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第4話 家族へ報告しよう!
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奇妙な巡り合いの末、俺はダンジョン部へと入部する事に。
それでさっそく明日の早朝に学校へ来るよう伝えられ、この日は終わった。
けど俺としては久しぶりに他人と話せた日だったから面白かったな。
やはり二つ隣の街の高校を選んだ甲斐があった。
下手に地元に近いとまた孤立させられかねないし。
あんな寂しい想いをしながら毎日を過ごすのはもう御免だ。
そんな昔の苦い過去を思い出しながら、バスを乗り継いで家路に就く。
それでさらに少しだけ歩けばようやく家前へと到着だ。
初めての場所の移動だとやっぱり少し疲れるかな。
――おや?
すると家の垣根の影から、ふと何かフリフリしているのが見えた。
小さくとも太くて柔らかく動くものが。
ははーん、さてはあれ……『コン』だな!
外で俺の帰りを待ってくれていたのかな?
ならばと、俺は敢えて気付かないフリをして入口まで歩いていく。
そうしたら突然、小さな毛玉がピョンと飛び出し、俺の胴へとしがみついた。
『おかえり、カナタ!』
「おおう! ただいま、コン! もしかしてずっと待っててくれたのか!?」
『当然さ! だってカナタはボクの大事な親友で家族だもの!』
さらには「ヨイショヨイショ」とよじ登り、俺の肩に乗ってチョコンと座る。
キツネみたいな姿なのに小さいから、相変わらず何でも一生懸命に見えるな!
ついでにモッフモフの尻尾が首に当たってとても心地良い。最高のご褒美だ。
『今日の初めてのガッコ、どうだった!?』
「うん、思ったより良かったよ。少なくとも今までみたいにはならないと思う」
『よかった。ボク心配だったんだ。また昔みたいにみんなから嫌われたらどうしようかって』
「その心配はもういらないかもしれないな。俺、もしかしたらもうすぐ友達ができるかもしれないから。部活に入ったんだ。ダンジョン部っていうのに」
『へぇ! じゃあその話、聞かせてよ!』
「それはまず家に帰ってからにしようか」
『ウン! 楽しみー!』
そんな相棒を乗せつつ、軒下を越えて家へと帰る。
ここを通るといつも思い出すな、コンとの出会いの事を。
あの時はまだ物心ついて間もない頃だったか。
――父さんが俺を外へ連れ出してくれたあの日、コンは一人で軒下にいた。
最初は牙を剥いてきたけど、何度も会う内に自然と仲良くなってたな。
そうして気付けば親友となり、家族同然に暮らしてきた。
今ではこうして会話を交わせるくらいにさえなっているほどだ。
こんな素敵な相棒がいてくれたから俺は今でもマトモでいられる。
そうでなければきっと、人生すら棄てていたかもしれないのだから。
……ああいけない、嫌な思い出がまた蘇ってきた。
これも忘れられない記憶だからな。思い出したくもないけれど。
あの事件は小学生になってすぐの頃。
始まりは『彼女』が俺に「友達になってあげる!」と言ってきた事だったか。
だから俺はコンの紹介をしたくて『彼女』やその取り巻きを家に呼んだ。
けど、『彼女』達はなぜか俺の家まで辿り着く事ができなかった。
それで『彼女』は「大嘘つき!」と罵倒してきたっけ。
俺はただコンを紹介したかっただけなのに、それさえも叶わなくて。
しかも『彼女』はなんでも大金持ちのお嬢様だったらしい。
その影響力はとても強く、街中の人間が同調してしまうほどだった。
おかげで俺は生徒のみならず教師からも「大嘘つき」扱い。
街の人間も俺や家族を忌み嫌い、疎外し、存在さえ否定してきた。
成績にまで著しい悪影響を及ぼすまでに。
そんな迫害は『彼女』が実家の都合でいなくなった後もずっと続いた。
おかげさまで、俺に人間の友達は一人もいないときたもんだ。
けど、それでも――
「あっ! おかえりなさい、彼方っ」
「ただいま、母さん」
こうしていつも優しく接してくれる母さんや父さんがいる。
そして親友のコンもいてくれる。
「あれ、今日はいつも着てる着物じゃないんだ?」
「そうなの! 実はこっそり仕立てていてねぇ、今日は彼方が入学式だからってお祝いしたくて間に合わせたのよ!」
「そうだったんだ。すみれ色の着物、似合ってるよ」
「うふふっ、ありがとう~! 今日はごちそうよ~!」
『わーい、ごちそうだー!』
だから寂しくなんてない。
嫌な記憶を思い出したとしても、俺は決して折れずに生きられるんだ。
だってこんなに温かい家族を悲しませるなんて、絶対に嫌だから。
「そういえば母さん。俺さ、部活に入れたよ」
「本当!? どんな部活!?」
「ダンジョン部ってトコ」
「まぁ、面白そうな響きねぇ~知らないけど!」
「すごく危ない所に行くんだってさ。それでこの『参加承諾書』に印鑑が欲しいんだって」
「あらまぁ。でも彼方が行きたいなら止めないわ。血判でいいかしら?」
「うん、たぶんそれでいいんじゃないかな」
こう話を付けた所で、俺はギャル先輩――もとい早矢川 澪奈部長から預かった書類を母さんに渡す。
これが無いとダンジョンに入る事ができないというので。
でもすぐに判を押してもらえたし、これでもう何も心配はいらないな。
あとは父さんが戻って来た時にでも今日の出来事を語るとしよう。
みんな、楽しんでくれるといいなぁ。
それでさっそく明日の早朝に学校へ来るよう伝えられ、この日は終わった。
けど俺としては久しぶりに他人と話せた日だったから面白かったな。
やはり二つ隣の街の高校を選んだ甲斐があった。
下手に地元に近いとまた孤立させられかねないし。
あんな寂しい想いをしながら毎日を過ごすのはもう御免だ。
そんな昔の苦い過去を思い出しながら、バスを乗り継いで家路に就く。
それでさらに少しだけ歩けばようやく家前へと到着だ。
初めての場所の移動だとやっぱり少し疲れるかな。
――おや?
