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第二部~頭角 旅立ち
3.リンネ姫からの依頼
「まあ奴が黒幕だということは予想がついておったがの」
リンネは壁の絵のカドモインの領地の楕円の上に小さな円を描いた。
「ランメルスの領地はカドモインの隣だし以前から交流があったらしいからの」
「じゃ、じゃあこれを証拠にそのカドモインってのを告発したらいいんじゃないのか?」
俺の提案にリンネは頭を振った。
「それは無駄であろうな。これだけでは証拠とは呼べぬ。しらばっくれられて終わりだろうし、告発した場合はカドモインとの間に内戦が起こることも想定せねばならぬだろう。そのためには他諸侯を味方につけるだけの説得力が必要だ」
「な、なるほど……」
俺はリンネの深慮遠謀に内心舌を巻いた。
世の中の幸せだけを見て育ったような無垢な顔をしているのに大人顔負けの考えを持っている。
「じゃ、じゃあどうするんだ?このまま手をこまねいて見てろってのか?」
「そこでお主の出番よ」
俺の戸惑いにリンネが口元を歪ませた。
美少女はあくどい笑みを見せても美少女らしい。
「以前父上が言ったようにランメルスの領土は近隣諸侯が分割して管理することになっておる。それには当然カドモインも含まれる。というかランメルスの領土は五割超がカドモイン領になる予定なのだ」
リンネは説明しながらカドモイン領とランメルス領が接する端に小さな円を描いた。
その円は西の国境にも面している。
「そしてお主が赴任するトロブがここじゃ」
俺の領地はトロブと言うのか。初めて聞いたぞ。
「国境沿いではあるのだがここはちと難物でな」
リンネはトロブの円の外側に斜め下に向かって線を引いた。
「トロブはワールフィアとベルトランという二国の国境と接する場所なのだ。この線の上がワールフィア、通称魔界と呼ばれる魔族の国で下がこの大陸最大の帝国ベルトランだ」
そう言って壁の絵をペンでつつく。
「歴史的に国境をめぐって争いが絶えない上に土地が痩せていて碌な産物がなくてな。誰も治めたがっておらん。故にお主に白羽の矢が立ったのだ」
う、嬉しくねえ~~。
「まあそう言うな。痩せても枯れても一領主、行動の自由は大衆とは比較にならんほど広がるぞ。それに先ほど言ったようにここは三国の国境が接する要所、お主に任せるのが適任だと父上も判断したのだろう」
本当にそうかな…単に厄介を押し付けただけのような…
「何を言うか。ここは面倒だからと押し付けられるような場所ではないぞ。先の内乱でのお主の働きがあったからこその人事であろう。それに私もお主がここを治めるようと進言したのだ」
は?なんでそんなことを?
「今からそれを話す。まったく、ようやく本題に入ったぞ。つまりだ、私はランメルスが反乱を起こした時からカドモインが怪しいと踏んでおった。反乱が失敗した時点ですぐにベンズ商会を押さえたのもそのためよ。ベンズ商会がランメルスと懇意であり、ランメルスとカドモインに交流があったのは承知だったからな」
そこで急にリンネが床に座っていた俺の隣に腰かけて顔を近づけてきた。
頬と頬がくっつきそうな距離だ。
近い、近いぞ。
「しっ、静かにしろ。ここから先は内密にするのだぞ。それからランメルス亡き後で奴の領地の分配が案件に上がった時に閃いたのだ。これはカドモインを探る好機になると」
なるほどそういうことか。
「領主になれば他の諸侯の領地へ入る事も簡単になる。諸侯と話をする機会も増えるであろう」
「つまり、俺にカドモインを探れということだな?」
「理解が早くて助かるわ」
「どういう星の元に生まれたのかそういう仕事を振られることが多くてね」
犯罪組織の次は諸侯の内偵か、よくよく俺は調べることが好きだと思われているらしい。
「引き受けてくれるか?」
「もちろん。俺だってこんなに半端なままじゃケツの座りが悪いってもんだ」
「うむ、それでこそだ。報奨は期待してよいぞ。じゃがその前にお主にはこれを渡しておこう」
そう言ってリンネは懐から指輪を取り出した。
何の飾りもない簡素な指輪だけど光に照らすと不思議な虹色の光を放っている。
「これは?」
「気付いておらんかもしれんが今一番危険なのはお主よ。なにせお主はフィルド王国最強と謳われたランメルスを屠ったのだからな。お主に向けてカドモインの刺客が放たれたと見て間違いはないだろう。これはそのための予防措置よ」
そう言ってリンネは俺の右手中指に指輪をはめた。
ブカブカだと思った指輪は勝手に縮み、俺の指にぴったりと収まった。
「この指輪は幻術、洗脳、蠱惑の魔法に反応するように作られている。危機が迫ればお主に知らせてくれるだろう」
凄いものだな。まさか姫様が自分で作ったんだろうか?
