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第七十四話
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「無事でよかった。」
「心配かけたな。」
南側の城壁の上で、セナ達の到着を待っていたラングとGの二人と合流した。
二人とも落ち着かずにずっと塔を見ていたらしく、白みがかった空の下でセナ達を待って立っていた。
特にGなんかは、装備を整えて塔に突撃する気満々だった。
「ふははははは!この俺の新しい力を見るが良い!!」
「セナってこんな感じだったっけ。」
「ええ、取り繕って無理してる感じが可愛いでしょ?」
「えぇ……?」
「ふふっ、そうですね。」
「ぇえぇ……」
独特ないちゃつきを見せつけられて、ラングは困惑するしかなかった。
「しかし、アンタの事についてまるで何もなかったわね。まあ、厄介ごとが無ければない方が良いに決まってるわ。」
「んんっ、そうだ。過去のこととか、そういうのは軽率に話すもんじゃないな。」
国家転覆未遂がどうとか、そんな話をしていたのに、関係者はおそらく全員塔に成って勇者の力に成ってしまった。
そのせいで、ラングの報復については完全に白紙。過去のことについて愚痴った結果だけが残ってしまった。
そのことについて指摘されたラングは、恥ずかしそうに顔を背け、咳払いで誤魔化す。
「急ぎの旅だろう!ちゃっちゃとこの都から離れるよ!!」
『はーい』
ラングの音頭に合わせて、みんな一斉に歩き出す。
壁上から降りた五人が見渡すのは、一面の砂と雪。
砂漠と雪山が同時に存在しているようなそんな光景に向かって、五人は迷わず歩き始めた。
◇◆◇
旅路は次の街に着くまで、七日と半日を要し、食料品もギリギリの状況でたどり着いたその場所では、目を疑うような光景が広がっていた。
「あれは、猫?豚に、魚まで歩いてる。」
「色も普通の動物よりもトンチキというか、意味が分からんな」
「あの緑の羊と赤の羊は、同種ということでよろしいのでしょうか。」
「まさかこんなおとぎ話のような街があるなんて。」
各々が口々に見た景色の感想を述べ、それぞれがお上りさんのようにきょろきょろと辺りを見渡す。
「まるで、動物の国だな。」
見渡す限りにいる人の姿が、何かしらの動物を無理やり人にしたような見た目をしている。
魚も鳥も二足歩行をして歩き、虹よりも彩り豊かな体色が入り乱れている。
「魔物とも違う。熱を出したときに見る夢みたいな存在だな。」
歩き回っているのが、獣人や亜人、魔人と呼ばれる人間とは別の進化を辿った知的生命体。
人間に話せば顔を顰めること間違いなしではあるが、間違いなくヒトの別種である。
「おい、あれってニンゲンじゃ。」
「うそっ!?もしかして、ニンゲンの侵略じゃ」
「ひぃっ!お、おらぁ、悪いことさしでねがぁ!!」
セナ達を見た人々は徐々に混乱を広げ、その混乱は更なる混乱を産む。
セナ達は人間であるというだけで、魔人たちにとって畏怖と嫌悪の対象であり、その場にいることが間違いな立場ということになる。
「特にあの雄ニンゲン!よくわからないが雰囲気がヤバい!殺される!」
「たしかに!は、はやく将軍か誰か強い人を!」
特に、Gの悪評(偏見)はここでも絶好調のようで、ニンゲンの容姿や表情を認識することが難しい魔人たちにすら、謎の誤解をされているらしい。
もはや呪いと言っても差し支えないGの人相の悪さにドン引きしつつ、セナ達はどこか買い物ができそうな場所を探し、人目を気にせずにずかずかと歩いて行った。
その結果は
「きょ、今日はもう閉店!」
「ニンゲン野郎がおれの店の敷居を跨ぐんじゃねぇ!!」
「ひぃっ!た、た、たべないでけろぉ!!」
「よよ、寄るな!衛兵!えいへーい!!」
惨敗。宿も取れず食料を調達できそうな店も無く、挙句に衛兵を呼ばれて詰所に連行されてしまった。
ゴリラ顔に囲まれ、三人とGを守るために気を張っているセナだったが、それも杞憂に終わる。
「すまないな。ここは人魔の戦争の最前線。傷も癒えていないこの土地でニンゲンはあまりにも悪目立ちする。」
そう言ったのは、黒いゴリラ。
七人のゴリラのセンターをとっているし、この中で役職が上なゴリラなのかもしれない。
「留置所の一つを君たちの部屋として使ってほしい。携帯の食料品や食事もこちらで用意する。要望があれば言ってほしい。ニンゲンの生活習慣には無知なものだからな。」
「なんでこんなに手厚いんだ?」
「言ったろう。虎は歓迎するが、トラブルは遠慮してもらいたい。俺達は戦争の辛さ、絶望を知っているからこそ、平時は穏便で平穏な生活を心がけている。そのための支出は惜しまないだけだ。」
ちょくちょく寒いギャグを挟むが、その声音と表情は真剣そのもの。
ゴリラの表情とか読めるわけではないが、なんとなくそんな感じがする。
ともかく、ゴリラの言い分を信じたセナは言われた通りに大人しくすることに決め、四人にもそれを言い含めた。
「我々について聞きたいことがあればなんでも聞いてくれ。」
「はい」
「はい、そこのタヌキより胡散臭そうなニンゲン」
「ゴリとかウホとか言わないんですね。」
「ぶち殺すウホ。」
