7 / 148
第一章
第6話 不穏だらけの来訪者
しおりを挟む
【商業都市アンカルースト】は円状の壁で外縁を覆った街だ。
魔物が跋扈していた時代、そんな外敵から守る為にと建てられた。
その脅威も減って不要となった今でも象徴として残されている。
ただ、そのお陰で中からも外界が見えない。
つまり外でどんなイタズラしてもバレない、という訳だ。
だから先の野盗の様な奴等が野放しになっているのかもしれないな。
とはいえ、もうすぐ日照外となる今の時間帯に外を出歩くのは危険だ。
外側を調べるのは後日にしておくとしよう。
なら今日は郭内の壁際でも見て回るとするか。
そう思い、表通りを抜けて壁際の通りへ。
すると途端にひと気が無くなり、閑散とした空気が包んでくる。
見た感じ、人が住んでいる気配さえ無い。
まるでもぬけの殻、廃村の様な雰囲気だ。
これならまだ貧民街の方がずっとマシだろう。
もしかして知らない内に遷都でもしたのか?(※拠点を移すこと)
そうとしか思えないくらいの寂れ具合じゃないか。
これなら、ここに賊自体が住んでいたって不思議じゃない。
なにせ街に入るのもフリーパスだったからな。
門番の憲兵達も俺を止める事すらしなかった。
確かに脅威の乏しい今の時代とはいえ、幾ら何でも不用心過ぎないか?
そうやって色々考えを巡らせ、つい足を止める。
深く考えてしまうくらいに不可解な事だらけだったからな。
だがそんな俺の思考は、突如として吹き飛ばされる事となる。
「そこの君、待ちたまえッ!!」
こんな高らかな大声が背後から響いたのだ。
まるで周囲の雰囲気をも吹き飛ばさんが如く。
そこで初めて気配に気づき、咄嗟に踵を返す。
警戒で身構えさせながら。
そうして視界に映ったのは、四人ほどの人影だった。
しかし表通りとの明暗差で逆光となり、姿がハッキリと見えない。
ただ、各々が誇らしげにポーズをキメているのだけはわかる。
なんて自信の現れだ!
くッ、図られたかッ!!
気配を殺して近づいて来ていたとは!
「君が盗賊狩りで噂のアークィン君だね、フフフ……!」
しかも丁寧に俺の事まで調べ上げているとはな。
【ケストルコート】め、守秘義務は無いのか。
……確かに大っぴらと遺品を渡した事には違い無いが。
なんにせよ、脅威ならば排除する。
街中だろうが関係無し、ひと気が無いなら好都合だ!
「だから待ちたまえと言っただろう? 我々は敵ではないっ!」
「ッ!?」
――が、これはどうやら俺の先走りだったらしい。
周囲の怪しさに呑まれ、警戒心が昂っていた様だ。
そんな事実に気付いて唖然とする中、一人の影が歩み寄って来る。
そうして現れたのは騎士の様な人物だった。
それもまるで少年の様に中性的な顔付きの。
「ハッハッハー! 君の事はもう噂になっているのだよ! あの憲兵でも手を焼く盗賊共をたった一人で倒したというのだからね!」
にしてもやたら元気な奴だ。
台詞一つ一つでいちいちポーズをキメる程に。
それもマントを跳ね上げるくらいにわざとらしい動きでな。
顔に同じく中性的な声で、それでいてかなりの自信を感じさせる。
まさに〝にわか騎士〟を彷彿とさせる、わざとらしい口ぶりで。
もっとも、俺も騎士の口調なんて聞いた事は無いけどな。
髪は浅い紫で、ショートだが首裏で結っていて。
そんな尾をひけらかす様に首を捻り、ニヤリと笑う。
すると頭にツンと伸びた毛塊がピクリと動き、驚きを誘う事に。
こいつ……俺と同じ、混血だ!
そう、この人間の姿に獣人の端的特徴。
それらを併せ持つのが混血の絶対的特徴なのだ。
こう一目でわかる特徴だからこそ、あの受付嬢もすぐ見抜けた。
じゃあその同類が俺に一体何用だというのか。
「そこで君に提案だ! 是非ともボク達の仲間にならないか!?」
「……は?」
でも、その答えは余りにも突拍子の無い事だった。
確かに、同類なら誘い易いのかもしれない。
おまけに盗賊狩りという実績があれば力も申し分ないのだろう。
だ が!
何故得体の知れない存在を、調べる前に誘えるんだこいつは。
【ケストルコート】に渡した情報も名前と出身地、あと年齢くらいだぞ。
し か も わざわざ路地裏で勧誘するか!?
怪しい。
怪し過ぎる。
場所の雰囲気も相まって警戒心が爆上がりだ。
「フフフ、どうやらボク達の事をとても知りたがっている様だねっ!」
いいえ。違います。
「いいだろう、ならば教えて差し上げようッ!!」
勝手に話進めるなよ。
夜になって俺の冷めた表情が見えなくなったのか?
そんな意図にも気付かぬまま、奴等がいきなり自己紹介を始めた。
颯爽と俺の前へ躍り出て、再びポージングをキメながら。
これだけで不穏しか無いよ!