「当然だ。私は聖属性を持っておるからな」
聖属性?つまり魔を打ち払うとかそういう力があるのか?
「そういうのとは少し違うのだが……ええい、説明が面倒くさいからそれはまた後だ!とにかくここでの用事は済んだからもう出るぞ!」
そう言ってリンネは立ち上がった。
俺もそれに続き、屋敷の外へと向かう。
「しかし、よく今までこの屋敷が残っていたな。リンネは言ってみればこの商会にとっては敵だろ?放火とかされてもおかしくなかったんじゃないか?」
「それは問題ない。ヨコシンが逃げた後でこの商会を買い取ったのは私だからな」
マジかよ。
「元々この商会は取り潰される予定だったのよ。それを私が買い取ることで商売を続けられるようにしたのだ。なのでかえって喜ばれているくらいよ」
なるほど、だからあんなに歓迎されていたのか。
「それにこの商会を残したのは別の理由もある。おそらくヨコシンはいずれほとぼりが冷めたらこの商会にいる人間と連絡を取ろうとするはずだ。ならば潰すよりも残しておいた方が監視がしやすいであろう?」
た、確かに。
「昔から言うであろう?味方は背負ってもいいが敵は見えるように手に持てと」
そう言ってリンネはにやりと笑った。
この姫様、ちょっと怖いぞ。
リンネは壁の絵のカドモインの領地の楕円の上に小さな円を描いた。
「ランメルスの領地はカドモインの隣だし以前から交流があったらしいからの」
「じゃ、じゃあこれを証拠にそのカドモインってのを告発したらいいんじゃないのか?」
俺の提案にリンネは頭を振った。
「それは無駄であろうな。これだけでは証拠とは呼べぬ。しらばっくれられて終わりだろうし、告発した場合はカドモインとの間に内戦が起こることも想定せねばならぬだろう。そのためには他諸侯を味方につけるだけの説得力が必要だ」
「な、なるほど……」
俺はリンネの深慮遠謀に内心舌を巻いた。
世の中の幸せだけを見て育ったような無垢な顔をしているのに大人顔負けの考えを持っている。
「じゃ、じゃあどうするんだ?このまま手をこまねいて見てろってのか?」
「そこでお主の出番よ」
俺の戸惑いにリンネが口元を歪ませた。
美少女はあくどい笑みを見せても美少女らしい。
「以前父上が言ったようにランメルスの領土は近隣諸侯が分割して管理することになっておる。それには当然カドモインも含まれる。というかランメルスの領土は五割超がカドモイン領になる予定なのだ」
リンネは説明しながらカドモイン領とランメルス領が接する端に小さな円を描いた。
その円は西の国境にも面している。
「そしてお主が赴任するトロブがここじゃ」
俺の領地はトロブと言うのか。初めて聞いたぞ。
「国境沿いではあるのだがここはちと難物でな」
リンネはトロブの円の外側に斜め下に向かって線を引いた。
「トロブはワールフィアとベルトランという二国の国境と接する場所なのだ。この線の上がワールフィア、通称魔界と呼ばれる魔族の国で下がこの大陸最大の帝国ベルトランだ」
そう言って壁の絵をペンでつつく。
「歴史的に国境をめぐって争いが絶えない上に土地が痩せていて碌な産物がなくてな。誰も治めたがっておらん。故にお主に白羽の矢が立ったのだ」
う、嬉しくねえ~~。
「まあそう言うな。痩せても枯れても一領主、行動の自由は大衆とは比較にならんほど広がるぞ。それに先ほど言ったようにここは三国の国境が接する要所、お主に任せるのが適任だと父上も判断したのだろう」
本当にそうかな…単に厄介を押し付けただけのような…
「何を言うか。ここは面倒だからと押し付けられるような場所ではないぞ。先の内乱でのお主の働きがあったからこその人事であろう。それに私もお主がここを治めるようと進言したのだ」
は?なんでそんなことを?
