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話の本題
しおりを挟む話の終わりがわかりだしたシャオにイースは先ほどとは打って変わり、矢継ぎ早になりながら言葉を続けた。
「おそらく、できる痣には二種類あるのだろう。ただ痣ができるはずのみですむ物と、病を広げる痣。もし、病を広げる方に当たってしまったら、その人間は必ず死ぬ――、ある者は、呪いなのだといった。無謀な遠征を繰り返し、多くの無駄な命を散らした我が国のね。その熱が出る方の痣に兄上がかかったのも、呪いなのだろう」
「き、貴様……!!!!」
怒りというものは限界を超えると、震えが止まらなくなるらしい。シャオはイースの言葉を聞きながら、怒りに震えていた。
体が震える。怒り、憎しみ――、すべての負の感情がシャオの中に渦巻いていた。
震えるシャオを、話し終えたとばかりのイースはわざとらしく笑みを見せる。
「どうした?」
「貴様、知っていたな!? 主が病におかされていたことを!!」
「……」
「貴様が主をあの屋敷に閉じ込めた時、主はすでに病を患わっていたのだ! 貴様は病に犯されていたことを知りながら、お前は屋敷に主をとじこめた! ご丁寧に結界も敷いてな!」
アランが屋敷に押し込まれる前、シャオはアランに会うことを許されていなかった。それはアランの体調不良が原因だった。
この城で病にかかったものは隔離され、限られた者とでしか会うことが出来ない。
10年アランに仕えてきてそういったことは何回かあった。そのどれもが再び健康な状態で戻ってきたのだが、その時だけはアランの体調がいつまでたっても治ることはなかった。
その間、アランはシャオも知らぬうちにあの雪に包まれた屋敷に追放されていたのだ。今の今まで、アランの病はあの屋敷に押し込められている時に発病したのだとシャオは思っていた。
「もし私が結界魔法を壊すのがもっとかかったら、主の病がひどくなっていたら――、どうするつもりだったのだ!?」
アランの首筋に痣があることぐらい、シャオも知っていた。イースのように何なのかを探ることをシャオはしなかったが。
それよりもアランの看病に必死だったのだ。
だが、もし王宮に居た時から看病が出来ていたら、アランが死の危機に瀕することはなかった。足も、杖をつかずに普通に歩けていたはずだ。
アランが死にかけた要因の一つがまさしくこのイースなのだとわかり、シャオは落ち着くことが出来なかった。
「貴様は主が邪魔だったのだ! その主の首に痣が出来たと知り、貴様は体よく追放した!」
「……半分、正解だな」
「なんだと……!?」
半分、ということはどういうことだろうか。
シャオが言った病に患った可能性のあるアランを追放と称し追い出したわけではないのか。
シャオの混乱を他所に、イースは言葉をつづけた。
「まずシャオ、君の言ったことは確かにその通りだ。私が新王としての基盤を整える間、兄上に邪魔されないよう、兄上にはどこかに行って欲しかった。ちょうど、その時に兄上に首筋に痣が見つかったから、ちょうどよかった」
イースは、シャオを挑発するように笑みを浮かべている。その表情、態度が、余計にシャオの怒りを煽るのだが、イースもそれはわかっているだろうにその顔をやめなかった。
「もう一つは、君だよシャオ」
イースはそう言いながらシャオに指を指した。意味の分からぬシャオは眉根を歪ませる。
「は……?」
「言っただろう。この病の薬ができていない、と。いや、この際はっきり言おう。私は君を利用した。国に蔓延しつつある病の治療法を探るためにね。君は兄上の優秀な部下だ。その兄上が命の危機に瀕していたら、君は必死で助け――、薬をつくる。そう私は思った」
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