輝操士は儚き虹色世界にX(ジクス)を刻む

日奈 うさぎ

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第三章

第95話 刺客来襲!?

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 それは吹雪が景色を包む夜の事だった。

 ノオンはあの後マオとテッシャを連れて温泉へ。
 クアリオは欲しい部品を受け取る為にと村に一泊。
 フィーは毛玉猫を追ってどこかへ行ったっきり戻って来ない。

 いずれも気にはなるが心配はいらないだろう。
 皆、手の掛かる子どもじゃあないしな。
 まぁその子ども以上にやかましい奴等な訳だけど。

 という事で俺はこの時、機空船で留守番中。
 ぬくい船内で一人、温かいお茶を啜ってゆっくりとしていたんだ。
 吹雪模様を眺めて眠気を誘いつつ。

「まぁ! これが機空船の内部なのねぇ~!」
「ッ!?」

 だがその安息の時は長くも続かなかった。
 この誰とも言えない声が突如、背後から聴こえて来たんだからな。

 故に俺は椅子から飛び起き、警戒の構えと共に振り返る。
 するとその視線の先には見た事の無い奴が立っていて。

 一切気配を感じなかったよ。
 油断していたとはいえ、入って来ていた事にさえ気付けなかったんだ。

 だからこそ敵意を剥き出しにせざるを得ない。
 一歩間違えれば寝首を掻かれかねない相手だったからこそ。

 その見た目は【鳥人族ハウピヤ】の様だった。
 両腕部が身丈より広い白翼で、黄と青のグラデーションを伴っている。
 かつその細い身体に白いワンピースを羽織っている辺り、文明性はある様だ。

 ただそれ以外の様相は人のそれに近い。
 顔の造りは人そのものだし、羽根色同様の髪も柔らかそうに降りている。
 生え際に羽根の立っている所が特徴的だな。
 足も鉤爪なんかではなく人のそれに近いから、歩くどころか走れもするだろう。
 おまけに若干肉付きがよく、鳥人族にしてはとてもアンバランスな体型だ。

 まさかコイツも混血なのか……?

「貴方が噂のアークィンですね。聞いた通り、鋭い身のこなしですこと」
「何故俺の名を知っているッ!? 答えによっては容赦せんぞ……!」
「ふふっ、〝容赦しない〟とは一体どういう事をされてしまうのでしょうか? とても興味がありますわぁ……!」

 しかし身構えた俺を前にしても奴は一切怯む事は無かった。
 それどころか長い翼先を向け構え、逆に威嚇してくるとはな。
 その可愛い顔にニタリとした笑みを浮かべながらに。

 しかもよく見れば、翼の中には刃物が仕込まれている。

 これは恐らく暗器の類か。
 とするとコイツ、暗殺者の気があるな……!
 さしずめ緑空界辺りが送り込んだ刺客といった所か。

 こんな寒い地にまで出張って来るなんて仕事熱心にも程があるんじゃないか?

「言っておくがここは俺達の家だ。となれば勝手に入ると不法侵入になる。知らなかったか?」
「まぁそうなんですね。でしたら遅ればせながら。〝ラァララァ~! お邪魔しまぁあ~ぁすぅ~♪ ワタクシ~ニペルと申しますのでぇ~入れて頂きぃまぁすねぇ~~~♪〟」
「大層な歌声だな。ならこんなチンケな機空船より歌劇団劇場に行った方が良かったんじゃないか?」
「ふふっ、そうはいきませんよ。この大陸は私の故郷であり、使命がありますゆえ外を出る事は叶いませんから」
「なに……?」

 でもどうやらわざわざ遠方から出張って来たって訳では無いらしい。
 ただそうすると別の疑問が湧いて来るけどな。

 【鳥人族ハウピヤ】っていうのは基本、温暖な地に住んでいる。
 主な活動地は青空界と紫空界で、それ以外にはなかなかいない。

 というのも体質的に暑さや寒さが苦手だから。
 被毛による保温性は優れているが、補いきれない温度差には弱くてな。
 だから白空界の様な過酷な地域には住めるハズがないんだ。
 
 けどコイツは今〝ここが故郷〟だと言った。

 だとすれば不可解だな。
 例え混血でもその性質が失われる訳じゃない。
 むしろ特徴的な体質だからこそ受け継がれない方が不思議なのだが。

 しかしコイツは今、平然として俺の前に立っている。
 まるで寒さなど感じないと言わんばかりにな。
 それも敵意なのか何なのかわからない意志を向けながら。

 全く、どうしてこの大陸は何もかもわからない事だらけなんだ……!
 非常識を詰め込み過ぎなんじゃないか!?

「それにワタクシは貴方に興味があって来たのですから。どの様なさえずりを奏でてくれるのかしら、なんてぇ」
「悪いが俺は歌に興味なんて無い。だから合唱コーラスは一人でやっててもらおうか……!」
「ウッフフ、いけずねぇ~。きっと一緒に奏でる歌は最高に美しいでしょうに」

 にしてもコイツも喋り過ぎだな。
 正体も目的もわからないが、迂闊過ぎやしないか?

 それとも何かしら隠れた意図があるか。

 それが掴めない以上、警戒を緩める事は出来ない。
 最悪の場合、コイツを仕留めなければならないかもしれん。

 故に密かと全身へ闘氣功を巡らせる。
 少しでも怪しい動きをしたら即座に一撃をブチ込める様に。
 相手が女だろうが関係無い。脅威ならば須らく排除するに限るからな。

 父曰く。
姿蔑逸揆ヤー・クムズ。戦に身体差など持ち込むべからず。性別・歳・体格に拘らず、戦いへの覚悟ありし者には全力を以って礼を尽くせ。異性だからと気を抜けばやられるのは自身と知るが良い〟

 この教えがあるからこそ油断は一切無い。
 敵だとわかったら最後、俺の掌底がコイツの頭を容赦無く破壊するだろう。
 船内が多少汚れるだろうが、後始末くらいは喜んでやってやるさ。

 さぁニペルとかいう奴、どう出る!?



「あ~っ、ニペル~!」
「「ッ!?」」
 


 すると突如、場違いなユル声が場へと響く事に。

 フィーである。
 いきなり彼女が帰って来るなりこう声を上げたのだ。

「あらフィー、おかえりなさぁい。随分と遅かったのねぇ」
「ニペルがはや~い~飛ぶのずる~い~」
「んなっ……」

 しかも二人は知り合いだったらしい。
 なのでフィーが現れるや否や、ニペルもが翼を畳んでいて。
 遂には雰囲気なんて無視して一緒に戯れ始める始末だ。
 まるでここに居慣れたかの様な立ち振る舞いでな。

 ……また俺の推測が外れたか。

 つまり噂の出どころというのがフィーで。
 彼女から話を聞いてわざわざここまでに来たってワケだ。

 にしては随分と物々しい来訪の仕方なんじゃないか?
 最初からそう言えばこっちだって警戒せずに済んだのにさ。

 ほら、お陰で茶が冷えてしまっているじゃないか。
 少しくらいは相手の都合を考えて欲しい所だよ。

 こういう所を鑑みると、類は友を呼ぶなどとはよく言ったもんだと思う。
 フィーの友人にしてはやけに好戦的だけども。
 とすればきっとノオンかテッシャ辺りの類友に違いない。

 ま、余計な戦いをせずに済んだ事だけは良かったとしようか。
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