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第一章
第27話 魔女が教えてくれた伝達法
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たかが手紙、されど手紙
届けば誰でも嬉しく思うものだ。
その真意までもが届けば尚更に。
「アークィン! 起きてくれ! 父上から手紙が届いたぞ!」
故にこの街へ辿り着いて翌日。
お陰様でこうして早朝から叩き起こされる羽目に。
朝っぱらからこんな大声上げてドアを叩くのは如何なものか。
嬉しいのはわかるが、そのパワーで他人を不幸にするのはよしてくれ。
しかし出なければもっと酷くなりそうなので即座に扉を開く。
不機嫌さを若干押し出し気味で。
「起きるからもうやめるんだ。他の宿泊客に迷惑だろう」
「ウッ、すまない! それで準備が出来たらボクの部屋に来て欲しいんだ。それと寝癖はちゃんと直すんだよ! 耳が三つになっているからね!」
「ならばお前も同じ様にしてやろうか。アフロ風味なんてどうだ?」
おまけにこうやって半ば追い払う感じでやり過ごす。
三つ目のトンガリを強引に公開させた罪は重い。
それで少し余計に時間を掛けつつ、準備を整えてノオンの部屋へ。
「遅いじゃないか、待ちくたびれたよ!」
それで早速こんな苦情が聴こえてきた訳だが、この際スルーしておこう。
今はほんの少し機嫌悪いからな。
この時見えたのは机を囲う四人で。
更に、机の上には液体燃料ランプが何故か置かれている。
先日の空いた時間にノオンが買っていた物だ。
最初は手紙を書く時のお供なのかと思っていたんだがな。
けれど今も炎が灯っていて、何だか意味深に感じる。
それにお香の匂いだろうか、少し部屋が甘ったるい。
これ、換気した方がいいんじゃないか?
「アークィンも適当に座っておくれ。それでは早速手紙を開くよ」
しかし今はそれどころではないか。
少し息苦しさもあるが、仕方ないので頷きで返す。
ノオンが持っていたのは至って普通の封筒だ。
検閲される事を前提としてなのか、封蝋さえ付いていない。
ただし、検閲済みを示す皇国印が代わりに押されている。
それをレターナイフを使って開き、中身を取り出して。
早速、ノオンが手紙の内容を読み始めた。
その手紙の内容はと言えばこう。
〝拝啓、我が娘ノオンへ。
良く帰って来たな。家族一同、お前を歓迎したい。
しかしそんな久しい凱旋に、父として迎えに伺えなかった事がとても残念に思う。
もしかしたら知っているかもしれんが、いま皇国では現代に合わせた法律の改正と刷新を急ぎ執り行っている。
かくいう私もその業務に追われ、とても外に出れる様な状況ではない。戒厳令が敷かれたのもこの一環なのだ。故に再会が叶わぬ事をどうか許して欲しい。
ただ心配はするな。家族は皆、元気にやっている。母もこの手紙が届いてからというものの会いたいと何度も漏らしていたぞ。
だからまた機会が訪れたならばもう一度顔を見せに来てくれ。待っているぞ〟
実に至って普通な内容だ。
皆がほっこりと微笑みを漏らす程にな。
けど陰謀の証拠どころか、今の状況の理屈合わせにしかなっていない。
これではますます身動きなんか取れはしないな。
「……これはやっぱり怪しいね」
と、思っていたのだが。
ノオンだけはこの手紙を前にして何だか深刻そうな顔をしている。
今の文面のどこに怪しさがあるって言うんだ?
「ほら、ここを見てごらんよ。〝我が娘ノオンへ〟ってあるじゃないか」
「それが、どうかしたのか……!?」
「普通ならこんな書き方はしないんだ。いつもの父なら〝我が愛しい愛しいラブリーノオンへ〟って書くのさ」
「知ったことかよ」
むしろ俺はお前の着眼点の方が怪しく思うよ。
一番最初にそこを怪しく思えるお前達家族がよくわからん。
しかしどうやらノオン自体はふざけてなどいないらしい。
とても真剣な表情で俺に訴えて来る。
やめろ、指を差したまま手紙を顔に近づけるな。
真面目に取り合っても無駄だ。理解など出来んぞ。
「だとしたらやっぱりアレをやるしかないな」
「アレ、とは?」
「ちょっと待ってて。今見せるよ。ヘイッ!!」
そんな時、ノオンが奇声と共に己の前髪を一本引き抜く。
それで手紙と共に机へ預けると、今度は封筒の中身を覗いていて。
「……あった、やっぱりね」
すると何かを見つけたのだろうか、途端に中身へと手を突っ込む。
そうして取り出したのは、一本の青い毛髪だった。
「これをボクの髪と合わせてネジネジするのさ。よいしょ」
それを自身の髪と重ね、捻っていく。
入念に何度も何度も、一本となる程に。
で、次にランプの上へと手紙をかざし、水平に開いた状態を保たせる。
更に髪を炙り始めれば、淡い煙が立ち上り始める事に。
そして皆が手紙へと視線を向けた時――それはもう起きていた。
なんと、文字が動き始めていたのだ。
それも紙の上に浮き上がる様にして。
しかもそれだけではない。
今度は文字が紙の上を歩き始めている。
まるで意思を持った生物の如く、ウネウネと一生懸命に。
手紙の上で行進し、行き交い、遂には分裂までして。
次第に全く別の文章へと移り変わっていくではないか。
「これはね、先日話した魔女がドゥキエル家の祖先に教えた呪術の一つさ。男と女の髪を結って、【シャンカナ】花油の炎で炙った煙に晒すと発動する様になっているのさ」
まさか呪術にこんな使い方があったなんて。
相手を呪って貶めるだけかと思っていたが、意外に幅広いんだな。
だとすれば大いに期待出来そうだ。
これならもしかしたら事の真相に一気に近づけるかもしれない……!
届けば誰でも嬉しく思うものだ。
その真意までもが届けば尚更に。
「アークィン! 起きてくれ! 父上から手紙が届いたぞ!」
故にこの街へ辿り着いて翌日。
お陰様でこうして早朝から叩き起こされる羽目に。
朝っぱらからこんな大声上げてドアを叩くのは如何なものか。
嬉しいのはわかるが、そのパワーで他人を不幸にするのはよしてくれ。
しかし出なければもっと酷くなりそうなので即座に扉を開く。
不機嫌さを若干押し出し気味で。
「起きるからもうやめるんだ。他の宿泊客に迷惑だろう」
「ウッ、すまない! それで準備が出来たらボクの部屋に来て欲しいんだ。それと寝癖はちゃんと直すんだよ! 耳が三つになっているからね!」
「ならばお前も同じ様にしてやろうか。アフロ風味なんてどうだ?」
おまけにこうやって半ば追い払う感じでやり過ごす。
三つ目のトンガリを強引に公開させた罪は重い。
それで少し余計に時間を掛けつつ、準備を整えてノオンの部屋へ。
「遅いじゃないか、待ちくたびれたよ!」
それで早速こんな苦情が聴こえてきた訳だが、この際スルーしておこう。
今はほんの少し機嫌悪いからな。
この時見えたのは机を囲う四人で。
更に、机の上には液体燃料ランプが何故か置かれている。
先日の空いた時間にノオンが買っていた物だ。
最初は手紙を書く時のお供なのかと思っていたんだがな。
けれど今も炎が灯っていて、何だか意味深に感じる。
それにお香の匂いだろうか、少し部屋が甘ったるい。
これ、換気した方がいいんじゃないか?
「アークィンも適当に座っておくれ。それでは早速手紙を開くよ」
しかし今はそれどころではないか。
少し息苦しさもあるが、仕方ないので頷きで返す。
ノオンが持っていたのは至って普通の封筒だ。
検閲される事を前提としてなのか、封蝋さえ付いていない。
ただし、検閲済みを示す皇国印が代わりに押されている。
それをレターナイフを使って開き、中身を取り出して。
早速、ノオンが手紙の内容を読み始めた。
その手紙の内容はと言えばこう。
〝拝啓、我が娘ノオンへ。
良く帰って来たな。家族一同、お前を歓迎したい。
しかしそんな久しい凱旋に、父として迎えに伺えなかった事がとても残念に思う。
もしかしたら知っているかもしれんが、いま皇国では現代に合わせた法律の改正と刷新を急ぎ執り行っている。
かくいう私もその業務に追われ、とても外に出れる様な状況ではない。戒厳令が敷かれたのもこの一環なのだ。故に再会が叶わぬ事をどうか許して欲しい。
ただ心配はするな。家族は皆、元気にやっている。母もこの手紙が届いてからというものの会いたいと何度も漏らしていたぞ。
だからまた機会が訪れたならばもう一度顔を見せに来てくれ。待っているぞ〟
実に至って普通な内容だ。
皆がほっこりと微笑みを漏らす程にな。
けど陰謀の証拠どころか、今の状況の理屈合わせにしかなっていない。
これではますます身動きなんか取れはしないな。
「……これはやっぱり怪しいね」
と、思っていたのだが。
ノオンだけはこの手紙を前にして何だか深刻そうな顔をしている。
今の文面のどこに怪しさがあるって言うんだ?
「ほら、ここを見てごらんよ。〝我が娘ノオンへ〟ってあるじゃないか」
「それが、どうかしたのか……!?」
「普通ならこんな書き方はしないんだ。いつもの父なら〝我が愛しい愛しいラブリーノオンへ〟って書くのさ」
「知ったことかよ」
むしろ俺はお前の着眼点の方が怪しく思うよ。
一番最初にそこを怪しく思えるお前達家族がよくわからん。
しかしどうやらノオン自体はふざけてなどいないらしい。
とても真剣な表情で俺に訴えて来る。
やめろ、指を差したまま手紙を顔に近づけるな。
真面目に取り合っても無駄だ。理解など出来んぞ。
「だとしたらやっぱりアレをやるしかないな」
「アレ、とは?」
「ちょっと待ってて。今見せるよ。ヘイッ!!」
そんな時、ノオンが奇声と共に己の前髪を一本引き抜く。
それで手紙と共に机へ預けると、今度は封筒の中身を覗いていて。
「……あった、やっぱりね」
すると何かを見つけたのだろうか、途端に中身へと手を突っ込む。
そうして取り出したのは、一本の青い毛髪だった。
「これをボクの髪と合わせてネジネジするのさ。よいしょ」
それを自身の髪と重ね、捻っていく。
入念に何度も何度も、一本となる程に。
で、次にランプの上へと手紙をかざし、水平に開いた状態を保たせる。
更に髪を炙り始めれば、淡い煙が立ち上り始める事に。
そして皆が手紙へと視線を向けた時――それはもう起きていた。
なんと、文字が動き始めていたのだ。
それも紙の上に浮き上がる様にして。
しかもそれだけではない。
今度は文字が紙の上を歩き始めている。
まるで意思を持った生物の如く、ウネウネと一生懸命に。
手紙の上で行進し、行き交い、遂には分裂までして。
次第に全く別の文章へと移り変わっていくではないか。
「これはね、先日話した魔女がドゥキエル家の祖先に教えた呪術の一つさ。男と女の髪を結って、【シャンカナ】花油の炎で炙った煙に晒すと発動する様になっているのさ」
まさか呪術にこんな使い方があったなんて。
相手を呪って貶めるだけかと思っていたが、意外に幅広いんだな。
だとすれば大いに期待出来そうだ。
これならもしかしたら事の真相に一気に近づけるかもしれない……!
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