なんだかんだと気のいいゴリラたちに歓迎されながら、セナ達の留置所生活が幕を開けた。
「心配かけたな。」
南側の城壁の上で、セナ達の到着を待っていたラングとGの二人と合流した。
二人とも落ち着かずにずっと塔を見ていたらしく、白みがかった空の下でセナ達を待って立っていた。
特にGなんかは、装備を整えて塔に突撃する気満々だった。
「ふははははは!この俺の新しい力を見るが良い!!」
「セナってこんな感じだったっけ。」
「ええ、取り繕って無理してる感じが可愛いでしょ?」
「えぇ……?」
「ふふっ、そうですね。」
「ぇえぇ……」
独特ないちゃつきを見せつけられて、ラングは困惑するしかなかった。
「しかし、アンタの事についてまるで何もなかったわね。まあ、厄介ごとが無ければない方が良いに決まってるわ。」
「んんっ、そうだ。過去のこととか、そういうのは軽率に話すもんじゃないな。」
国家転覆未遂がどうとか、そんな話をしていたのに、関係者はおそらく全員塔に成って勇者の力に成ってしまった。
そのせいで、ラングの報復については完全に白紙。過去のことについて愚痴った結果だけが残ってしまった。
そのことについて指摘されたラングは、恥ずかしそうに顔を背け、咳払いで誤魔化す。
「急ぎの旅だろう!ちゃっちゃとこの都から離れるよ!!」
『はーい』
ラングの音頭に合わせて、みんな一斉に歩き出す。
壁上から降りた五人が見渡すのは、一面の砂と雪。
砂漠と雪山が同時に存在しているようなそんな光景に向かって、五人は迷わず歩き始めた。
◇◆◇
旅路は次の街に着くまで、七日と半日を要し、食料品もギリギリの状況でたどり着いたその場所では、目を疑うような光景が広がっていた。
「あれは、猫?豚に、魚まで歩いてる。」
「色も普通の動物よりもトンチキというか、意味が分からんな」
「あの緑の羊と赤の羊は、同種ということでよろしいのでしょうか。」
「まさかこんなおとぎ話のような街があるなんて。」
各々が口々に見た景色の感想を述べ、それぞれがお上りさんのようにきょろきょろと辺りを見渡す。
「まるで、動物の国だな。」
見渡す限りにいる人の姿が、何かしらの動物を無理やり人にしたような見た目をしている。
魚も鳥も二足歩行をして歩き、虹よりも彩り豊かな体色が入り乱れている。
「魔物とも違う。熱を出したときに見る夢みたいな存在だな。」
歩き回っているのが、獣人や亜人、魔人と呼ばれる人間とは別の進化を辿った知的生命体。
人間に話せば顔を顰めること間違いなしではあるが、間違いなくヒトの別種である。
「おい、あれってニンゲンじゃ。」
「うそっ!?もしかして、ニンゲンの侵略じゃ」
「ひぃっ!お、おらぁ、悪いことさしでねがぁ!!」
セナ達を見た人々は徐々に混乱を広げ、その混乱は更なる混乱を産む。
セナ達は人間であるというだけで、魔人たちにとって畏怖と嫌悪の対象であり、その場にいることが間違いな立場ということになる。
「特にあの雄ニンゲン!よくわからないが雰囲気がヤバい!殺される!」
「たしかに!は、はやく将軍か誰か強い人を!」
特に、Gの悪評(偏見)はここでも絶好調のようで、ニンゲンの容姿や表情を認識することが難しい魔人たちにすら、謎の誤解をされているらしい。
もはや呪いと言っても差し支えないGの人相の悪さにドン引きしつつ、セナ達はどこか買い物ができそうな場所を探し、人目を気にせずにずかずかと歩いて行った。
その結果は
「きょ、今日はもう閉店!」
「ニンゲン野郎がおれの店の敷居を跨ぐんじゃねぇ!!」
「ひぃっ!た、た、たべないでけろぉ!!」
「よよ、寄るな!衛兵!えいへーい!!」
惨敗。宿も取れず食料を調達できそうな店も無く、挙句に衛兵を呼ばれて詰所に連行されてしまった。
ゴリラ顔に囲まれ、三人とGを守るために気を張っているセナだったが、それも杞憂に終わる。
「すまないな。ここは人魔の戦争の最前線。傷も癒えていないこの土地でニンゲンはあまりにも悪目立ちする。」
そう言ったのは、黒いゴリラ。
七人のゴリラのセンターをとっているし、この中で役職が上なゴリラなのかもしれない。
「留置所の一つを君たちの部屋として使ってほしい。携帯の食料品や食事もこちらで用意する。要望があれば言ってほしい。ニンゲンの生活習慣には無知なものだからな。」
「なんでこんなに手厚いんだ?」
「言ったろう。虎は歓迎するが、トラブルは遠慮してもらいたい。俺達は戦争の辛さ、絶望を知っているからこそ、平時は穏便で平穏な生活を心がけている。そのための支出は惜しまないだけだ。」
ちょくちょく寒いギャグを挟むが、その声音と表情は真剣そのもの。
ゴリラの表情とか読めるわけではないが、なんとなくそんな感じがする。
ともかく、ゴリラの言い分を信じたセナは言われた通りに大人しくすることに決め、四人にもそれを言い含めた。
「我々について聞きたいことがあればなんでも聞いてくれ。」
「はい」
「はい、そこのタヌキより胡散臭そうなニンゲン」
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「ぶち殺すウホ。」
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