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第78話 ノンストップドブはるさん(つくし視点)

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 またまた来てしまいました彼方ハウスー!
 んー相変わらず古風なたたずまいですなー! 匠したいくらい!

 でもでも、今日は割とスムーズに家前まで来られたみたい。
 緒方ヒロ君もちゃんとついて来られたし、何の問題もなさそう!

「おっかしいなー、父さんや母さんの知り合いはまったく来られなかったのに」
「そんな話を聞くと僕、すごい特別って感じでワクワクしちゃうよ!」
「先日はあれだけ迷ったのにこうも簡単に着いてしまうなんて、どういう事かしら」

 遥までちゃんと来れてるのがなんだかムズムズする!
 なんでだろ、良い事なんだけどなー。

 でも来られてるのはまだ四人だけ。
 澪奈パイセンは「後から行く」って言ってたけど大丈夫かな……。

 ――ってうおー!? なんかすっごい車きたぁー!?
 スポーツカーっぽくシュッとしてるやつ!

「ちょりーっす! 来たよ彼方っちー!」

 しかも運転席に澪奈パイセンいるし!

「れ、澪奈部長!? 車で来るとか聞いてないですよ!? つか車運転していいんすか!?」
「夏休みに免許取ったかんねー。車も父親名義だけどあーしが金出したから実質あーしの車!」
「だからって車で来られるなんて俺でも知りませんでしたよ……」

 これは予想外過ぎるー!
 しかもよく見たら後部座席のスモークガラスにモモパイセンの絶望した顔が貼り付いてるし。

 そんな車が敷地内に停まると、澪奈パイセンが後部座席へ。
 そうしたらなんかピンクのウサミミフード付きパーカー着たモモパイセンが引きずり出されてきた。
 なにこれすごくかわいい! 欲しい!

「イヤアアアア!!! 軒下イヤアアアアアなのオオオオオオオ!!!!!」
「来ないつもりだったみたいだからぁ、無理矢理連れてきちったぁ!」
「母桃先輩、このような格好もするのですね……」
「これモモっちの寝間着なんよー」
「寝室から直接連れてきたんすかぁ!?」
「そ、それにしてもここまで恐れられる彼方の家とはいったい何ですの……」

 あ、モモパイセンが澪奈パイセンに抱かれたままぐったりしちゃった。
 気絶したみたい。ま、いっか!

「そうだ、入る前に少し緒方君に聞きたい事があるんだ」
「え、何?」
「もしダンジョンに入るならどんな武器を使いたいのかなって」

 そうだったね、ヒロ君はダンジョンもまだなんだった。
 希望する武器があるならそれに合わせないと軒下に入る意味無いからねー。

「ええっと……じゃあ笑わないで聞いてくれる?」
「うん?」
「実は僕、聖騎士パラディンやりたいなーなんて」
「パラディン……長剣または槍と盾を組み合わせた職業ですわね」
「防御重視なパーティーの盾役だねー!」
「あーしらには無い役割だしぃ、いると助かるかもねぇ~」

 ほうほう、ヒロ君は盾役がやりたいと申すかー。
 この中でも体の小さい方だけどやりたい事はすごい大きくて立派!

「笑いはしませんが、使いこなすには体幹を鍛える必要がありそうですわね」
「そうだな。防御職には体幹、必須だよな」
「た、体幹かぁ……あとでトレーニングしておこっと」

 うんうんそうだよね、体感必要だよ!
 盾なんて普通持った事ないだろうし、考えるな感じろー!

 ……あれ、みんなと言ってる事が違う気がする?

 今ので話は終わりかな?
 それじゃあお決まりのあの台詞をっと!

「さて、それじゃさっそく入るとするか」
「あ、うん! おじゃましまーす!」
「失礼いたします」
「「「それを言うのはまだ早いんだなー」」」
「「え?」」

 それで入ってみれば、初のお二人が目を丸くすること請け合いだね!
 なにせまた果てまで続く石レンガ通路が待っているんだもの!

