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第2話 諦めて女の子として生きていきます
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誰かがおあつらえ向きに作った黄昏用人気スポット、丘の一本樹ブランコ。
俺はそこへと座り、夕暮れと共に沈んでいた。
自身が女性だと気付かされたその日に、絶望のあまり。
「盛大にしくじった……俺の人生計画はもうおしまいだ……っ!」
別に俺は女性が嫌いという訳では無い。
むしろ男の性としては好きな方だと言えよう。
だが、自身が異性ではいけないのだ。
身体が異性では、男だった魂が順応できず内包した超魔力を引き出しきれない。
これでは全盛期の力を取り戻すのに多大な年月を費やしてしまうだろう。
それでも成長段階ならまだ性転換は可能だったが、すでに手遅れだ。
性転換魔術など論外。あれは変身術だから肉体そのものは変わらない。
つまり、詰みなのだ。
「そういえば産まれたばかりの時、竿が無い事に気付いてはいたんだよ……でも『こういうものなんだ、後から生えてくるもんなんだろう』ってまったく気にも留めなかった。だって俺、産まれたばかりの赤ん坊なんて見た事ねぇもん……!」
こうなってしまったのは意識的に性への疑問を抱かず、肉体が女性である事を当たり前として認識したままだったからだ。
おまけに己の成長促進にだけ意識していて、記憶があいまいのまま疑問をいだく余地すらなくて。
結果、とてもかかわいい美少女が鏡に映っていました。
決してうぬぼれではない。
ママ上も相当なものだが、彼女に似てとても綺麗な顔付きだったよ。
絹糸のようにきめ細やかな空色の髪は、かきあげるとふわりと舞うし。
鏡の前で笑顔をキメたら自分が好きになりそうなくらいにかわいかった。
バストだって自信があるぞ、このふくよかさに幼顔はある意味凶器だ。
だが違うんだよ……!
俺が求めていたのはそうじゃねぇんだよ……!
「ミルカちゃん、元気、だして?」
「うん、ありがとうマルルちゃん……」
そう落ち込んでいた俺を、マルルちゃんが背を叩いて励ましてくれた。
まだ何を悩んでいるかわからないはずなのに……ホント健気な子だと思う。
そんな天使に、これ以上(元)野郎の愚痴と付き合わせる訳にはいかない。
なので俺は気持ちをスパッと切り替え、運命を受け入れる事にした。
女性として生まれたなら、女性として生きるしかないのだと。
しかし願わくは、いつかこの天使ちゃんと家族として共に暮らしたいものだ。
この気持ちだけは性別に関係無く、いたいけな彼女を幸せにしてあげたいと思うからこそ。
「今日からマルルちゃんがうちの家族に加わります。なのでミルカちゃん、仲良くしてあげてね」
「やったー、ミルカちゃんと、姉妹になったー!」
「ははは、可愛い妹ができたっぺなぁ」
「ミルカおねーちゃん!」
「待って、どうしてこうなった」
で、この日の夜に早速と願いが叶った。
あまりにもスピーディな展開に、さすがの俺でも理解が追い付かない。
そもそもマルルちゃんの方が半年分ほど年上なんだが?
確かに俺の方が成長はしているのだけども!
マルルちゃんもそれでいいの???
「賢い可愛いマイスィート天使ミルカちゃんなら知っていると思うけど、このシルス村には『共養い』という風習があるの」
「いや、さすがに知らないけど?」
「一つの家族がもう一方の家族の子を養って、フリーになった両親が上京して稼ぎに行くの。そして戻ってきた時に稼ぎを分配して元の家族に戻る、という風習なのよぉ」
ただこれはこの農村にとっては当たり前の風習だそうだ。
畑を耕すだけでは生活がままならず、片方の両親が都会で稼ぐという。
子どもとしては複雑かもしれないが、生きていくためには仕方のない事なのだ。
「マルルちゃんも今日から私達の事をパパとママって呼んでもいいのよ~」
「はーい!」
まぁ幸い、マルルちゃんはうちの両親とも仲が良い。
俺達が生まれた時から既に家族ぐるみで付き合いがあったからな。
なのできっと違和感なく溶け込んでくれるだろう。
まさかこうも早く念願が叶うとは思っても見なかったけどな。
なら、今度はこのまま穏やかに過ごせる事を願ってやまないよ。
☆☆☆ 一方、その頃 ☆☆☆
ミルカ達がマルルを家族に迎え入れて喜びあっていた時の事。
村の郊外にて、何かを調べる一人の女の姿があった。
「これは〝聖護防壁〟!? しかもこの魔力濃度は間違い無い、あの魔戦王が残したものだわ。でもどうしてここだけに残って……」
そして何やら痕跡をふと見つけ、掛けていた眼鏡をクイッと押し上げる。
村の中心へと鋭い視線を向けながら。
「まさか帰郷した矢先にこんな事態と遭遇するとはね。これは調査する必要がありそうだわ。妙な事になっていなければいいのだけど」
そんな彼女のつま先は既に村の中へと向けられていた。
その足取りは好奇心に惹かれているかのように軽快。
かつ、浮かべた不敵な微笑みからは恐れなど微塵も匂わせない。
まるで実力によほどの自信があるのだと誇らんがばかりに。
彼女はミルカの存在にまだ気付いてはいない。
