【完結】義姉の言いなりとなる貴方など要りません

かずきりり

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「それは悪かったと思ってる」

 ジャンの後ろから、クレシー侯爵が神妙な面持ちで現れ、話しかけてきた。その腕にはブリジット嬢がくっついている。
 勿論、そんな二人を歓迎している様子な貴族なんて一人も居ない。皆が皆、軽蔑の眼差しで様子を見ている。

「そんなに思いつめていたなんて……私のせいで……ごほごほっ」
「ブリジット!」
「義姉さん!」

 謝罪の言葉を口にする事なく咳き込んだブリジット嬢へ、クレシー侯爵は勿論、ジャンまでも心配そうに駆け寄る。
 けれど、確かに今日のブリジット嬢は具合が悪そうだ。顔は青いし、ふらついていて一人ではしっかりと立つ事も出来ない様子で、今もしっかりとクレシー侯爵の腕にしがみついている。

「けれど、こんなの酷いわ……。嫌なら言えば良かったじゃない……。いきなり門前払いだなんて、いくらなんでもジャンが可哀そうよ……」

 体調悪そうにしながらも、言葉を紡ぐブリジット嬢だが、辛いのか、途切れながらになっている。
 ならば、こんな場所へ来なければ良いのにとも思うが、私どころかお父様にすら会えないからこそ、話をするならば出て来るしかなかったのだろう。

「断りましたよね」
「……っ!」

 ハッキリと言い放つ私に、ブリジット嬢は厳しい目つきをする。
 子爵家如きが侯爵家に歯向かうつもりかと言わんばかりだ。まぁ、ここが夜会でなければ、ブリジット嬢は確実に言っていただろう。

「断りましたし、それを聞き入れる事もなく式を強行されただけです。不信感しかない相手を、どうして敷地内へ招き入れる必要がありましょうか。手紙のやり取りだけで充分です」

 頷く周囲の貴族達。信用していない者を邸に入れないなんて、そんな防衛は当たり前だ。
 ブリジット嬢の隣で、クレシー侯爵は言い返せないのだろう、歯を食いしばっている。

「不信感しかないなんて……今まで愛し合ってきた相手じゃない……」
「愛してなんていませんよ」
「え?」
「は?」

 躊躇いなく即座に返した私の言葉に、ブリジット嬢とジャンは呆けた表情で声を漏らした。むしろ、どうしてそんな表情をするのか、私の方が躊躇いを返してしまいたくなる。
 淑女として、一切表情に出す事なく……けれど、どうかした?と言わんばかりに、少しだけ首を傾げて口を開く。

「貴族の結婚は政略以外の何物でもありませんし、そこに個人の感情なんてありませんわ。ただ、家同士を繋げる為で、クレシー侯爵の方から、どうしてもと言われ結んだ婚約でしかありませんもの」

 私の言葉に、ブリジット嬢は驚愕の表情でクレシー侯爵の方を見て、ジャンも驚いた表情で口をあけたまま私の方を見つめていた。

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