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第三章
第132話 世界へ届く心の歌
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陽珠へと向かっていた俺達に巨大機空船が迫る。
それも巨体に見合わない程の速度で。
大きいから鈍重という訳にはいかないらしい。
その速さはと言えば、銀麗号でさえ振り切れない程。
それどころか徐々に距離を詰めてきている。
このままでは射程圏内へと入るのも時間の問題だろう。
「クアリオ! ブースターで振りきれないの!?」
「無理だ! 陽珠までの距離がわからねー上に燃料も足りるか怪しい! そこでブースターなんて使っちまったら辿り着く前に落ちちまいかねねぇ!」
「不味いネェ、これじゃ只の動く的じゃあないかい……」
おまけに銀麗号にはこれ以上の要求が叶わないときた。
となれば俺達の命運はクアリオの腕次第という訳で。
ただ、その自信さえも間も無く揺らぐ事となる。
とうとう砲撃が行われ、周囲に爆発が起き始めたのだ。
しかも、なまじ大気が安定しているから狙い易い。
ついでに言えば砲撃手もプロだろうからな、下手な弾は撃たないだろうさ。
だからか遂には機体が振動するほど近くで爆発が起きていて。
あのノオンやマオでさえ怯えの声を上げ始める。
これだけ一方的な展開なら無理も無い。
だけどこの時、俺は何故か不思議と落ち着いていた。
まるで血の気が引くかの様に、頭の中がクリアになっていたんだ。
なんでだろうな。
あの機空船にパパム達が乗っているとわかったからだろうか。
ニペルの復讐をするなんて決まりきった事だからさ。
だから「どうしたらニペルは喜ぶだろうか」って考えて止まらなかった。
業を煮やすよりも、怨みに猛るよりも。
そこで俺は一つ思ったんだ。
きっとニペルはもっと外の世界を知りたかったに違いない。
多くの人と知り合って、話して、歌って踊って。
それで楽しく毎日を人らしく生きたかったんじゃないかって。
だったら、俺がその代わりをしてあげたい。
せめてもの手向けに、多くの人に彼女の存在を報せたい。
ニペルという少女が生きていたんだよって証明を、全世界に。
そう考えた時、もう体と手が動いていた。
座席から離れ、その背面へと己の身体をロープで括りつけて固定する。
それも銀麗号の後部へと向く様にして。
まるで巨大機空船と対面する様に。
「クアリオ、頼みがある。俺が合図したら奴等の軌道軸線上を真っ直ぐ航行してくれないか?」
「なっ!? お前馬鹿かッ!? そんな事したら狙ってくれって言ってる様なもんじゃねーかあッ!!」
「大丈夫だ。その時、もう全てが終わっている」
「――え?」
そうすると決めた時から、もう何もかもが見えていたんだ。
これからどうすればいいのか、どうなるのかと。
そう出来るくらいに想像が溢れて止まらなかった。
その落ち着き具合だけでクアリオを黙らせるくらいには。
「……わかった。ならしっかり声を出してくれよな。聞き取れなかったなんて言い訳出来ねぇくらいによ」
「ありがとう……!」
だからか、機空船の回避にも僅かにキレが生まれていた。
俺の意志を汲んで肝が据わった所為だろうか。
お陰で集中するのも容易くなったよ。
故に今、俺は正面へと両腕を掲げる。
ただ思うがままに、願うがままに。
今あるキャパシティの全てを、その手へと集める様にして。
するとたちまち、力が集まっていく感じがした。
それも術名を呼称するまでも無く。
仕込んでいた輝操闘法の全てをも取り込んで。
そうして気付けば全ての力が集まり、一つの光塊へと進化していた。
船内を埋め尽くさんばかりの大きさだった。
けれど、それでいて不思議と皆が恐れない様な優しい輝きを放っていて。
そんな眩さでありながらも背後を見渡せるくらい、妙にクリアなんだ。
その神々しさに、皆が見惚れてしまうまでに。
「クアリオ、今だッ!」
「え、あ――よしッ!!」
これでもう準備は整った。
後はタイミングを見計らい、この力を解き放つだけだ。
復讐の為でも無く、世界の為でも無く。
ただ一人の少女の為にと俺はこの力を奮うよ。
迫る鉄塊を引き換えに、その生きた証を立てる事によって。
「輝操――越醒転現」
その為に今、光塊が解き放たれた。
