公爵夫人は謎解きがお好き

灰猫さんきち

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第2章 公爵夫人の魔力相談室

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 言葉に詰まる従姉に、追い打ちをかけるようにセオドアが私の肩を優しく抱いた。そしてリゼットたちに、氷のような一瞥をくれる。

「妻が旧交を温めているようだ。邪魔をしないでもらおうか」

 王者のごとき圧倒的な存在感に、従姉とその婚約者は顔を青くしてすごすごと退散していった。まったく私の騎士様は、向かうところ敵なしだ。
 パーティーの最中、私たちの周りには、ひっきりなしに人が訪れた。

「公爵様、奥様! 先日の講義、感銘を受けました!」と目を輝かせる見習い騎士ノア君。
「お二人のおかげで、新しい音色を見つけられましたわ」と優雅に微笑む宮廷音楽家のご婦人。
 そして「よう、相変わらず仲が良さそうで何よりだ!」と豪快に笑うアレクシス。
 彼らと話す私たちは、いつの間にか輪の中心になっていた。

 その光景を少し離れた場所から、父と母が見ているのに気づいた。
 父は仏頂面を崩さない。けれどその瞳は、ほんの少しだけ誇らしげに細められているように見えた。

(ああ、そうか)

 私はもうとっくに、あの家の人間ではなかったのだ。
 私の居場所は、父や母や一族のいるあの場所ではない。
 私の帰る場所は、賢者の塔。愛しい人の隣なのだ。
 そう実感した瞬間、過去のすべてが本当にどうでもいいことのように思えた。

 塔への帰り道、ひんやりとした夜風が火照った頬に心地よかった。

「ありがとうございました、セオドア。あなたのおかげで、私のくだらない過去にさよならができました」

 本当にくだらない。気にしていたのが馬鹿みたいだった。
 リゼットは私にマウントを取りたいだけだったんだ。今も昔も。
 それが今日、見事にカウンターを食らったわけだ。ざまあみろ。

 でも、少しだけ思う。従姉のマウントはコンプレックスの裏返しだったのかもしれない。
 書庫官の家に生まれたのに、勉強が得意ではなかった。分家だから立場も弱かった。
 本家の生まれで本の虫の私を気に入らなかったんだろうな。
 しかも伯爵令息を婚約相手に捕まえたけれど、憎たらしい従妹は公爵と結婚したのだという。

 まあ、過去は水に流そう。所詮はつまらない意地の張り合いだった。
 私がそんなことを考えていると。

「礼を言うのは、私の方だ」

 彼は立ち止まると、私の頬にそっと触れた。

「君が私のモノクロだった世界に、鮮やかな色を与えてくれた」

 唇が優しく私の額に触れる。

「さあ、我々の塔へ帰ろう。アリアーナ」

 彼の声が、夜の闇に優しく溶けていく。

「やるべきことは、まだ山ほどあるのだから」

 ええ、そうですね。
 私たちの物語は、まだ始まったばかり。
 過去を乗り越えたその先で、どんな未来が待っているのか。
 隣を歩く夫の手に、自らの手をそっと重ね合わせた。
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