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第85話 今こそ真に力を合わせる時
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ようやく現場に辿り着き、先に着いていたチームと合流。
その中には匠美さんと凜さんら大阪チームもいた。
ダンジョンミミック戦以来の再会だ。
でも久しぶりの話題はと言えばあまり明るくは無いが。
「剛司さんの事、残念でしたね」
「まぁあれは仕方ないでしょう。私達も他人事やないですし」
「そうか、そういえば匠美さんと凜さんももうすぐ二〇歳になるんでしたっけ」
「せやで! 来年の成人式にゃあド派手にいったるでぇ!」
匠美さんは勢いだけならハタチ越えなんだけどな。
凜さんも含め、どこか達観している所があるから。
「そういえば、二人とも引退したらどうするつもりなんです?」
「どうって……今まで通りやね。私は昔みたいにサバゲでも楽しむつもりよ」
「トップスなってぎょうさん稼がせてもらったしのぉ、大学出たら働かんでしばらく遊ぶのもありやな。あ、ワシらな、元々サバゲチームやっててん。〝大阪ソルジャースイーパーズ〟ってのでな、全国大会やって日本一にもなった事あるゥ」
「おぉ~~~それはすごい!」
「おもろいで! 彼方達も遊びに来たらええ!」
サバゲか。どんなものかはわからないけど何かすごそうだ。
二人とも、そのジャンルでもかなり強いんだろうな。
匠美さんが盾になって凜さんが撃つ、そんな二人のコンビネーションはきっと昔から培われてきたんだろう。
「あ、そうだ。匠美さん、凜さん」
「「なんや?」」
「この後全員が集まったら話し合いたい事があるんで、ちょっと他チームとの顔合わせの際に手伝ってもらえません?」
この二人の息ピッタリな所も今回では肝になる。
長年トップスに君臨しているからこそ顔も利くし。
だったら有効利用しない手はないよな。
「……せやな、今回はちと声を合わせていかんとキツいと思うわ。そこんとこ、お前さんに何か考えがあるんやろ?」
「ええ、ちょっと試したい事があるんです」
「ほぉ? というと?」
「これは普通じゃできない事です。けど、トップス達の統制力ならおそらくは……!」
幸い、二人はほどよく賢い。
きっと俺の意図をこれだけでもしっかり読み取ってくれているはず。
だからか、匠美さんが俺と熱い握手を交わしてくれた。
しかも真剣な顔つきで、力強く。
それだけ今回の攻略戦には気合いが籠っているんだろうな。
仲の良かった剛司さん、ないしは東北チームの仇討ちのために。
それから少しすると、招集された人達が続々とやってきた。
今回もトップスである一位から十位までが集められたらしい。
加えて三位欠場の代替として十一位と十二位も来るのだそう。
人数的には百人規模の大所帯となりそうだ。
その人数を統制する事が俺にできるだろうか……?
――いや、その心配は杞憂だな。
集まってきた人達の面構えが今までと違う。
みんな今回の戦いが厳しくなるとわかっているんだろう。
それなら。
「みんな集まってくれてありがとう。さっそくだけど本題に入る。今回の戦いが厳しい事はみんなわかっていると思うんだ。だからこそ今回は全員が声を合わせて協力して戦いたいと考えている」
収集自体は問題無かった。
俺達宝春と大阪チームそして麗聖もすでに集まっていたから、自然と流れが俺達の方へと向かうようになっていたらしい。
それで気付けば俺を中心にして百人規模の大きな円が生まれていた。
だったらあとは、どう説明するかだ。
「そこで俺に一つ提案がある」
「何をする気なんだ?」
「囮でも決めていくか?」
「実は俺達宝春は一度、四人だけでダンジョンを攻略した事があるんだ」
「「「なっ!!!??」」」
「「「四人だけでだって!?」」」
「そう、これは紛れも無い事実です。ただ公式戦じゃないから公表されていない。それはダンジョン攻略委員会の人達なら知っていますよね?」
「え、ええ、知っています。ですがそれは――」
「もう隠しても仕方ないんですよ。ここでこそあの手段を使わなければ、どっちみちパワーゲームになってしまうんですから」
この際だからダンジョン攻略委員会も巻き込んでいく。
役員のおっさんも捕まえてあるから大々的に行くつもりだ。
もしかしたら俺が力を発揮すれば一人ででも勝てるかもしれない。
けどそれではダメなんだ。一人だけが強くても後が続かないから。
ここにいる全員が「こうすれば勝てる」と理解しなければ、プレイヤーの技術は一向に向上しない!
