不意に寝室のドアが蹴破られた。
「こんばんは、ガルシア殿。こんな夜更けにどこへ逃げようと言うのですか?」
燃える廊下を背景に、血塗られたサーベルを片手にしたアルフレッドと、シャルロットが現れた。
廊下の炎が寝室にまで広がる中、呑気に世間話でもするように、俺はゆっくりとガルシアに一歩踏み出す。
「よくもまぁ闇ギルドの連中を使ってまで、俺をこんなところまで帰してくれたな?」
「き……貴様、親に刃を向けるつもりか!育てやった恩も忘れ、殺すというのか!」
「恩を忘れたつもりはない。ただ親離れをしただけだ。その親離れを、あんたが拒んだだけだ。阿漕なことをしてまでな」
「何が親離れだ、何が阿漕なことだ!お前は私の言うことを黙って聞いていれば、それでよかったのだ!」
「俺の人生は俺が決める。あんたの人生の一部じゃない」
「なのに、そんな『なんの価値もない小娘』などにかまけおってからに……」
なんの価値もない小娘だと?
それはシャルに向けての言葉か?
怒りと殺意が跳ね上がり、俺はサーベルを構え直そうとして、
「無価値なんかじゃありません!!」
空気を切り裂くような鋭い、シャルの声。
「あなたにとっては、わたしはなんの価値もない小娘でしょう。でも、お兄様や村の皆さんはわたしのことを必要としてくれました!」
ぎゅっと、俺の服を掴む。
あなたなんかにお兄様を奪わせはしない、と訴えるように。
「わたしは、『わたしが居ていい場所』に帰ります!お兄様と一緒に!」
「そうだ、シャル。よく言った」
ポン、とシャルの頭に手を添える。
「俺の人生は俺が決めるように、シャルの人生はシャルが決めるんだ」
「黙れ!お前もシャルロットも、何故私の言うことを聞かんのだ!?大人しく私に従っていれば、幸福を与えてやることも出……」
なおも喚くガルシアを黙らせるように、俺はサーベルを手放し、シャルの手をそっと離すと、
ガルシアの頬を思い切りぶん殴った。
「がっ、なっ、な……!?」
「望まずに与えられる幸福が、幸せに繋がるとは限らないんだよ」
続いて数歩引いた俺は、天井に向けて火球を放った。
炸裂、焼け崩れた天井が燃える瓦礫となって、俺とガルシアの間を立ち塞ぐ。
「今生の別れだ、『父上』」
それだけ言い残してから、俺はシャルを連れて再び燃える廊下の中を駆け出す。
もうこの邸も保たないだろう。
俺の背後で、ガルシアが項垂れるのが後ろ目で見えた。
……何ていうか、俺も甘いよなぁ。
ガルシア・ギャレットの息の根を止める、なんて意気込んでいた割には、シャルの強い意志を聞いたせいか、土壇場になって情けをかけてしまった。
最後にガルシアを「父上」と無意識に言ったのも、俺自身"父親"と言う概念にそれほど悪感情を抱いていないからか。
……そうだ、"アルフレッド"としての昔の記憶にいたガルシアも、人情家で良き父親だった。
けれど、愛人がシャルロットを出産したことによってどこか狂い始めて……
その結末が、これか。
だが、後悔はしないし、謝りもしない。
これが俺の望んだ……いや、妥協した結果なのだと。
俺は自分の実家を二度も焼いた。
多くの人間も殺したし、死なせた。
こりゃ、地獄行きだけじゃ済まないかもなぁ……
けれど、もはや振り向くまい。
俺は、義妹に幸せな未来を約束すると決めたのだから。
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