11 / 21
11
心とは裏腹な快晴。
まさしく絶好の結婚式日和とも言える。
「お美しいですね、お嬢様。心境は別として」
「着飾って貰ったからね……」
マリーはチベットスナギツネのような顔で、只々必死に私をこれでもかと言う程に着飾ってくれた。
あんなのに嫁ぐ為、これ以上ない位の晴れ姿に着飾る必要があるなんて!と喚いていたけれど、仕事だと割り切ってくれる辺り、マリーはしっかりしていると思う。
まぁ、もう何も感じないというか考えないようにしているのだろうけれど。それは表情が物凄く物語っている。
乗り気ではない結婚。だけれど、一生に一度の晴れ舞台。そして、やはり貴族同士の繋がりを他の貴族達に知らしめる意味を持って、周辺の貴族達は参加しているのだ。そんな中でみすぼらしい恰好なんてしていては、ただの恥だ。
だからこそ、昨日からお風呂で磨かれ、全身マッサージまで念入りにされ、食べる物や飲む物さえも制限されていたのだ。……貴族として生まれた者の義務だと諦めてはいるけれど。
「アンヌ」
「お父様」
思いつめたような表情で、お父様が控室に入って来た。
「……嫁ぐ事になってしまったら、本当に申し訳ない」
「……まだ、分かりませんよ」
「……」
無言が物語る。
クレシー侯爵家は、ブリジット嬢の言いなりだ。このまま何事もなく終わるとは思えない。
「しかし、何事もなかったら……」
お父様は苦虫を噛みしめたかのような表情で、身体を震わせる。それ程までに、押し切られた婚約を後悔しているのだろう。
そこまで大事に思ってもらえている事に、嬉しさを覚える。
「……ありがとうございます」
マリーにしろ、お父様にしろ、大事に思ってもらい、愛されている。
それを知り、感謝の気持ちを覚えた事は、自分なりにも成長できた事だとは思える。むしろ、今回の件で愛情を知る事が出来たのは、私にとって何よりの財産だ。
……先行きには、まだまだ不安しかないけれど。
覚悟を決め、控室から出ようとした時、外から騒めく声が聞こえてきた。
「何?」
「どうしたんだ?」
私とお父様が、視線を扉の方へ向ける。何故かウキウキと楽しそうな表情をしたマリーが、今にもスキップするかのような軽やかさで、扉の方へ向かい、外へ出て行った。
「……ふむ」
険しい表情となったお父様は、胸元から一枚の紙を取り出す。
横目でそれを見れば、クレシー侯爵と結んだ契約書だった。必要になるかもと思い、持ってきたのだろう。
私も、前もって、その内容は確認させてもらった。
「お嬢様!」
扉を見つめていれば、ノックもなしにマリーが嬉しそうな表情と声色で、いきなり扉を開け放つと、私の方へ軽やかに駆けてきた。
まさしく絶好の結婚式日和とも言える。
「お美しいですね、お嬢様。心境は別として」
「着飾って貰ったからね……」
マリーはチベットスナギツネのような顔で、只々必死に私をこれでもかと言う程に着飾ってくれた。
あんなのに嫁ぐ為、これ以上ない位の晴れ姿に着飾る必要があるなんて!と喚いていたけれど、仕事だと割り切ってくれる辺り、マリーはしっかりしていると思う。
まぁ、もう何も感じないというか考えないようにしているのだろうけれど。それは表情が物凄く物語っている。
乗り気ではない結婚。だけれど、一生に一度の晴れ舞台。そして、やはり貴族同士の繋がりを他の貴族達に知らしめる意味を持って、周辺の貴族達は参加しているのだ。そんな中でみすぼらしい恰好なんてしていては、ただの恥だ。
だからこそ、昨日からお風呂で磨かれ、全身マッサージまで念入りにされ、食べる物や飲む物さえも制限されていたのだ。……貴族として生まれた者の義務だと諦めてはいるけれど。
「アンヌ」
「お父様」
思いつめたような表情で、お父様が控室に入って来た。
「……嫁ぐ事になってしまったら、本当に申し訳ない」
「……まだ、分かりませんよ」
「……」
無言が物語る。
クレシー侯爵家は、ブリジット嬢の言いなりだ。このまま何事もなく終わるとは思えない。
