輝操士は儚き虹色世界にX(ジクス)を刻む

日奈 うさぎ

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第三章

第84話 白空界にて

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 俺達、銀麗騎志団は追われる身となった。
 というのも緑空界で大暴れし過ぎてしまっから。
 そりゃそうだよな、古代遺産である識園の塔をぶっ壊したんだからさ。

 とはいえ、目的はちゃんと果たせたから良しとしよう。
 緑空界の癌、賢者長ブブルク達による思想的虐殺の阻止を。
 『紫空界クーデターの制圧』と『赤空界搾取政治の弾劾』に続いての快挙だ。

 もちろん、全体的に見れば絶対に良い行いとは言えないだろうさ。
 少なからず奴等に依存していた者達もいただろうから。

 けどそれを許して野放しにしたら、世界がどんどんおかしくなってしまう。
 だから俺達みたいに誰かが一石を投じる必要があるんだ。
 「自分達は危機に面しているんだぞ」って民衆へ知らせるためにな。

 その点で見れば緑空界での功績は本当に大きかったと思う。
 ブブルク達の事だ、もし混血の村が片付いたら次は誰を謀殺するやら。
 調子に乗って今度は移民者達を呪い殺していたかもしれないし。

 そんな事態を防げるなら、汚名を被るくらいなんて事は無いさ。

 で、その汚名を被った俺達は今、白空界はっくうかいにいる。
 この国なら年中雪に埋もれているお陰で隠れる所が多くて。
 それに、なんたって〝世界で最も穏やかな国〟だと言われているからな。

 ま、どちらかと言えば〝穏やか〟より〝物静か〟という方が正しいか。
 なにせ、この国の人口は総人数一万人以下と極端に少ない。
 紫空界なら総人口百万人はくだらないという時代に随分な人数だよな。

 というのも、寒く厳しい環境の所為でほとんど人が定住しないらしくて。
 暮らしているのは寒さに強い兎人族ラビアータ熊人族ベアルくらいなんだと。

 ただ、そんな人数しかいないお陰でほぼ争わないそうな。
 誰も土地を欲しがらないから争う理由も無いし。
 だから静かに暮らすには最適ってワケさ。

 なら今の俺達にはうってつけの場所だろう?

「にしても寒すぎだぜ……。 オイラの改造がなきゃ今頃この船だって雪の中、凍り漬けってたかもしんねーぞ?」
「本当だよな、クアリオがいてくれて助かった。即座に空調を備えるとか、さすが技工士って感じだったよ」

 こうやって弊害はあるけどな。

 なんたってとにかく寒い。
 空調が無かったら船内で凍死出来るくらいに。
 お陰で今、マオは船底ベッドで布団簀巻きになっているよ。
 当然、相棒の大猫精霊クロ様とのロールパン状態でな。

 その点、我慢強い俺やノオンは平気だ。
 なのでここで暮らし始めて約三日間、外出役として交互に出払っている。
 今はとある村に厄介となっているからな、食材・資材調達に支障は無い。
 ちなみに今日はノオンの日だから俺は非番だ。とてもぬくい。

 村では魔動機も輸入しているみたいで、暖房機器もここで調達した。
 旧式だが仕組みは単純だとかで、機内に備えるのは簡単だったらしい。
 さすがだなクアリオ、お前の腕は確かだよ。

 それでこの地を勧めたフィーはと言えば――テッシャと一緒に雪遊び中。
 無邪気で羨ましいもんだ、その元気で順番代わって欲しいよ。
 この寒さには俺もノオンもさすがに堪えるくらいだし。

 けどまぁ、俺達がここにいられるのもフィーのお陰ではあるんだが。

 フィーはこの白空界出身で、村の者とも面識があるらしい。
 おまけに俺達を隠す事まで確約を取り付けてくれてな。
 今はこうして買い物まで許してくれているという訳だ。

 もっとも、面識があるだけとはとても思えなかったが。
 なにせ村人はまるでフィーを拝めている様だったから。

 とすると昔は神官だったとか、何か凄い経歴があるのかもしれない。

 だがもう驚かんぞ。
 どこかの姫君とか神の遣いだとか言われない限り絶対に。
 なんたってノオンやマオ、クアリオの経歴があったからな。

 ノオンは国家副宰相の娘。
 マオは元十賢者の弟子で本人も経験有り。
 クアリオは二大陸を繋いだ英雄の息子。
 こんな豪華な面々が揃うと運命を感じてならない。
 となれば残り二人にだってどんな経歴が隠されているやら。

