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第五部~ベルトラン帝国
1.春の訪れと招待
「え~、絶対にそんなの食えないって!」
「いやいや、これが美味いんだよ。こいつは高級食材なんだぞ」
「木の葉っぱを食べるとか絶対におかしいよ!」
グランの村の子供たちが口々に囃し立ててきた。
俺たちは山の中で山菜を採っている最中だ。
冬から春にかけてはトロブ地方でもっとも食料がなくなる時期なので木々が芽吹くようになると山菜が貴重な食材になる。
そして山菜採りは子供たちの仕事だ。
たまたまキリと一緒に遊びに行ったら子供たちが山菜採りに行くところだったから同行させてもらったのだ。
みんなが香草やキノコを採っている中、一本の木が俺の目に留まった。
棘だらけで枝が真っすぐに何本も生えている。
日本で見かけたタラノキにそっくりだ。
軽く触れて見ると頭に木の情報が流れ込んできた。
(毒性はなし。樹皮には薬効あり、若芽は食用になる)
やっぱりタラノキみたいだ。
辺りを見渡すと日当たりのいい場所に何本も生えている。
よしよし、今日はタラの芽の天ぷらだな。
こうして変人でも見るかのような眼で見てくる子供たちをよそに俺はいそいそとタラの芽を採ったのだった。
「なんだあ?木の芽を食べるだあ?お前いつから鹿になったんだよ?」
タラの芽を採ってきた俺を見てグランも呆れた顔をしていた。
「まあ見てなって。こいつは俺がいたところじゃご馳走なんだぜ」
卵と小麦粉で生地を作ってタラの芽をくぐらせてから油で揚げる。
「へえ、そんな揚げ方があるんですね。初めて見ました」
グランの奥さんミンレが俺の料理を見て感心したように呟いた。
「こうすると食感が良くなるし熱の通りも均質になりやすいんだ」
揚げたてのタラの芽の天ぷらに塩を振ってかぶりつく。
サクッとした食感とタラの芽のほろ苦さが相まった、これこそ春と言った味だ。
「にが~、全然美味しくないじゃん!」
「うぇ~、草をかじってるみたいな味がする」
「ご主人様、これ本当に美味しいの?」
キリを含め子供たちには不評だったか。所詮はお子様よ、大人の味はわからないか。
「むむ、変わった味だな。でも意外といけるな、こりゃ」
「ちょっと癖があるけど不思議と食べられますね。蕎麦粥とも合いそう」
グラン含め大人たちにはある程度好評みたいだ。
普段からあくの強い山菜を食べ慣れているからタラの芽も割と抵抗がないのかもしれないな。
「この木は俺がいたところだとタラノキと呼ばれてるんだ。でも芽を採りすぎるとその木は枯れてしまうから注意した方が良いよ。一番上の芽だけ採ってわき芽は残しておくと次の年も採れるんだ」
「この料理自体も色んな応用ができそうですね」
「ああ、肉でも野菜でも何でも揚げられるよ。食材によっては普通に煮たり焼いたりするより美味しいのもあるしね」
「でも、油をたくさん使うからそんなにはできないかも」
う…それを忘れてた…
フィルド王国では油はかなりの高級品なのだ。
料理に使われるオリーブオイルやゴマ油はかなりの量をベルトラン帝国から輸入しているらしい。
これはフェリエに油が採れる植物がないか聞いてみた方が良いかもしれないな。
他のみんなに食べさせようとタラの芽やキノコをお土産に屋敷に帰ると扉の前に数人の女騎士が立っていた。
リンネ姫の護衛隊だ。
ということはリンネ姫が来ているのか?
「おお、待っていたぞ」
扉を開けるとやはりそこにはリンネ姫がいた。
応接間のソファに座ってお茶を飲み、まるで我が家のようにくつろいでいる。
「言ってくれれば出迎えたのに」
「ふふん、お主を驚かせたかったのだ。ところでそれはなんなのだ?」
リンネ姫がタラの芽の入った籠を興味深そうに覗いてきた。
「驚かせるのはこっちの方かもな。ちょっと待っててくれ、すぐに用意するから」
「ふむ、変わった味だな。初めて食べるがなんとも比べようのない味をしているな」
「苦いのに少し甘みもある。テツヤの行った世界ではこんなものも食べているのか」
「この何とも言えない苦さは酒が欲しくなるな」
やはりリンネ姫たちにとってもタラの芽は珍しいものだったみたいだ。
「しかしこの天ぷらという料理、これは良いな。城の料理人にも教えねばなるまい」
「私もこれは気に入りました!特にこの鶏肉の天ぷらが良いですね。普通に食べるよりも美味しいくらいですよ」
「私はこのタラの芽の天ぷらがかなり気に入ったぞ。いくらでも食べられそうだ」
天ぷらも大好評で色々な具材で作ったらあっという間になくなってしまった。
護衛隊のみんなにも評判でレシピを教えてくれと迫られるくらいだった。
改めて料理教室を開いた方が良いかな?