銀麗号の背部をも巻き込み、空を貫き只一直線に。
その軌跡、まさに光の如し。
力が届くまでには秒程も掛かりはしなかったよ。
放った直後にはもう、巨大機空船は輝きに包まれていたのだから。
「せめて人の為になれ、パパム、ジェオス、そして己の為に暴力を奮った者達よ。お前達が生きた証など、もう必要は無いのだから」
そして彼等にもまた手向けを送る。
もう二度と会う事はないであろう悪意達へと。
今後、もうあのような存在が生まれない事を祈って。
そんな祈りの中で遂に光が弾け飛ぶ。
空一杯へと燐光を撒き散らしながら。
すると間も無く、俺達の耳に「歌」が届いた。
この歌はニペルが生前に歌っていたもの。
彼女の歌そのもではないけれど、俺が聴いた物をそのまま再現したんだ。
そう、あの巨大機空船は今【ニペルの歌】へと昇華わったのだから。
しかも音の振動という歌じゃあない。
精神波にも近い、ビジョンを持った心の歌さ。
だからこの歌が届いた途端、ニペルの姿が脳裏に浮かぶようになっている。
当然、俺達の心にもな。
今も彼女の楽しそうな姿が映っているよ。
俺が今まで見て来たありのままの姿が。
思わず声を震わせて涙を流し、鼻を啜ってしまうくらいに。
そんな心の歌は間も無く世界中に届くだろう。
あれだけの大きさの輝操術と、あれ程の巨大な質量が昇華わったから。
お陰で世界中にニペルの存在を伝える事が出来たよ。
人にも、動物にも、魔物にも、虫や草木にも。
きっと彼女の思い出は伝わった事だろう。
今の力は、そういう風に出来るものだから。
「ありがとうニペル。君のお陰で、俺達は先に進む事が出来る」
「そうだね……その想いを、ここで止めちゃあダメだ」
もしかしたら今の歌には回復の力も備わっていたのかもしれない。
その所為なのか、気絶していたテッシャやフィーも目を覚ましていて。
涙を流しつつも、俺達に元気な頷きで返していた。
まだ全ての障害が無くなった訳ではない。
けれどニペルの存在を世界へと伝えられたから。
それにあのパパム達の野望も止められただろうから、それでもう悔いは無いよ。
だから後は陽珠の君に会うだけだ。
望み通り、今すぐお前の所に行ってやろう。
この旅の真意と、世界を救う手段。
お前の知る全てを引き出す為にもな……!
それも巨体に見合わない程の速度で。
大きいから鈍重という訳にはいかないらしい。
その速さはと言えば、銀麗号でさえ振り切れない程。
それどころか徐々に距離を詰めてきている。
このままでは射程圏内へと入るのも時間の問題だろう。
「クアリオ! ブースターで振りきれないの!?」
「無理だ! 陽珠までの距離がわからねー上に燃料も足りるか怪しい! そこでブースターなんて使っちまったら辿り着く前に落ちちまいかねねぇ!」
「不味いネェ、これじゃ只の動く的じゃあないかい……」
おまけに銀麗号にはこれ以上の要求が叶わないときた。
となれば俺達の命運はクアリオの腕次第という訳で。
ただ、その自信さえも間も無く揺らぐ事となる。
とうとう砲撃が行われ、周囲に爆発が起き始めたのだ。
しかも、なまじ大気が安定しているから狙い易い。
ついでに言えば砲撃手もプロだろうからな、下手な弾は撃たないだろうさ。
だからか遂には機体が振動するほど近くで爆発が起きていて。
あのノオンやマオでさえ怯えの声を上げ始める。
これだけ一方的な展開なら無理も無い。
だけどこの時、俺は何故か不思議と落ち着いていた。
まるで血の気が引くかの様に、頭の中がクリアになっていたんだ。
なんでだろうな。
あの機空船にパパム達が乗っているとわかったからだろうか。
ニペルの復讐をするなんて決まりきった事だからさ。
だから「どうしたらニペルは喜ぶだろうか」って考えて止まらなかった。
業を煮やすよりも、怨みに猛るよりも。
そこで俺は一つ思ったんだ。
きっとニペルはもっと外の世界を知りたかったに違いない。
多くの人と知り合って、話して、歌って踊って。
それで楽しく毎日を人らしく生きたかったんじゃないかって。
だったら、俺がその代わりをしてあげたい。
せめてもの手向けに、多くの人に彼女の存在を報せたい。
ニペルという少女が生きていたんだよって証明を、全世界に。
そう考えた時、もう体と手が動いていた。
座席から離れ、その背面へと己の身体をロープで括りつけて固定する。