 俺も史上最強の男の息子だから決して場違いではないけどな。フフン。

「じゃあその技工士サマの頼みをちょっと聞いてくれよ。回動回路インバーターがちょっと腐ってて取り替えにゃなんねぇ。だから追加で部品買ってきて欲しいんだ」
「え、外寒いから嫌なんだが?」
「無きゃ今夜もっと寒くなるがいいのかよ?」
「チィィ!!」

 しかしそんな経歴も今となっては形無しか。
 最低であと一ヵ月この場で過ごす為にも、我儘なんて言ってられないからな。

 それにこうも言われては断る事など出来はしない。
 初日の夜はホント地獄だったからな。
 暗い吹雪の中、船底にて全員で固まって震えていたもんさ。
 あの凍死寸前の想いはもう味わいたくないもんだ。

 なので渋々と外出する事に。

 でも船を出た途端、遊んでいたハズのテッシャが駆け寄って来て。

「アークィーン! 闘氣功おしえてー!」

 そして何を言うかと思えばコレだ。

 雪遊びの中から一体どうやってその発想が出てくるんだ?
 雪玉を運ぶ為に闘氣功が欲しいとかそんな理由なのか??
 ならもういいじゃないか、こんなにたくさん巨大裸夫雪像造ったんだから。

 ていうかなんで細部まで完全再現してるんだお前は。
 そもそもモデル誰だよ。再現された奴ホント可哀想だな。

「アークィンの像を完璧にするのー!」
「【烈火波鞭バーヴィーップ】ッッッ!!!!!」

 そんな奴の尊厳を守る為にも一挙にして蒸発させる。

 誰の像だって? 俺には何も聴こえなかったよ。
 テッシャとフィーがショックを受けている姿なんて見えもしない。
 俺はクアリオのお使いで忙しいからな。

「まってアークィーン! 本当に闘氣功ならいたいのー!」

 ただ純粋な願いなら聞き入れない事も無い。
 故に向けていた背を回し、追いかけて来たテッシャに視線を向ける。

 するとそんな彼女が俺の腕を掴み、ぎゅーっと引っ張ろうとしてきて。

「テッシャね、闘氣功できないからおぼえたいのー! 土の中潜れないとダメダメだからー!」
「テッシャ……」

 きっと彼女なりに悩みがあっての相談なんだろう。
 雪は土面と違って大地魔法を受け付けず、融解出来ないし。
 それに、格闘士で闘氣功を使えないのはある意味で言えば致命的だから。

 闘氣功とは言わば魔力を必要としない自己強化術だ。
 それで生命力を担保にするから個々の力に依存する。
 その効果は顕著で、特に格闘に関しては最も影響が出易い。

 でもテッシャはその技術を学んでおらず一切使えないんだ。
 格闘術自体も独学で学んだらしいし。

 ただ、戦闘技術自体は独学とは思えない程に鋭いし様になっている。
 つまり才能センスが凄く秀でているのだろう。
 それだけで今まで戦い続けられるくらいに。

 だったら実際に闘氣功を教えたらどうなるか。

 その先には俺も大いに興味ある。
 彼女の才能が開花した時、一体どれだけ実力が上がるのかってな。
 もしかしたら俺を越えるくらい強くなるかもしれない。

 だとすれば好都合だ。
 越えるくらいの好敵手となれば目標にも出来るからこそ。

 それに戦力アップが望めるなら銀麗騎志団としても願ったりだろう。
 元々伸びしろが少ないと思える戦力勢なだけに。

 それなら、ここにも一石投じてみるか。
 その価値は大いにあるのだから。



 それで俺はテッシャの申し出を受ける事にした。
 ついでに、その後話を聞いたノオンも混ぜて。

 どうせ一ヵ月もこの地に釘付けなんだ。
 暇を持て余すよりもずっと有意義だろうさ。

 ならやってやろうじゃあないか、銀麗騎志団パワーアップ計画をな!
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