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シーラの場合 後編
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国王陛下ご夫妻と王子殿下達のご入場に、生徒もその保護者達も一斉に礼をとる。
この学園は陛下の名がついているため、大きな行事には陛下もしくはその名代が出席する。
特に王太子が在籍しているここ数年は陛下ご夫妻での参加が増えていた。
今回はそれに加えて、卒業生でもある第一王子殿下と来年ご入学の第三王子殿下までご来場。
事前の予想どおりです。
三人の王子は皆優秀で仲がいいと聞く。
そっと、もう一度糸を確認する。
国王の合図で皆が礼を解く。
国王が席について、王太子を呼んだ。
「ところであそこでなにをしていたのかね」
国王が尋ねる。
会場の真ん中で進路を塞いでいたのだから当然の疑問だった。
王太子の説明を聞いて、国王夫妻と王子達が眉を顰める。
非常に不本意ですが皆の視線が私達(わたしとマイク)と国王夫妻とを行き来する。
国王夫妻と王太子の話は続いています。
ここから見るに、王妃がなんてことなのと眉を顰め、国王は無言でため息をついて首を横に振っている。
茶番劇だ。
「シーラ男爵令嬢」
そのとき、第一王子が私の元にやってきた。
ああ、そういうことですか。
3人の王子は仲がいいと聞きますが、所詮あなたは側妃様の子なのですね。
あなたと一緒に切り捨てられるのはごめんです。
胸が高鳴ります。
タイミング。
全てはそこにかかっています。
会場中の注目を浴びて、第一王子が私の前に跪きました。
そしてその胸のバラを取った瞬間。
私は糸を引き抜きました。
わあっと会場が揺れるほどの歓声が上がりました。
第一王子は、準備していたであろう言葉を出すことなくぽかんと口を開けています。
驚いたのでしょう。
目の前の令嬢のドレスが正確にはドレスの上半身がばらばらになったのですから。
私は糸を手放して腰のリボンに手をかけます。
「ま、待ってくれ」
第一王子が私を止めようとするが構わずリボンを解く。
ドレスのスカートがストンと下に落ちます。
周りがざわざわしていますが、破廉恥ではありません失礼な。
平服の上にドレスをついけていたのですから。
第一王子はなにが起こっているのかわかっていないようです。
そっと中に履いていた靴ごとヒールから足を抜いて、やっといつもの服装になれてスッキリです。
ゴテゴテの夜会用の化粧と巻き髪はこの際仕方ないですね。
お行儀が悪いですがそっとスカートを跨いで、さりげなく第一王子から距離を取って、床に広がったドレスを回収する。
そして出口へ。
誰も止める者はおりません。
関係のない人から見たら面白い見せ物でしょうね。
通りすがりに何人かの友人の顔が見えます。
心配してる顔、そうでない顔、一部には法に詳しいのであろう私をもう友人と思っていない顔をしている人もいますね。
忘れませんよ、その顔。
出口で一度ドレスを置いてあえてカーテシーではなく礼をして自分で扉を開ける。
扉を閉める時、ポカンとした第一王子と悔しそうな王妃と、表情のわからない王と王太子が見えた。
たとえ仲のいい親子兄弟でも、それはそれとして割り切れる人なんだと思ってみるととても怖いかもしれない。
だからこそ王族なのだろうか。
王命を破ったものは身分を一つ下げるという古い法律がある。
昔まだ戦さがあったり国が荒れていた頃に出来た法。
議会制が敷かれた今では有名無実忘れ去られた法だが、廃止はされていない。
今回は貴族派から金蔓(私)を引き離すことと、同時に別の企みがあった。
貴族派筆頭の公爵家出身の側妃の産んだ第一王子の排斥と我が家の流通網の国有化である。
王命の婚約破棄により我が家は平民となった。
公の場で平民に結婚を申し込んだ第一王子は王族にふさわしくないと廃王子となり、王族を惑わせた不敬などの理由で我が家の資産没収。
もし王太子と同腹の第三王子が求婚していたら、王家が直接うちの流通網を取り込んだであろう。
どちらも、我が家にとってはありがたくない。
王家が動いていることはわかっても、どちらの王子が来るのかまではわからなかった。
パーティーを避けてもいずれ仕掛けられるならこちらが備えられる時がいい。
婚約破棄はどうでもいいが、王家に絡まれるのは厄介だった。
一番大切なのは王子に求婚をさせないこと。
だからドレスに仕掛けをして、注意を逸らせてうやむやにして逃げた。
こども騙しのようなやり方だが、周りの貴族を巻き込まないためにも、借りを作らないためにも打てる手は少なかったのだ。
家柄はともかく成績はごく普通のマイク様が生徒会に所属するなんて不思議と思ったのが、今回の茶番劇に気がついたきっかけだったから、マイク様には感謝してもいいのかもしれないですね。
お祖母様もお祖父様ももはやいない今、我が家がこの国で貴族である理由はない。
ひとつの国の貴族としての義務や制約は、国を跨ぐ商人としては邪魔なだけ。
こちらとしても爵位を返上する機会を窺っていたのだから。
さあ走ろう。
