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動乱
41.敗北と告白
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ゴルドに到着したのは日が落ちようとしている時だった。
夕暮れの町を見下ろした先にあったのは街中で戦いを繰り広げている兵士たちだった。
上空から見てもどちらが敵でどちらが味方かさっぱりわからない。
まずはアマーリアとソラノと合流しないと。
人気のない路地へ着陸して二人の気配を探る。
二人の反応は意外なところから返ってきた。
ランメルスの屋敷の地下?
嫌な予感が背筋を駆け降りる。
幸いまだ命は無事なようだけど早く助けに行かなくては。
走りだそうとした俺の首筋が総毛だった。
ほぼ無意識に剣を抜いて防御態勢をとる。
首筋に剣を構えるのとそこに剣が切り込んできたのはほぼ同時だった。
俺の剣はその勢いで半ばまで断ち切られた。
剣の硬度を変えておかなかったら首ごと切り飛ばされていただろう。
「これはこれは、まさかこの剣を受けるとは」
軽薄な声がした。
「ランメルス!」
その声を思い返すよりも先に叫んでいた。
「お久しぶりだね。ええと、確かテツヤさんとか言ってたっけ?」
「てめえ、アマーリアとソラノをどこにやった!」
「おや、そのことも知っていたんだ。なかなかに目と耳が良いようで」
「その態度、この騒動はやっぱりてめえの仕業か!」
「うーん、それに答える義理はないかな」
ランメルスが剣を手にゆっくりと近づいてくる。
汗が頬を伝う。
はっきり言って剣で勝てるとは思えなかった。
さっきの剣撃を受け止めたのは正直言ってただの運だ。
まずは奴の剣を破壊する!
だがその瞬間、背筋に氷柱を突き刺されたような寒気が走った。
何かがやばい!
瞬間的に石畳を持ち上げて壁を作り、同時に後ろに飛び退る!
石でできた壁と俺の体がばっくりと切り裂かれたのはほぼ同時だった。
血しぶきが飛び散るのがスローモーションのように見える。
切られたんだな、とまるで他人事のように考えていた。
そう思ったのも束の間で、俺は飛び退った勢いと切られた衝撃で薄暗い路地へと転げていった。
肩口から胸にかけて切られた傷から血が噴き出している。
馬鹿な!剣どころか腕の動きすら見えなかったぞ。
「へえ、あれを避けるとは大したものだ」
背後からランメルスの陽気な声が聞こえてきた。
ぞくりとして振り向くと剣を構えたランメルスの影がこちらに伸びている。
地べたに腰を落としながら必死で後ろに下がる。
今あの技を食らったら間違いなく死ぬ。
俺の脳裏に”死”が現実のものとして迫ってきていた。
「もう最期だと思うから言っておこうかな。確かにこのクーデターを起こしたのは私だよ。今や王城と一等区画は既に私の支配下にある」
余裕を見せているのかランメルスはあの不可視の斬撃を打ってこなかった。
「何故こんなことをする?」
俺は必死で傷を塞ぎながら尋ねた。
余裕を見せてるならこっちも時間稼ぎをさせてもらう。
なんとか血は止まったけど血を流しすぎたせいか足に力が入らない。
「何故?決まっているだろう。私にはそうするだけの力があるからさ!」
ランメルスが高らかに宣言した。
「ベンズ商会を買収して武器を調達し、町の兵士も手懐けて味方につけた。そして魔獣使いに魔獣をけしかけさせ、警備が薄くなったところで王城を制圧する。どうだい?良いアイディアだろう!」
「そのための資金があの山賊や町の犯罪組織って訳か」
「ほう!そこまで気付いていたのか!」
俺の指摘に感心したようにランメルスが叫んだ。
「いかにも、あの山賊は私と裏で繋がっていたのさ!税を低く抑えて領民に慕われ、その裏で山賊に本来納めるはずだった税を徴収してもらっていたという訳さ」
「控えめに言ってもてめえは屑だ。そんな甘い考えが上手くいくと思っているのか?いずれ王立騎士隊も戻ってくる。そうなったら終わりだぞ」
「それがそうでもないんだな。言っただろう、私にはその力があると」
ランメルスはチッチッと指を振った。
「俺を切ったあの不可視の斬撃か」
「そう、あの力は誰にも防げない。例え勇猛で名を馳せる王立騎士隊であってもね。現にあの調査隊長と騎士隊の一人は既に私の手にかかったよ」
その言葉に俺の全身の血が沸騰した。
「アマーリアとソラノに手を出してみろ。生きたままバラバラにしてやる」
「恐ろしいねえ。安心したまえ、彼女達はまだ無事だよ。まだ、ね」
そんな俺の恫喝にも全く動じずにランメルスが愉快そうに笑った。
「分かってると思うけど私は女には不自由してなくてね。良い寄ってくるだけの女にはいい加減飽き飽きしてたんだ。ああいう拒絶してくるタイプは新鮮だから楽しみだよ」
「屑が!」
ランメルスの下劣な告白に俺は唾を吐き捨てた。
「なんとでも言い給え。勝ったものが全てを手に入れるのがこの世の常だ。君は飛ばされた世界でそれを学ばなかったのかい?」
「ふざけるな!誰がそんな……って、まさかランメルス、お前は…お前も…?」
「その通り」
俺の問いに嬉しそうにランメルスが答えた。
「私も帰還者なんだよ」
夕暮れの町を見下ろした先にあったのは街中で戦いを繰り広げている兵士たちだった。
上空から見てもどちらが敵でどちらが味方かさっぱりわからない。
まずはアマーリアとソラノと合流しないと。
人気のない路地へ着陸して二人の気配を探る。
二人の反応は意外なところから返ってきた。
ランメルスの屋敷の地下?
