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嵐
墓
しおりを挟む自分はどうすればいいのだろう。
ぐるぐると頭の中を駆け巡る言葉がマナの心を蝕んでいた。
先ほど執事に言われたラナを孤児院に戻せという言葉、そしてあの夜のタルドの「ミアナは死んだ」という言葉。
わかっている。
正しいのは彼らだ。
マナは子供のように嫌だと言っているしかない。
マナだけがミアナの死を受け入れられず、前にも進もうとしない。
そんなマナに、ミアナもきっと呆れてしまって姿を現すことはしなくなってしまったのだろう。
ミアナは明るく、正義感ある少女だ。
そのミアナすらに見捨てられたマナにはもう生きる意味すらないような気がしていた。
それでも、マナはミアナの姿をどうしてもミアナの存在を求めてしまう。
気が付けば、屋敷を抜け出し一人丘の上のミアナの墓に来てしまった。
「……ミアナ」
この墓はタルドがよく来ていた場所だ。
まだラナの来る前、タルドは朝は必ずこの場所に行きミアナを思っていた。
今はどうしているかわからないが、綺麗に手入れされた墓を見る限りタルドはほぼ毎日訪れているのだろう。
いつもはタルドに遠慮し墓に来るのは控えていたマナだが、今回ばかりはどうしようもできなかった。
マナはミアナの墓標に手を当てた。
石の冷たさが指に伝わった。
きっと、ミアナも丘に一人でいて寂しいだろう。
「…私も、一緒に入りたいわ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「マナ様!」
いつまでここにいたのだろう。
気が付けばあたりはもう暗くなり、空もどんよりと雲が覆っている。
夜には雨が降るのだろう。
そうぼんやり思ったマナの元にラナが現れたのは突然だった。
「……ラナ」
「マナ様、ここにいたのですね! 屋敷の皆で探しておりました!」
マナのヘーゼルの瞳から涙がこぼれていた。
きっとマナを心配してくれたのだろう。
マナはラナの頬を撫ぜる。
「…ごめんなさい、ラナ」
「いいんです。マナ様がご無事なら」
「……ええ」
「行きましょう。もうすぐ雨が降りますから」
ラナはマナの手を握った。
マナはラナのメイド服に隠れている皮膚はもしかしたら、傷だらけかもしれない。
マナの心に罪悪感が広がる。
「マナ様?」
「なんでもないわ。行きましょう」
ラナと屋敷に戻ろうとした時だった。
「えっ―――?」
屋敷と丘の裏には森がある。
普段、迷うので入らないようにと言われていた森だ。
マナも入ったことは無かった。
そこの森の入り口に、ミアナがいた。
「ミアナ…?」
マナの声が震える。
ミアナは死んだはずだ。その姿はラナしか見えない。
それなのに今、ミアナの姿をマナは目にしている。
「マナ様?」
ラナの声など聞こえないほど、マナはミアナに釘付けだった。
ミアナの絹のような金髪、ルビー色の瞳、ピンクのドレス。
マナの思い出の中のミアナがそこに微笑んでいた。
「ミアナ!」
「マナ様!」
マナはラナの手を振りほどき、ミアナの方へ走っていく。
ミアナはマナを誘う様にどんどん森の中に入っていく。
マナもそれに誘われるように森の中に入っていった。
「マナ様いけません! あれはだめです!」
ラナが急いでマナを追いかけた時、遠くで雷鳴が鳴った。
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