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目覚めの2人
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ありえない。
アランがシャオを主と呼ぶなど、この世界がひっくり返ってもありえないし、アランのためなら死ぬことすらできるシャオにとってアランの名を呼び捨てで呼ぶなど考えられない。
それはアランの身分が平民でも同じことだ。仮に、シャオを拾ったのが王族ではなく平民のアランであってもシャオは敬愛と忠誠の証として、アランを「主」と呼ぶだろう。
「それに、お前も昔は俺の事を呼び捨てで呼んだことがあるだろう」
「それはッ! わ、私がまだ学の足りてない子供だったからで……、そんな昔の事、思い出したくもありませんッ!」
確かに昔、1度だけだがアランと出会ってすぐの時、目上の人間に対してどう呼べばいいのか分からず、シャオはアランの事を呼び捨てで呼んでしまった。
もちろんその場にいた他の従者に激しい叱責を受け、すぐにアランのことは「主」と呼ぶようになったのだが、呼び捨てで呼ばれたことがその当時のアランにとっては新鮮だったようで、シャオをからかう時にはいつもその話をされのだ。
普段ならばアランが満足する程度に付き合うのだが、今日はそのような余裕もない。
シャオは羞恥で顔を真っ赤に染めながらもアランに抗議の声を浴びせた。
「お願いします! これでは他の者に示しがーー」
「この屋敷には俺とお前しかいないだろう。ルカもいない」
「で、ですが……」
「シャオ、俺を名前で呼べ」
「ッ!」
アランの赤目が濃くなる。従属魔法を使われるのだ。
もう従属魔法は勘弁してくれとシャオは涙目になりながら首を振った。
「お、お許しを……」
「……」
「ア、ア……、アラン……様」
「なんだ?」
「じゅ、従属魔法をーー」
「却下」
「……ッ」
シャオがこんなにも懇願しているというのに、アランはいとも容易くシャオの願いを断った。
「貴様、昨日俺の隣に居たいと言っただろう。名を呼ぶくらいなんだ」
「あれは、ア、アーー、アラン、様の従者としてという意味であって」
「もう、10年も仕えているだろう、それに、ルカだって俺の事を名前で呼ぶ」
「奴は、浅学ですから! それに、ルカだってアランーー、様のことを様とつけて呼んでおります!」
必死に説得を試みるシャオだが、アランは動じない。そもそも主人と従者だ。元からシャオの思い通りになるはずがなかった。
アランはカップをサイドテーブルに置き、シャオの後ろでまとめ、前に垂らした髪に手を伸ばした。
その髪を撫ぜ、耳にかけ、そのまま冷たい手でシャオの頰をなぞった。
体が総毛立つ。せっかく体を冷やしたというのに、シャオの体がまた熱くなる。
アランがシャオを主と呼ぶなど、この世界がひっくり返ってもありえないし、アランのためなら死ぬことすらできるシャオにとってアランの名を呼び捨てで呼ぶなど考えられない。
それはアランの身分が平民でも同じことだ。仮に、シャオを拾ったのが王族ではなく平民のアランであってもシャオは敬愛と忠誠の証として、アランを「主」と呼ぶだろう。
「それに、お前も昔は俺の事を呼び捨てで呼んだことがあるだろう」
「それはッ! わ、私がまだ学の足りてない子供だったからで……、そんな昔の事、思い出したくもありませんッ!」
確かに昔、1度だけだがアランと出会ってすぐの時、目上の人間に対してどう呼べばいいのか分からず、シャオはアランの事を呼び捨てで呼んでしまった。
もちろんその場にいた他の従者に激しい叱責を受け、すぐにアランのことは「主」と呼ぶようになったのだが、呼び捨てで呼ばれたことがその当時のアランにとっては新鮮だったようで、シャオをからかう時にはいつもその話をされのだ。
普段ならばアランが満足する程度に付き合うのだが、今日はそのような余裕もない。
シャオは羞恥で顔を真っ赤に染めながらもアランに抗議の声を浴びせた。
「お願いします! これでは他の者に示しがーー」
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「で、ですが……」
「シャオ、俺を名前で呼べ」
「ッ!」
アランの赤目が濃くなる。従属魔法を使われるのだ。
もう従属魔法は勘弁してくれとシャオは涙目になりながら首を振った。
「お、お許しを……」
「……」
「ア、ア……、アラン……様」
「なんだ?」
「じゅ、従属魔法をーー」
「却下」
「……ッ」
シャオがこんなにも懇願しているというのに、アランはいとも容易くシャオの願いを断った。
「貴様、昨日俺の隣に居たいと言っただろう。名を呼ぶくらいなんだ」
「あれは、ア、アーー、アラン、様の従者としてという意味であって」
「もう、10年も仕えているだろう、それに、ルカだって俺の事を名前で呼ぶ」
「奴は、浅学ですから! それに、ルカだってアランーー、様のことを様とつけて呼んでおります!」
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その髪を撫ぜ、耳にかけ、そのまま冷たい手でシャオの頰をなぞった。
体が総毛立つ。せっかく体を冷やしたというのに、シャオの体がまた熱くなる。
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