「でもこれは油をたくさん使うんだよな。フィルド王国じゃ油は貴重品だろ?確か大半をベルトラン帝国から輸入してるんじゃなかったっけ」
「ああ、その通りだ。悔しいが我が国の食料はベルトラン帝国に依存していると言わざるを得ないのだ。なんとかそれを脱却したいのだが…」
リンネ姫が悔しそうに唇を噛んだ。
「そう言えばそれで思い出したぞ。今回はそのベルトラン帝国の件で来たのだ」
リンネ姫が手を叩いてこちらを見た。
「テツヤ、ベルトラン帝国に行きたくはないか?」
「いやいや、これが美味いんだよ。こいつは高級食材なんだぞ」
「木の葉っぱを食べるとか絶対におかしいよ!」
グランの村の子供たちが口々に囃し立ててきた。
俺たちは山の中で山菜を採っている最中だ。
冬から春にかけてはトロブ地方でもっとも食料がなくなる時期なので木々が芽吹くようになると山菜が貴重な食材になる。
そして山菜採りは子供たちの仕事だ。
たまたまキリと一緒に遊びに行ったら子供たちが山菜採りに行くところだったから同行させてもらったのだ。
みんなが香草やキノコを採っている中、一本の木が俺の目に留まった。
棘だらけで枝が真っすぐに何本も生えている。
日本で見かけたタラノキにそっくりだ。
軽く触れて見ると頭に木の情報が流れ込んできた。
(毒性はなし。樹皮には薬効あり、若芽は食用になる)
やっぱりタラノキみたいだ。
辺りを見渡すと日当たりのいい場所に何本も生えている。
よしよし、今日はタラの芽の天ぷらだな。
こうして変人でも見るかのような眼で見てくる子供たちをよそに俺はいそいそとタラの芽を採ったのだった。
「なんだあ?木の芽を食べるだあ?お前いつから鹿になったんだよ?」
タラの芽を採ってきた俺を見てグランも呆れた顔をしていた。
「まあ見てなって。こいつは俺がいたところじゃご馳走なんだぜ」
卵と小麦粉で生地を作ってタラの芽をくぐらせてから油で揚げる。
「へえ、そんな揚げ方があるんですね。初めて見ました」
グランの奥さんミンレが俺の料理を見て感心したように呟いた。
「こうすると食感が良くなるし熱の通りも均質になりやすいんだ」
揚げたてのタラの芽の天ぷらに塩を振ってかぶりつく。
サクッとした食感とタラの芽のほろ苦さが相まった、これこそ春と言った味だ。
「にが~、全然美味しくないじゃん!」
「うぇ~、草をかじってるみたいな味がする」
「ご主人様、これ本当に美味しいの?」
キリを含め子供たちには不評だったか。所詮はお子様よ、大人の味はわからないか。
「むむ、変わった味だな。でも意外といけるな、こりゃ」
「ちょっと癖があるけど不思議と食べられますね。蕎麦粥とも合いそう」
グラン含め大人たちにはある程度好評みたいだ。
普段からあくの強い山菜を食べ慣れているからタラの芽も割と抵抗がないのかもしれないな。
「この木は俺がいたところだとタラノキと呼ばれてるんだ。でも芽を採りすぎるとその木は枯れてしまうから注意した方が良いよ。一番上の芽だけ採ってわき芽は残しておくと次の年も採れるんだ」
「この料理自体も色んな応用ができそうですね」
「ああ、肉でも野菜でも何でも揚げられるよ。食材によっては普通に煮たり焼いたりするより美味しいのもあるしね」
「でも、油をたくさん使うからそんなにはできないかも」
う…それを忘れてた…
フィルド王国では油はかなりの高級品なのだ。
料理に使われるオリーブオイルやゴマ油はかなりの量をベルトラン帝国から輸入しているらしい。
これはフェリエに油が採れる植物がないか聞いてみた方が良いかもしれないな。
他のみんなに食べさせようとタラの芽やキノコをお土産に屋敷に帰ると扉の前に数人の女騎士が立っていた。
リンネ姫の護衛隊だ。
ということはリンネ姫が来ているのか?
「おお、待っていたぞ」
扉を開けるとやはりそこにはリンネ姫がいた。
応接間のソファに座ってお茶を飲み、まるで我が家のようにくつろいでいる。
「言ってくれれば出迎えたのに」
「ふふん、お主を驚かせたかったのだ。ところでそれはなんなのだ?」
リンネ姫がタラの芽の入った籠を興味深そうに覗いてきた。
「驚かせるのはこっちの方かもな。ちょっと待っててくれ、すぐに用意するから」
「ふむ、変わった味だな。初めて食べるがなんとも比べようのない味をしているな」
「苦いのに少し甘みもある。テツヤの行った世界ではこんなものも食べているのか」
「この何とも言えない苦さは酒が欲しくなるな」
やはりリンネ姫たちにとってもタラの芽は珍しいものだったみたいだ。
「しかしこの天ぷらという料理、これは良いな。城の料理人にも教えねばなるまい」
「私もこれは気に入りました!特にこの鶏肉の天ぷらが良いですね。普通に食べるよりも美味しいくらいですよ」
「私はこのタラの芽の天ぷらがかなり気に入ったぞ。いくらでも食べられそうだ」
天ぷらも大好評で色々な具材で作ったらあっという間になくなってしまった。
護衛隊のみんなにも評判でレシピを教えてくれと迫られるくらいだった。
改めて料理教室を開いた方が良いかな?
「でもこれは油をたくさん使うんだよな。フィルド王国じゃ油は貴重品だろ?確か大半をベルトラン帝国から輸入してるんじゃなかったっけ」
「ああ、その通りだ。悔しいが我が国の食料はベルトラン帝国に依存していると言わざるを得ないのだ。なんとかそれを脱却したいのだが…」
リンネ姫が悔しそうに唇を噛んだ。
「そう言えばそれで思い出したぞ。今回はそのベルトラン帝国の件で来たのだ」
リンネ姫が手を叩いてこちらを見た。
「テツヤ、ベルトラン帝国に行きたくはないか?」
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