「これから伝えるのは、その少人数でもクリアした手法だ。ただし、これは全員が理解して立ち回らないとできない作戦でもある」
「「「ゴクリ……」」」
「ひとまず今の所わかっている相手の分だけでも詳細な戦い方は伝えるけど、先が続く場合にはアドリブでやっていく必要がある。だからみんな、しっかり理解して欲しい」
「「「ざわざわ……」」」
「でもトップオブトップスや、そこに至れる実力のある人達もいるからこそ、俺はできるんだって信じていますから!」
「「「ッ!!?」」」
これは決してそこまで難しい戦いではない。
ただ理論を組み立て、より簡単な戦い方を導くだけなのだから。
それをたった一戦だけで構築するというだけで。
そして、そのヒントはもう俺の手の内にある。
だったらそのヒントをみんなに周知させればいいだけなんだ。
「ではこの中に、上級魔法〝泡滑浄化術〟を覚えている、あるいは習得可能な人がいたら教えて欲しい」
それだけで円滑に事が進むはず。
俺はそう信じたい。
その中には匠美さんと凜さんら大阪チームもいた。
ダンジョンミミック戦以来の再会だ。
でも久しぶりの話題はと言えばあまり明るくは無いが。
「剛司さんの事、残念でしたね」
「まぁあれは仕方ないでしょう。私達も他人事やないですし」
「そうか、そういえば匠美さんと凜さんももうすぐ二〇歳になるんでしたっけ」
「せやで! 来年の成人式にゃあド派手にいったるでぇ!」
匠美さんは勢いだけならハタチ越えなんだけどな。
凜さんも含め、どこか達観している所があるから。
「そういえば、二人とも引退したらどうするつもりなんです?」
「どうって……今まで通りやね。私は昔みたいにサバゲでも楽しむつもりよ」
「トップスなってぎょうさん稼がせてもらったしのぉ、大学出たら働かんでしばらく遊ぶのもありやな。あ、ワシらな、元々サバゲチームやっててん。〝大阪ソルジャースイーパーズ〟ってのでな、全国大会やって日本一にもなった事あるゥ」
「おぉ~~~それはすごい!」
「おもろいで! 彼方達も遊びに来たらええ!」
サバゲか。どんなものかはわからないけど何かすごそうだ。
二人とも、そのジャンルでもかなり強いんだろうな。
匠美さんが盾になって凜さんが撃つ、そんな二人のコンビネーションはきっと昔から培われてきたんだろう。
「あ、そうだ。匠美さん、凜さん」
「「なんや?」」
「この後全員が集まったら話し合いたい事があるんで、ちょっと他チームとの顔合わせの際に手伝ってもらえません?」
この二人の息ピッタリな所も今回では肝になる。
長年トップスに君臨しているからこそ顔も利くし。
だったら有効利用しない手はないよな。
「……せやな、今回はちと声を合わせていかんとキツいと思うわ。そこんとこ、お前さんに何か考えがあるんやろ?」
「ええ、ちょっと試したい事があるんです」
「ほぉ? というと?」
「これは普通じゃできない事です。けど、トップス達の統制力ならおそらくは……!」
幸い、二人はほどよく賢い。
きっと俺の意図をこれだけでもしっかり読み取ってくれているはず。
だからか、匠美さんが俺と熱い握手を交わしてくれた。
しかも真剣な顔つきで、力強く。
それだけ今回の攻略戦には気合いが籠っているんだろうな。
仲の良かった剛司さん、ないしは東北チームの仇討ちのために。
それから少しすると、招集された人達が続々とやってきた。
今回もトップスである一位から十位までが集められたらしい。
加えて三位欠場の代替として十一位と十二位も来るのだそう。
人数的には百人規模の大所帯となりそうだ。
その人数を統制する事が俺にできるだろうか……?
――いや、その心配は杞憂だな。
集まってきた人達の面構えが今までと違う。
みんな今回の戦いが厳しくなるとわかっているんだろう。
それなら。
「みんな集まってくれてありがとう。さっそくだけど本題に入る。今回の戦いが厳しい事はみんなわかっていると思うんだ。だからこそ今回は全員が声を合わせて協力して戦いたいと考えている」
収集自体は問題無かった。
俺達宝春と大阪チームそして麗聖もすでに集まっていたから、自然と流れが俺達の方へと向かうようになっていたらしい。
それで気付けば俺を中心にして百人規模の大きな円が生まれていた。
だったらあとは、どう説明するかだ。
「そこで俺に一つ提案がある」
「何をする気なんだ?」
「囮でも決めていくか?」
「実は俺達宝春は一度、四人だけでダンジョンを攻略した事があるんだ」
「「「なっ!!!??」」」
「「「四人だけでだって!?」」」
「そう、これは紛れも無い事実です。ただ公式戦じゃないから公表されていない。それはダンジョン攻略委員会の人達なら知っていますよね?」
「え、ええ、知っています。ですがそれは――」
「もう隠しても仕方ないんですよ。ここでこそあの手段を使わなければ、どっちみちパワーゲームになってしまうんですから」
この際だからダンジョン攻略委員会も巻き込んでいく。
役員のおっさんも捕まえてあるから大々的に行くつもりだ。
もしかしたら俺が力を発揮すれば一人ででも勝てるかもしれない。
けどそれではダメなんだ。一人だけが強くても後が続かないから。
ここにいる全員が「こうすれば勝てる」と理解しなければ、プレイヤーの技術は一向に向上しない!
「これから伝えるのは、その少人数でもクリアした手法だ。ただし、これは全員が理解して立ち回らないとできない作戦でもある」
「「「ゴクリ……」」」
「ひとまず今の所わかっている相手の分だけでも詳細な戦い方は伝えるけど、先が続く場合にはアドリブでやっていく必要がある。だからみんな、しっかり理解して欲しい」
「「「ざわざわ……」」」
「でもトップオブトップスや、そこに至れる実力のある人達もいるからこそ、俺はできるんだって信じていますから!」
「「「ッ!!?」」」
これは決してそこまで難しい戦いではない。
ただ理論を組み立て、より簡単な戦い方を導くだけなのだから。
それをたった一戦だけで構築するというだけで。
そして、そのヒントはもう俺の手の内にある。
だったらそのヒントをみんなに周知させればいいだけなんだ。
「ではこの中に、上級魔法〝泡滑浄化術〟を覚えている、あるいは習得可能な人がいたら教えて欲しい」
それだけで円滑に事が進むはず。
俺はそう信じたい。
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