だが魔戦王デュランドゥに関しての知識は有しているからこそ、その正体に気付く可能性は大いにあり得るだろう。
ならば果たして、二人の出会いは何をもたらすのか。
ただ少なくとも、ミルカの望む平穏とはいかなさそうだ。
俺はそこへと座り、夕暮れと共に沈んでいた。
自身が女性だと気付かされたその日に、絶望のあまり。
「盛大にしくじった……俺の人生計画はもうおしまいだ……っ!」
別に俺は女性が嫌いという訳では無い。
むしろ男の性としては好きな方だと言えよう。
だが、自身が異性ではいけないのだ。
身体が異性では、男だった魂が順応できず内包した超魔力を引き出しきれない。
これでは全盛期の力を取り戻すのに多大な年月を費やしてしまうだろう。
それでも成長段階ならまだ性転換は可能だったが、すでに手遅れだ。
性転換魔術など論外。あれは変身術だから肉体そのものは変わらない。
つまり、詰みなのだ。
「そういえば産まれたばかりの時、竿が無い事に気付いてはいたんだよ……でも『こういうものなんだ、後から生えてくるもんなんだろう』ってまったく気にも留めなかった。だって俺、産まれたばかりの赤ん坊なんて見た事ねぇもん……!」
こうなってしまったのは意識的に性への疑問を抱かず、肉体が女性である事を当たり前として認識したままだったからだ。
おまけに己の成長促進にだけ意識していて、記憶があいまいのまま疑問をいだく余地すらなくて。
結果、とてもかかわいい美少女が鏡に映っていました。
決してうぬぼれではない。
ママ上も相当なものだが、彼女に似てとても綺麗な顔付きだったよ。
絹糸のようにきめ細やかな空色の髪は、かきあげるとふわりと舞うし。
鏡の前で笑顔をキメたら自分が好きになりそうなくらいにかわいかった。
バストだって自信があるぞ、このふくよかさに幼顔はある意味凶器だ。
だが違うんだよ……!
俺が求めていたのはそうじゃねぇんだよ……!
「ミルカちゃん、元気、だして?」
「うん、ありがとうマルルちゃん……」
そう落ち込んでいた俺を、マルルちゃんが背を叩いて励ましてくれた。
まだ何を悩んでいるかわからないはずなのに……ホント健気な子だと思う。
そんな天使に、これ以上(元)野郎の愚痴と付き合わせる訳にはいかない。
なので俺は気持ちをスパッと切り替え、運命を受け入れる事にした。
女性として生まれたなら、女性として生きるしかないのだと。
しかし願わくは、いつかこの天使ちゃんと家族として共に暮らしたいものだ。
この気持ちだけは性別に関係無く、いたいけな彼女を幸せにしてあげたいと思うからこそ。
「今日からマルルちゃんがうちの家族に加わります。なのでミルカちゃん、仲良くしてあげてね」
「やったー、ミルカちゃんと、姉妹になったー!」
「ははは、可愛い妹ができたっぺなぁ」
「ミルカおねーちゃん!」
「待って、どうしてこうなった」
で、この日の夜に早速と願いが叶った。
あまりにもスピーディな展開に、さすがの俺でも理解が追い付かない。
そもそもマルルちゃんの方が半年分ほど年上なんだが?
確かに俺の方が成長はしているのだけども!
マルルちゃんもそれでいいの???
「賢い可愛いマイスィート天使ミルカちゃんなら知っていると思うけど、このシルス村には『共養い』という風習があるの」
「いや、さすがに知らないけど?」
「一つの家族がもう一方の家族の子を養って、フリーになった両親が上京して稼ぎに行くの。そして戻ってきた時に稼ぎを分配して元の家族に戻る、という風習なのよぉ」
ただこれはこの農村にとっては当たり前の風習だそうだ。
畑を耕すだけでは生活がままならず、片方の両親が都会で稼ぐという。
子どもとしては複雑かもしれないが、生きていくためには仕方のない事なのだ。
「マルルちゃんも今日から私達の事をパパとママって呼んでもいいのよ~」
「はーい!」
まぁ幸い、マルルちゃんはうちの両親とも仲が良い。
俺達が生まれた時から既に家族ぐるみで付き合いがあったからな。
なのできっと違和感なく溶け込んでくれるだろう。
まさかこうも早く念願が叶うとは思っても見なかったけどな。
なら、今度はこのまま穏やかに過ごせる事を願ってやまないよ。
☆☆☆ 一方、その頃 ☆☆☆
ミルカ達がマルルを家族に迎え入れて喜びあっていた時の事。
村の郊外にて、何かを調べる一人の女の姿があった。
「これは〝聖護防壁〟!? しかもこの魔力濃度は間違い無い、あの魔戦王が残したものだわ。でもどうしてここだけに残って……」
そして何やら痕跡をふと見つけ、掛けていた眼鏡をクイッと押し上げる。
村の中心へと鋭い視線を向けながら。
「まさか帰郷した矢先にこんな事態と遭遇するとはね。これは調査する必要がありそうだわ。妙な事になっていなければいいのだけど」
そんな彼女のつま先は既に村の中へと向けられていた。
その足取りは好奇心に惹かれているかのように軽快。
かつ、浮かべた不敵な微笑みからは恐れなど微塵も匂わせない。
まるで実力によほどの自信があるのだと誇らんがばかりに。
彼女はミルカの存在にまだ気付いてはいない。
だが魔戦王デュランドゥに関しての知識は有しているからこそ、その正体に気付く可能性は大いにあり得るだろう。
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