【完結】要らない私は消えます

かずきりり

文字の大きさ
7 / 14

07.エクトル=アベラルド公爵子息

妹が毒を飲んだ。そんな現実を突きつけられて、目の前から色がなくなるようだった。
ジュリーの日記には衝撃を受けたが、自分の事を棚に上げ、ついアルフレッドの胸ぐらを掴んでしまった。
愛していると、大事だと言っていたのに、浮気?令嬢達に囲まれていた??

「愛してるさ!!!」

そう叫ぶアルフレッドの言葉に、正気に戻ったかのような感覚に陥った。
そうだ、こいつはジュリーへ攻撃が行かないように適当にあしらう事をしなかっただけだ。
王妃様も未だに嫉妬に狂った婦人たちに足を引っ張られる事がある。
王太子妃、しいては婚約者だった時は更に酷かったと聞いた事がある。
だからこそ……俺はジュリーをアルフレッドと共に守る為にも王太子の側近にまで上り詰めたんだ。
だけど……それが正しかったかどうかより、俺にはもっとやる事があったんだと痛感した。
まさか俺から嫌われていると思っていたなんて……

涙を流し震える父を見ながら、公爵邸に使いを出していない事に安堵もしている。
許せるわけがない……。
元凶は勿論の事、震える父に対しても怒りはある……が、自分自身にも怒りが溢れる。
どうしてもっと一緒に居なかったんだ。
どうしてもっと会話をしなかったんだ。

5歳下のジュリーが生まれた時、確かに母は亡くなった。
確かに見ると母の事を思い出して寂しくもなったし悲しくもなったが、それを乗り越え立ち直った時には、俺はジュリーを溺愛していた。
ただ……8歳の時にナニー親娘が公爵邸に来た。
公爵の跡取りとして勉強も始まり、今までのようにジュリーに会うことが出来なくなったし、ナニーが常についていたから、どうして良いのか戸惑った部分もあった。
一度距離感が分からなくなると、どうして良いのか分からないまま月日は過ぎてしまった。
ジュリーは常に忙しく、会いたくても会えない日々も続き、俺と会っても分からないんじゃないかという不安まで出てきた。
だから……王太子の側近になってジュリーの手助けが出来るようにと毎日頑張っていたのだが……

「父上、俺は許せません」

思った以上に低く震えた声が出た。
何に、とか誰が、とか、そんな事は言わない、言えない。
ただ……絶対に許してはいけない人物が居るのだけは確かだ。
父の肩がピクリと動くと、ゆっくりと立ち上がり、冷たく絶望を写したかのような瞳で振り向いた。

「……そうだな。……陛下」
「好きにすると良い。許される事ではない」

陛下から許可の言質を取り、そして邸へ向かう。
愛情を歪め
誤解を誘導し
ジュリーを追い詰めた。
あいつらの元へ。

あなたにおすすめの小説

【完結】お世話になりました

⚪︎
恋愛
わたしがいなくなっても、きっとあなたは気付きもしないでしょう。 ✴︎書き上げ済み。 お話が合わない場合は静かに閉じてください。

【完結】私の婚約者の、自称健康な幼なじみ。

❄️冬は つとめて
恋愛
「ルミナス、すまない。カノンが…… 」 「大丈夫ですの? カノン様は。」 「本当にすまない。ルミナス。」 ルミナスの婚約者のオスカー伯爵令息は、何時ものようにすまなそうな顔をして彼女に謝った。 「お兄様、ゴホッゴホッ! ルミナス様、ゴホッ! さあ、遊園地に行きましょ、ゴボッ!! 」 カノンは血を吐いた。

【完結】脇役令嬢だって死にたくない

⚪︎
恋愛
自分はただの、ヒロインとヒーローの恋愛を発展させるために呆気なく死ぬ脇役令嬢──そんな運命、納得できるわけがない。 ※ざまぁは後半

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

【短編】お姉さまは愚弟を赦さない

宇水涼麻
恋愛
この国の第1王子であるザリアートが学園のダンスパーティーの席で、婚約者であるエレノアを声高に呼びつけた。 そして、テンプレのように婚約破棄を言い渡した。 すぐに了承し会場を出ようとするエレノアをザリアートが引き止める。 そこへ颯爽と3人の淑女が現れた。美しく気高く凛々しい彼女たちは何者なのか? 短編にしては長めになってしまいました。 西洋ヨーロッパ風学園ラブストーリーです。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

身勝手だったのは、誰なのでしょうか。

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢になるはずの子が、潔く(?)身を引いたらこうなりました。なんで? 聖女様が現れた。聖女の力は確かにあるのになかなか開花せず封じられたままだけど、予言を的中させみんなの心を掴んだ。ルーチェは、そんな聖女様に心惹かれる婚約者を繋ぎ止める気は起きなかった。 小説家になろう様でも投稿しています。

幸せを壊したのはあなた

阿里
恋愛
裕福な婚約者に支配され、その幼馴染に嘲笑われる日々。リリアは家族のために、心を無にして従い続けてきた。 だが、不貞の濡れ衣を着せられ、すべてを奪われて街に捨てられる。 死を覚悟した彼女を救ったのは、不器用だが真っ直ぐな愛を注ぐ商人・アルベルト。 「俺の隣にいてほしい。一人の女性として」 自らの才能を開花させ、幸せを掴んだリリアの元に、自業自得で没落した元婚約者が這い寄る。 「お前がいなければ何もできないんだ!」 ……知っています。だからこそ、私は貴方を助けない。