すると家の垣根の影から、ふと何かフリフリしているのが見えた。
小さくとも太くて柔らかく動くものが。
ははーん、さてはあれ……『コン』だな!
外で俺の帰りを待ってくれていたのかな?
ならばと、俺は敢えて気付かないフリをして入口まで歩いていく。
そうしたら突然、小さな毛玉がピョンと飛び出し、俺の胴へとしがみついた。
『おかえり、カナタ!』
「おおう! ただいま、コン! もしかしてずっと待っててくれたのか!?」
『当然さ! だってカナタはボクの大事な親友で家族だもの!』
さらには「ヨイショヨイショ」とよじ登り、俺の肩に乗ってチョコンと座る。
キツネみたいな姿なのに小さいから、相変わらず何でも一生懸命に見えるな!
ついでにモッフモフの尻尾が首に当たってとても心地良い。最高のご褒美だ。
『今日の初めてのガッコ、どうだった!?』
「うん、思ったより良かったよ。少なくとも今までみたいにはならないと思う」
『よかった。ボク心配だったんだ。また昔みたいにみんなから嫌われたらどうしようかって』
「その心配はもういらないかもしれないな。俺、もしかしたらもうすぐ友達ができるかもしれないから。部活に入ったんだ。ダンジョン部っていうのに」
『へぇ! じゃあその話、聞かせてよ!』
「それはまず家に帰ってからにしようか」
『ウン! 楽しみー!』
そんな相棒を乗せつつ、軒下を越えて家へと帰る。
ここを通るといつも思い出すな、コンとの出会いの事を。
あの時はまだ物心ついて間もない頃だったか。
――父さんが俺を外へ連れ出してくれたあの日、コンは一人で軒下にいた。
最初は牙を剥いてきたけど、何度も会う内に自然と仲良くなってたな。
そうして気付けば親友となり、家族同然に暮らしてきた。
今ではこうして会話を交わせるくらいにさえなっているほどだ。
こんな素敵な相棒がいてくれたから俺は今でもマトモでいられる。
そうでなければきっと、人生すら棄てていたかもしれないのだから。
……ああいけない、嫌な思い出がまた蘇ってきた。
これも忘れられない記憶だからな。思い出したくもないけれど。
あの事件は小学生になってすぐの頃。
始まりは『彼女』が俺に「友達になってあげる!」と言ってきた事だったか。
だから俺はコンの紹介をしたくて『彼女』やその取り巻きを家に呼んだ。
けど、『彼女』達はなぜか俺の家まで辿り着く事ができなかった。
それで『彼女』は「大嘘つき!」と罵倒してきたっけ。
俺はただコンを紹介したかっただけなのに、それさえも叶わなくて。
しかも『彼女』はなんでも大金持ちのお嬢様だったらしい。
その影響力はとても強く、街中の人間が同調してしまうほどだった。
おかげで俺は生徒のみならず教師からも「大嘘つき」扱い。
街の人間も俺や家族を忌み嫌い、疎外し、存在さえ否定してきた。
成績にまで著しい悪影響を及ぼすまでに。
そんな迫害は『彼女』が実家の都合でいなくなった後もずっと続いた。
おかげさまで、俺に人間の友達は一人もいないときたもんだ。
けど、それでも――
「あっ! おかえりなさい、彼方っ」
「ただいま、母さん」
こうしていつも優しく接してくれる母さんや父さんがいる。
そして親友のコンもいてくれる。
「あれ、今日はいつも着てる着物じゃないんだ?」
「そうなの! 実はこっそり仕立てていてねぇ、今日は彼方が入学式だからってお祝いしたくて間に合わせたのよ!」
「そうだったんだ。すみれ色の着物、似合ってるよ」
「うふふっ、ありがとう~! 今日はごちそうよ~!」
『わーい、ごちそうだー!』
だから寂しくなんてない。
嫌な記憶を思い出したとしても、俺は決して折れずに生きられるんだ。
だってこんなに温かい家族を悲しませるなんて、絶対に嫌だから。
「そういえば母さん。俺さ、部活に入れたよ」
「本当!? どんな部活!?」
「ダンジョン部ってトコ」
「まぁ、面白そうな響きねぇ~知らないけど!」
「すごく危ない所に行くんだってさ。それでこの『参加承諾書』に印鑑が欲しいんだって」
「あらまぁ。でも彼方が行きたいなら止めないわ。血判でいいかしら?」
「うん、たぶんそれでいいんじゃないかな」
こう話を付けた所で、俺はギャル先輩――もとい早矢川 澪奈部長から預かった書類を母さんに渡す。
これが無いとダンジョンに入る事ができないというので。
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あとは父さんが戻って来た時にでも今日の出来事を語るとしよう。
みんな、楽しんでくれるといいなぁ。
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