死んだ姉の代わりなんて、できるわけが無い ~深窓令嬢嫁と無口夫~

ブリリアント・ちむすぶ

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ミアナ

叔父夫妻

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 タルドから出発すると言われたのはそれから1時間ほどたった時だった。
 マナが従者を連れて屋敷のホールに行くと、玄関ホールにはタルドの他に、タルドの叔父であるグルード、グルードの妻のアンドリーナ、そしてそれぞれの従者がいた。
 
「お待たせしてしまい申し訳ありません」

 マナが駆け下りるように階段を下がると、3人はマナの方をみる。
 マナの慌てた様子を見てタルドが無愛想に言う。

「……いや」
 
 何時もの事なのでマナは気にしていなかったが、その隣のグルー度が慌てたように口をひらいた。

「やあ、マナ。おはよう」
「おはようございます。グルード様。それに、アンドリーナ様も」

 グルードは整えられた鬚を心もとなげに触った。
 グレーの髪は甥のタルドより褪せているものの、綺麗に整えられており、タルドと同じ金色の瞳が優し気に細められる。
 タルドは父親よりこの叔父によく似ている。
 グルードはそのせいか、甥のタルドをよく可愛がり、タルドもグルードのことは信頼しているらしく、時折この屋敷に顔を出すのだ。

「ええ、ご機嫌よう。マナ」

 グルードの妻のアンドリーナもにこやかな笑みをマナに浮かべた。
 グルードの年の離れた妻であるアンドリーナの赤く塗られた唇がアンドリーナの着ている赤のドレスとよく似あっている。

「マナも孤児院に行くのかしら?」
「ええ、公務ですから」
「残念だわ。ならついでに貴女に似合いそうな香水を見繕ってくるわ」
「…ありがとうございます」

 アンドリーナは本来ならグルードと結婚することができない身の上だ。
 しかし、どういった手を使ったのかはわからないが3年前、アンドリーナとグルードは結ばれた。
 おそらく、様々な手段を使ったのだろう。
 マナはそのアンドリーナの赤く彩られた爪と唇がまるでそのアンドリーナに蹴落とされた者たちの血のように感じた。

「すまないね、アンドリーナ。本当なら夫である僕も一緒に行かなくてはいけないのに」
「本当に。なら、償いに新しい髪飾りでも買ってもらおうかしら?」
「ああ、君のこの黒髪を引き立てる髪飾りを買ってあげよう」
「ふふ、なら許してあげる」

 グルードとアンドリーナのやり取りをマナは他人事のように見つめていた。
 普通の夫婦なら当たり前のやりとりのはずだ。
 それが、とても奇怪な物にマナは思えた。

 ちらりと夫であるタルドをみる。
 タルドも同じように、無表情でグルードとアンドリーナを見ていた。
 きっと、タルドもマナと同じことを思っているのだろう。
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