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「いや~、マジでギューリの愛は殺傷力高いっスよ。肉よりレアだわ」
「誰が上手いこと言えって言ったのよ!」
「うわ、トング投げるのやめろっス! 危ねぇなぁ!」
危ないと言いつつもフェルは軽々と身をかわし、壁際の席に滑り込む。
靴を脱ぎ、背もたれに体を預けて、まるで自分の家のように寛ぎ始めた。
テーブルの向こう側では、真っ黒なフードを被った少女――ミーナが無表情で食事をとっている。
無表情で、何かを考えているようで、何も考えていないような瞳で食事をひとり始めていた。
彼女は短い返答しかせず、まるで人形のように大人しいが、その体の何処に入るのかと勘ぐってしまうほど、大ぐらいだった。
「おかえり、ボス、リアナ。今日も無事で、よかった」
「ありがとう、ミーナ」
「うん。……お肉、焼けてる。おいしい」
「後で頂きます」
ミーナは無表情のまま小さく頷くと、山盛りの肉を小動物のように頬張った。
ナイフとフォークの触れ合う音だけが小さく響く。
その様子を眺めていたフェルが、ついに堪えきれずに吹き出した。
「マジで、ミーナ先輩って天然なんだか冷めてるんだか分かんねぇよな」
「馬鹿に言われたくない」
「いやいや、馬鹿ってひどくねっスか!俺はどっちかって言うと器用貧乏タイプ?」
「不器用で貧乏の間違いでしょ♡」
誰もが無視を決め込んだフェルの言葉に返しながらギューリが最後の料理を両手に抱えてきた。
「さあ冷めないうちに食べちゃって♡今日は仔羊と真鯛のローストよ。チーズフォンデュとライ麦パンもあるわ。キノコのポタージュが居る人は言ってちょうだい。食後のデザートにはベリーのタルトもあるわ」
ギューリがテーブルに料理を並べるたびに、温かな香りが部屋いっぱいに広がった。
長いテーブルには肉料理、魚料理、サラダ、パン、ワイン――
色彩だけでも絵画のように美しい光景。
暗殺部隊ノクターナの拠点とは思えない、あまりにも穏やかな食卓だった。
「誰が上手いこと言えって言ったのよ!」
「うわ、トング投げるのやめろっス! 危ねぇなぁ!」
危ないと言いつつもフェルは軽々と身をかわし、壁際の席に滑り込む。
靴を脱ぎ、背もたれに体を預けて、まるで自分の家のように寛ぎ始めた。
テーブルの向こう側では、真っ黒なフードを被った少女――ミーナが無表情で食事をとっている。
無表情で、何かを考えているようで、何も考えていないような瞳で食事をひとり始めていた。
彼女は短い返答しかせず、まるで人形のように大人しいが、その体の何処に入るのかと勘ぐってしまうほど、大ぐらいだった。
「おかえり、ボス、リアナ。今日も無事で、よかった」
「ありがとう、ミーナ」
「うん。……お肉、焼けてる。おいしい」
「後で頂きます」
ミーナは無表情のまま小さく頷くと、山盛りの肉を小動物のように頬張った。
ナイフとフォークの触れ合う音だけが小さく響く。
その様子を眺めていたフェルが、ついに堪えきれずに吹き出した。
「マジで、ミーナ先輩って天然なんだか冷めてるんだか分かんねぇよな」
「馬鹿に言われたくない」
「いやいや、馬鹿ってひどくねっスか!俺はどっちかって言うと器用貧乏タイプ?」
「不器用で貧乏の間違いでしょ♡」
誰もが無視を決め込んだフェルの言葉に返しながらギューリが最後の料理を両手に抱えてきた。
「さあ冷めないうちに食べちゃって♡今日は仔羊と真鯛のローストよ。チーズフォンデュとライ麦パンもあるわ。キノコのポタージュが居る人は言ってちょうだい。食後のデザートにはベリーのタルトもあるわ」
ギューリがテーブルに料理を並べるたびに、温かな香りが部屋いっぱいに広がった。
長いテーブルには肉料理、魚料理、サラダ、パン、ワイン――
色彩だけでも絵画のように美しい光景。
暗殺部隊ノクターナの拠点とは思えない、あまりにも穏やかな食卓だった。
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