外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人

文字の大きさ
205 / 298
火神教騒乱

34.灼熱のアグリッパ

しおりを挟む
 瓦礫の下敷きになっていたはずのアグリッパが俺たちの目の前にいる。

 長身痩躯の身体は服こそ破けているものの傷一つ付いていない。

 アグリッパは他の三人と同じように全く無表情で俺たちを見つめていた。


「ったく、大人しく寝とけばいいものを」


 俺はぼやきながら汗をぬぐった。

 アグリッパは体から猛烈な熱を発していて既に広間は暑くなり始めている。


「ククク、貴様も少しはやるようだが燼滅じんめつ教団最強の戦士、灼熱のアグリッパの相手にはなるまい」

 アグリッパの背後で余裕を取り戻したスカルドが哄笑した。


「無駄なことだ。既に我が軍がここへ向かっている頃だろう。ここで時間を稼いでも貴様に逃げる場所などないぞ」

 ゼファーが呆れたように言った。

 ここへ向かう道中でヘルマが部下に連絡を取っていたのだ。

 いずれベルトラン軍がこの神殿を包囲するだろう。

 既にスカルドはいや燼滅じんめつ教団は死に体だと言って良かった。


「逃げる?この儂が?」

 スカルドが目を剥いた。


「何故儂に逃げる必要がある!我らは神に選ばれた信徒!この世に居場所がなくなるのではない!神のもとに召される時が来ただけだ!」

 口から泡を吹きながらスカルドが吠えた。

 その眼は既に常人のものではない。


「アグリッパよ!我が忠実なる信徒よ!我らがウルカン様の元へ行くまで今しばらく時を稼ぐのだ!そのために貴様が持つ全ての力を開放してやろう!」

「ぐっぐあああああああっ!!!!!」

 スカルドの詠唱と共にアグリッパが絶叫した。

 アグリッパの全身を覆っていた紋様が発光しつつ広がっていく。

 それは既に紋様ではなかった。

 紋様に覆いつくされたアグリッパは全身から光を発している。

 跪いて地面についた手が岩を溶かしてめり込んだ。

 どんだけ高温になってるんだよ!



 しかしその熱はアグリッパ自身をも蝕んでいた。

 アグリッパの身体が少しずつ融解し、地面にマグマのしたたりとなって落ちている。


「ゆけい!その命尽きるまで神聖なる火で邪教徒どもを焼き尽くすのだ!」


 スカルドはアグリッパに命令を下すと奥にある扉の向こうへと逃走していった。


「あ、こら待ちやがれ!」

 追いかけようとしたが目の前にアグリッパが立ちはだかった。

 熱気で体が炙られるみたいだ。


「クソ、人間コンロかよ」


 俺はヘルマが持っていた剣を拾い上げるとゼファーに渡した。


「俺はちょいとこいつを片付けてくる。今度はあんたがヘルマとエイラを守るんだ。できるよな?」

 ゼファーは迷うことなく俺が差し出した剣を掴んだ。


「誰にものを言っている。余はこの国の王だぞ。臣下を守るのが王の役目だ」

 強がってはいるがその手が微かにふるえている。

 しかしゼファーの眼に恐れや迷いはなかった


「言うじゃないか。じゃあ頼んだぞ!」


 俺は壁に穴を開けて三人を隣の部屋へ逃がした。

 隣の部屋は内側からかんぬきをかけられるようになっているから敵が来てもしばらくは持ちこたえられるだろう。


「さて、ローストされる前にこっちを片付けないとな!」

 振り向きざまにアグリッパの足下に穴を開ける。

 しかしアグリッパは落ちない。

 よく見るとアグリッパは宙に浮かんでいた。

 これも奴の力なのか?熱で浮かんでいるんだろうか?


「チッ、地下に封印する方法は無理かよ!」


 アグリッパがこっちに突っ込んできた。

 既に知性や理性が失われているのかただ直線的にぶつかってくるだけの攻撃だ。

 激突した壁が熱で溶け落ちる。


「熱っ!」

 避けたはずなのに熱で体が焼けるようだ。

 岩を溶かすってことは千度以上あるのか!


