追放王子と出奔魔法使いの一冬の話

ブリリアント・ちむすぶ

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マッサージ

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「失礼します」

アランの自室の扉を開ける。そこには寝間着を着たアランがベッドに深く体を預けていた。
シャオが現れたのを視線だけで確認したアランは、シャオのその手に持っている道具でこれからマッサージをするのだと察したようだ。

「主、お体に触れてもよろしいでしょうか?」

シャオを跪き、アランの体に触れる許可を伺う。
二日ぶりのシャオのその姿をアランは見つめた。

「体はよいのか?」
「はい、この通り、問題ありません」

シャオは跪いたまま、アランに微笑む。
自分よりもアランの方が心配だった。何せ二日もマッサージをしていない。
体がどれほど強張っているのか。今日はいつもより時間をかけてマッサージをする必要がありそうだ。

「よい」

アランは簡潔にそう言い放つ。許可をもらったのでシャオはアランの体に手を伸ばした。
アランの身の包む寝間着の紐を解くと二日ぶりのアランの神々しい肌の美しさにシャオの喉がごくりと鳴る。それと同時に今朝の夢の内容が頭の中で再生し、顔が熱くなる。

ーー落ち着け! これはただのマッサージだ!

そう頭の中で自分を叱咤激励し、頭をよぎる夢の情景を追い出すように、頭を数度振るとシャオは湯に浸した布でアランの体を軽く拭いて行く。
 念のため体の状態を見ながらだが、想像より体の強張りは酷くない。

ーーよかった

思わず顔が緩み、小さな笑みをシャオは向けた。
そのまま、手に香油をたっぷりと垂らし、アランの体の隅々まで丹念にマッサージをしていく。

「……ッ」

だが、二日ぶりのせいだろう、時折足の付け根などを押すとアランの顔がほんの少し歪んだ。
この押したときの痛みを痛いからとそのままにすると、後々足の痺れがひどくなる原因にもなるのだ。
アランには申し訳ないが、ここは心を鬼にし念入りに足の付け根を押していかねばならない。

「申し訳ございません、少しばかり、辛抱を」
「……」

足の付け根だけではなく、足のあちらこちらも痛いのだろう。
わずかながら力んだ顔をするアランを気にしないふりをしてシャオはマッサージを続けた。
ある程度、マッサージを続けるとアランの感じている痛みはなくなり、白を通り越し、青白い足にも血色が戻ってくる。その血色の良さにシャオの顔は達成感で綻んでしまう。
この調子で背中もやり続ければ、問題ないだろう。

「主、後ろを――」
「もう良い」


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