「今からそれを話す。まったく、ようやく本題に入ったぞ。つまりだ、私はランメルスが反乱を起こした時からカドモインが怪しいと踏んでおった。反乱が失敗した時点ですぐにベンズ商会を押さえたのもそのためよ。ベンズ商会がランメルスと懇意であり、ランメルスとカドモインに交流があったのは承知だったからな」
そこで急にリンネが床に座っていた俺の隣に腰かけて顔を近づけてきた。
頬と頬がくっつきそうな距離だ。
近い、近いぞ。
「しっ、静かにしろ。ここから先は内密にするのだぞ。それからランメルス亡き後で奴の領地の分配が案件に上がった時に閃いたのだ。これはカドモインを探る好機になると」
なるほどそういうことか。
「領主になれば他の諸侯の領地へ入る事も簡単になる。諸侯と話をする機会も増えるであろう」
「つまり、俺にカドモインを探れということだな?」
「理解が早くて助かるわ」
「どういう星の元に生まれたのかそういう仕事を振られることが多くてね」
犯罪組織の次は諸侯の内偵か、よくよく俺は調べることが好きだと思われているらしい。
「引き受けてくれるか?」
「もちろん。俺だってこんなに半端なままじゃケツの座りが悪いってもんだ」
「うむ、それでこそだ。報奨は期待してよいぞ。じゃがその前にお主にはこれを渡しておこう」
そう言ってリンネは懐から指輪を取り出した。
何の飾りもない簡素な指輪だけど光に照らすと不思議な虹色の光を放っている。
「これは?」
「気付いておらんかもしれんが今一番危険なのはお主よ。なにせお主はフィルド王国最強と謳われたランメルスを屠ったのだからな。お主に向けてカドモインの刺客が放たれたと見て間違いはないだろう。これはそのための予防措置よ」
そう言ってリンネは俺の右手中指に指輪をはめた。
ブカブカだと思った指輪は勝手に縮み、俺の指にぴったりと収まった。
「この指輪は幻術、洗脳、蠱惑の魔法に反応するように作られている。危機が迫ればお主に知らせてくれるだろう」
凄いものだな。まさか姫様が自分で作ったんだろうか?
「当然だ。私は聖属性を持っておるからな」
聖属性?つまり魔を打ち払うとかそういう力があるのか?
「そういうのとは少し違うのだが……ええい、説明が面倒くさいからそれはまた後だ!とにかくここでの用事は済んだからもう出るぞ!」
そう言ってリンネは立ち上がった。
俺もそれに続き、屋敷の外へと向かう。
「しかし、よく今までこの屋敷が残っていたな。リンネは言ってみればこの商会にとっては敵だろ?放火とかされてもおかしくなかったんじゃないか?」
「それは問題ない。ヨコシンが逃げた後でこの商会を買い取ったのは私だからな」
マジかよ。
「元々この商会は取り潰される予定だったのよ。それを私が買い取ることで商売を続けられるようにしたのだ。なのでかえって喜ばれているくらいよ」
なるほど、だからあんなに歓迎されていたのか。
「それにこの商会を残したのは別の理由もある。おそらくヨコシンはいずれほとぼりが冷めたらこの商会にいる人間と連絡を取ろうとするはずだ。ならば潰すよりも残しておいた方が監視がしやすいであろう?」
た、確かに。
「昔から言うであろう?味方は背負ってもいいが敵は見えるように手に持てと」
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