星の王〜能力覚醒で無双開始。もう遅いなんて事ないから首を洗って待ってろよ殺してやるからな。

草間保浩

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第五十二話

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 セナは次の日、ラングの相手をすると決めた。
ユゥリとベルモットには買い出しを頼み、しゃがみ込んで目も合わせてくれなくなったラングの正面を陣取り、腰を据えて見つめる。

「……どこから話したらいいかな。」
「……」
「俺は昔、あるパーティで足手まといだった。そんで、積もりに積もって見捨てられて、命からがらこの国に来た。そこからもいろいろあって、一時は全部ぶっ殺そうって思ってたんだ。」
「……」
「でも、ユゥリやベルモットに会って、いろんな人とかかわって、それは違うかなって思ってきてるんだ。」
「……」
「多分、俺は名前を知って関わって、話をしたような相手が死んでしまうのが苦しいような、そんな人間なんだ。」
「……」
「ラングはどうだ?死にたいのか?それとも、こんな状況になった原因のだれかに復讐したいとか、そういうことを考えてたりするのか?」
「……い。」
「俺もな、前のパーティのやつらを実際許せない。けど、それでも殺したいだけで死んだらきっと悲しむと思う。変だろ?」
「……さい。」
「幼馴染がいて、結婚の約束とかもしてたのに、勇者と婚約したって時もアレだったけど、その二人も殺したくなって暴走したことがあるんだ。」
「……るさい。」
「俺にとって大切なのはユゥリとベルモットの二人。それは揺るがないけど、二番目以下なら問題なく切り捨てられるわけじゃなくて———」
「うるさい!!」


 ラングは立ち上がり、セナの顔を平手でぶった。
ばしんっと乾いた響く良い音が鳴り、セナのそれなりに白い肌がやや赤らむ。

 そして、再び反対の手でばしんっと平手を打ち、セナの鼻からは血が垂れる。

 それも意に介さず、ラングは叫ぶ。

「うるっさいうるさいうるさい!!聞いても無いことだらだら喋って!なんで放ってくれないの!!殺すつもりもない臆病者!!あんたみたいなのが一番気持ち悪いの!!私はもう利用されない!!私の意思で殺されること以外望んでない!!あんたの身の上もどうでもいいの!!ほんとにきもいきもいきもい!!!」

 地団太を踏むように、癇癪でも起こしたように叫ぶラング。
その一言一句を、セナは聞き逃さない。

 鼻血すら拭わず、鼓膜が破れていても構わないとばかりに、ラングの悲鳴を受け止める。

「わたっ、私は!剣も槍も作っただけなのに!!国家転覆なんてやってないのに!あんたみたいな自己中野郎が!私をっ!うっ、うぅうううう!!あああああああああ!!!」

 ついにはセナの顔面をグーで殴りはじめ、肉体強度での受けをしないセナの顔は相応にボコボコになっていく。

「死ね!!死ね!みんな死ね!クソッ!殺してよ!もう楽にして!もういや!!こんな世界に生きていたくない!殺して殺して殺して!!やああああああ!!!!」

 ついにはラングの手からも血が滲み、それでも殴る手は止まらない。
ボコボコボッコボッコ。
 腰の入った良い拳を、顔面だけで受け止める。

 最適な行動かはわからないが、セナは自分の気持ちを相手に伝えたい。
相手の気持ちを伝えてほしい。

「ああああああああ!!」

 泣き叫ぶ声で拳が止まる。
その一秒をセナは見逃さない。

 反撃ではない。防御でも回復でもない。

ただ軽く、自分の鼓動と相手の鼓動を合わせるような抱擁だけを

「うわああああああん!!!」

 泣き腫らすラングは剝がせない。


◇◆◇


「悪かったわね。顔、大丈夫?」
「ああ、ベルモットが回復魔法を使える。昼頃には帰ってくるだろう。」

 抱きしめられた体勢のまま、ラングはセナに尋ねる。

「なんで、私なの?」
「というと?」
「どうせスキルが見えたからでしょ?ほんとはスキル目的だったんでしょ?」
「まあ、最初はそうだった。」
「……」
「でも、ラングのことを実際に見たらそれ以外にも思うことがあったんだ。」
「……サイテー」

 ラングの警戒心が0になるのはまだまだ先のことだろう。
しかし、最初の一歩をセナは踏み込めた。
 今日のところはそれで十分な成果だと思おう。
 そう思いたいところ。

 だから、そのまま二人して寝落ちしてしまい、帰ってきた二人に鬼詰めされてしまっても、今日の功労者はセナで間違いないのだ。
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