全く、一体何が始まるっていうんだ……!
魔物が跋扈していた時代、そんな外敵から守る為にと建てられた。
その脅威も減って不要となった今でも象徴として残されている。
ただ、そのお陰で中からも外界が見えない。
つまり外でどんなイタズラしてもバレない、という訳だ。
だから先の野盗の様な奴等が野放しになっているのかもしれないな。
とはいえ、もうすぐ日照外となる今の時間帯に外を出歩くのは危険だ。
外側を調べるのは後日にしておくとしよう。
なら今日は郭内の壁際でも見て回るとするか。
そう思い、表通りを抜けて壁際の通りへ。
すると途端にひと気が無くなり、閑散とした空気が包んでくる。
見た感じ、人が住んでいる気配さえ無い。
まるでもぬけの殻、廃村の様な雰囲気だ。
これならまだ貧民街の方がずっとマシだろう。
もしかして知らない内に遷都でもしたのか?(※拠点を移すこと)
そうとしか思えないくらいの寂れ具合じゃないか。
これなら、ここに賊自体が住んでいたって不思議じゃない。
なにせ街に入るのもフリーパスだったからな。
門番の憲兵達も俺を止める事すらしなかった。
確かに脅威の乏しい今の時代とはいえ、幾ら何でも不用心過ぎないか?
そうやって色々考えを巡らせ、つい足を止める。
深く考えてしまうくらいに不可解な事だらけだったからな。
だがそんな俺の思考は、突如として吹き飛ばされる事となる。
「そこの君、待ちたまえッ!!」
こんな高らかな大声が背後から響いたのだ。
まるで周囲の雰囲気をも吹き飛ばさんが如く。
そこで初めて気配に気づき、咄嗟に踵を返す。
警戒で身構えさせながら。
そうして視界に映ったのは、四人ほどの人影だった。
しかし表通りとの明暗差で逆光となり、姿がハッキリと見えない。
ただ、各々が誇らしげにポーズをキメているのだけはわかる。
なんて自信の現れだ!
くッ、図られたかッ!!
気配を殺して近づいて来ていたとは!
「君が盗賊狩りで噂のアークィン君だね、フフフ……!」
しかも丁寧に俺の事まで調べ上げているとはな。
【ケストルコート】め、守秘義務は無いのか。
……確かに大っぴらと遺品を渡した事には違い無いが。
なんにせよ、脅威ならば排除する。
街中だろうが関係無し、ひと気が無いなら好都合だ!
「だから待ちたまえと言っただろう? 我々は敵ではないっ!」
「ッ!?」
――が、これはどうやら俺の先走りだったらしい。
周囲の怪しさに呑まれ、警戒心が昂っていた様だ。
そんな事実に気付いて唖然とする中、一人の影が歩み寄って来る。
そうして現れたのは騎士の様な人物だった。
それもまるで少年の様に中性的な顔付きの。
「ハッハッハー! 君の事はもう噂になっているのだよ! あの憲兵でも手を焼く盗賊共をたった一人で倒したというのだからね!」
にしてもやたら元気な奴だ。
台詞一つ一つでいちいちポーズをキメる程に。
それもマントを跳ね上げるくらいにわざとらしい動きでな。
顔に同じく中性的な声で、それでいてかなりの自信を感じさせる。
まさに〝にわか騎士〟を彷彿とさせる、わざとらしい口ぶりで。
もっとも、俺も騎士の口調なんて聞いた事は無いけどな。
髪は浅い紫で、ショートだが首裏で結っていて。
そんな尾をひけらかす様に首を捻り、ニヤリと笑う。
すると頭にツンと伸びた毛塊がピクリと動き、驚きを誘う事に。
こいつ……俺と同じ、混血だ!
そう、この人間の姿に獣人の端的特徴。
それらを併せ持つのが混血の絶対的特徴なのだ。
こう一目でわかる特徴だからこそ、あの受付嬢もすぐ見抜けた。
じゃあその同類が俺に一体何用だというのか。
「そこで君に提案だ! 是非ともボク達の仲間にならないか!?」
「……は?」
でも、その答えは余りにも突拍子の無い事だった。
確かに、同類なら誘い易いのかもしれない。
おまけに盗賊狩りという実績があれば力も申し分ないのだろう。
だ が!
何故得体の知れない存在を、調べる前に誘えるんだこいつは。
【ケストルコート】に渡した情報も名前と出身地、あと年齢くらいだぞ。
し か も わざわざ路地裏で勧誘するか!?
怪しい。
怪し過ぎる。
場所の雰囲気も相まって警戒心が爆上がりだ。
「フフフ、どうやらボク達の事をとても知りたがっている様だねっ!」
いいえ。違います。
「いいだろう、ならば教えて差し上げようッ!!」
勝手に話進めるなよ。
夜になって俺の冷めた表情が見えなくなったのか?
そんな意図にも気付かぬまま、奴等がいきなり自己紹介を始めた。
颯爽と俺の前へ躍り出て、再びポージングをキメながら。
これだけで不穏しか無いよ!
全く、一体何が始まるっていうんだ……!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる