輝操士は儚き虹色世界にX(ジクス)を刻む

日奈 うさぎ

文字の大きさ
84 / 148
第二章

第79話 万越たる再築者(クアリオ視点)

しおりを挟む
 す、すげぇ、あの巨大なゴーレムを一瞬で二体も倒しやがった!
 これがアークィンの実力なのか!?
 なんてとんでもねぇ奴なんだ!

 村に行くまでの道中でもアイツの戦いは見ていたよ。
 けど魔物相手なんかじゃその力は推し量れねぇ。
 なんたってあの巨大なパンチを難なく避けちまっているんだから。

 ――あぁクソッ、歯がゆいな。
 オイラはなんて無力なんだ。
 あんな実力があれば一緒に戦えたってのに。

 でもきっと今のオイラじゃあのクソ賢者ども相手でも返り討ちがいいとこさ。
 魔法は愚か、腕っぷしもからっきしだからよ。
 混血なのに親のいい所をほとんど受け継いじゃいないんだ。

 だからオイラにゃ機械を弄る事しか出来ねぇ。
 これが唯一の取り柄だしな。
 後は精々小賢しい頭を回すくらいさ。

 だけどよ、それでも何かしてやりたい。
 アークィンを助けてぇんだよ。

 姉ちゃん達の仇を取りたいんだよ……!

 いや、違う。
 奴等はきっと父ちゃんや母ちゃん達の仇でもあるんだ。
 二人がオイラ達を置いていなくなったのも、恐らくアイツラの所為だから。



 両親はオイラ達が子供の時、忽然とどこかに消えた。
 何か言伝を残す事も無く。

 ただ一つ憶えていたのは、あの前日。
 それもブブルクと口論していた時の事さ。
 それだけの剣幕で二人とも咆え散らかしていたからな。
 あの時は姉ちゃんと一緒に抱き合って怯えていたもんだよ。

 けどブブルクが去った後の二人はとても優しかった。
 一生分だけ愛してくれたって言わんばかりにさ。
 それに二人が大事にしていた宝もオイラに託してくれたんだ。

 まるで自分達が消える事を知っていたかの様に。

 父ちゃんは技工士、母ちゃんは魔導士。
 おまけに友達が一杯いて、色んな人が訪ねて来たよ。
 どちらも仕事熱心で、時々没頭しちゃってご飯を忘れるなんて事もあったけど。

 だけどそれが堪らなく格好良くて、憧れていて。
 いつか二人みたいな大人になりたいって憧れた。
 姉ちゃんだって同じだったよ。



 だからオイラ達は二人が消えても今まで頑張れたんだ。
 きっと二人はまだどこかで生きていて、いつかまた会えるんだって。



 けれど、それはきっと幻想だったんだろうな。
 現実を受け入れたくなくて、逃避したくて。
 それで互いに夢を追い求めて、ずっと現実に目を背けて来た。

 父ちゃんも母ちゃんももういないんだって。
 あの村を貰えた事自体がおかしいんだって。

 それでも縋りたかったんだと思う。
 いつかきっと二人に教えてもらった技術が役立つんだってさ。
 緑空界も変えて、ブブルク達も変える事が出来ると信じて。

 それが儚い幻想ゆめだったって、今更ながら気付かされた。

 あのクソ賢者どもは気に入らない奴を簡単に殺す。
 アークィンに殺意を向けている今の様に。

 それだけ稚拙なんだよ。
 投げかけている言葉と同じ様に。
 例え知識があっても、まるで子供みたいに無邪気に人を殺せるんだ。

 そんなくだらない殺意が父ちゃんと母ちゃんも殺した。
 姉ちゃんも村の皆も結果的に殺しちまった。
 そして今、アークィンをも殺そうとしている。

 だから何とかして止めたい。
 もうこれ以上知り合いを失うのは嫌なんだよ!

 ならあのブブルク達を、あの鉄巨人を何としてでも――



 ――待てよ? 鉄巨人って事は、だ。
 あのゴーレムももしかして、魔動機の一種なんじゃないか?



 そう思い付いた時、突然オイラの頭の中がスッとクリアになった。
 まるで難解な歯車機械を完成させた時みたいに。
 これはいつもの閃きが走った時と同じだ。

 そうさ、あのゴーレムは人じゃない。
 人型だけど、意思の無い無機質構造物なんだよ。

 だったら、オイラにだって何とか出来るんじゃあないか?

 普通に考えたら無理だろうさ。
 技工士ったってネジを締めてボタンを押すくらいが限度なんだから。
 そんな物があんなゴーレムに付いている訳無い。

 けどな、オイラにゃそれ以上の事が出来るんだ。
 父ちゃんから預かったあのがあれば……!

