追放王子と出奔魔法使いの一冬の話

ブリリアント・ちむすぶ

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大円団

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 時刻はそろそろ昼にさしかかろうとしていた。
 昼食を挟んだらシャオ達は現時点の薬についての説明と国で研究している病についての情報共有をする予定だ。それ以外にも様々なことをせねばならぬだろう。
 その間の休憩場として、シャオ達の身柄はいったんイースが急しのぎで用意させた部屋に移されることになった。
 その部屋の準備が出来たと言われたシャオ達は謁見の間からその部屋に向かっている。

「……ッ」
「主! 大丈夫ですか?」

 冬だから廊下にも敷かれた厚い絨毯はアランの足では非常に歩きずらいものであった。時折杖をついても身体の軸がぶれて歩きずらそうにしている。
 しかも、ここ2.3日シャオのマッサージが出来ていないせいで普段よりも痺れがきつくなっているようだ。
 いつもなら何食わぬ顔で杖だけで歩くことが出来るはず道をアランはいつもよりもゆっくりとした足取りで歩いている。 
 それを見て、シャオはアランに浮遊魔法を使おうとしたがアランはそれを断った。仮にも1年ぶりの住み慣れた王宮。それを自分の足で歩きたいのだという。
 主であるアランにそう言われたらシャオは断る理由がない。それでもアランが少しでも歩きやすいようシャオが寄り添うように支えながら歩いた。
 アランの服越しでも伝わる冷たさ。それだけで今が夢ではなく現実なのだと伝えてくれる。

 ーーそれにしても、念願だった主の王族への復帰が叶うとは……、それに、私も引き続き主のおそばに入れるとは思わなかった。

 アランの身柄は病の研究のため、今と同じくルカとシャオと共に屋敷にいることが決まった。それをイースから言われた時、シャオは初めてイースに感謝したいと思えた。
 このどちらかを諦めることをシャオは覚悟していたのだ。その分、薬の開発という大役を押し付けられたがこれもアランの足のためだと思うと全く苦ではない。
 本当に、ここまで上手くいくとは。本当によかっーー。

「良くないですよ!!」

幸せを噛み締めているシャオに対し急にルカが怒鳴ってくる。
  
「な、なんだ。貴様! なんで、私の考えをーー」
「そんな幸せそうな顔をしてたら誰だって何考えてたか分かります! っていうかッ!! なんです!? 薬草館館長って!? そんな施設知らないんですけど!?」

シャオの隣で歩きながら器用に頭を抱えるルカのうるささにシャオは顔を歪ませた。
 そういえば、こいつは先程イースに薬草館となるものの館長を任命されていた気がする。アランのことに意識が行き過ぎて全く耳に入らなかった。
 ルカも色々なことがあり事態が把握出来なかったのだろう。謎の役職を与えられたルカにアランが疲れた顔を隠さず言う。
 
「……王の事だ。俺たちがいるあの館をそういう名前に改める、という事だろう」
「でも、なんで僕なんです!? やるならアラン様がやるべきでしょう!?」
「今この国を蝕む病の特効薬を作るんだ。それを俺の手柄にする訳が無いだろう。それよりもお前の手柄にさせた方が無害だ」
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