「しかし、何事もなかったら……」
お父様は苦虫を噛みしめたかのような表情で、身体を震わせる。それ程までに、押し切られた婚約を後悔しているのだろう。
そこまで大事に思ってもらえている事に、嬉しさを覚える。
「……ありがとうございます」
マリーにしろ、お父様にしろ、大事に思ってもらい、愛されている。
それを知り、感謝の気持ちを覚えた事は、自分なりにも成長できた事だとは思える。むしろ、今回の件で愛情を知る事が出来たのは、私にとって何よりの財産だ。
……先行きには、まだまだ不安しかないけれど。
覚悟を決め、控室から出ようとした時、外から騒めく声が聞こえてきた。
「何?」
「どうしたんだ?」
私とお父様が、視線を扉の方へ向ける。何故かウキウキと楽しそうな表情をしたマリーが、今にもスキップするかのような軽やかさで、扉の方へ向かい、外へ出て行った。
「……ふむ」
険しい表情となったお父様は、胸元から一枚の紙を取り出す。
横目でそれを見れば、クレシー侯爵と結んだ契約書だった。必要になるかもと思い、持ってきたのだろう。
私も、前もって、その内容は確認させてもらった。
「お嬢様!」
扉を見つめていれば、ノックもなしにマリーが嬉しそうな表情と声色で、いきなり扉を開け放つと、私の方へ軽やかに駆けてきた。
あなたにおすすめの小説
〖完結〗旦那様には本命がいるようですので、復讐してからお別れします。
藍川みいな
恋愛
憧れのセイバン・スコフィールド侯爵に嫁いだ伯爵令嬢のレイチェルは、良い妻になろうと努力していた。
だがセイバンには結婚前から付き合っていた女性がいて、レイチェルとの結婚はお金の為だった。
レイチェルには指一本触れることもなく、愛人の家に入り浸るセイバンと離縁を決意したレイチェルだったが、愛人からお金が必要だから離縁はしないでと言われる。
レイチェルは身勝手な愛人とセイバンに、反撃を開始するのだった。
設定はゆるゆるです。
本編10話で完結になります。
あなたに未練などありません
風見ゆうみ
恋愛
「本当は前から知っていたんだ。君がキャロをいじめていた事」
初恋であり、ずっと思いを寄せていた婚約者からありえない事を言われ、侯爵令嬢であるわたし、アニエス・ロロアルの頭の中は真っ白になった。
わたしの婚約者はクォント国の第2王子ヘイスト殿下、幼馴染で親友のキャロラインは他の友人達と結託して嘘をつき、私から婚約者を奪おうと考えたようだった。
数日後の王家主催のパーティーでヘイスト殿下に婚約破棄されると知った父は激怒し、元々、わたしを憎んでいた事もあり、婚約破棄後はわたしとの縁を切り、わたしを家から追い出すと告げ、それを承認する書面にサインまでさせられてしまう。
そして、予告通り出席したパーティーで婚約破棄を告げられ絶望していたわたしに、その場で求婚してきたのは、ヘイスト殿下の兄であり病弱だという事で有名なジェレミー王太子殿下だった…。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
許してもらえるだなんて本気で思っているのですか?
風見ゆうみ
恋愛
ネイロス伯爵家の次女であるわたしは、幼い頃から変わった子だと言われ続け、家族だけじゃなく、周りの貴族から馬鹿にされ続けてきた。
そんなわたしを公爵である伯父はとても可愛がってくれていた。
ある日、伯父がお医者様から余命を宣告される。
それを聞いたわたしの家族は、子供のいない伯父の財産が父に入ると考えて豪遊し始める。
わたしの婚約者も伯父の遺産を当てにして、姉に乗り換え、姉は姉で伯父が選んでくれた自分の婚約者をわたしに押し付けてきた。
伯父が亡くなったあと、遺言書が公開され、そこには「遺留分以外の財産全てをリウ・ネイロスに、家督はリウ・ネイロスの婚約者に譲る」と書かれていた。
そのことを知った家族たちはわたしのご機嫌伺いを始める。
え……、許してもらえるだなんて本気で思ってるんですか?