「……やってやる、やってやるんだ! オイラがアークィンを助けるんだ! アークィン達が姉ちゃん達を救おうとしてくれた様にッ!!」

 そんな想いが腰裏に備えた一つの道具を取り出させた。
 見た目は只のスパナだけどな、その力は半端じゃないぜ!

 確かに人相手じゃあ何の役に立たない。
 けど、相手が魔動機なら――コイツは無敵なんだッ!!

「アークィィィンッ!! オイラも、やる時ゃやるんだぜーッ!!」

「クアリオ!? やめろ、来るなーッ!!」

 ダメだね! オイラはもう走り出しちまった!
 こればかりはもう気持ちが収まり切れねぇ。

 父ちゃん、母ちゃん、姉ちゃん。
 そして村の皆、勇気を分けてくれよ。
 機械を弄る事しか出来ねぇオイラに、戦う為の勇気をよ!

「ウッ、あの小僧の持っている道具を見ろッ!?」
「あれはまさか、ガウザとメローナが造ったあの魔道具ではッ!?」
「何ィ!? ではまさかあの小僧がッ!?」

 どうやらやっと思い出したらしいなッ!!
 そうさ、オイラの父ちゃんと母ちゃんはすげぇんだ!

 なんたって、緑空界と赤空界を繋げたあの二人なんだからな!

 そして二人が知恵を振り絞って造ったこの工具こそ唯一無二。
 全ての技工士と魔導士が夢見た理想の道具なのさ。

「今更気付いても遅ーぜッ!! もうオイラは止まらねぇぞぉ!!」

 その力を今見せてやる!
 だから目をかっぽじってよぉく見てやがれッ!!



「今こそ奴を組み替えてみろッ!! 【万越たる再築者アストラトリガー】ーーッ!!!」



 アークィンが引き付けていたから近づくのは容易だった。
 お陰でオイラは背後から飛び掛かる事が出来たのさ。

 それでこの【万越たる再築者】を叩き込む事が出来た。

 すると途端にゴーレムが輝き始めて。
 その巨大な身体が軋みを上げてメキメキと形を変えていく。
 それも、オイラの心から願った形にな。

 そう、これは魔動機を「思った形に作り替える」道具なんだ。
 それも一瞬で、何のデメリットも無く。
 必要なのは緻密なまでに構築されたイメージくらいさ。

 どうだい、これ以上に技工士が欲しくなる道具は他に無いだろう?

 なにせこうやって打ち当てるだけでいい。
 たったそれだけで望んだ物が出来上がるんだぜ?

 きっとブブルク達もこれを狙っていたんだ。
 それで父ちゃんと母ちゃんを問い詰め、挙句に殺した。
 この道具を何としてでも奪い取る為にな。

 けどよ、見な。
 その力が今、お前等を倒す為に発揮したんだぜ。

 自慢のチェアゴーレムを、オイラの仲間にする為になッ!!

 光が収まって来たぞ。
 なら出てこい、オイラの願いを受けた新しい巨人よ!
 その力を、雄姿を今すぐ見せてみろーッ!!



『ホールドアーップ!! 魔導勇者ブレイブフェンサーだ!! 観念しろ悪党ども!』



 ――待って。
 父ちゃん母ちゃん待って、これオイラと想像していたのと違う。

 確かにカッコいいよ!
 とてもスタイリッシュな人型で、かつ力強いフォルムだけれど!
 頭には角が付いているし、目が緑に輝いて強そうだけども!
 奴等に指差す姿がキマってて最高だけどさ!

 完成した瞬間にいきなり叫ぶなんて聞いてないよ!!

 お陰でアークィンも唖然としてる。
 あんな口開けてあんぐりするんだな、アイツ。

 でもどうやらブブルク達には効果的だったみたいだ。
 皆してビビッて慄いてやがる。
 よくわかんねーけど、やったぜ!

 結果的には良かったからひとまず成功という事にしておこっと。

『ボス、命令を! 我々の勇気を見せつけてやろう!』

「お、おう! じゃあまずあの乱戦中のゴーレムを倒すんだ!」

『了解ッ!!』

 にしてもなんだか暑苦しい奴になったなー。
 けどまぁいいか、なんか凄い従順だし。
 それにとても強そうだしさ。

 よし、行け! オイラの――えっと、新しい仲間!
 名前は終わった後で付けてやるから、とにかく今はこの場を収めるんだーッ!!
しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...