 アグリッパが腕を振るった。

 マグマの飛沫がこちらに向かって凄いスピードで飛んでくる。


「クソ!」

 とっさに地面を壁に変えて防ぐ。

 防いだ、と思った時に上からマグマの滴りが降ってきた。


「危ねえっ」

 嫌な予感に横っ飛びすると真上からアグリッパが突っ込んできた。

 床を溶かし地面にめり込んだがすぐに飛び上がってくる。


 自らの熱で溶解し続けているアグリッパは体の三分の一が失われようとしていた。

 それでも俺に対する戦意は変わらない。

 足元に落ちていたヘルマの剣の片割れが飴のように溶けて地面に広がっている。

 ということはアグリッパの発する温度は千五百度を超えてるということか。


「まったく、死ぬことになっても己の信心を貫くってか。感心したいところだけど自分が狙われてるってのはぞっとしないな!」


 再びアグリッパが突っ込んでくる。


 その体が地面から生えてきた金属の槍に串刺しになった。


「ぐもおおおおおおおっ!!!」

 アグリッパが吠えた。

 まるでマグマが煮え立つような声だ。

 鉄をも溶かす灼熱の手で槍を掴むが槍は全く溶けずにアグリッパの身体を貫き続けた。


「ここが山の中で助かったよ。そいつはタングステン鉱だ。鉄を溶かすあんたでもそいつを溶かすことは無理みたいだな」

 タングステン鉱の融点は三千度を超える。

 鉄を溶かすことはできてもタングステン製の槍を溶かすことはできないらしい。


「ぐるるるうううあああああっ!」

 既に人としての形状を保てなくなったアグリッパが自分の身体を溶かしながら這いよろうとしてきた。


「悪いけどこれで終わりにさせてもらうぜ」


 手をかざして天井からタングステン鉱の槍を生み出した。

 金とほぼ同じ比重を持つタングステン鉱の槍が次々とアグリッパに降り注ぎ、地面へと突き刺さる。

 土埃が晴れた時、アグリッパの姿は地中奥深くに消え、タングステン鉱の槍が墓標のように突き立つばかりだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

ステータス画面がバグったのでとりあえず叩きます!!

カタナヅキ
ファンタジー
ステータ画面は防御魔法?あらゆる攻撃を画面で防ぐ異色の魔術師の物語!! 祖父の遺言で魔女が暮らす森に訪れた少年「ナオ」は一冊の魔導書を渡される。その魔導書はかつて異界から訪れたという人間が書き記した代物であり、ナオは魔導書を読み解くと視界に「ステータス画面」なる物が現れた。だが、何故か画面に表示されている文字は無茶苦茶な羅列で解読ができず、折角覚えた魔法なのに使い道に悩んだナオはある方法を思いつく。 「よし、とりあえず叩いてみよう!!」 ステータス画面を掴んでナオは悪党や魔物を相手に叩き付け、時には攻撃を防ぐ防具として利用する。世界でただ一人の「ステータス画面」の誤った使い方で彼は成り上がる。 ※ステータスウィンドウで殴る、防ぐ、空を飛ぶ異色のファンタジー!!

美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます

網野ホウ
ファンタジー
小説家になろうで先行投稿してます。 異世界から飛ばされてきた美しいエルフのセレナ=ミッフィール。彼女がその先で出会った人物は、石の力を見分けることが出来る宝石職人。 宝石職人でありながら法具店の店主の役職に就いている彼の力を借りて、一緒に故郷へ帰還できた彼女は彼と一緒に自分の店を思いつく。 セレナや冒険者である客達に振り回されながらも、その力を大いに発揮して宝石職人として活躍していく物語。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~

黒片大豆
ファンタジー
「お前、追放な。田舎に帰ってゆっくりしてろ」 女神の信託を受け、勇者のひとりとして迎えられた『アイサック=ベルキッド』。 この日、勇者リーダーにより追放が宣告され、そのゴシップニュースは箝口令解除を待って、世界中にバラまかれることとなった。 『勇者道化師ベルキッド、追放される』 『サック』は田舎への帰り道、野党に襲われる少女『二オーレ』を助け、お礼に施しを受ける。しかしその家族には大きな秘密があり、サックの今後の運命を左右することとなった。二オーレとの出会いにより、新たに『女神への復讐』の選択肢が生まれたサックは、女神へのコンタクト方法を探る旅に目的を変更し、その道中、ゴシップ記事を飛ばした記者や、暗殺者の少女、元勇者の同僚との出会いを重ね、魔王との決戦時に女神が現れることを知る。そして一度は追放された身でありながら、彼は元仲間たちの元へむかう。本気で女神を一発ぶん殴る──ただそれだけのために。

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

転生ジーニアス ~最強の天才は歴史を変えられるか~

普門院 ひかる
ファンタジー
 ここ神聖帝国に地球から異世界転生してきた天才チートな男がいた。  彼の名はフリードリヒ・エルデ・フォン・ツェーリンゲン。  その前世からしてケンブリッジ大学博士課程主席卒業の天才量子力学者で、無差別級格闘技をも得意とするチートな男だった彼は、転生後も持ち前のチート能力を生かし、剣術などの武術、超能力や魔法を極めると、人外を含む娘たちとハーレム冒険パーティを作り、はては軍人となり成り上がっていく。  そして歴史にも干渉し得る立場となった彼は世界をどうするのか…

元天才貴族、今やリモートで最強冒険者!

しらかめこう
ファンタジー
魔法技術が発展した異世界。 そんな世界にあるシャルトルーズ王国という国に冒険者ギルドがあった。 強者ぞろいの冒険者が数多く所属するそのギルドで現在唯一、最高ランクであるSSランクに到達している冒険者がいた。 ───彼の名は「オルタナ」 漆黒のコートに仮面をつけた謎多き冒険者である。彼の素顔を見た者は誰もおらず、どういった人物なのかも知る者は少ない。 だがしかし彼は誰もが認める圧倒的な力を有しており、冒険者になって僅か4年で勇者や英雄レベルのSSランクに到達していた。 そんな彼だが、実は・・・ 『前世の知識を持っている元貴族だった?!」 とある事情で貴族の地位を失い、母親とともに命を狙われることとなった彼。そんな彼は生活費と魔法の研究開発資金を稼ぐため冒険者をしようとするが、自分の正体が周囲に知られてはいけないので自身で開発した特殊な遠隔操作が出来るゴーレムを使って自宅からリモートで冒険者をすることに! そんな最強リモート冒険者が行く、異世界でのリモート冒険物語!! 毎日20時30分更新予定です!!

処理中です...