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タルド
食事
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この日の昼食にラナは仕事があると言われ他のメイドが昼食の給仕を担当することになった。
ラナがいないことが最近は増えた。
本当はラナがいてミアナの様子を教えてくれたらいいのだが、使用人の采配は執事に一任されているのでマナも自由にできなかった。
けど、ラナがいないからと言ってマナとタルドが会話をしないのもミアナを悲しませてしまう、とマナは考えラナがいなくてもタルドと会話をするようにしていた。
タルドも同じ思いなのだろう。
ラナが来る前と後ではマナとタルドの会話の時間は比較にならないほど増えていた。
「このパン、とてもおいしいですね。ミアナもこの地域のパンがとても好きだと言っていました」
「ここの小麦はこの地域しか取れない種類のものを使用しているからな。程よい硬さと柔らかさがでるだろう」
「ええ。ミアナはよく私にこのパンを土産にしてくれていましたが、やはり出来立ては違いますね」
「…土産に?」
タルドはマナの言葉に驚いたように聞き返した。
なにか疑問でもあるのかと思い、マナは答える。
「ええ。タルド様のところに遊びに行ったときには必ず私にこのパンを土産にもらっていましたが…どうかしました?」
タルドはマナの言葉に納得したようにつぶやいた。
「…そうか。そうゆうことだったのか」
「えっ?」
「ミアナはよく部屋でも食べるからとこのパンを大量に部屋に持ってこさせていた。あの細い体のどこに入るのかと思ってはいたが…、そうゆうことだったのか」
タルドは長年の疑問が解けた、というように頷いた。
おそらくミアナは内緒でマナにパンを土産にしていたのだろう。
マナとタルドは近い存在ながらミアナがタルドと婚約者になってからは会うことも禁じられていた関係だ。
タルドの屋敷からの土産もマナが少しでもタルドに関わらないようにということで禁止になっていたが、それでもミアナはマナにタルドの地域の様々な土産物をもらった。
「禁止になっていたのか」
「ええ。お聞きになりませんですか?」
「お前の土産探しに俺は何日も付き合わされたことが何回もあるからな」
「まあ!」
「同じようなものに何時間も時間をかけて、これは色味が合わないとか形が合わないとか言って…、とてもくたびれた」
パンも一言言えばいいだろう、とタルドはおそらく近くにいるであろうミアナに聞こえるように言った。
マナはくすくすと笑いながら、タルドに言う。
「きっと、ミアナは今慌てているでしょうね」
「怒っているかもしれんぞ。ばらされたと」
「ふふっ。いいんです。ミアナらしいですもの」
「…それもそうだな」
タルドは微笑んだ。
普段は無口で表情が動かないタルドがミアナの話になると頬が緩むのをマナは知った。
青みがかかった黒髪とブルーの瞳、美しいタルドと美しいミアナは遠くで見てもとてもお似合いのカップルで、くすんだグレーの髪と瞳を持つマナに敵うわけなんかない。嫉妬もしたことがない。
「…マナ」
「はい、タルド様」
タルドはマナの瞳を見つめた。
美しいブルーの瞳がマナを見つめている。
「ど、どうかしました? 私の顔に何かついていますか?」
タルドは、呟くようにマナに言った。
「今夜、部屋に行く」
部屋に行く。
それがどういった意味かなんて知らないほどマナは初心じゃない。
落とした食器の落下音がやけにこの部屋に響いた。
「え――?」
ラナがいないことが最近は増えた。
本当はラナがいてミアナの様子を教えてくれたらいいのだが、使用人の采配は執事に一任されているのでマナも自由にできなかった。
けど、ラナがいないからと言ってマナとタルドが会話をしないのもミアナを悲しませてしまう、とマナは考えラナがいなくてもタルドと会話をするようにしていた。
タルドも同じ思いなのだろう。
ラナが来る前と後ではマナとタルドの会話の時間は比較にならないほど増えていた。
「このパン、とてもおいしいですね。ミアナもこの地域のパンがとても好きだと言っていました」
「ここの小麦はこの地域しか取れない種類のものを使用しているからな。程よい硬さと柔らかさがでるだろう」
「ええ。ミアナはよく私にこのパンを土産にしてくれていましたが、やはり出来立ては違いますね」
「…土産に?」
タルドはマナの言葉に驚いたように聞き返した。
なにか疑問でもあるのかと思い、マナは答える。
「ええ。タルド様のところに遊びに行ったときには必ず私にこのパンを土産にもらっていましたが…どうかしました?」
タルドはマナの言葉に納得したようにつぶやいた。
「…そうか。そうゆうことだったのか」
「えっ?」
「ミアナはよく部屋でも食べるからとこのパンを大量に部屋に持ってこさせていた。あの細い体のどこに入るのかと思ってはいたが…、そうゆうことだったのか」
タルドは長年の疑問が解けた、というように頷いた。
おそらくミアナは内緒でマナにパンを土産にしていたのだろう。
マナとタルドは近い存在ながらミアナがタルドと婚約者になってからは会うことも禁じられていた関係だ。
タルドの屋敷からの土産もマナが少しでもタルドに関わらないようにということで禁止になっていたが、それでもミアナはマナにタルドの地域の様々な土産物をもらった。
「禁止になっていたのか」
「ええ。お聞きになりませんですか?」
「お前の土産探しに俺は何日も付き合わされたことが何回もあるからな」
「まあ!」
「同じようなものに何時間も時間をかけて、これは色味が合わないとか形が合わないとか言って…、とてもくたびれた」
パンも一言言えばいいだろう、とタルドはおそらく近くにいるであろうミアナに聞こえるように言った。
マナはくすくすと笑いながら、タルドに言う。
「きっと、ミアナは今慌てているでしょうね」
「怒っているかもしれんぞ。ばらされたと」
「ふふっ。いいんです。ミアナらしいですもの」
「…それもそうだな」
タルドは微笑んだ。
普段は無口で表情が動かないタルドがミアナの話になると頬が緩むのをマナは知った。
青みがかかった黒髪とブルーの瞳、美しいタルドと美しいミアナは遠くで見てもとてもお似合いのカップルで、くすんだグレーの髪と瞳を持つマナに敵うわけなんかない。嫉妬もしたことがない。
「…マナ」
「はい、タルド様」
タルドはマナの瞳を見つめた。
美しいブルーの瞳がマナを見つめている。
「ど、どうかしました? 私の顔に何かついていますか?」
タルドは、呟くようにマナに言った。
「今夜、部屋に行く」
部屋に行く。
それがどういった意味かなんて知らないほどマナは初心じゃない。
落とした食器の落下音がやけにこの部屋に響いた。
「え――?」
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