それも銀麗号の後部へと向く様にして。
まるで巨大機空船と対面する様に。
「クアリオ、頼みがある。俺が合図したら奴等の軌道軸線上を真っ直ぐ航行してくれないか?」
「なっ!? お前馬鹿かッ!? そんな事したら狙ってくれって言ってる様なもんじゃねーかあッ!!」
「大丈夫だ。その時、もう全てが終わっている」
「――え?」
そうすると決めた時から、もう何もかもが見えていたんだ。
これからどうすればいいのか、どうなるのかと。
そう出来るくらいに想像が溢れて止まらなかった。
その落ち着き具合だけでクアリオを黙らせるくらいには。
「……わかった。ならしっかり声を出してくれよな。聞き取れなかったなんて言い訳出来ねぇくらいによ」
「ありがとう……!」
だからか、機空船の回避にも僅かにキレが生まれていた。
俺の意志を汲んで肝が据わった所為だろうか。
お陰で集中するのも容易くなったよ。
故に今、俺は正面へと両腕を掲げる。
ただ思うがままに、願うがままに。
今あるキャパシティの全てを、その手へと集める様にして。
するとたちまち、力が集まっていく感じがした。
それも術名を呼称するまでも無く。
仕込んでいた輝操闘法の全てをも取り込んで。
そうして気付けば全ての力が集まり、一つの光塊へと進化していた。
船内を埋め尽くさんばかりの大きさだった。
けれど、それでいて不思議と皆が恐れない様な優しい輝きを放っていて。
そんな眩さでありながらも背後を見渡せるくらい、妙にクリアなんだ。
その神々しさに、皆が見惚れてしまうまでに。
「クアリオ、今だッ!」
「え、あ――よしッ!!」
これでもう準備は整った。
後はタイミングを見計らい、この力を解き放つだけだ。
復讐の為でも無く、世界の為でも無く。
ただ一人の少女の為にと俺はこの力を奮うよ。
迫る鉄塊を引き換えに、その生きた証を立てる事によって。
「輝操――越醒転現」
その為に今、光塊が解き放たれた。
銀麗号の背部をも巻き込み、空を貫き只一直線に。
その軌跡、まさに光の如し。
力が届くまでには秒程も掛かりはしなかったよ。
放った直後にはもう、巨大機空船は輝きに包まれていたのだから。
「せめて人の為になれ、パパム、ジェオス、そして己の為に暴力を奮った者達よ。お前達が生きた証など、もう必要は無いのだから」
そして彼等にもまた手向けを送る。
もう二度と会う事はないであろう悪意達へと。
今後、もうあのような存在が生まれない事を祈って。
そんな祈りの中で遂に光が弾け飛ぶ。
空一杯へと燐光を撒き散らしながら。
すると間も無く、俺達の耳に「歌」が届いた。
この歌はニペルが生前に歌っていたもの。
彼女の歌そのもではないけれど、俺が聴いた物をそのまま再現したんだ。
そう、あの巨大機空船は今【ニペルの歌】へと昇華わったのだから。
しかも音の振動という歌じゃあない。
精神波にも近い、ビジョンを持った心の歌さ。
だからこの歌が届いた途端、ニペルの姿が脳裏に浮かぶようになっている。
当然、俺達の心にもな。
今も彼女の楽しそうな姿が映っているよ。
俺が今まで見て来たありのままの姿が。
思わず声を震わせて涙を流し、鼻を啜ってしまうくらいに。
そんな心の歌は間も無く世界中に届くだろう。
あれだけの大きさの輝操術と、あれ程の巨大な質量が昇華わったから。
お陰で世界中にニペルの存在を伝える事が出来たよ。
人にも、動物にも、魔物にも、虫や草木にも。
きっと彼女の思い出は伝わった事だろう。
今の力は、そういう風に出来るものだから。
「ありがとうニペル。君のお陰で、俺達は先に進む事が出来る」
「そうだね……その想いを、ここで止めちゃあダメだ」
もしかしたら今の歌には回復の力も備わっていたのかもしれない。
その所為なのか、気絶していたテッシャやフィーも目を覚ましていて。
涙を流しつつも、俺達に元気な頷きで返していた。
まだ全ての障害が無くなった訳ではない。
けれどニペルの存在を世界へと伝えられたから。
それにあのパパム達の野望も止められただろうから、それでもう悔いは無いよ。
だから後は陽珠の君に会うだけだ。
望み通り、今すぐお前の所に行ってやろう。
この旅の真意と、世界を救う手段。
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