嫌な予感が背筋を駆け降りる。
幸いまだ命は無事なようだけど早く助けに行かなくては。
走りだそうとした俺の首筋が総毛だった。
ほぼ無意識に剣を抜いて防御態勢をとる。
首筋に剣を構えるのとそこに剣が切り込んできたのはほぼ同時だった。
俺の剣はその勢いで半ばまで断ち切られた。
剣の硬度を変えておかなかったら首ごと切り飛ばされていただろう。
「これはこれは、まさかこの剣を受けるとは」
軽薄な声がした。
「ランメルス!」
その声を思い返すよりも先に叫んでいた。
「お久しぶりだね。ええと、確かテツヤさんとか言ってたっけ?」
「てめえ、アマーリアとソラノをどこにやった!」
「おや、そのことも知っていたんだ。なかなかに目と耳が良いようで」
「その態度、この騒動はやっぱりてめえの仕業か!」
「うーん、それに答える義理はないかな」
ランメルスが剣を手にゆっくりと近づいてくる。
汗が頬を伝う。
はっきり言って剣で勝てるとは思えなかった。
さっきの剣撃を受け止めたのは正直言ってただの運だ。
まずは奴の剣を破壊する!
だがその瞬間、背筋に氷柱を突き刺されたような寒気が走った。
何かがやばい!
瞬間的に石畳を持ち上げて壁を作り、同時に後ろに飛び退る!
石でできた壁と俺の体がばっくりと切り裂かれたのはほぼ同時だった。
血しぶきが飛び散るのがスローモーションのように見える。
切られたんだな、とまるで他人事のように考えていた。
そう思ったのも束の間で、俺は飛び退った勢いと切られた衝撃で薄暗い路地へと転げていった。
肩口から胸にかけて切られた傷から血が噴き出している。
馬鹿な!剣どころか腕の動きすら見えなかったぞ。
「へえ、あれを避けるとは大したものだ」
背後からランメルスの陽気な声が聞こえてきた。
ぞくりとして振り向くと剣を構えたランメルスの影がこちらに伸びている。
地べたに腰を落としながら必死で後ろに下がる。
今あの技を食らったら間違いなく死ぬ。
俺の脳裏に”死”が現実のものとして迫ってきていた。
「もう最期だと思うから言っておこうかな。確かにこのクーデターを起こしたのは私だよ。今や王城と一等区画は既に私の支配下にある」
余裕を見せているのかランメルスはあの不可視の斬撃を打ってこなかった。
「何故こんなことをする?」
俺は必死で傷を塞ぎながら尋ねた。
余裕を見せてるならこっちも時間稼ぎをさせてもらう。
なんとか血は止まったけど血を流しすぎたせいか足に力が入らない。
「何故?決まっているだろう。私にはそうするだけの力があるからさ!」
ランメルスが高らかに宣言した。
「ベンズ商会を買収して武器を調達し、町の兵士も手懐けて味方につけた。そして魔獣使いに魔獣をけしかけさせ、警備が薄くなったところで王城を制圧する。どうだい?良いアイディアだろう!」
「そのための資金があの山賊や町の犯罪組織って訳か」
「ほう!そこまで気付いていたのか!」
俺の指摘に感心したようにランメルスが叫んだ。
「いかにも、あの山賊は私と裏で繋がっていたのさ!税を低く抑えて領民に慕われ、その裏で山賊に本来納めるはずだった税を徴収してもらっていたという訳さ」
「控えめに言ってもてめえは屑だ。そんな甘い考えが上手くいくと思っているのか?いずれ王立騎士隊も戻ってくる。そうなったら終わりだぞ」
「それがそうでもないんだな。言っただろう、私にはその力があると」
ランメルスはチッチッと指を振った。
「俺を切ったあの不可視の斬撃か」
「そう、あの力は誰にも防げない。例え勇猛で名を馳せる王立騎士隊であってもね。現にあの調査隊長と騎士隊の一人は既に私の手にかかったよ」
その言葉に俺の全身の血が沸騰した。
「アマーリアとソラノに手を出してみろ。生きたままバラバラにしてやる」
「恐ろしいねえ。安心したまえ、彼女達はまだ無事だよ。まだ、ね」
そんな俺の恫喝にも全く動じずにランメルスが愉快そうに笑った。
「分かってると思うけど私は女には不自由してなくてね。良い寄ってくるだけの女にはいい加減飽き飽きしてたんだ。ああいう拒絶してくるタイプは新鮮だから楽しみだよ」
「屑が!」
ランメルスの下劣な告白に俺は唾を吐き捨てた。
「なんとでも言い給え。勝ったものが全てを手に入れるのがこの世の常だ。君は飛ばされた世界でそれを学ばなかったのかい?」
「ふざけるな!誰がそんな……って、まさかランメルス、お前は…お前も…?」
「その通り」
俺の問いに嬉しそうにランメルスが答えた。
「私も帰還者なんだよ」
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