「どどどういう事ですの!? これダンジョンですわよね!?」
「ひ、ひええ!?」
「んふふー、彼方の家まではこの軒下魔宮を抜けないといけないのだー!」
「の、軒下魔宮!? ダンジョンではないのですの!?」
「まぁダンジョンみたいなもんだよ。仕組みがずっと緩めのね」
「緩いのは進入条件だけっしょ……道中はダンジョンよりきっついしぃ!」

 うんうん、道中はほんと地獄だよねー……。
 彼方の言う事ちゃんと聞かなかったり油断すると簡単に死んじゃうし。
 ある意味モモパイセンみたいに気絶した方が幸せみたいな?

 ちなみにモモパイセンは澪奈パイセンに背負われてる。
 何が何でも連れて行くつもりらしい。容赦無しー!

「ここはダンジョンとレベルこそ共有していないけど、ここで上がった分のステータスだけは反映されるんだ」
「なっ!? 彼方のレベルが603ですって!? どどどういう事ですのよ!?」
「そっか、ここをいつも通るから間宮君はすごい強いって事なんだね!」
「なかなか理解が速いねーヒロ君」

 ふふふ、遥が驚いてる驚いてるゥ!
 そう、あたし達の強さの秘密はここにあるのだ!
 あたしも実は夏休み中に彼方と何度か周回したから、ヒーラーレベルがもう200台をとっくに突破しているのでーす!

 ああ~早く本番のダンジョンで試してみたい~!
 あたしのステッキさばきを披露したい~!  

「なるほど、理解しましたわ。つまりここを何度もトライする事で今の彼方のような強さをわたくし達も得られるという訳ですわね」
「そういう事。まぁステータスだけだけど」
「それでしたら話は早いですわ。いざ尋常に軒下クリアですわーっ!」
「あ!? おい遥待て! 一人で行ったら――ああーっ!?」
「「「あああーーーっ!?」」」

 あちゃー、遥が早まっちった。
 ひええ、しかも魔物に鉢合わせしたと思ったら一瞬であんなことに……。

 ええっそんな事までされちゃうのぉ!?
 いけないっ、あんな姿にされて!?
 だめぇ、そんな激しくなんてぇ!
 そんな大事な所まで責められたらぁ!

 もうこれ見てらんないー! 絶対子どもに見せられないシーンだよぉ!!

「……つくし、片手棍もってきてる?」
「うん、あるよー」
「それじゃさっさと遥を蘇生して先に進むか……」
「そだね……」

 まー結果なんて言わずとも知れた事だよね。
 なのでとりあえず蘇生魔法を使って遥を復元し、すぐ先を進む事に。
 
 ――道中は本当に激しい戦いだった。
 平均レベルは以前と変わらないけれど、遥がいちいち前に出過ぎるものでマナの管理が大変だったから。

 そして死闘の末に辿り着いた大ボス部屋で待っていたのは、彼方が顔を渋らせる程に凶悪で強大な相手。
 背に白と黒の六枚翼を掲げる、巨大かつ神々しさと禍々しさを併せ持った強敵だったんだ。

 その名も大魔天神ファサナドゥ・ユリス。

 この相手にはさしもの彼方でも苦戦を強いられる。
 ただでさえ天空を舞い、空から雷撃と熱線を降り注がせて来るのだから。
 それでも彼方は負けじと何度も飛び跳ねて応戦していたけれど。

 あたしもその攻撃の最中に魔防壁を張ってみんなを守った。
 いつ突破されるかもしれない極限状態の中を、ただ必死に。
 それでも突然遥が飛び出し、一瞬で消し炭にされたので今は放っておく事に。

 しかしいつにも見ない強敵を前に、あたしの心もすぐ限界へ。
 なにせ面と向かっているだけで精神力を削られていくほどの迫力があったから。
 だからこそ今回はさすがに無理かなって思わざるを得なかったんだ。

 だが殺した。(彼方が五分くらいで)

 ちょっと手間取ったけど一応マナは温存しておいてくれたから蘇生も余裕。
 おかげであたし達はそのまま軒下魔宮を突破する事ができた。

 いやーでも事後、遥がすっかり大人しくなったのはビックリだね!
 さすがにあの雷撃をもらったらマトモじゃ済まないってはっきりわかったよ!
 あたしは未だ死んだことないけど、こうもなると逆に興味が湧いちゃう!

 さてさて無事に辿り着けた事ですしー、彼方のお母さんにまた挨拶しにいこっと!
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