※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
【完結】婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話
2026.1月24日より連載版投稿開始しました❗️
学生のうちは自由恋愛を楽しもうと彼は言った
mios
恋愛
学園を卒業したらすぐに、私は婚約者と結婚することになる。
学生の間にすることはたくさんありますのに、あろうことか、自由恋愛を楽しみたい?
良いですわ。学生のうち、と仰らなくても、今後ずっと自由にして下さって良いのですわよ。
9話で完結
元婚約者様へ――あなたは泣き叫んでいるようですが、私はとても幸せです。
阿里
恋愛
侯爵令嬢の私は、婚約者である騎士アラン様との結婚を夢見ていた。
けれど彼は、「平凡な令嬢は団長の妻にふさわしくない」と、私を捨ててより高位の令嬢を選ぶ。
絶望に暮れた私が、旅の道中で出会ったのは、国中から恐れられる魔導王様だった。
「君は決して平凡なんかじゃない」
誰も知らない優しい笑顔で、私を大切に扱ってくれる彼。やがて私たちは夫婦になり、数年後。
政争で窮地に陥ったアラン様が、助けを求めて城にやってくる。
玉座の横で微笑む私を見て愕然とする彼に、魔導王様は冷たく一言。
「我が妃を泣かせた罪、覚悟はあるな」
――ああ、アラン様。あなたに捨てられたおかげで、私はこんなに幸せになりました。心から、どうぞお幸せに。
幸運を織る令嬢は、もうあなたを愛さない
法華
恋愛
婚約者の侯爵子息に「灰色の人形」と蔑まれ、趣味の刺繍まで笑いものにされる伯爵令嬢エリアーナ。しかし、彼女が織りなす古代の紋様には、やがて社交界、ひいては王家さえも魅了するほどの価値が秘められていた。
ある日、自らの才能を見出してくれた支援者たちと共に、エリアーナは虐げられた過去に決別を告げる。
これは、一人の気弱な令嬢が自らの手で運命を切り開き、真実の愛と幸せを掴むまでの逆転の物語。彼女が「幸運を織る令嬢」として輝く時、彼女を見下した者たちは、自らの愚かさに打ちひしがれることになる。
その発言、後悔しないで下さいね?
風見ゆうみ
恋愛
「君を愛する事は出来ない」「いちいちそんな宣言をしていただかなくても結構ですよ?」結婚式後、私、エレノアと旦那様であるシークス・クロフォード公爵が交わした会話は要約すると、そんな感じで、第1印象はお互いに良くありませんでした。
一緒に住んでいる義父母は優しいのですが、義妹はものすごく意地悪です。でも、そんな事を気にして、泣き寝入りする性格でもありません。
結婚式の次の日、旦那様にお話したい事があった私は、旦那様の執務室に行き、必要な話を終えた後に帰ろうとしますが、何もないところで躓いてしまいます。
一瞬、私の腕に何かが触れた気がしたのですが、そのまま私は転んでしまいました。
「大丈夫か?」と聞かれ、振り返ると、そこには長い白と黒の毛を持った大きな犬が!
でも、話しかけてきた声は旦那様らしきものでしたのに、旦那様の姿がどこにも見当たりません!
「犬が喋りました! あの、よろしければ教えていただきたいのですが、旦那様を知りませんか?」「ここにいる!」「ですから旦那様はどこに?」「俺だ!」「あなたは、わんちゃんです! 旦那様ではありません!」
※カクヨムさんで加筆修正版を投稿しています。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法や呪いも存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。
※クズがいますので、ご注意下さい。
※ざまぁは過度なものではありません。