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ケビンの再訪
「君は本当にあの子の理解者なんだな」
「……そう、でしょうか」
レンの不安げな声に、ケビンは強く頷く。
「あぁ。きっとそうだ。あの子にとって幸せの象徴なんだ」
「そんなこと――」
「本当だ」
「……」
なぜケビンがそう言い切れるのか、レンにはわからない。
でも、ケビンは確信している。レンの知らないガランの事情を知っているからなのだろうか。
「本当は、不安だったんだ。俺が君の前に現れたことで、君があの子との関係を考えてしまうのではないかと」
「……」
「やっぱり、そうだったんだな」
ケビンは再度、頭を深く下げた。
「本当にすまない。全ては俺の身勝手な行動のせいだ」
ケビンはガランの年齢の事を知っているのだろう。
言葉の端々にガランを子供として認識している雰囲気を感じる。
「い、いいえ。貴方だけじゃないです。僕の……、せいですから」
「そんなことはない。君は――」
「いいんです。だけど……、僕には彼が分からない」
「……」
「なんで、僕なんかに彼が執着するのか。嘘をついてまで、一緒に居ようとしたのか……。それに何を隠しているのか分からないんです」
レンの本心からの吐露をケビンは真剣な顔で聞いていた。
コーヒーを飲みきり、それをソーサーに戻す音だけが響く。
静かなケビンの声がレンの耳にすっと入ってきた。
「一つ言えるのは――」
ケビンはそこで言葉を切り、レンの顔をみた。
澄んだ瞳を揺らがせることなく口を開く。
「君が、あの子の運命の人だからだよ」
「……」
「君は、あんまりそういう言葉を好きじゃなさそうだね。だけど、本当だ。君はどうか分からないけど、あの子は君を運命の人だと信じている。だから、君を大切にしたいと思っているから、自分を隠すんだ」
運命の人。
冗談には聞こえないケビンの言葉にレンは顔が曇る。いったい、自分とガランの関係はなんなのだろうか。
レンにとっては命を助けてくれた恩人だ。
だが、ガランにとっては? それが分からない。
「あの子は、君を心から慕っている。その思いは単なる子供としての物じゃない。強い思いだ。それだけあの子にとって君という存在がかけがえのないものなんだ」
「……」
「だから、お願いだ。あの子を拒絶しないでほしい。せめてこの世界で君だけは、味方でいてくれ。そうしなければ、彼は本当にひとりぼっちなんだ」
ケビンがどうしてここまでガランについて真剣に言うのかレンにはわからない。
何度も言うが、ガランは危険だ。遠ざけなくてはならないのに。だから、関係を切ろうと会う時間を減らそうとしているのに。
そう言われては気持ちが揺らいでしまうではないか。
「……」
レンの目の端に、店のカーテンが揺らめくのが見えた。
濃いネイビー色のそのカーテンは開けていた窓から入ってきた風を受け揺らめいている。
それが今のレンの心情を表しているように思えた。
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