学園の入り口ではお父様が馬車で待っていてくれます。
もう貴族の義務も婚約もないし、学園の教育も必要ありません。
とりあえず明日の昼は隣国のうちの本店で大口の契約が待っています。
この学園は陛下の名がついているため、大きな行事には陛下もしくはその名代が出席する。
特に王太子が在籍しているここ数年は陛下ご夫妻での参加が増えていた。
今回はそれに加えて、卒業生でもある第一王子殿下と来年ご入学の第三王子殿下までご来場。
事前の予想どおりです。
三人の王子は皆優秀で仲がいいと聞く。
そっと、もう一度糸を確認する。
国王の合図で皆が礼を解く。
国王が席について、王太子を呼んだ。
「ところであそこでなにをしていたのかね」
国王が尋ねる。
会場の真ん中で進路を塞いでいたのだから当然の疑問だった。
王太子の説明を聞いて、国王夫妻と王子達が眉を顰める。
非常に不本意ですが皆の視線が私達(わたしとマイク)と国王夫妻とを行き来する。
国王夫妻と王太子の話は続いています。
ここから見るに、王妃がなんてことなのと眉を顰め、国王は無言でため息をついて首を横に振っている。
茶番劇だ。
「シーラ男爵令嬢」
そのとき、第一王子が私の元にやってきた。
ああ、そういうことですか。
3人の王子は仲がいいと聞きますが、所詮あなたは側妃様の子なのですね。
あなたと一緒に切り捨てられるのはごめんです。
胸が高鳴ります。
タイミング。
全てはそこにかかっています。
会場中の注目を浴びて、第一王子が私の前に跪きました。
そしてその胸のバラを取った瞬間。
私は糸を引き抜きました。
わあっと会場が揺れるほどの歓声が上がりました。
第一王子は、準備していたであろう言葉を出すことなくぽかんと口を開けています。
驚いたのでしょう。
目の前の令嬢のドレスが正確にはドレスの上半身がばらばらになったのですから。
私は糸を手放して腰のリボンに手をかけます。
「ま、待ってくれ」
第一王子が私を止めようとするが構わずリボンを解く。
ドレスのスカートがストンと下に落ちます。
周りがざわざわしていますが、破廉恥ではありません失礼な。
平服の上にドレスをついけていたのですから。
第一王子はなにが起こっているのかわかっていないようです。
そっと中に履いていた靴ごとヒールから足を抜いて、やっといつもの服装になれてスッキリです。
ゴテゴテの夜会用の化粧と巻き髪はこの際仕方ないですね。
お行儀が悪いですがそっとスカートを跨いで、さりげなく第一王子から距離を取って、床に広がったドレスを回収する。
そして出口へ。
誰も止める者はおりません。
関係のない人から見たら面白い見せ物でしょうね。
通りすがりに何人かの友人の顔が見えます。
心配してる顔、そうでない顔、一部には法に詳しいのであろう私をもう友人と思っていない顔をしている人もいますね。
忘れませんよ、その顔。
出口で一度ドレスを置いてあえてカーテシーではなく礼をして自分で扉を開ける。
扉を閉める時、ポカンとした第一王子と悔しそうな王妃と、表情のわからない王と王太子が見えた。
たとえ仲のいい親子兄弟でも、それはそれとして割り切れる人なんだと思ってみるととても怖いかもしれない。
だからこそ王族なのだろうか。
王命を破ったものは身分を一つ下げるという古い法律がある。
昔まだ戦さがあったり国が荒れていた頃に出来た法。
議会制が敷かれた今では有名無実忘れ去られた法だが、廃止はされていない。
今回は貴族派から金蔓(私)を引き離すことと、同時に別の企みがあった。
貴族派筆頭の公爵家出身の側妃の産んだ第一王子の排斥と我が家の流通網の国有化である。
王命の婚約破棄により我が家は平民となった。
公の場で平民に結婚を申し込んだ第一王子は王族にふさわしくないと廃王子となり、王族を惑わせた不敬などの理由で我が家の資産没収。
もし王太子と同腹の第三王子が求婚していたら、王家が直接うちの流通網を取り込んだであろう。
どちらも、我が家にとってはありがたくない。
王家が動いていることはわかっても、どちらの王子が来るのかまではわからなかった。
パーティーを避けてもいずれ仕掛けられるならこちらが備えられる時がいい。
婚約破棄はどうでもいいが、王家に絡まれるのは厄介だった。
一番大切なのは王子に求婚をさせないこと。
だからドレスに仕掛けをして、注意を逸らせてうやむやにして逃げた。
こども騙しのようなやり方だが、周りの貴族を巻き込まないためにも、借りを作らないためにも打てる手は少なかったのだ。
家柄はともかく成績はごく普通のマイク様が生徒会に所属するなんて不思議と思ったのが、今回の茶番劇に気がついたきっかけだったから、マイク様には感謝してもいいのかもしれないですね。
お祖母様もお祖父様ももはやいない今、我が家がこの国で貴族である理由はない。
ひとつの国の貴族としての義務や制約は、国を跨ぐ商人としては邪魔なだけ。
こちらとしても爵位を返上する機会を窺っていたのだから。
さあ走ろう。
学園の入り口ではお父様が馬車で待っていてくれます。
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